
衛星データと現地調査を掛け合わせたサービスで、企業のネイチャーポジティブなビジネス実現をサポート。
国際航業株式会社
2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(以下、COP15)を経て、生物多様性への取り組みに関する国際的な議論が本格化しています。同時に、企業に対しても自然資本や生物多様性への対応や情報開示への要請が高まる中、〈みずほ〉はお客さまのネイチャーポジティブへの取り組みを支援する「みずほネイチャーポジティブ・デザイン™」の取り扱いを2023年3月にスタート。地理空間情報技術に強みを持つ国際航業との協業から生まれた本サービスは、衛星データや現地調査を踏まえ、持続可能な原材料調達やトレーサビリティ確保の強化等を多角的にサポートするものです。
Project Flow

みずほリサーチ&テクノロジーズは、衛星データを活用した国際航業の協業アイデアに対し、同社の技術やノウハウをいかせないか調査・検討を開始。同社とのディスカッションの末に、「みずほネイチャーポジティブ・デザイン」が誕生しました。同時期に、持続可能な社会の実現をめざす企業が、持続可能な原材料調達を検討していることを把握し、本サービスをご提案。クライアントニーズと合致したことから、支援をスタートしました。
CHALLENGE
企業の自然資本・生物多様性対応サポートに向けて、地理・空間情報のパイオニアである国際航業と協業開始。
社会経済活動は、動植物や大気、水、土壌等の「自然資本」のうえに成立しており、さらに「生物多様性」がその下支えをしています。人類は自然の恩恵を享受する一方で、企業等の事業活動によって負の影響を与えている側面もあります。サステナビリティ経営を推進するうえで、生物多様性の減少を食い止め、回復に向かわせる「ネイチャーポジティブ」への転換は避けて通れないトピックです。
国際的な議論としては、2022年12月にカナダのモントリオールにてCOP15が開催され、ネイチャーポジティブの概念を含めた2030年までの国際目標を定める「昆明・モントリオール生物多様性枠組(※1)」が採択されました。その中で、企業の事業活動が自然環境に及ぼす影響等に関する情報開示がターゲットとなったこと等から、企業の取り組みの加速が想定されています。
民間主導では自然関連財務情報開示タスクフォース(以下、TNFD ※2)が、資金の流れをネイチャーポジティブに転換させることをめざしています。TNFDは、4回にわたるβ版フレームワークの提示を経て、2023年9月に最終版を公開。自然関連のリスク・機会を評価する「LEAPアプローチ(※3)」を提唱し、大きな注目を集めています。
みずほリサーチ&テクノロジーズは、日本企業における環境保全活動の黎明期と呼べる2000年頃から、生物多様性対応に取り組もうとする企業をサポートしています。開発途上国や新興国における生物多様性調査、土壌や水等の状況に関するリサーチを通して、自然生態系の把握ノウハウやフィールドワーク経験を蓄積してきました。みずリサーチ&テクノロジーズは2022年3月に公開されたTNFDフレームワークに沿った企業の評価・情報開示を行うだけではネイチャーポジティブの実現に向けた解決策として不十分であり、これまでに蓄積したノウハウ・経験をいかし、企業の実際のアクションにつなげていくことが本質的には重要だと考えていました。
同時期にみずほ銀行を介して、国際航業からみずほリサーチ&テクノロジーズに衛星データを活用した協業の打診がありました。同社は、地球環境問題・社会課題の解決に関する技術コンサルティングに強みを持ち、みずほリサーチ&テクノロジーズも以前から注目をしていました。お互いの強みから生まれるシナジーに期待し、同社とともにお客さまの自然資本・生物多様性対応を支援するサービス開発に着手することになりました。
- ※1 2050年「自然と共生する世界」の実現を掲げ、2030年ミッションとして、陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする"30 by 30"等の数値目標を設定
- ※2 "Taskforce on Nature-related Financial Disclosures"の略で、組織が自身の経済活動における自然環境や生物多様性に関するリスクと機会を評価し報告することを促す、2021年6月に設立されたイニシアティブ
- ※3 Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(報告)の頭文字をとったもので、TNFDが提唱するフレームワークの主要構成要素の一つ


SOLUTION
各領域のプロフェッショナルが持つ知見を結集。ネイチャーポジティブに導く、高度なサポート体制を構築。
2022年12月、国際航業から「地理空間情報」のエンジニアやプロジェクトマネージャーが、みずほリサーチ&テクノロジーズから「生物」「開発経済」「ファイナンス」3分野のコンサルタントが集まり、検討チームを結成。お客さまの真のニーズに応えるためのサービス設計に向けて、熱いパッションを抱えるメンバーが一丸となって取り組むことで、2023年3月にリリースを迎えました。
「みずほネイチャーポジティブ・デザイン」は、企業の事業活動における生物多様性の保全とビジネスの両立をめざし、企業価値向上やSDGs達成をサポートするサービスです。自然資本・生物多様性に関する重要なリスクと機会を把握するために、国際航業による「衛星リモートセンシング技術(※)」と「地理空間情報解析技術」を活用することで、原材料を調達する地域の自然環境に及ぼす影響を調査。優先的に対策をすべき地域をスピーディーかつ直感的に「特定(L:発見)」、「影響と課題の抽出(E:診断)」を行い、「リスクと機会の評価(A:評価)」を実施し、お客さまのネイチャーポジティブへの取り組みをより高いレベルへと導きます。
さらに、衛星データによる調査結果だけでなく、そこに各分野の専門家視点から行った現地調査の結果を掛け合わせることが最大の特長です。これにより、森林減少モニタリングや水資源評価をはじめとする定量的なフィードバックが可能となり、原材料生産の手法開発といったカスタムメイド型のコンサルティングにつなげる等、お客さまの一連の事業活動をサポートすることができます。
- ※衛星に搭載されたセンサで取得された情報を解析することを「衛星リモートセンシング」といい、この技術を使うことで、遠隔地にある森林の状態等を把握可能

