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SX特別企画

INTERVIEW

サステナビリティの潮流を読み、
日本、世界のSXに挑む。

メインイメージ:サステナビリティの潮流を読み、日本、世界のSXに挑む。

金融から非金融まで、グループ横断でお客さまや社会のSXを推進する〈みずほ〉。この記事では、〈みずほ〉のサステナブルビジネスへの足元の主要な取り組みである、ロンバー・オディエ・グループとの業務提携と『インパクトビジネスの羅針盤』をご紹介します。みずほフィナンシャルグループ執行役員 リテール・事業法人カンパニー 副カンパニー長の森嶋 淳浩と、みずほフィナンシャルグループ 兼 みずほ銀行 サステナブルビジネス部 副部長の末吉 光太郎にインタビューを行いました。

様々な角度から、
SX推進サポート体制を強化。

環境や経済、社会などの分野で、国や地域の垣根を超えてグローバルで取り組むべきサステナビリティの課題は山積しています。中でも気候変動は時限性のある喫緊の課題であることから、国や地域ごとに産業・政府・金融による三位一体での取り組みが加速しています。

また気候変動対応としてのカーボンニュートラルは、サーキュラーエコノミー(※1)、自然資本(※2)と相関関係にあります。サーキュラーエコノミーや自然資本への取り組みがカーボンニュートラルひいては気候変動への貢献にもつながる反面、これらの取り組みが不十分の場合、企業の気候変動対応による持続的な企業価値向上の効果が減少する恐れもあります。〈みずほ〉では、カーボンニュートラルを中心とした統合的かつ戦略的な取り組みによって、お客さまのSX推進を幅広くサポートしています。

セカンドイメージ:私たちを取り巻く社会課題の関係性

私たちを取り巻く社会課題の関係性

〈みずほ〉では、金融機関が果たすべき重要な役割を「資金仲介機能を活用して、必要な資金の流れを生み出すこと」とし、私たちの強みである産業知見やファイナンスアレンジ力等をいかして、様々な領域でサステナブルファイナンス実績を着実に積み上げています。この資金の流れをより拡大させるためには、2,000兆円以上あるとされる日本の個人金融資産をカーボンニュートラルに取り組む企業や事業への投資につなげていくことも必要です。

この後の森嶋へのインタビューパートで語られるファンド設定やロンバー・オディエ信託との業務提携は、個人のお客さまからサーキュラーエコノミーに取り組む企業への投資機会を拡充させるとともに、個人向けの資産運用ビジネスを通して、サステナビリティへのエクイティ資金の流入を加速させることを目的としています。企業のサステナビリティへの取り組みがより拡大・浸透することで、〈みずほ〉としてのサステナブルファイナンスもデット・エクイティの両面でさらに拡大していく見込みです。最終的には、私たちが掲げる「サステナブルファイナンス目標100兆円」の達成にも寄与していくと考えています。

また、末吉へのインタビューパートで取り上げるインパクトビジネスは、〈みずほ〉がサステナブルビジネスとして水素、カーボンクレジットとともに注力している領域であり、お客さまとともにインパクトと収益を創出し、企業価値の向上をめざしています。これらの取り組みに共通する、「社会課題解決」と「企業価値向上」の両立という視点から、〈みずほ〉はサステナブルビジネスの強化を図っています。

※1 大量生産・大量消費を伴う一方通行型の経済社会システムから脱却し、社会全体で資源の投入量や消費量を抑え、資源を循環的に利用しつつ付加価値を生み出すことをめざす、循環型の経済社会システム。

