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CFOメッセージ

新たな成長ステージを見据え、財務運営の規律を堅持し、企業価値の最大化に向けた取り組みを加速させます 取締役 兼 執行役 グループCFO 米澤 武史

新たな成長ステージを見据え、財務運営の規律を堅持し、企業価値の最大化に向けた取り組みを加速させます 取締役 兼 執行役 グループCFO 米澤 武史

中計初年度の振り返り

2023年4月にグループCFOに就任後、株主・投資家の皆さまとの対話を通して私が痛感したことは、パーパスを起点に策定した中期経営計画を着実に遂行し、〈みずほ〉固有の競争優位性を磨き上げ、成果を出し続けることの重要性です。

2023年度は、こうした認識をグループCEOの木原をはじめとした経営メンバーや社外取締役と共有しながら、中長期視点で戦略の具現化を進め、〈みずほ〉が目指すビジネスモデルの実現に向け、着実に歩みを進めることができました。

2023年度決算は、顧客部門・市場部門ともにビジネスが順調に伸長したことに加え、市場環境の追い風もあり、本業の儲けを示す連結業務純益は1兆円に到達し、2002年の〈みずほ〉発足以来の最高益を更新しました。なお、顧客部門も2016年度のカンパニー制導入以降の最高益を更新しています。また、親会社株主純利益も過去最高益に次ぐ結果となり、連結ROEも7.6%と中計目標8.0%超に向け順調に向上しています。2016年の日銀のマイナス金利政策導入により、銀行業務の収益性が低下するなか、収益の多様化を図るとともに、財務運営の規律を堅持し、経費・資本効率の改善に努めてきた成果が出ていると感じています。なお、2023年度は1年前倒しで終了させた前5ヵ年経営計画の最終年度でもありましたが、掲げた財務目標をすべて達成しています。

中期経営計画目標に対する進捗状況

中期経営計画目標に対する進捗状況

中期経営計画目標に対する進捗状況

【中期経営計画の前提となる金融指標】日本国債10年利回り:0.95%、日経平均株価:30,000円、ドル円:120円(2025年度)

  • ※1.その他有価証券評価差額金を除く
  • ※2.ETF関係損益等を含む
  • ※3.社員意識調査におけるエンゲージメントおよびインクルージョンに関する各4設問に対する回答の肯定的回答率(1~5の5段階で4,5を回答した割合)
  • エンゲージメントスコア・インクルージョンスコアの進捗についてはP.55(PDF/1,638KB)をご参照ください

財務運営方針と飛躍に向けた2024年度計画

2024年3月に日銀のマイナス金利政策が解除となり、日本は「金利ある世界」の入り口に立ちましたが、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢悪化といった地政学リスクの高まりに加え、欧米でのインフレの高止まりや米国大統領選を中心とした政治イベントが控える等、今後も不透明な事業環境が予想されます。

このような状況下では、経費やリスクアセットのコントロール等、事業環境に応じて財務運営を機動的に適応させるとともに、金融市場・世界経済に大きなショックが生じることも想定して、収益や資本のリスク耐性を高めておくことが求められます。

〈みずほ〉では、日次でカンパニー別の損益や経費・投資・リスクアセットの状況を把握しており、各ビジネスの進捗や変化の予兆を経営メンバーが常時共有し、スピード感ある打ち手を講じるようにしています。

また、事業環境の変化による利益変動を抑制するために、ビジネス戦略に沿った事業ポートフォリオの構築を進め、収益多様化と相互補完性の向上を図るとともに、業務効率化と生産性向上、競争優位性に乏しいビジネスの縮退を大胆に進め、経費率の低減・固定的経費の増加抑制に努めています。その結果として、仮に厳しい事業環境に直面した場合においても、利益を確保し、十分な資本を維持できるようにしていきます。

2024年度は、「連結ROE:8%」「連結業務純益:10,700億円」と中計最終年度目標の達成を前倒しする計画を策定しています。日銀のマイナス金利政策の解除による増収効果もありますが、財務規律を維持したうえでビジネス戦略を着実に遂行し、本業収益を伸長させる計画です。これまでの成長のモメンタムをより確かなものとし、スピード感をもって、企業価値の向上を追求していきます。

P.71 事業ポートフォリオ(カンパニー別事業戦略)(PDF/1,618KB)

PBR改善に向けた取り組みの進捗

〈みずほ〉のPBRは、ROEの向上と持続的な成長への期待から着実に改善していますが、PBR1倍にはいまだ届いていません。厳しい株式市場の評価を真摯に受け止め、経営の最重要課題としてPBR1倍超の早期回復の実現に取り組みます。

