メイン画像:名古屋市(SX事例)
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地方公共団体

希少動物の「保護」と「増殖」への貢献:名古屋市による国内初の「グリーン/ネイチャーボンド」が切り拓く未来。

名古屋市

#生物多様性 #ネイチャーポジティブ #サステナブルファイナンス・フレームワーク策定支援

取り組みのポイント

  • 名古屋市は国際資本市場協会(ICMA)の「Sustainable Bonds for Nature: A Practitioner’s Guide」等に準拠したフレームワークを策定し、国内初となる「グリーン/ネイチャーボンド」を発行
  • 調達した資金は、グリーンプロジェクトに加え、ネイチャープロジェクト(希少動物の「保護」と「増殖」に貢献する東山動植物園の整備事業)に充当する
  • みずほ証券は、ネイチャーポジティブ実現に向けて取り組む名古屋市を金融面から後押しすべく、ストラクチャリング・エージェント兼事務主幹事として「グリーン/ネイチャーボンド」の発行を支援
  • 「グリーン/ネイチャーボンド」発行は今後のネイチャーファイナンスの拡大の布石に

OVERVIEW

名古屋市による国内初のグリーン/ネイチャーボンド発行を通じ、ネイチャーポジティブ実現に向けた取り組みを金融面から後押し。

2022年12月、生物多様性に関する世界共通の目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。この枠組では、2030年までに自然の損失を止め、反転させる「ネイチャーポジティブ」を掲げており、その取り組みの1つとして希少動植物の回復・保全が定められています。2025年6月末、ICMAから「Sustainable Bonds for Nature: A Practitioner’s Guide」(以下、ネイチャーボンドガイド)が発表され、ネイチャーポジティブ実現に向けたファイナンスが重要なテーマとして浸透してきています。
そのような中、2025年8月に名古屋市はネイチャーボンドガイドに準拠したフレームワーク(以下、FW)を日本で初めて策定し、9月には日本初となる「グリーン/ネイチャーボンド」を起債しました。みずほ証券はストラクチャリング・エージェント兼事務主幹事として名古屋市のFW策定から起債まで一気通貫でサポートしました。

愛知目標からネイチャーポジティブへ、名古屋市の取り組み。

名古屋市は、2010年に愛知・名古屋において開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択された「愛知目標(2020年までの生物多様性保全の国際目標)」のお膝元の政令指定都市です。COP10を契機に、名古屋市は身近な自然の保全・再生と生物多様性の持続可能な利用を市民・事業者とともに推進してきました。その後、政令指定都市として初となる「なごやネイチャーポジティブ宣言」を行うとともに、その実現を図るため、「生物多様性なごや戦略実行計画2030」を策定しました。長期ビジョンとして「多様な生物と生態系に支えられた豊かな暮らしが持続していく都市なごや」を掲げ、COP10 が開催された都市にふさわしい、自然が身近に感じられ、潤いのあるまちづくりを進めています。
また、名古屋市の東山動植物園は、「希少動物の「保護」と「増殖」への貢献」を基本方針に掲げ、生物多様性の保全を重要な使命とし、絶滅危惧種の動植物の保護と次世代への継承に注力しています。東山動植物園は日本最大規模の約450種の動物を飼育しており、1/4にあたる約130種が絶滅危惧種に指定されています。その絶滅危惧種を保護し、それらを育てて増やす取り組みを積極的に行っています。