※2 植物、動物、空気、水、土壌、鉱物等の再生可能・非再生可能な天然資源のストックであり、組み合わされることで人間・経済・社会に対する便益の流れを生むこと。

世界最高水準の知見を取り入れ、
資産保全時代のビジネスモデルを追求。

1796年にスイスで創業した欧州最大級のプライベートバンクであるロンバー・オディエ・グループは、超富裕層の資産運用で培った知見をいかし、グローバルに資産運用ビジネスを展開しています。とりわけサステナビリティ投資の分野では先駆者として位置づけられており、グループ資産運用部門であるロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズ(LOIM)は、世界屈指のサステナビリティ調査チームを有し、「CLIC®」(※1)が世界のめざすべき経済モデルであると考え、運用哲学にも反映させています。〈みずほ〉は2023年2月にロンバー・オディエ信託との業務提携を経て、2024年6月には提携範囲をサステナビリティ分野に拡大しました。ここでは、みずほフィナンシャルグループ執行役員 リテール・事業法人カンパニー 副カンパニー長の森嶋 淳浩が、〈みずほ〉とロンバー・オディエ・グループの業務提携における狙いや今後の展望を語ります。

サードイメージ:ロンバー・オディエ・グループとの業務提携を主導する森嶋

ロンバー・オディエ・グループとの業務提携を主導する森嶋

わが国の金融業界が、欧米競合に比して相当程度の遅れをとっていることに、私は大きな危機感を抱いていました。とりわけ市場の成長余地があり、更なる強化が求められていたのが超富裕層向け資産運用ビジネスです。この市場でサービスを拡充する際に必須となるのが「真の資産保全」への知見であり、そのパートナーとして2016年に出会ったのがロンバー・オディエ・グループでした。後に、彼らがお客さまのご資産をサステナビリティ評価の高い企業への投資につなげる運用ストラテジーを古くから採用していることを知り、世代を超え、ファミリーの資産を保全する上で、サステナビリティの視点は欠かせないものであることも私たちとしても強く理解したわけです。

私見ですが、金融機関として超富裕層向けサービスを提供する上で欠かせない要件は、ビジネス哲学や理念、歴史、それらに培われたブランド、人材、プロダクト、そしてサービスではないかと思います。よってプロダクトやサービス等、海外のビジネスモデルを形式的に持ち込むだけでは十分ではないと私たちは考えています。ロンバー・オディエ・グループは創業以来225年以上にわたり、数々の戦禍や地政学的リスクを回避しながら、お客さまの資産保全に尽力する過程で、先ほどの要件すべてを世界最高水準にまで磨き上げてきました。〈みずほ〉にとって、同グループから知見やスキル/ノウハウを包括的に吸収し得る千載一遇の機会であることが、業務提携を結ぶ決め手となりました。

2018年8月、みずほセキュリティーズシンガポールとLombard Odier(Singapore)Ltd.間でのウェルスマネジメント領域における業務提携を皮切りに、2023年2月には〈みずほ〉とロンバー・オディエ信託によるプライベートバンキングビジネスにおける業務提携へと発展、日本国内からも投資一任運用サービスが利用可能になりました。また2024年3月には、「みずほサステナブルファンドシリーズ—LO・サーキュラー・エコノミー」の取り扱いを開始し、ますます両社の相互理解が深まりました。さらに、同年6月、〈みずほ〉とロンバー・オディエ信託の業務提携範囲をサステナビリティ分野へと拡大、これにより、人材交流も活性化しています。

