
九州から日本の脱炭素化をリードする企業へ。熱い想いに「トランジション・リンク・ローン」の組成で伴走。
九州電力株式会社
「ずっと先まで、明るくしたい。」をグループ理念に掲げ、九州の成長に貢献し、地元にお住まいの方や企業とともに発展してきた九州電力。同社の「九州から日本の脱炭素化をリードする」という想いの実現に向け、みずほ銀行と同社は新たな資金調達手法に挑戦。みずほ銀行はアレンジャーとして多くの困難を乗り越え、本邦初となる、産業競争力強化法に基づく成果連動型利子補給制度(以下、利子補給制度)を活用した「トランジション・リンク・ローン」の組成をけん引しました。
Project Flow

〈みずほ〉が九州電力の「サステナブルファイナンス・フレームワーク」策定を支援していたことから、本案件の組成についてもサポートさせていただくことに。利子補給制度の活用に向けて、本制度関係者からのヒアリングやディスカッション、調整などに粘り強く取り組むことで、資金調達に成功しました。
CHALLENGE
脱炭素型ビジネスモデルへの転換を図るべく、国の利子補給制度を活用した新たなファイナンスを模索。
九州電力では、2021年度に「九電グループカーボンニュートラルビジョン2050」や「九電グループ カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」を策定。これらに基づき、サプライチェーン全体での温室効果ガス(以下、GHG)排出量を削減するとともに、持続的な成長を図ることになりました。そして本案件の前段として、2022年4月、同社のビジョン実現に向けた資金調達を可能にする「サステナブルファイナンス・フレームワーク」策定を〈みずほ〉としてサポートすることに。みずほ証券が、ストラクチャリング・エージェントを担うとともに、旧一般電気事業者初の「トランジション・ボンド」発行の主幹事証券に就任しました。
同フレームワーク策定・資金調達の流れを受け、同社とみずほ銀行では、カーボンニュートラル実現に向けたトランジション推進のための金融支援である利子補給制度を活用した、本邦初の「トランジション・リンク・ローン」組成に向けた検討を開始。みずほ銀行がアレンジャーならびにストラクチャリング・エージェントに就任しました。

SOLUTION
最難関ポイントは、10年以上にわたるロングスパンでの目標設定。関係者との検討を重ね、ついに突破。
九州電力が資金調達のために利用した「トランジション・リンク・ローン」とは、脱炭素社会の実現に向け、脱炭素化・低炭素化を推進する企業の移行(トランジション)の取り組みを金融機関として支援することを目的としたファイナンスです。借入人は、トランジション戦略と整合したサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(以下、SPTs)を設定し、金融機関がSPTs達成に応じたインセンティブを付与する仕組みとなっています(※)。
みずほ銀行は、本案件のアレンジャーとして、複数の金融機関による協調融資団(シンジケート団)を組成し、同社がそれぞれの金融機関から同一条件、同一契約書にて融資を受けることができるよう、条件交渉や丁寧なサポートを行いました。また、同社が事業適応計画で設定した環境目標「サプライチェーンGHG排出量(国内事業)を2030年度65%削減(2013年度比)」等に基づく、サプライチェーンGHG排出量(国内事業)の期中目標をSPTsとして設定。利子補給制度を活用することで、SPTsを達成した場合、日本政策金融公庫を通じて国から最大0.2%の利子補給を受けることができます。
利子補給を受けるためには、10年以上の目標設定や事業・資金調達計画の策定等の要件を満たす必要があり、実際に認定まで至った事例はまだ存在しない状況でした。前例がなく、すべてが手探りであったため、各関係者との調整やきめ細かな伴走が求められたことは言うまでもありません。特に同社のような電力会社のGHG排出量は、トレンドとしては右肩下がりではあるものの、発電所の稼働状況によって年度ごとのばらつきが出てしまう点も大きなハードルでした。
もうひとつの役割であるストラクチャリング・エージェントとして、みずほ銀行は、関係省庁とのネットワークや産業知見をいかし、国内外の電力構成変化や需給見通しといった情報を提供。また第三者評価機関からの評価取得、経済産業省および資源エネルギー庁との意見交換や事業適応計画の認定取得等のサポートも行いました。
※「トランジション・リンク・ローン」のインセンティブには、金利変動と利子補給の2種類があります

RESULT
九州電力や他の金融機関と力を合わせ、「トランジション・リンク・ローン」500億円を結実。
数え切れないほど多くの困難を乗り越え、2022年10月、利子補給制度活用のため申請した事業適応計画が経済産業大臣の認定を受けました。そして同年11月、九州電力は10年間にわたる「トランジション・リンク・ローン」500億円を借り入れ。同社ではSPTsを達成し、利子補給を受けるために、今後は再生可能エネルギーの主力電源化や原子力の最大限の活用、火力発電所の低炭素化、送配電ネットワークの高度化、社会の電化の推進に取り組んでいきます。
九州電力の野心的な挑戦は、いよいよ次のステージへ。私たち〈みずほ〉は、これからもお客さまと二人三脚で、サステナブルな社会の実現を目指していきます。

“ お客さまの声 ”
〈みずほ〉さまには、日頃から当社のカーボンニュートラル実現に向けた想い等、事業全般について深くご理解いただいております。「サステナブルファイナンス・フレームワーク」や利子補給制度の事業適応計画の策定においては、迅速かつ的確なアドバイスをいただけたこともあり、制度初の認定を受けることができました。〈みずほ〉さまをはじめ、経済産業省、ご融資いただいた金融機関等、すべての関係者の皆さまに感謝申し上げます。
利子補給制度の活用により、国からの利子補給による資金調達コスト削減が図られるだけでなく、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを当社の幅広いステークホルダーの皆さまにこれまで以上に知っていただくIR効果も得られたと考えています。今後もグリーンファイナンス、トランジション・ファイナンスに継続して取組む予定です。
当社グループは、カーボンニュートラルをはじめとした経営環境の変化を変革のチャンスと捉え、更なる企業成長につなげ、九州から日本の脱炭素をリードする企業グループを目指してまいります。
九州電力株式会社
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ビジネスソリューション統括本部
業務本部 財務計画グループ
課長
池田 憲昭さま
“ 〈みずほ〉の声 ”

本案件は本邦初の試みであったため、関係省庁へのアプローチひとつ取っても、どこから着手すればいいのか非常に悩みました。また協調融資団(シンジケート団)として参加する他の金融機関にとっても初めてのファイナンス手法であったため、利子補給制度の説明から始めました。こうして無事にローンの組成ができたのは、九州電力さまのご担当者をはじめ、関係者の方々のお力添えがあったからだと思います。「トランジション・リンク・ローン」は、同社のように、カーボンニュートラルに向けた移行に取り組むための資金調達の手法として利用可能です。利子補給制度を利用することでSPTs達成時に最大0.2%の利子補給を受けられるだけでなく、自社の取り組みを対外的にアピールすることでIR効果も期待できます。本案件をきっかけに、既に利子補給制度の活用に関するお問い合わせをたくさんいただいています。制度上は難しく思われる場合でも、〈みずほ〉が持つ幅広い知見をいかしてしっかりとサポートしたいと思います。
- みずほ銀行
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福岡法人第二部
部長代理
久万 康仁
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福岡法人第二部
※記事の内容は、取材当時のものです