RESULT
ビジネスリスクの評価はもちろん、環境保全型農業技術の設計や人権への配慮まで、ワンストップで伴走。
2022年8月、みずほリサーチ&テクノロジーズは、クライアント企業が農産物生産事業の立上げをめざしているという情報を入手。同年11月から農業やサステナビリティ分野の事業コンサルティングを行う中で、新たなビジネス価値創造に貢献すべく、同社が取り組む油糧作物の栽培に「みずほネイチャーポジティブ・デザイン」の活用をご提案しました。
みずほリサーチ&テクノロジーズは、東南アジアにある同社の提携植林地に「生物」「開発経済」のコンサルタントを派遣し、目視できる地上環境は言うまでもなく、植林地の土壌品質調査、水はけや生物の生育層の調査等も併せて実施。その地域に適した土壌構成を研究し、土作りから生産体制構築のアドバイスまで徹底的に改善を行っています。
また事業の持続可能性を検討するうえでは、自然資本だけでなく人権への配慮も重要です。労働者の健康・安全、強制労働または児童労働の排除等の観点からもリスクチェックを実施。現地スタッフからは、部外者であることから身構えられてしまうこともありましたが、現地の声にしっかりと耳を傾け、論理的な説明を交えながら一つひとつアクションを重ねてきたことで、今では彼らとも良好な関係を築けています。
自然資本・生物多様性対応に取り組むうえで大切なことは、環境にもビジネスにも、そしてそこで生活を営む人々にとってもサステナブルな未来を描くことです。同社へのサポートはまだ始まったばかりですが、理想的な原材料調達に向けて、本サービスを第一弾として今後も様々なサポートに取り組んでいきます。また本サービスは、食品・飲料、化粧品、化学メーカー等の自然資本と密接に関わる事業を行う幅広いお客さまに対して、有効なものです。本案件を皮切りに、より多くの企業に本サービスを提供することで、ビジネス機会を創出しながら、ネイチャーポジティブの実現に貢献していきます。

“ パートナー企業の声 ”
TNFD公表を機に、社会的にもネイチャーポジティブへの関心が高まっていると感じています。今回の取組では、当社が強みを持つ「衛星リモートセンシング技術」や「地理空間情報解析技術」と、〈みずほ〉さまのネットワークやコンサルティング支援サービスを組み合わせることで、お客さまにとって付加価値の高いサービスを作ることができたと思います。ネイチャーポジティブは業種に限定されないものです。我々のサービスをご提供できるお客さまのすそ野は広く、連携できる市場はまだまだ拡大していくと考えています。「みずほネイチャーポジティブ・デザイン」は我々が協働で提供するサービスの第一弾であり、これを機に〈みずほ〉さまとの更なる連携に取り組んでいきたいと考えています。
国際航業株式会社
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LBSセンシング事業部 法人営業部
営業管理グループ グループ長
兼 アライアンス担当課長
尾國 資朗さま
“ 〈みずほ〉の声 ”

本案件をひと言で表すと「SX × DXソリューション開発」です。〈みずほ〉の営業ネットワークやコンサルタントが持つ専門性を活用する点は、一般的なSX支援と変わりません。しかし、国際航業さまが得意とする衛星リモートセンシング技術を掛け合わせることで、デジタルの力も駆使したより高度な支援が可能になりました。複数領域を横断した知見が求められる非常にチャレンジングな取り組みでしたが、国際航業さまとの密なコミュニケーションにより、約3ヵ月という短期間で独自性の高いサービスリリースにたどり着くことができました。また、みずほリサーチ&テクノロジーズには、自然資本や生物多様性に関連する分野以外にも、広範囲にわたるプロフェッショナルが在籍しています。今後もお客さまの課題に合わせた柔軟なチーム編成により、多角的な視点からSX推進をサポートしていきます。
- みずほリサーチ&テクノロジーズ
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サステナビリティコンサルティング第2部
グローバルイノベーションチーム
大谷 智一 -
サステナビリティコンサルティング第2部
グローバルイノベーションチーム
大橋 柚香 -
サステナビリティコンサルティング第2部
グローバルイノベーションチーム
中村 彩乃 -
サステナビリティコンサルティング第2部
グローバルイノベーションチーム
森 萌恵
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サステナビリティコンサルティング第2部
※記事の内容は、取材当時のものです