リスクガバナンス
基本的な考え方
〈みずほ〉はグローバルな金融機関としての責務のもと、お客さま、経済・社会とともに持続的に成長・発展するため、リスクアペタイト・フレームワークを通じて事業戦略・財務戦略の遂行とリスク管理の運営を一体化し、適切なリスクテイクとリスクコントロールを推進します。
2024年度のトップリスクの選定にあたっては、国内外のマクロ環境や金融政策の行方に対するリスク認識に加え、気候変動、自然の損失、人権侵害等の環境・社会課題に対する社会的な目線の一段の高まり、生成AIがもたらすリスク等について議論を重ねてきました。各トップリスクに対しては様々なコントロール策を講じていますが、ここでは中期経営計画の注力テーマとも関連する3つの取り組みをお伝えします。
1つ目は、不透明感の高まる国内および海外の金融経済環境への備えについてです。信用リスクについては、金利上昇がマクロ経済や企業業績に与える影響について様々なシミュレーションにより精査し、適切なリスク・リターンを踏まえたリスクテイクを推進しています。また、ドル円相場が歴史的な円安水準となる等ボラタイルな市場環境となっていますが、市場・流動性リスクについては、各国金融政策の動向を注視し、ここ数年の米欧の急ピッチな利上げによるマーケット変動からの学びも活かしながら、フォワードルッキングなリスクコントロールに取り組んでいます。
2つ目は、グローバルなリスク管理についてです。米州のGreenhill買収等、〈みずほ〉は着実にグローバルCIBビジネスの裾野を広げていますが、グローバルに銀行・証券機能を提供するためのリスク管理態勢についても、米州・EMEA・APACの各地域で強化しています。
最後に、経営基盤強化についてです。サイバーセキュリティリスク等、リスクの高まりが顕著な領域への備えや、AIの急速な普及による新たなリスクの可能性にも意を用いることが必要です。安定的な金融サービス提供のため、オペレーショナル・レジリエンスの観点も踏まえリスク管理の高度化を図ってまいります。
足元では国内外ともに、これまでになく不確実性が高まっています。リスクアペタイト・フレームワークのもとでフォワードルッキングに内外環境を見極め、機動的かつ適切なリスクテイクとリスクコントロールによる戦略遂行が重要な一年です。リスクと機会を俯瞰的に把握・評価し、グループ・グローバルベースで適切なリスク管理を推進してまいります。
トップリスク
リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)
〈みずほ〉はRAFを、リスクアペタイト(事業戦略や財務戦略を実現するために受け入れるリスクの種類と水準)に沿ったリスクテイクを実現するための経営管理の枠組みと位置付けています。RAFにより戦略とリスク管理を一体的に運営し、適切なリスクテイクとリスクコントロールを通じた最適なリスク・リターンの実現をめざしています。
RAFの具体的な運営では、取締役会がRAFに関する基本的事項、およびRAFの運営態勢やリスクアペタイト等を文書化したリスクアペタイト・ステートメント(RAS)を決定し、当該決定に基づく経営の業務執行を監督しています。また、取締役会の諮問機関であるリスク委員会は、RAFに関する事項等について取締役会へ提言を行っています。一方、業務執行では、グループCEOの統括のもと、グループCRO、グループCFOおよびグループCSOがこれを補佐し、事業・財務戦略とリスク管理の一体運営を行っています。
リスクアペタイトの設定では、トップリスク等のリスク事象を経営で議論し、これらを組織内で共有するためのベースラインシナリオおよびリスクシナリオを策定しています。そして、これらの内外環境に関する認識を踏まえて、中期経営計画や業務計画と整合したリスクアペタイト方針を策定します。また、資本力・収益力・流動性等について、定量的なリスクアペタイト指標とその水準を設定しています。リスクアペタイト方針およびリスクアペタイト指標・水準は取締役会で決定します。リスクアペタイトの運営状況は定期的にモニタリングを実施し、取締役会等へも報告を行います。また、環境や戦略に変化があれば、必要に応じてリスクアペタイトの見直しも都度実施します。
〈みずほ〉のリスク管理態勢
- ※1各リスクにまたがった複合的なリスク
- ※2各リスクを増幅させる可能性のあるリスク
ストレステスト
〈みずほ〉では、リスクアペタイトの適切性や業務計画等の妥当性を検証するために、自己資本比率や業績等への影響を算出・評価するストレステストを実施しています。
ストレステストは、足元の経済状況や今後の見通し、〈みずほ〉の事業・財務構造の脆弱性等を踏まえてシナリオを設定し、実施しています。ストレス状況においても必要な自己資本比率や業績等を確保できることを確認し、必要な水準を下回る場合には、リスクアペタイトや業務計画等の見直しを検討・実施します。また、規制資本には含まれていないバンキング勘定の金利リスク等も含めたリスク量への影響を算出し、それらと自己資本とのバランスを確認することで、自己資本充実度の評価に活用しています。
加えて、流動性リスクおよび市場リスク等のリスクカテゴリーごとの管理においてもストレステストを行い、頑健なリスク管理態勢を構築しています。
〈みずほ〉の自己資本関連のストレステスト
1. シナリオの設定
- 足元の経済状況や今後の見通し
- 〈みずほ〉の事業・財務構造の脆弱性
2. 影響の算出
- リスクシナリオ発生時の当社グループへの影響を算出
- 主要な算出項目:自己資本比率、損失、VAR(Value at Risk)等
3. 結果の分析・活用
- リスクアペタイトの適切性や業務計画等の妥当性検証
- 自己資本充実度の評価