フォースイメージ:〈みずほ〉とロンバー・オディエ信託による「サステナビリティ分野における業務提携拡大」調印式の様子

〈みずほ〉とロンバー・オディエ信託による「サステナビリティ分野における業務提携拡大」調印式の様子

私たちはロンバー・オディエ・グループが長年にわたり培ってきた超富裕層向けサービスへの本質的な知見を得る一方、〈みずほ〉の大切なお客さまを彼らに橋渡しすることで、同グループによる本邦でのビジネス拡大の後押しもしています。同グループは世界的に著名なプライベートバンクですが、そのビジネス特性もあり、日本での知名度はそれほど高くありません。〈みずほ〉が仲介役として同グループのプロダクト・サービス等をご紹介することで、国内での認知度を一層高めていければと考えています。また、〈みずほ〉が取り扱うプロダクト・サービスの拡充や高度化に加え、本格的な人材育成も開始します。資産運用ビジネスにおいて、経済社会への貢献とお客さまの利益を両立するという観点から、サステナビリティのアプローチは非常に有用です。だからこそ、〈みずほ〉の社員一人ひとりがその本質を理解し、投資家の皆さまに対して適切なご提案ができるようトレーニングを重ねることで、私たちの強みに昇華したいと考えています。具体的には、数百人単位の社員が同時受講できるオンライン研修等も活用しながら、グループ全体のスキルや知見の底上げを図っていきます。

最後に、昨今のインフレ等を背景に日本でも資産運用/保全時代に突入し、ウェルスマネジメントビジネス(※2)拡大の機運も高まっています。「超富裕層」「富裕層」「リテール(一般投資家)」ごとに資産運用のニーズや向き合い方が異なることから、ターゲットごとにサービス提供元のエンティティ(組織、団体)等を区分して考える金融機関も多く存在しますが、〈みずほ〉では、銀行・証券・信託のフルラインアップで臨むことに加え、先に述べた超富裕層向けビジネスで培ったノウハウをリテールにまで幅広く還元することで、すべてのお客さまに高品質なプロダクト・サービスを提供していきたいと考えています。

※1 循環的で(Circular)、無駄のない(Lean)、すべての人々に平等で(Inclusive)、クリーンな(Clean)の頭文字を取ったもの。サステナビリティ実現に向けて世界がめざすべきあり方として、ロンバー・オディエの投資信念の中核をなす考え方。

※2 資産の管理や運用、事業の承継等、金融に関わるご相談を総合的に承るビジネスのこと。

インパクト創出の加速やグループ基盤の強化で、
金融機関としての新たな価値の確立へ。

ここからは、みずほフィナンシャルグループ 兼 みずほ銀行 サステナブルビジネス部 副部長の末吉 光太郎から、〈みずほ〉がサステナブルな社会・経済の実現に向けた重要な要素の一つとして位置づけている「インパクト」への取り組みや展望についてご紹介します。同部では、グループ一体となりサステナビリティへの取り組みを推進するためのビジネス戦略立案、成長の源泉となる組織的な知見や強み等の提供をミッションに掲げています。直近では、リテール・事業法人カンパニー等の関係部署とともにロンバー・オディエ・グループとの業務提携拡大に取り組むことで、〈みずほ〉におけるサステナビリティ基盤強化を図ってきました。また2024年5月には、インパクトに関する考え方を整理した上で、インパクトビジネス(※1)の可能性や〈みずほ〉としての取り組み方針等を示すため、『インパクトビジネスの羅針盤』を公表し、新たなビジネスを推進しています。

フィフスイメージ:〈みずほ〉のインパクトビジネスをけん引する末吉

〈みずほ〉のインパクトビジネスをけん引する末吉

昔から〈みずほ〉には「社会課題解決」と「企業価値向上」の両立をめざすDNAがありましたが、インパクトビジネスを推進する起点となったのは、2017年の東京都八王子市における日本初のソーシャル・インパクト・ボンド(※2)への参画です。「大腸がん検診受診率が上がると、将来の社会保障費の削減につながる」というロジックに基づいた投資で、八王子市はその事業成果に応じて成果報酬を支払う仕組みでした。私たちは、リスク・リターンという2軸の従来型のビジネスモデルにインパクト評価という指標を組み込むことで、「投融資を通して環境や社会にポジティブなインパクトを与えることは、金融機関として提供できる新しい付加価値」だという非常に大きな気づきを得ました。これを機に、様々なケイパビリティ強化に着手してきました。そして2023年、〈みずほ〉設立150周年の節目で策定したパーパス『ともに挑む。ともに実る。』のメッセージは、お客さまとともにインパクトを共創していく姿勢に合致しており、競争力の源泉の一つとして、私たちはインパクトビジネスへの取り組みを加速することを決断しました。

