
来たるべきバイオエコノミー時代に、日本が先進国であり続けるために。トランジション領域における初出資を実施。
株式会社シンプロジェン
バイオテクノロジーを基盤に、持続的かつ再生可能性のある循環型の経済社会を拡大させていく「バイオエコノミー」。シンプロジェンはこの領域をけん引する存在として、大きな注目を集めています。みずほ銀行では2022年4月より、トランジション領域(環境・社会の持続性向上に貢献する領域)における出資枠を設定し、先進性のある技術開発やビジネスモデル構築に関する取り組みへの後押しをスタート。同社が独自のDNA合成技術活用による製品開発および製造基盤構築に向けた資金調達を検討するなかで、みずほ銀行では同出資枠の初号案件として金融面でのサポートを実施。さらに同社とともに、みずほ銀行が有する産業・技術の知見もいかしながら、日本が世界のバイオ産業において競争力を発揮できることを目指し、金融を超えた領域での価値共創にも積極的に取り組んでいます。
Project Flow

みずほ銀行 産業調査部では、以前よりシンプロジェン代表取締役 社長 兼 CEO(神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科教授 兼務)山本 一彦氏とバイオ関連書籍の共同出版のため、バイオ産業の最新動向に関する情報共有や意見交換を継続的に実施。みずほ銀行としてバイオ産業が持続可能な社会の実現を支える重要分野であるという認識のもと、共同スポンサーと連携のうえ、新設された「トランジション出資枠」を活用した今回のご支援に至りました。
CHALLENGE
日本の急務は「バイオファウンドリ」の構築。ともに「バイオものづくり」の最前線へ。
DNA合成やゲノム編集に代表される、生物の遺伝子を人工的に改変するバイオテクノロジー。そして、その先に目指すべき経済社会像はバイオエコノミーと呼ばれ、2030~2040年における世界市場は年間2~4兆ドルに達するとの予想もあります(※1)。そのバイオエコノミーの中核をなすのが、「バイオものづくり」です。これは、有用物質を生産するように設計された細胞(スマートセル)を活用することで、健康・医療、農業・水産・食品、消費財・サービス、化学品・エネルギー等を含む、広範な産業におけるものづくりに、革新的な可能性をもたらします。例えばバイオエタノール等の持続可能・環境適合型エネルギー供給の実現や、健康・医療では従来不可能とされていた難病の根本治療が期待されています。
シンプロジェンは、神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科発の合成生物学ベンチャー企業として立ちあがり、多くの研究機関や企業に対して合成DNAを提供する等、「バイオものづくり」の分野において注目を集めています。みずほ銀行がバイオ産業に関する業界知見を持っていたことから、神戸大学大学院の山本教授との間で、数年前より米国ベンチャー企業の動向等について、何度も情報・意見交換を重ねていました。両者での議論の結果、来たるべきバイオエコノミー時代に日本が本分野で先進国であり続けるためには、グローバルで競争優位性のある「バイオファウンドリ(※2)」を国内で早期に立ちあげる必要があるとの共通認識を形成。米国の先行事例を徹底的に調査・分析するとともに、国内での「バイオファウンドリ」を確立することの重要性を広く発信するため、書籍『バイオものづくりへの挑戦』を山本教授(山本研究室)ならびに〈みずほ〉で共同出版。ここから、本案件の足がかりとなる強固な関係性が生まれ、ともに「バイオものづくり」の発展に貢献していく意志が共有されました。
- ※1 2020年にMcKinsey Global Instituteが発表した「The Bio Revolution」より
- ※2 デジタルテクノロジーとバイオテクノロジーを組み合わせてスマートセルの開発を請け負う企業

