ページの先頭です

社外取締役座談会

一連のシステム障害等も踏まえつつ、木原新体制のもとで〈みずほ〉が取り組んでいくべき課題等について、社外取締役6名で意見交換を行いました。

左から 社外取締役 山本 正已、社外取締役 月岡 隆、社外取締役 小林 喜光、社外取締役(取締役会議長)小林 いずみ、社外取締役 甲斐中 辰夫、社外取締役 佐藤 良二

木原新体制への期待について

小林 いずみ木原新体制が始動いたしましたが、ここまでの動きをどのように見ておられますでしょうか。

甲斐中 辰夫いまのところ滑り出しは順調なのではないでしょうか。木原社長は、現場の声を吸い上げて施策に反映させようとしていますが、社長一人でできるものではない。社長をサポートする経営チームが一丸となって、社長の考えをどのように具体化していけるかがポイントではないかと思います。

小林 いずみ皆さんも、それぞれ現場訪問等をされてお気づきの点等はありますか。

佐藤 良二先日、銀・信・証の共同店舗に伺いましたが、支店長や役席者の方も含め、コミュニケーションを重視していこうという意識が強くなっていると思います。木原社長はオープンなキャラクターなので、その感じが少しずつ浸透してきているのではないでしょうか。

山本 正已部店長会議等の様子を見ましたが、参加者からは、明るく前向きな質問や意見が多くなってきていると感じています。会社として方向性をしっかりと定めることができれば、〈みずほ〉の前に進んでいく力は強いのではないかと期待しています。

月岡 隆私も、コミュニケーションが活発化し、良い方向に向かっていると感じていますが、一方で、「コミュニケーションをしたけど、全然変わっていない」とならないようにしないといけない。約束したことをどう守っていくのか、「これで一緒にやって行こうね」といった社員との2wayコミュニケーションとなることが大事だと思います。

小林 喜光取締役会としても、こうした執行の取り組みを定点観測していく必要があるでしょう。

甲斐中 辰夫先ほど、滑り出しは順調とは言ったものの、ご指摘の通り、課題はまだまだあると思います。例えば、先日支店を訪問した際に、ベテラン社員の方から、「営業店改革をやっているが、何のためにやっているのでしょうか、お客さま、さらには私たち社員にとってどういうメリットがあるのですか?」といった質問を受けました。何か改革を行う際には、そういうことをきちんと説明して社員が納得しないとうまくいかない。そういう意味ではまだまだきちんと浸透していないと感じておりますので、社長はもちろん、周りの役職員も努力する必要があると思います。

月岡 隆「何のためにやっているのか」という点についてですが、「〈みずほ〉がお客さま・社会のためにどう存在していくのか、私たちはその第一線にいるんだ」といったものを社員と共有化できるような作業を車の両輪としてやっていく必要があるのではないでしょうか。みんなが目の前の仕事で精いっぱい、ではいけない。

小林 喜光今回せっかく若い社長のもとリスタートしているので、はっきりとした理念とか、グループのさらなる一体感をどう醸成するのか、そういうフレッシュな〈みずほ〉というメッセージを、この機会にぜひとも発信していただきたいですね。

山本 正已そのためには、「こういうことにチャレンジする」という具体的なものが必要ではないでしょうか。残念ながらこの1年間はシステム障害の反省の1年でしたが、新体制のもとで、次の成長に向けて自分たちの基軸を打ち出す良いチャンスだと思います。

システム障害等を踏まえた安定的な業務運営・ガバナンス機能のさらなる発揮に向けて

山本 正已

山本 正已今回のシステム障害等を踏まえ、当社(持株会社であるFGを指す)と各エンティティの役割分担をあらためて明確化したことには意味があると思います。当社はグループ全体を俯瞰した適切な資源配分と監督に徹し、各エンティティは現場力を強化していくという考えをベースに業務改善計画はできています。今後、システム障害の教訓が活きて、現場が動きやすくなる、現場から色々な改善案が出てきて障害に対する備えや対応が早くなることを期待しています。