イメージ画像1:(公財)名古屋観光コンベンションビューロー
提供:(公財)名古屋観光コンベンションビューロー

「ネイチャーボンド」も発行できるFW策定をサポート。

みずほ証券は名古屋市からのご相談を受け、ストラクチャリング・エージェントとしてのグリーンボンド発行に向けた支援をしていました。同時期にICMAからネイチャーボンドガイドが発表され、国内外に名古屋市のネイチャーポジティブに向けた取り組みを発信する絶好の機会と捉えました。
具体的には、東山動植物園による希少動物の「保護」と「増殖」に係る、東山動植物園の獣舎(飼育・展示施設)の整備資金を、ネイチャーボンドの使途とする検討を名古屋市とともに開始しました。みずほ証券は多くのサステナブルファイナンス組成で培った豊富なノウハウを活かしつつ、第三者評価機関である日本格付研究所(JCR)の見解も確認しながら、ネイチャーボンドガイドにも準拠したFW策定のサポートをしました。
FWには東山動植物園の獣舎の整備に関するネイチャープロジェクト以外にも熱中症対策としての市有施設の空調設備の整備や環境性能の高い公共施設等の建築資金等のグリーンプロジェクト、地下鉄駅のバリアフリー化の整備費用、リニア駅周辺の面的整備費用といったソーシャルプロジェクトも含まれており、ネイチャーボンド以外にもグリーンボンド、ソーシャルボンドなど様々な種類のESG債の発行が可能です。

  • ICMAの各種原則等に準拠したボンド
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国内外のメディアが注目。ネイチャーファイナンス普及の布石に。

2025年8月、名古屋市はFWを公表し、東山動植物園の獣舎の整備費用や熱中症対策としての市有施設の空調設備の整備等を資金使途とする「グリーン/ネイチャーボンド」起債のアナウンスをしました。このアナウンスにより、ネイチャーボンドガイドにも準拠した日本初のFWであることともに、COP10開催地である名古屋市がネイチャーボンドガイド発表からわずか1か月でFWを準備し、JCRから外部評価を取得したことは注目を集め、複数の国内外のメディアが報道するなど、大きな関心を集めました。同年9月に発行された日本初となる「グリーン/ネイチャーボンド」により、名古屋市のネイチャーポジティブ実現に向けた取り組みの重要性が注目されるとともにこの取り組みを支援したいという投資家も存在し、旺盛な需要を獲得し、発行額を当初想定の約50億円から103億円へと増額となりました。
「グリーン/ネイチャーボンド」という新たな「ラベル」での発行が国内外のメディア報道にも取り上げられたことにより、ネイチャーポジティブに向けたプロジェクトへの資金供給の重要性が発信され、ネイチャーファイナンスの認知向上を後押しする等サステナブルファイナンスのマーケット拡大に貢献しました。

イメージ画像4:東山動植物園
提供:東山動植物園

“ お客さまの声 ”

名古屋市はCOP10を契機に、身近な自然の保全・再生と生物多様性の持続可能な利用を市民・事業者とともに推進してきました。グリーンボンドの発行を検討している中、ネイチャーボンドガイドが公表されたことはネイチャーポジティブ宣言をしている本市にとってSDGsへの取り組みをアピールできる機会と捉え、「グリーン/ネイチャーボンド」の発行に向けた準備に舵を切りました。みずほ証券様のサポートのもとFWを策定し、国内初という点もあり、投資家層としては地元投資家を中心に、幅広い投資家の参加を獲得し、投資家のニーズに最大限応じる形で発行額を増額し、103億円の調達に成功しました。今後もESG債の発行を通じて本市のSDGsの取り組みを推進していきます。

名古屋市

  • 名古屋市財政局財政部資金課長
    松原 憲志さま
  • 名古屋市財政局財政部資金課
    課長補佐
    鈴木 雄太さま
  • 名古屋市財政局財政部資金課
    田邉 佳代さま

“ 〈みずほ〉の声 ”

自然資本は、〈みずほ〉とお客さま双方の事業活動にとって重要な基盤であり、〈みずほ〉は、経済活動の根幹を担う金融機関として、自然資本・生物多様性を保全する事業の支援や、それらに対する負の影響の軽減に取り組んでいます。2025年6月末にICMAからネイチャーボンドガイドが出された後、同年8月にネイチャープロジェクトを入れたフレームワークを策定し、9月にグリーン/ネイチャーボンドを発行するというスピード感は国内外のマーケット関係者に驚きを与えました。みずほ証券は今後も、サステナブルファイナンスの支援や引受業務の推進を通じ、ネイチャーポジティブ実現に向けたネイチャーファイナンスの更なる認知度向上ならびにマーケットけん引に貢献していきます。

みずほ証券
  • サステナビリティ推進部
    西尾 典子
  • デットキャピタルマーケット第三部
    佐藤 幸嗣

※記事の内容は、取材当時のものです

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