メイン画像:マルハニチロ株式会社(SX事例)
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農林・水産

本邦初となる「ブルーボンド」起債を追い風に、国産サーモンの陸上養殖で新たな価値創造に挑む。

マルハニチロ株式会社

#自然資本 #生物多様性 #水資源 #ブルーファイナンス

創業以来140年以上にわたり、水産資源をはじめとする自然資本の恩恵を受けてきたマルハニチロにとって、社会・環境問題が深刻化する中で、これからも食のグローバルカンパニーとしてビジネスを持続可能なものにすることが課題となっていました。みずほ証券では、同社の課題認識も踏まえて、新中期経営計画の策定支援を行うとともに、ブランドステートメント「海といのちの未来をつくる」との親和性も高い資金調達手法として、本邦初となる「ブルーボンド」の発行をご提案。同社が取り組む国内でのサーモン陸上養殖の事業化をはじめとする、持続可能な漁業・養殖事業への挑戦を後押ししました。

Project Flow

プロジェクトフロー図:マルハニチロ株式会社(SX事例)

新中期経営計画の策定支援に関するご依頼をいただく中で、マルハニチロがサステナビリティ戦略の基本となる考え方として水産資源の保全に注力していることを確認し、「ブルーボンド」の発行をご提案。国内での前例がない中で、資金使途の確定からフレームワークの策定、発行に至るまでをきめ細やかに支援しました。

CHALLENGE

本邦初の資金調達手法を通じ、持続可能な経営に取り組む意志をステークホルダーにしっかりと発信。

グローバルな水産調達力をいかし、一貫したバリューチェーンを通じて世界中の食を支えているマルハニチロ。2022年度から始まる新中期経営計画「海といのちの未来をつくるMNV 2024」を策定するにあたり、みずほ証券は策定支援のご依頼をいただきました。同社は大きなテーマとして「経営戦略とサステナビリティの統合」を打ち出していたことに加え、世界的な人口増や海水温度上昇による水産資源の減少リスクへの打ち手を模索していたため、みずほ証券は、投資家目線も踏まえ「将来の環境変化も見据えた自社のリスク認識を前提とした、今後の取組施策の明示」をアドバイスしました。
また同社として初となる社債の発行を考えていたタイミングでもあったことから、新中期経営計画の策定と並行して、同社のブランドステートメントである「海といのちの未来をつくる」とも親和性の高い「ブルーボンド」の発行をご提案。2022年8月、みずほ証券がストラクチャリング・エージェントに就任し、起債に向けて本格的に伴走することが決まりました。

イメージ画像1:マルハニチロが描く、経営戦略とサステナビリティの統合(MNVの創造)
マルハニチロが描く、経営戦略とサステナビリティの統合(MNVの創造)

SOLUTION

手探りながらもチーム一丸となって、本邦初の「ブルーボンド」起債へ。

今回、みずほ証券がご提案した「ブルーボンド」とは、海洋汚染の防止や持続可能な水産資源に関連する事業等に資金使途を限定したSDGs債(ESG債)です。マルハニチロの場合、環境に配慮した事業全般を資金使途にした「グリーンボンド」での起債も選択肢の一つとして考えられました。しかし「グリーンボンド」はその汎用性の高さゆえ、「水産資源の減少リスクに立ち向かうための資金調達」という同社の狙いがぼやけてしまうデメリットがあります。そこで、みずほ証券は新中期経営計画におけるKPI等も考慮し、投資家に向けたメッセージ性を際立たせる意味でも「ブルーボンド」の起債を推奨しました。
日本ではまだ「ブルーボンド」の発行例がなかったため、みずほ証券では、まず他国での先行事例や国際機関が発行したブルーファイナンスに関するガイドライン等を調査・確認。その後は、第三者評価機関の見解も都度確認しながら、マルハニチロの担当者とも細やかなディスカッションを重ね、投資家から「ブルーボンド」と認められる商品設計に取り組みました。
また本案件では、資金使途を「環境持続型の漁業・養殖事業」に設定。これは同社が実証実験として取り組んできたサクラマスの陸上養殖を踏まえ、日本国内におけるアトランティックサーモンの陸上養殖事業化フェーズへの移行期間にあったことも大きく影響しています。本事業では、閉鎖循環式陸上養殖方式によるサーモンの陸上養殖を計画。この手法を用いることで、水産資源の保全や食の安全確保はもちろん、魚の排泄物やエサの食べ残し等の海洋流出を避けられるため、汚染の防止にも役立ちます。さらにノルウェーやチリ等からサーモンを輸入する場合と比べ、輸送距離の短縮化に伴いCO2排出量を大幅に抑えられることから、脱炭素社会の実現にも貢献。また、「地産地消」のビジネスモデル実現を通じて、日本の食糧自給率向上にもつながります。みずほ証券としても、このような革新的でサステナブルなマルハニチロの取り組みをぜひとも支援していきたいという強い想いがありました。

