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SX特別企画

INTERVIEW

〈みずほ〉と日本政策投資銀行が、共同提言を発出。
水素社会実装に向けて、日本が世界をリードするために。

メインイメージ:CSuO牛窪とDBJ原田さま

GX(グリーン・トランスフォーメーション)実現にあたり、2050年カーボンニュートラルの達成と経済成長は不可欠であり、水素はそのカギを握る重要なテクノロジーの一つに位置づけられています。〈みずほ〉では、水素の社会実装によるGX実現に向けて、水素分野の豊富な知見を有する日本政策投資銀行(以下、DBJ)と2022年度より水素等に関する勉強会および金融面の取り組みについて意見交換会を実施。このたび水素等の社会実装に向けた共同提言を発出する運びとなりました。この記事では、提言の内容やその狙い等をご紹介します。

カーボンニュートラル達成のカギは水素。
共通のゴールを目指し、パートナーとして協業を開始。

———近年、水素に関する新聞記事やニュース等をよく目にする一方で、「水素=環境に良い新エネルギー」という漠然としたイメージをお持ちの方が多いのではないかと推測されます。今回両行が水素に着目し、共同提言を発出するに至った背景をお聞かせください。

牛窪現在、日本のみならず全世界が直面している喫緊の課題である脱炭素。私自身、日頃から日本関連企業の皆さまとお話をする中でも、脱炭素は重要な経営課題であることを痛感しています。また他国と比べ、日本は化石燃料への依存率が高いこともあり、看過することはできない難題であるとも言えます。
政府は2050年カーボンニュートラル達成と、産業競争力の強化・経済的成長につなげるGXを掲げており、〈みずほ〉も日本経済の更なる発展と企業の成長には脱炭素が不可欠であるという認識です。GX実現に必要な複数のキーテクノロジーの中でも、幅広い産業へのインパクトを踏まえると水素の重要度は非常に高く、考えを同じくするDBJさまとともに今回の共同提言に至りました。

原田DBJは元々、重化学工業やエネルギー、交通等、CO₂排出量の多い企業とのお取引が多いという背景があります。そのため、脱炭素に向けたお客さまへのソリューション提供はもちろん、私たち自身の課題としても脱炭素への移行は避けては通れないものでした。
またDBJと水素の本格的な関わりは、2014年「水素・燃料電池戦略ロードマップ」の策定までさかのぼります。2018年には、日本水素ステーションネットワーク合同会社の設立メンバーにも参画しました。
これらを踏まえ、水素およびそこから派生するアンモニアが脱炭素のキーとなる要素と判断。2022年度から〈みずほ〉さまと水素ワーキンググループを立ち上げる運びとなり、その延長線上に今回の共同提言があります。

セカンドイメージ:日本政策投資銀行 原田さま

日本政策投資銀行 原田さま

———両行とも水素に関する調査レポートを複数公開されており、同業他社であることから比較されることも多いと思います。提言の1つ目に「水素サプライチェーンを作るための情報収集と発信を行う」を掲げていますが、リサーチ領域で連携する可能性はありますか。

原田水素ワーキンググループでは、両行の調査レポートを題材に勉強会を実施し、意見交換を行っています。〈みずほ〉さまの「産業調査部」は、グローバルでのネットワークや知見を有している印象です。DBJにも「産業調査部」がありますが、それぞれの強みが異なると認識しています。私たちは、「産業」×「地域」の観点から複数部署が連携した調査も行っており、地域でのネットワーク・知見を有しています。
〈みずほ〉さまのレポートでは、「水素の社会実装には政府支援だけに留まらず、産業・企業・地域の垣根を超えた連携が必要である」との記載がありましたが、DBJも同様の考えで、国を挙げた取り組みが重要だと考えています。

