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対談:企業理念と成長戦略について

企業理念や成長戦略の議論に至った背景にある問題意識や、今後のグループCEOの役割等について、グループCEOの木原正裕と取締役会議長の小林いずみ氏が意見交換しました。

取締役 兼 執行役社長 グループCEO 木原 正裕、社外取締役(取締役会議長)小林 いずみ

パラダイムシフトが起きている中での〈みずほ〉の存在意義

木原 正裕パラダイムシフトの一つは「サステナビリティ」、これは新たな産業を興すレベルでの変化だと考えています。例えば、水素に関連するサプライチェーンであれば、製造から運搬、国内ではディストリビューションネットワークまで必要で、従来の延長線上で考えてもできない。もう一つは「新しいグローバリズム」。経済安全保障などの観点からサプライチェーンの再構築が検討されており、生産コストの安い国で生産し、輸入するといった、従来の日本の産業構造とは違うことが起ころうとしている。これも過去の延長線上とは違う話。一人ではできないことを皆がやろうとしており、実現するには様々なコーディネーションが必要になる。この点を意識して〈みずほ〉として次に何をやらなければならないか決めないといけない、というところがもともとの原点でした。

小林 いずみ私自身も「金融の役割」をしっかり見つめなおす必要があると感じていました。キーワードはDXとサステナビリティだと思います。DXと言っても、単なるネットバンクなどではなく、グループ全体、あるいはグループ外も含めてもっと大きく捉え、既に総合金融のプラットフォームを持った〈みずほ〉が何をすべきか、〈みずほ〉が未来につないでいくものは何か、という観点で考えなければなりません。また、サステナビリティについては、木原さんがおっしゃる通り、日本の産業構造を再構築するほどのパラダイムシフトだと私も思います。そうした観点では、産業知見は〈みずほ〉の強み。いまこそ我々は何のために存在しているのか、社会に対して何をコミットしていくのか、ということについて全社を挙げて議論するタイミングだと思っていました。

木原 正裕実は、あるお客さまから「今こそ金融の時代」と言われたことがあります。「つなぎ合わせる」、「結節点となる」、そういったことを金融に期待されているのだ、ということを、事業領域が広いグローバルな大企業グループのトップの方から言われ、ハッとしました。

小林 いずみ金融の独自性や価値は、まさに「つなぐ」こと。様々な産業と産業をつなぐ、あるいは、違う規模の会社をつなげる。海外の会合では、「AIとヒトがやるべきこと」がよく議論されます。AIが答えを出し切れない、数値や形に現れない「違うものをつなぐ」「考える」ことが、ヒトがやるべきことであり、そういう意欲やスキルを持った人材をどれだけ惹きつけられるかがこれからの差別化の鍵だと思います。テクノロジーの差は進歩で埋まりますが、ヒトの差は埋まらない。金融の中心はお金でしたが、これからはそれにバリューが加わらないといけない。

グループCEOの役割と企業文化について

小林 いずみ私が多数国間投資保証機関のトップになった時はリーマンショック後で、より海外からの支援や投資が求められる状況下、民間企業が新興国に進出することの経済発展への効果とそれに伴う副作用というジレンマを抱え、組織としてベクトルを失っていた時期でした。その時、トップダウンで方向を示すのではなく、皆で自分たちの存在意義を議論し、どこに向かうべきか答えを出しました。そうすると、日々の仕事でやるべきこと、やるべきではないことが明確になり、マニュアルでなく、仕事の目的に基づいて判断できるようになってきました。

木原 正裕システム障害の直後、私がまだグループCEOに指名される以前の話ですが、グローバルプロダクツユニット長として毎日時間を捻出して社員と話すなかで、自信やベクトルを失っていたと感じました。我々がどこに向かっていくのか、ということをあらためて見定め、社員が同じ方向性を共有する必要があると思いました。こうした共通の思いが積み重なってカルチャーになるのではないかと思います。

小林 いずみカルチャーは一言では言い表せられないものですが、社員が会社に誇りを持てるか、会社を好きでいるかということにつながる、非常に重要なものです。

木原 正裕支店を訪問し、「木原社長が思う、良いカルチャーとは何ですか」と聞かれたときには、「皆さんが自分の意見を言えること。そして、それを周囲が歓迎すること」と答えていますが、なかなか伝えるのが難しい。

小林 いずみ本当は社長に聞くのではなく、「『自分がどういうカルチャーが好きか』を皆さんが発信できること」が、良いカルチャーなのでしょうね。CEOの役割はトップダウンで組織を導くのではなく、「ベクトル合わせ」。ベクトルが合い、皆がその方向に動いているときは、CEOは口出しする必要はありません。むしろ、CEOには忍耐が必要。自分なりの答えがあっても、ぐっと我慢することも必要です。

小林 いずみ

木原 正裕

木原 正裕実は私も先輩から「とにかく聴くこと」「自分が正しいと思い込むな」と言われたことを記憶しています。とにかく聴く、これが自分に必要なことだと思っています。加えて、レスポンスをすることも心掛けています。若いころ、せっかく発言したのに上の人から何の反応もなく、がっかりしたことを覚えていますので。

小林 いずみ違う意見を聴くことで、はじめて立体的に物事を捉えることができ、組織としてあるべき決断ができるようになる。重要なのは異なる意見がどれだけ出てくるか。聴くことに加えて、発言をエンカレッジするような雰囲気、一言をトップが発する必要もあるのではないでしょうか。

木原 正裕その点についていうと、私は、「プロセス改革」「人事」「カルチャー」は一体的なものだと考えています。プロセス改革で無駄をそぎ落とし考える時間をつくる。そうすると社員の皆さんは色んなことを考えて声として発信するようになる。そしてこうした意見発信や挑戦が人事面でも報われるようにする。建設的な意見がどんどん出てくるようにしたいですね。

小林 いずみそうしたモメンタムを定着させるにはミドルマネジメントも重要な役割を担います。部下をエンカレッジし、意見を述べたり、主体的に取り組んだことをしっかりと評価する。そうすれば部下は正しい方向に向かっていると自信を持ち、次につながります。木原さんは実際に現場を訪問されているなかで、社員一人ひとりの意識の変化など、取り組みの手ごたえのようなものは感じていますか。

木原 正裕前向きな意見が出始めていると感じています。いまはまだ2、3合目の段階ですが、様々な社員の声を聴き、エンカレッジしながら理念の伝道師としてメッセージを発信していきたいと思っています。本日はありがとうございました。

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