イメージ画像2:陸上養殖の様子
山形県遊佐町での(サーモン)陸上養殖試験の様子

RESULT

投資家の関心が集まる初起債において、華々しい船出を飾ることに成功。

2022年10月、マルハニチロは「マルハニチロ株式会社第1回無担保社債(ブルーボンド)」を発行。反響は大きく、大手の機関投資家を含む、18社の投資家から投資表明がありました。同月には、三菱商事とともにアトランティックサーモンの陸上養殖事業を行う合弁会社「アトランド」を設立。さらに同年12月には、一連の取り組みやその先見性が評価され、環境金融研究機構(RIEF)が主催する「第8回サステナブルファイナンス大賞」において初めてとなる「ブルーボンド賞」をマルハニチロが受賞しました。
今後、アトランドは、陸上養殖事業を行ううえで欠かせない淡水・海水の両方に恵まれた富山県入善町に、陸上養殖施設を建設する予定です。この一帯は立山連峰からの豊富な伏流水に加え、富山湾の海洋深層水も活用できるため、アトランティックサーモン飼育に適した水温管理に必要な電力消費量を大幅に抑えられるという地理的メリットがあります。更なる環境負荷の低減を目指し、同施設で使用する電力については、可能な限り再生可能エネルギーの活用も検討。2025年度の施設稼働開始、2027年度の初出荷を目標に、マルハニチロの新たな価値創造はこれからも続いていきます。

イメージ画像3:陸上養殖施設を建設予定の富山県入善町
陸上養殖施設を建設予定の富山県入善町(画像出所:富山県入善町HP)

“ お客さまの声 ”

当社は中期経営計画において「経営戦略とサステナビリティの統合」を掲げ、ブランドステートメントとして「海といのちの未来をつくる」を定めています。そのため、資金使途を海洋保護等に限定した「ブルーボンド」は、当社との親和性が非常に高いものと認識していました。2022年9月、事業化を進めているアトランティックサーモンの陸上養殖事業を資金使途として本邦初の「ブルーボンド」発行を決断しましたが、「国際的なガイドラインが策定されておらず整理が難しい」という意見もあり、十分な発行額が集まるかという懸念がありました。実際に起債運営に入ると、融資金融機関や社債投資家等に対するIR活動をはじめとする、みずほ証券さまの手厚いサポートもあり、結果的に多くの投資家から「海洋環境の保全に貢献できる貴重な機会」だと高いご関心やご賛同をいただきました。良好な起債環境とは言えない時期でしたが、条件面においても満足のいく資金調達となりました。また起債後、みずほ証券さまから業種を問わず「ブルーボンド」に関する相談や発行の進め方等に関する問い合わせが多数寄せられていると伺い、発行体サイドとしても世の中の関心が非常に高まっていると実感しています。今後、当社に続く第2、第3の発行も起こり得るのではないかと考えています。

マルハニチロ株式会社

  • 財務部 財務課長
    猿田 暢夫さま

“ 〈みずほ〉の声 ”

〈みずほ〉担当者画像:マルハニチロ株式会社(SX事例)

「ブルーボンド」は国内の前例がなく、本案件が後続企業のお手本にもなりますので、「きちんと完遂しなければならない」という強い使命感が私の中にありました。そのため、猿田さまをはじめとするご担当者の方々とのディスカッション、第三者評価機関からの意見の反映、関連ガイドラインの読み込み等を重ね、信頼性のある商品設計を心掛けました。結果として、マルハニチロさまの「ブルーボンド賞」受賞にもつながり、サステナブルファイナンスのより一層の拡大に貢献できたと思っています。またマルハニチロさまに限らず、お客さまは事業環境に応じた様々な経営課題を抱えており、それはサステナビリティの分野でも同様かと思います。これからも、どういった観点からお客さまのSX推進をサポートできるか考え、それに即したファイナンスをご提案できるよう尽力してまいります。

みずほ証券
  • グローバル投資銀行部門
    サステナビリティ推進部
    五十田 昇吾

※記事の内容は、取材当時のものです

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