PBRの改善は、ROE向上と資本コスト抑制を通じて実現されます。この2つの実現に向け、財務面では、「RORA向上」「CET1比率コントロール」「ボラティリティ抑制」「期待醸成」の4点を意識して、後述する6つの取り組みを遂行していきます。これらの取り組みを通じ、成果を出し続けることで、株主・投資家の皆さまからの経営への信認を高めていきます。

PBR・ROEの進捗

PBR・ROEの進捗

PBR・ROEの進捗

  • ※1.その他有価証券評価差額金を除く

PBR改善に向けた取り組み

PBR改善に向けた取り組み

PBR改善に向けた取り組み

①着実な利益成長の実現(RORA向上、期待醸成)

中期経営計画で選定した5つのビジネス注力テーマのうち、「資産形成・運用」「国内法人」「グローバルCIB」を利益成長を牽引する重点分野と位置づけ、2023年度からの3年間で約1,700億円の業務純益の成長をめざします。2023年度は、これら重点分野の競争力を高めるための戦略を遂行し、業務純益を460億円伸ばすことができました。

2024年度は、人的資本の強化等、経営資源の先行投下も行い業務純益を2022年度比で870億円伸ばす計画です。

重点分野の業務純益

左右スクロールで表全体を閲覧できます

(億円) 2023年度
(2022年度比)
2024年度
(2022年度比)
資産形成・運用 +90 +180
国内法人 +250 +400
グローバルCIB※1 +120 +290
重点分野 計 +460 +870
  • ※1.グローバルコーポレート&インベストメントバンキングカンパニー+グローバルマーケッツカンパニーの海外S&T(セールス&トレーディング)

②アセット採算性向上(RORA向上)

ROEを向上させるため、すべての顧客取引に採算性の基準を設けて、より資本収益性の高いビジネスに経営資源をシフトさせています。具体的には、金利競争の厳しい住宅ローンや国内外の低採算貸出を削減し、M&Aや不動産等、様々な付帯収益が期待できるビジネスに関連した貸出を増やし、RORAを着実に改善させています。

また、時価変動リスクが高く資本収益性が低い政策保有株式の削減にも継続的に取り組んでいきます。2015年度初に約2兆円あった政策保有株式の簿価は、2023年度初には約1兆円まで削減しました。この中期経営計画では、さらに3,000億円を削減する計画を掲げており、初年度となる2023年度は821億円(含む売却応諾額1,171億円)の削減を実現しました。

リスクアセット

リスクアセット

リスクアセット

  • ※1.リスクアセットは内部管理ベース。バンキング勘定の金利リスク等を考慮
  • ※2.業務粗利益RORA(Return on Risk-weighted Asset)。除く外債健全化影響:2.8%(2023年3月末)
  • ※3.ストラテジック・インベストメント。エクイティ・メザニン等の資本性ファイナンス分野

③経費率コントロール(ボラティリティ抑制)

グローバルな金融規制強化、サイバーセキュリティへの対応、また競争力強化のためのITデジタル投資、人的資本投資、さらに欧米でのインフレや円安等、投資や経費の増加要因には枚挙にいとまがありません。安定的な業務運営の維持や中長期的な成長実現に必要な投資・経費の投下は行いつつも、経営の強いコミットメントのもと、業務効率化と生産性向上、競争優位性に乏しいビジネスの縮退を大胆に進め、固定的経費の増加を抑制し、経費率60%台前半を維持していきます。

④与信関係費用の抑制(ボラティリティ抑制)

今後、日本が「金利ある世界」に回帰していくと、与信関係費用が増加する懸念もあります。事業環境の変化を踏まえ、信用リスク悪化の予兆管理や財務面で困難に直面するお客さまに対する事業構造の見直し等の支援、またフォワード・ルッキング引当による予防的対応を徹底し、与信関係費用の抑制に努めていきます。

⑤収益多様化、相互補完性の向上(ボラティリティ抑制)

2016年の日銀によるマイナス金利政策導入以降、国内の貸出・預金ビジネスに関わる国内金利収支は大きく減少しました。これを受け、国内の非金利ビジネスや「グローバルCIB」ビジネスの強化を進め、収益多様化と相互補完性向上を図り、厳しい事業環境のなかで、安定的な利益成長を実現してきました。

今後もこの取り組みをさらに進めて、事業環境の変化に対するリスク耐性のある強靭な事業ポートフォリオを構築していきます。特に米国を中心とする「グローバルCIB」ビジネスにおいては、信用力の高いグローバルトップ企業にフォーカスした貸出・投資銀行ビジネス・マーケッツビジネスを一体的に展開し、金融市場の変動の影響を受けにくいビジネスモデルに磨きをかけていきます。

また、円外貨のバンキング・ポートフォリオを適切にコントロールすることで、顧客部門と市場部門の収益の相互補完性を高めて、金利の変化に伴う収益変動を抑制していきます。