小林 いずみ現場の課題を拾うという観点では我々にも反省すべき点はあったと思います。改革を進めるなかで、現場にどのような歪みが生じていたのか、もっと注意を向けることが必要であったということではないでしょうか。

山本 正已これからもしっかり管理・監督をしていかないといけない。そのためには、現場が疲弊していないか、現場力が高まっているのか、といったことをもっと「見える化」しないといけない。

甲斐中 辰夫ご指摘の点は大事な点だと思います。社外取締役としてもしっかりモニタリングする必要があるということで、今後もシステム障害対応検証委員会等を通じて監督をしていきたい。

甲斐中 辰夫

月岡 隆一方で、過去の経験からも、ガバナンスを強化するとルールだけが作られていくことにもなりかねない。社員が「これだけを守っていればいいんだ」となってしまわないようにしないといけないのではないかと。

甲斐中 辰夫まったくその通りであり、戦略やルールが定まると決まった通りにやればいい、そういう文化があるように思うので、この際、これを脱却しないといけない。もちろん、我々として気がついたことは指摘するのですが、具体的なことや戦略に沿った執行については、社長だけではなく社員全員が、自ら考えながら、自らの責任のもとで進めていく、ということだと思います。

月岡 隆私もその通りだと思います。人から与えられたものに沿ってやっているだけでは、組織・人の力は高まらないでしょう。社長も社員も挑戦していく、自ら変わらないといけない、という動きをぜひお手伝いしたいですね。

小林 いずみ〈みずほ〉は仕組みづくり、ルールづくりは完璧にやる一方で、それをこなすのに精いっぱい。問題が発生した際に、その場で問題の原因を把握し、自らアクションを考えるといった部分に改善の余地があったのではないかと感じています。

佐藤 良二コンプライアンス等も含めたリスクに関することは、何か問題が発生すればやることが増えていく、つまり足し算になっていきがちです。一方で、いま、木原社長が取り組もうとしている「ムリ・ムダをなくす」というのは引き算。ただ、引き算はリスクを伴って責任を取るということですから、一人ひとりが主体的に考えないとできない。

小林 いずみ足し算文化を引き算文化にして、なおかつリスクをマネジメントできる能力を高めていく必要があるということですね。

甲斐中 辰夫今回のシステム障害においても、そうした課題が表れていると思います。トラブルが発生した時には、全体を把握して指揮を取るコマンダーのような人間が必要なのですが、一方で、指揮を取る者はリスクを背負わなければならない。その人間が不明確なまま、伝言ゲームをやっているうちに対応が遅れてしまった。

小林 喜光

佐藤 良二

小林 喜光机上の空論に陥らないようにするために、具体的な訓練をする場をもっと作って優先順位をつける癖を身に付ける必要があると思います。火災訓練を例にとっても、フィジカルな訓練はやはり重要でしょう。

小林 いずみ具体的な訓練ということを考えるとその体制が重要ですが、先ほどの山本取締役のお話の通り、当社とエンティティの役割を今回あらためて整理できたと思っていますが、ガバナンス態勢について、他にお気づきの点はありますか。

小林 喜光一般的なホールディングス体制においては、持株会社はブランドそのものをどうプロモートしていくか、あるいは、経営戦略、中期経営計画、事業ポートフォリオとリスク制御をどうしていくか、といったことが役割で、日々のオペレーションは事業会社に任せている。対して〈みずほ〉は、持株会社の役割がtoo muchになっているように感じます。持株会社とエンティティの役割分担は、適切な執行を行ううえで極めて重要なポイント。

佐藤 良二一義的には小林取締役のご意見の通りだと思います。ただ、グループ全体の企業風土変革も持株会社が担うべき役割であり、このためには現場を知らないと進めることができないのではないでしょうか。