グローバルにおけるESG投資は約4,500兆円まで拡大しているものの、そのうちインパクト投資が占める割合は3%程度に留まっており、未だ黎明期です。そこで〈みずほ〉が本格的にインパクトビジネスを推進する意思を示すとともに、金融資本市場に対してその取り組み意義を伝えるため『インパクトビジネスの羅針盤』を公表しました。その結果、同業他社からの賛同だけでなく、金融機関のイニシアティブでの盛り上がりへと発展。またお客さまからの反響も多く、自社の社会貢献度を測る「攻めのサステナビリティ」として、企業の価値創造ストーリーに織り込めるのではとの声も上がっています。これは「ポジティブ・フィードバック・ループ」と呼ばれる、インパクト・収益・企業価値の三要素による好循環であり、今後も〈みずほ〉は、お客さまと対話を重ね、これらの実現にともに挑んでいきます。

さらに2024年6月に閣議決定された『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版』では、最大の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)等が、投資にあたり中長期的な投資収益の向上につながるとの観点から、インパクトを含む非財務要素を考慮することは、他事考慮(※3)に当たらないという見解が提示されました。これにより、インパクトビジネスへの機運がぐっと高まりました。

〈みずほ〉内部でも、より多くのインパクトビジネス成功事例を輩出していくための力強いうねりが生まれています。『インパクトビジネスの羅針盤』公表後、社員や部署単位で「自身の担当業務をインパクトビジネスとリンクさせられないか」といった相談が寄せられています。またグループ横断でインパクトビジネスを軸にしたワーキンググループが結成され、新たな取り組みや社外有識者を招いた議論、エコシステムの構築に向けた準備等も進んでいます。

このように世の中の変化を追い風にし、ロンバー・オディエ・グループとの業務提携やインパクトビジネスを起点に広がる〈みずほ〉の独自性を新たな強みにすることで、お客さまとともにSXを推進するための次の足掛かりができました。私たちはこれからも中長期かつ統合的な視点から、産官金連携の一翼を担い、日本そして世界のSXに挑み続けます。

※1 サステナブルな社会の実現に向け、金融の枠組みを超えてお客さまの事業活動に貢献しながら、お客さまの意思決定や事業経営にインパクトが取り入れられるよう働きかけを行い、お客さまとともにインパクトと収益を創出し、企業価値の向上をめざす取り組みのこと。

※2 従来行政が担ってきた公共性の高い事業の運営を民間組織に委ね、その運営資金を民間投資家から募る、社会的課題の解決のための仕組みのこと。

※3 年金資金運用において、「専ら被保険者の利益のため」という目的を離れて、他の政策目的や施策実現のために積立金の運用を行うこと。

※記事の内容は、取材当時のものです

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みずほフィナンシャルグループ
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森嶋 淳浩

日系大手証券会社に入社後、リテール営業、従業員組合執行委員長、支店長等マネジメントを経験。米国系証券会社市場部門を経て、2012年にみずほ証券株式会社入社。商品企画部長、個人本部長、リテール・事業法人部門エリア長等を経て、2022年よりみずほ銀行常務執行役員、2023年より同兼みずほフィナンシャルグループのグループ執行役員を務める。

みずほフィナンシャルグループ 兼 みずほ銀行 サステナブルビジネス部 副部長 末吉 光太郎 プロフィール画像

みずほフィナンシャルグループ 兼 みずほ銀行
サステナブルビジネス部 副部長

末吉 光太郎

みずほ銀行に入行後、大企業法人営業や国際業務・国内法人業務企画部門等を経験。2018年より法人向け銀行ビジネスのデジタル化ならびに社会課題解決型ビジネス開発・支援、インパクト投融資を推進。2022年9月より現職。GSG Impact JAPAN委員、インパクト志向金融宣言運営委員、インパクトコンソーシアム「データ・指標分科会」副座長等。