業務粗利益(顧客部門+S&T)の安定的な成長

業務粗利益(顧客部門+S&T)の安定的な成長

⑥効果的な資本活用(CET1比率コントロール、期待醸成)

〈みずほ〉はバーゼルⅢ最終化対応のため、長らく資本蓄積を優先してきました。このため、過去10年間で計上した親会社株主純利益(5.2兆円)は、自己資本充実(2.7兆円)・株主還元(2.0兆円)を中心に配賦し、成長投資への資本配賦は0.5兆円に留まりました。

一方、限られた資本を選び抜いた成長投資機会に活用することで、北米CIBビジネスの強化等を実現し、利益成長につなげてきました。近年では、リテールビジネスのデジタルシフトを見据え、楽天証券株式会社を関連会社化する等、「資産形成・運用」ビジネスにおいても投資を行っています。

こうした成長投資による収益貢献もあわせて、安定的な収益基盤の着実な成長に基づき、2024年度の配当は一株当たり115円(前年度比+10円)と4期連続の増配を計画しています。

トラックレコード

利益配賦実績

利益配賦実績

自己資本充実

自己資本充実

成長投資

成長投資

株主還元

株主還元

  • ※1.完全実施ベース、その他有価証券評価差額金を除く
  • ※2.ETF関係損益等を含む
  • ※3.持分法投資損益と北米CIBビジネスの業務純益の合計値
  • ※4.2020年10月に実施した株式併合の影響を考慮

資本政策は、これまで通り「自己資本充実、成長投資、株主還元強化の最適なバランスを実現」する基本方針を維持します。自己資本の充実度を示すCET1比率は、事業環境の変化へのリスク耐性具備、成長投資余力確保の観点から、9%台半ばから10%台半ばのレンジ内でコントロールしていきます。2024年3月末時点のCET1比率は9.8%と充実しており、今後はより株主還元と成長投資に軸足を置いて資本政策を運営していきます。

資本運営の目線:CET1比率※1

資本運営の目線:CET1比率

  • ※1.バーゼルⅢ最終化完全実施ベース。その他有価証券評価差額金を除く

株主還元についても「累進的な配当(配当性向40%を目安)を基本とし、自己株式取得は機動的に実施する」という方針は不変です。自己株式取得は、自己資本の充実、株価、収益動向、成長投資機会を踏まえ、機動的に検討していきます。

成長投資については、注力ビジネス強化に資する案件を厳選して、投資リターンの十分性、ガバナンスの実効性、投資先とのカルチャーの適合性等、多面的かつ深度ある検証を行い、慎重に判断していきます。注力ビジネス以外でも、アジアのデジタル金融等、将来の成長機会探索のための投資も検討しますが、出資時の検証に加えて、投資後のモニタリングを徹底し、想定した投資効果が得られなかった投資は期限を定めてEXITする、規律ある運営を行います。

ステークホルダーコミュニケーション

2023年度のCFOメッセージでは、ステークホルダーの皆さまとのエンゲージメントを一層強化し、開示の充実に取り組むと宣言しました。

これを受けて、国内外の機関投資家や個人投資家の皆さまと対話する機会の拡大に向け、精力的にIR活動を行ってまいりました。面談件数を大幅に増やしただけではなく、質の高い対話に向けてPBR改善に向けた取り組み等、投資家の皆さまのご関心の高いテーマの開示充実に努めたほか、北米CIBビジネスにフォーカスしたIR Selectや個人投資家向け説明会も開催しました。また、海外機関投資家の皆さまとは、英語での対話を通じて、幅広いテーマについて密度の高い意見交換を数多く実施しました。

投資家の皆さまからいただいたご示唆は、持続的な成長に向けた取り組みや開示充実に活かしています。2023年度は、特にご要望の多かった株主総会開催前の有価証券報告書の開示や四半期ごとの決算時系列データの開示を行いました。

今後も、〈みずほ〉のさらなる発展に向け、忌憚のないご意見をお聞かせください。

機関投資家面談件数

2023年度 770件(うち海外460件) 前年比+250件
  • 役員にて実施
320件(うち海外150件) 前年比+130件
  • IR部にて実施
450件(うち海外310件) 前年比+120件

IR Select

〈みずほ〉固有の競争優位性を確立している北米CIBビジネスについて、ニューヨークとウェブでつなぎ、米州みずほの経営メンバーから直接説明しました。

写真1

写真2

IR Select

個人投資家向け説明会

楽天証券株式会社のプラットフォームを活用し、主に若年層の個人投資家向けに、グループCFOよりブランドイメージ向上も企図した説明会を開催しました。

東京藝術大学との連携

2023年度中間期の決算説明資料から、表紙にアート作品の掲載を開始しました。

決算説明資料の表紙

決算説明資料の表紙

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