小林 喜光確かに、当社のトップは、文字通り会社の風土や文化、あるいはブランド、経営戦略・将来の方向性、そういったものに責任をもつ必要があります。そのうえで、社長の下にいるカンパニー長は収益に徹底的に拘る。されど、エンティティ長はそのアンチテーゼとして、そうはいってもシステムの安定性だとか、社員の士気といった観点でどうか、といった侃々諤々の議論をカンパニー長とすればよい。

甲斐中 辰夫カンパニー制そのものは良く考えられたものですが、なんでもカンパニーが指示する、エンティティはその通りやっていればよい、となっていくのはよくありません。今回、エンティティに様々な社外取締役を選んで充実させているので、これから良くなっていくのではないでしょうか。

小林 いずみカンパニーが作った戦略をエンティティが実行していく、というモデルですが、そこで机上の空論にならずに、現場としての問題を、エンティティがカンパニーに対して意見をきちんと言うことが、健全な運営の土台となるということですね。その中で、当社の取締役会としては、やはりカンパニーの声だけでなく、エンティティの問題を把握し、それらを通じて全体を見るということが大事なのではないでしょうか。つまり、一つ一つの個別の問題については、あくまでもエンティティが責任を持つ。一方で、我々としては、全体の資源配分であるとか、あるいは戦略に無理が生じていないかということを常に検証しながら、当社の執行に対して監督していくということだと思います。

山本 正已かなりクリアになっていると思います。やはり現場あってのグループであり、エンティティの実力が最大限発揮されるような運営をしていくことが大事ですね。

小林 喜光実は製造現場でも同じようなことがあります。明治以来、事業所や工場の力が圧倒的に強かったのですが、近代になるにつれて現場ではなくヒエラルキーの上部だけが動く形になってしまった。このバランスがいかに大事か、ということが今回の気づきではないでしょうか。

企業風土変革について

小林 いずみそうしたバランス、あるいは、持株会社とエンティティのテンションが重要である一方で、ひとつの〈みずほ〉としてまとまることも重要だと思います。おそらくそれをつなぐのが、月岡取締役が繰り返しお話されている「存在意義」ということなのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

月岡 隆

月岡 隆こういう大きな出来事が起きた際には、やはり原点に立ち返ることが必要だと思います。自分たちがなぜここにいるのか、どこに向かおうとしているのか、を経営トップが明確にメッセージとして伝えることが大事なのではないかと。もう一度、存在意義をみんなで見直せば、それが現場の活力・原動力になって、木原体制のエンジンになるのではないかと思っています。

甲斐中 辰夫企業理念は、やはり、わかりやすく、個々の社員の人生観や生き方と共鳴するものでなければならないと思います。私が過去、他社の取締役としてお手伝いをした際は、まずは企業理念をわかりやすく、みんなが「なるほど」と思うものに作り変えたのですが、抽象的で難しいものは根付かない。どういう伝統があるどのような会社なのかを、社員みんなが共通の意識として持たなくてはいけない。

月岡 隆私も過去に何度か、原点に立ち返って企業理念を明確に描く、ということをしたのですが、社員たちが中心になって考えて辿り着いた理念は非常にシンプルなものなんですよね。対話集会を繰り返し開いてそこに社長が出ていく、こういった取り組みを3年も4年も続けると一つにまとまっていけると実感しており、そういう意味でも、存在意義・理念といったものは、わかりやすい言葉がよい。

小林 喜光社長になれば前任とは違って自分はこういうものだ、ということを打ち出す人も多いと思いますし、それぐらいの覚悟・気概が必要じゃないかと思います。木原社長も、いま相当考えているところだと思います。

山本 正已社員の皆さんにとっては、企業風土が問題だと言われても、何をどうすればよいということがわからない面もあるのではないでしょうか。「自分たちの存在意義はこうで、どこをめざしていくのか」ということを、木原社長のもとで打ち出すのは大切なことだと思います。

小林 いずみこの点については、木原社長もご自身の役割の一つとして認識されており、現場・若手も含めた様々な社員をチームアップして、経営陣とも意見交換を始めていると聞いています。取締役会としても、その進捗をしっかりとフォローしていきましょう。