牛窪そうですね。私たち民間金融機関は、ともすると近視眼的なビジネスに走りがちです。しかし、〈みずほ〉の「産業調査部」ではどのような産業課題があり、企業・国・金融機関はそれに対し何をするべきかという長期的なテーマに向き合っています。大局的な視点で日本の産業の行く末を考えることが重要であり、今回の共同提言は、「産業調査部」という組織を持つ両行が協力したからこそ実現できた取り組みであると考えています。
またご認識の通り、水素は2050年カーボンニュートラル達成の切り札として普及が期待されています。水素サプライチェーンの構築によって、新たな市場や産業が創出されるという観点から、日本関連企業が水素ビジネスに取り組む意義は大きいと言えます。

原田今後も水素サプライチェーン構築の一助となれるよう、水素等に関する調査・発信を私たちも続けていく所存です。その一環で、ぜひ〈みずほ〉さまと連携させていただけますと幸いです。

サードイメージ:〈みずほ〉牛窪

〈みずほ〉牛窪

「技術」で勝ち、「ビジネス」でも勝つ。
水素等の社会実装で世界をリードするために。

———提言の2つ目では「日本関連企業が水素ビジネスで勝つための支援を行う」を掲げています。グローバルで見て、技術面での日本関連企業の優位性について教えてください。

牛窪世界を見渡しても、水素ビジネスの競争は年々激化しています。そんな中、日本関連企業がグローバルで先行している水素関連技術もあります。例えば、水素サプライチェーンの上流、すなわち水素の製造を担う領域としての「水電解槽」の技術です。この技術に着目し、2023年7月に調査レポートを発行しています。「水電解槽」とは名前の通り、水を電気分解することで水素を製造する装置です。

原田日本関連企業の優位性として、DBJも同じ着眼点で「水電解槽」にたどり着き、時を同じくして同テーマのレポートを発行しました。この技術動向について〈みずほ〉さまと意見交換する機会もあり、今回の調査、レポート執筆に際し、理想的な形で連携ができたと思っています。

牛窪私もDBJさまのレポートを拝読した時に驚きました。同時に、着目するテーマは共通でも、アプローチの仕方に両行の個性が感じられ、お互いに気づきや学びがありましたね。
日本の水素技術が優れていることは確かですが、ビジネスとして成功するかどうかは別の問題です。海外企業との協働等も視野に入れて、グローバルでどのように日本関連企業のプレゼンスを発揮できるかが、命運をわけるポイントと言えます。

原田DBJのレポートでも、日本の技術力が非常に高く評価されていることについて言及しています。日本は水素分野における特許数が多いうえに、引用数や市場規模からみた特許価値でも世界をリードしています。牛窪さまがおっしゃるように「技術で勝って、ビジネスで負ける」ことにならないよう、日本関連企業の技術優位性がどこにあるのかを見極め、金融機関としてしっかり支援していくことが期待されている役割だと認識しています。

フォースイメージ:日本政策投資銀行 原田さま 〈みずほ〉牛窪

地域固有のニーズや産業特性を意識しつつ、
マクロ視点でトランジションをサポート。

———提言の3つ目に「水素の活用に向けて、地域間をつなげる役割を主導する」を掲げています。行政や自治体が、両行に期待している役割をどうお考えですか。

原田日本における現在の産業立地は、化石燃料をいかに効率的に利用できるかを前提に選定されています。そのため脱炭素に向けた取り組みは、各産業の生産過程の変革はもちろん、水素に最適な産業立地の再構築という課題を内包します。
一方で、地域にはこれまで培ってきた産業や技術、人材があるため、水素需要ポテンシャルの違い等が見込まれます。そのため画一的に地域トランジションを論ずることは難しく、それぞれの地域特性を把握しつつ、同時に全体最適をめざすことが重要です。

牛窪DBJさまが2023年6月に発行した「地域×トランジションの在り方~・エネルギー・関連産業を中心とした広域エリア戦略~」でも、自治体単位ではなく、エネルギー需給単位で、より広域における連携の重要性について触れられていましたね。脱炭素により、どのように地域を活性化させるかという視点が印象的でした。この共同提言をきっかけに、より一層の協業を推進していければと思います。

