
県庁のアクションから地域の環境意識を変える。SDGs債の発行を通した、新しいリーダーシップのかたち。
滋賀県
滋賀県では、温室効果ガス排出量の削減に向けた取り組みを通じ、地域や産業の持続的な発展をも実現する「CO2ネットゼロ社会づくり」を推進。これに紐づく県庁の率先行動計画で標榜する環境目標にコミットする同県の姿勢を示すため、地方公共団体初となる「サステナビリティ・リンク・ボンド」というエポックメイキングな起債を行うことになりました。みずほ証券は、ストラクチャリング・エージェントとして、多くの投資家から受け入れられる商品設計等、起債を支援。本債券の発行を通じて、投資家のみならず県内外の企業からも多くの反響が寄せられる結果となりました。
Project Flow

みずほ証券は、滋賀県よりSDGs債(ESG債)の発行に関するご相談をいただき、地方公共団体として前例がなかった「サステナビリティ・リンク・ボンド」の発行に向けて伴走することに。滋賀県としての環境問題への向き合い方やお考えを伺いながら、地域へのインパクトや投資家の関心も考慮した商品設計を行いました。
CHALLENGE
“環境先進県”の威信をかけ、県民や事業者も巻き込みながらCO2ネットゼロの実現へ。
1980年施行の水質保全を目的とした「琵琶湖条例」を契機に、“環境先進県”として知られる滋賀県。2019年7月には、内閣府からSDGs達成に向けて優れた取り組みを提案する「SDGs未来都市」に選定されました。2020年1月には、2050年までの温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す「しがCO2ネットゼロムーブメント」キックオフを宣言。同年3月、地域や産業の持続的な発展をも実現するCO2ネットゼロ社会を目指す「滋賀県CO2ネットゼロ社会づくり推進計画」を策定するとともに、県庁が事業者・消費者の立場で、率先した取り組みを進めていくための「CO2ネットゼロに向けた県庁率先行動計画」も策定しました。同県では、こうしたCO2ネットゼロ社会づくりに向けた施策を推進するための資金調達の一環として、2021年ごろから地方公共団体でも増加しつつある、環境・社会課題解決を目的としたSDGs債(ESG債)の起債を検討。数多くのサステナブルファイナンス組成実績に裏付けられた豊富なノウハウにご期待いただき、みずほ証券が本案件のフレームワーク策定や第三者評価取得に関する助言等、発行に向けた支援をすることになりました。

SOLUTION
投資家の関心を引く商品設計を。「サステナビリティ・リンク・ボンド」50億円起債への軌跡。
滋賀県が資金調達の手段として選んだ「サステナビリティ・リンク・ボンド」とは、発行体が事前に設定した目標であるサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(以下、SPTs)の達成状況に応じて利率が変更となる等、財務的・構造的な諸条件が変化し得る債券です。その商品性が意欲的に環境問題に取り組む滋賀県の姿勢と合致し、発行の決め手となりました。また、地方公共団体として発行事例がある「グリーンボンド」や「ソーシャルボンド」といった他のSDGs債(ESG債)と比較した際に、「サステナビリティ・リンク・ボンド」は資金使途が限定されないことも大きな特長です。
さらに本案件は、地方公共団体における本邦初の「サステナビリティ・リンク・ボンド」であり、世界を見渡してもほぼ同時期に起債されたスウェーデンのヘルシンボリ市による事例しか存在しないという、前代未聞の取り組みでした。そのため、みずほ証券ではこの債券が多くの人々に受け入れられるよう、商品設計に際して同県内外の幅広い投資家との事前対話を実施。そこから得られたヒントを盛り込み、同県の担当者とのディスカッション等を繰り返しながら、起債の準備を進めました。
今回はSPTsとして「滋賀県庁にて、2030年度に2014年度比で温室効果ガス排出量50%削減」を設定。県庁が率先して取り組む姿を広くアピールすることで、県民や事業者を巻き込んだ機運醸成につなげたいという想いがあります。またSPTsを達成できなかった場合は、滋賀県が設ける温室効果ガス排出量削減に資する事業の財源となる基金に対して、債券発行額の0.1%を追加拠出する仕組みに。みずほ証券はストラクチャリング・エージェントとして、地方公共団体ならではの事情等をご理解・ご評価いただける第三者評価機関の選定サポートにも尽力しました。

RESULT
発行額に対して9倍以上の需要。滋賀県の環境への取り組みに多くの賛同・共感が集まる結果に。
2022年5月、滋賀県は満を持して「滋賀県第1回サステナビリティ・リンク・ボンド公募公債」を発行。発行額50億円に対して、約480億円の需要が集まりました。参加投資家数は65件、投資表明件数は57件(うち30件が県内)に達し、ローカルのテレビ局や新聞社に加え、NHKや日本経済新聞等の全国規模のメディアでも取り上げられ話題に。また地元企業はもちろんのこと、滋賀県に工場等の拠点を持つ県外企業からも「この取り組みをぜひとも応援したいので、脱炭素に向けて一緒にできることがあれば協力したい」といった支援の声が多く寄せられました。本案件を機に、地方公共団体においても「サステナビリティ・リンク・ボンド」の活用が広がり、日本全体の脱炭素社会への移行戦略に好影響をもたらすことが期待されます。

“ お客さまの声 ”
みずほ証券さまは、ESG債の発行が初めてであった本県に対して、事前勉強会の開催やわかりやすい提案資料の作成等、手厚い準備をしてくれました。おかげで安心して「サステナビリティ・リンク・ボンド」の発行にのぞむことができました。主幹事として選定後、西尾さまをはじめとする担当者の方々が、本県の環境課題解決に向けて一緒に考え、非常に円滑な意見交換をしてくださったこと、感謝しております。また起債後には、メディアでの報道を見た方から本当にたくさんのお問い合わせをいただきました。機関投資家だけでなく、個人投資家でも滋賀県の取り組みに興味を持ち、賛同の声を寄せてくださる方がいることに驚きました。県として取り組むべき課題はまだまだありますので、今後ともみずほ証券さまの力をお借りできればと思います。
滋賀県
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総務部財政課財政企画係
福永 敬子さま
“ 〈みずほ〉の声 ”

地方公共団体によるSDGs債(ESG債)の発行は、“行政からのメッセージ”とも言えます。地元企業や住民をはじめとする様々なステークホルダーに向けて、カーボンニュートラルへの取り組みを訴求することで、地域全体のSDGsにかかる機運醸成につなげることができる点が最大の強みだからです。本案件では、起債を通して滋賀県の取り組みに対する賛同する声が各方面から多数寄せられました。私たち〈みずほ〉は、企業のみならず、地方公共団体に対してもSXに向けた幅広いソリューションをご提供できます。
- みずほ証券
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サステナビリティ推進部
西尾 典子
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サステナビリティ推進部
※記事の内容は、取材当時のものです