5ヵ年経営計画の成果および今後の成長戦略について

小林 いずみ次に業績面ですが、5ヵ年経営計画の成果が見られてきている一方で、ROEが低い等の課題もあります。資本の活用も含めて成長戦略が重要なフェーズですが、どのように考えておられますでしょうか。

小林 喜光5ヵ年経営計画のここまでの成果として、CET1比率の9%半ば、2023年度の連結業務純益9,000億円という水準をめざせるレベルまできています。資本効率という観点ではまだ課題はありますが、こういったトレンドをしっかり維持しながら、次の5年、10年、あるいは20年先の〈みずほ〉を見据えてどういう手を打つかという観点が必要ではないでしょうか。時代がドラスティックに動いている中、金融というものが、経済活動の血液というだけの時代は終わり、文字通り「beyond金融」をスコープに入れながら、次なる10年にしていかなければならない。その中で、〈みずほ〉がこれまでずっと取り組んできたサステナビリティに関する仕掛けをいかに進めていくか、DXを梃子に、リアル金融とバーチャル金融のハイブリットをどう進めていくか、そして社員も含めたグローバル化、これらのバランスをよく考えて取り組んでいく必要があるのではないかと思います。

山本 正已DXに関しては、〈みずほ〉には、MINORIを作り上げた経験を持つ優秀な人材がいる、という点は大きな資産だと思います。また、J–Coin Payのような新しい仕掛けに取り組んできたという経験や、みずほリサーチ&テクノロジーズのコンサルティングといったノウハウもある。アドバンテージは十分にあると思っており、これを形にして世間に出していく、こういうフェーズに入っている。新しいことにチャレンジできる環境が揃いつつあると思うので、ぜひ実行に移してもらいたい。

佐藤 良二「銀・信・証」の領域については、競合他社に負けていないと思います。新しい戦場のひとつはまさにDX。いまはまだ正直、手探りで色々なことをやっているということだと思いますが、今後、その中で何に注力していくのか、といったことも議論していく必要があるのでしょう。

月岡 隆J–Coin Pay、PayPay証券、LINE、Google提携といった種まきはやってきています。ただ、これをどう育て、どこをめざしていくのか、〈みずほ〉のお客さまが満足してくださるものにどうつながっていくのか、ここをより明確にしていく必要があるのではないでしょうか。

甲斐中 辰夫これまで色々と着手したものについて、きちんとモノにしていく力が大事な局面になるでしょう。これだけ優秀な人材が集っているので、あとはどのように戦略的に方向付けてやり切るかということ。その点は、木原社長に期待しているところでもあります。

小林 いずみ〈みずほ〉の社員は真面目で優秀なのですが、同じ方向を向きがちなところが見受けられます。優秀で、かつ、異なる視点を持っている社員に活躍してもらう多様性も重要ではないでしょうか。

小林 喜光そういう観点では、一定の遠心力も必要になるでしょう。いわゆる「逆らう人材」というか、新しいものをクリエイトするのはだいたいそういう人たちだと思います。イノベーションを育むためには、求心力にただ乗っかるのではなく、そこから離れたい、もっと変わったことをやりたいと思う人材を育てつつ、されども求心力を維持する、という絶妙なマネジメントが必要になります。

小林 いずみ我々取締役会も執行の様々な社員と接するわけですが、そういった人材を発掘していく、あるいは、エンカレッジしていくということも大事、ということですね。

最後に(取締役会議長より)

小林 いずみ

小林 いずみ先日開催された株主総会においては、我々も含めた取締役の再任という点について、株主の皆さまから厳しい声もいただきました。我々としては、株主の皆さまに〈みずほ〉のガバナンス、監督機能の発揮という観点でより良い方向に向かっているということをお示ししていく必要がある、特に2022年度はその点が重要だと思っています。本日、意見交換させていただいた内容をしっかりと念頭に置いて、今後の取締役会を運営していきたいと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

ページの先頭へ