原田DBJは年次の設備投資動向調査も含め、地域を視点とした調査に長年取り組んでいます。今後地域トランジションの進展に伴い、港湾整備や産業の再編・見直しの動きも出てくると思います。47都道府県に拠点を持つ〈みずほ〉さまや地域金融機関などと連携し、地域にとって重要な事案をしっかり支援していきたいと思います。

フィフスイメージ:日本政策投資銀行 原田さま 〈みずほ〉牛窪

志を同じくする金融機関として、
手を取り合い、ともに水素社会の実現に挑む。

———提言の4つ目には、「金融機関として『作る』『勝つ』『つなげる』取り組みへの支援を通じ、水素の早期社会実装を促す」を掲げています。金融機関はファイナンスのイメージが強いですが、今回お話を伺って、金融を超えた領域でも様々な役割を担われるということが理解できました。

牛窪水素の社会実装に伴い、多額のインフラ投資が見込まれます。金融機関の基本業務の一つであるリスクマネーの供給は私たちが果たすべき重要な役割です。

原田水素社会の実現とは、日本のあり方すらも変えていくような、非常に大きなテーマだと認識しています。そのため、ファイナンスはリスク・規模の両面においてすべての金融機関がそれぞれの強みをいかしつつ、協調して取り組むことが大前提となります。さらに2023年6月に改定された、政府が掲げる「水素基本戦略」では、公的資金と民間資金を組み合わせる「ブレンデッド・ファイナンス」という手法にも触れられていますよね。今回の共同提言が、〈みずほ〉さまとDBJがそれぞれの強みや特徴をいかしながら、水素社会実現に向けて連携を深めるきっかけになることを願っています。

牛窪原田さまのおっしゃる通りですね。〈みずほ〉やDBJさまに留まらず、他のメガバンクや地方銀行も含めた複数の金融機関が協調し、それぞれが得意とする資金供給の仕方やリスクの取り方等で役割分担することが必須です。水素領域において国際競争で存在感を発揮するためには、健全な競争関係を維持しつつ、同じゴールに向かって足並みを揃える必要もあります。
また、2023年5月に発表されたDBJさまの第5次中期経営計画にある、「つなぐ、共につくる、未来を切り拓くための挑戦」というスローガンを拝見し、今回の共同提言はなるべくして実現したものだと確信しました。私たち〈みずほ〉は「ともに挑む。ともに実る。」という近しいパーパスを掲げており、根底では同じ価値観を共有していると思っています。水素社会の実現、ひいては脱炭素に向けた困難な課題にともに挑み、日本が技術力のみならずビジネスでも世界をけん引する存在をめざしましょう。

原田そうですね。水素の社会実装を通したGX実現に向け、ともに挑んでいきましょう。

※記事の内容は、取材当時のものです

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日本政策投資銀行 原田さま プロフィール画像

日本政策投資銀行
常務執行役員
GX関連部署統括、企業金融第4部・企業金融第5部補佐、設備投資研究所、南九州支店担当

原田 文代

1992年の入行後、国際畑の業務に長く携わる。2009年には、世界銀行グループ国際金融公社(IFC)東アジア・太平洋局 Senior Investment Officerに就任し、インフラストラクチャー担当を経験。DBJ Singapore Limited副社長、日本政策投資銀行 企業金融第5部担当部長、ストラクチャードファイナンス部長、執行役員(GRIT担当)等を経て、2022年より現職。

CSuO牛窪 恭彦プロフィール画像

みずほフィナンシャルグループ 執行役
リサーチ&コンサルティングユニット長
兼 グループCSuO

牛窪 恭彦

法人営業、国内外でのマクロ経済調査等の業務経験のほか、みずほ銀行産業調査部には部長時代も含めて8年在籍。役員就任後も継続して、資源エネルギー庁 電力・ガス基本政策小委員会の委員としてエネルギー政策へ関与するなど、産業界だけでなく、官公庁とも広範なネットワークを構築。2022年9月から初代グループCSuO(Chief Sustainability Officer)としてサステナビリティ戦略企画・推進の要に。