SOLUTION
「技術についてはわからない」で終わらせない。徹底的にバイオ産業に向き合い、日本社会の活性化を目指す。
2022年4月、みずほ銀行は新たにトランジション出資枠(トランジション領域におけるお客さまの新たな挑戦に伴走支援するための出資枠)を設定。
世の中には、将来性が見込まれるものの、現時点では事業化に至っていない技術が多数存在します。みずほ銀行として、その技術を活用した先進的な取り組みを支援することで、社会に大きなインパクトを与えられると判断できた場合に、本出資枠を活用。お客さまの事業化に向けて、金融面でのサポートをはじめとする後押しを行っています。
本出資枠の設定を契機に、シンプロジェンとのより踏み込んだディスカッションが進み、みずほ銀行でも「バイオものづくり」の重要性を深く理解していたため、出資を検討することにしました。
まずは、同社における現在の取り組みやビジョンを深く理解することに注力。出資前にDNA合成技術について、対面でヒアリングを重ねました。また出資枠初号案件であったことから、対外交渉前には出資の意思決定について関係各所と念入りな調整を行いました。
また、みずほ銀行では出資にとどまらず、産業知見をいかし非金融領域でもサポート。2022年12月、同社と〈みずほ〉が共著を行ったバイオ関連書籍のセミナーを開催。経済産業省や国内バイオスタートアップ企業の関係者が登壇し、DNA合成技術による「バイオものづくり」の可能性や将来性について、広く意見交換する場を設けました。さらに現在、同社および〈みずほ〉、共同スポンサーである双日との間で、本案件で得た知見を幅広い産業へ活用できないかディスカッションを重ねています。〈みずほ〉の顧客基盤をいかしながら、同社を起点としたバリューチェーンを構築することで、本産業活性化につながる次なる一手を模索しています。

RESULT
トランジション領域における初号案件として、意義ある出資を実行。価値共創で、未来を、世界を変えていく。
2022年12月、みずほ銀行はシンプロジェンとの株式引受契約書を締結し、出資を実行。他の機関投資家や出資企業と合わせて、約5億4,000万円の第三者割当増資を実現しました。同社では、今回調達した資金を、最先端研究機器への設備投資や研究開発スタッフの増員等に活用。カーボンニュートラル実現に資する領域への技術開発をはじめとする、様々なビジョンを描きながら、まずは遺伝子治療用製品の開発および製造基盤の構築に貢献していきます。
また「バイオものづくり」は、日本政府が掲げる「新しい資本主義」実行計画における重点投資項目の一つでもあります。みずほ銀行では、日本がこの分野において世界で競争力を発揮できる存在となることを目指し、同社独自のDNA合成技術を用いた「バイオものづくり」を発展させ、同社がバイオエコノミーにおける世界屈指の企業に成長することをサポートしていきます。
さらに本案件を皮切りに、みずほ銀行ではトランジション出資枠より他2案件への出資も実行。今後も新しい可能性に光を当て、トランジション領域における積極的な支援に取り組んでいきます。

“ お客さまの声 ”
みずほ銀行さまが、トランジション領域における出資枠の初号案件として弊社を選んでくださったことは、信用力の向上に大きく寄与しました。おかげさまで、2023年2月には双日さまから追加投資をいただく等、資金調達面で恩恵を受けました。また今回のお墨付きをいただいたことで、バイオ産業界において「シンプロジェンは社会的に意義のある取り組みをしている」といった認識が広まり、今後の事業開発においても良い影響がもたらされることを期待しています。引き続き、世の中の要請に応じて、様々な分野へDNA合成技術の提供をしていく所存です。
株式会社シンプロジェン
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代表取締役 社長 兼 CEO
山本 一彦さま
“ 〈みずほ〉の声 ”

本案件への出資を契機に、シンプロジェンさまの技術力や先進性、DNA合成のビジネス領域としての将来性、日本産業活性化の可能性等について深く認識しました。遺伝子治療の活用や「バイオものづくり」による社会への貢献、日本が世界と戦える新たなビジネスの育成という視点等、中長期的かつ大きな視野を持ちながら案件をご支援できたことに感謝します。昨今、スタートアップから大企業まで、様々な組織がテクノロジーに関わるビジネスや研究を行っており、大量の技術が存在する時代となりました。みずほ銀行は、金融機関としての立場から一つひとつの技術やビジネスについての理解を深め、今後もトランジション領域における出資やサポートを継続していきたいと考えています。
- みずほ銀行
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商社・不動産・ファイナンシャルスポンサー第一部
永井 祐貴
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商社・不動産・ファイナンシャルスポンサー第一部
- みずほフィナンシャルグループ
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サステナブルビジネス部
市川 美穂子 -
サステナブルビジネス部
尾方 洋平
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サステナブルビジネス部
※記事の内容は、取材当時のものです