メイン画像:横浜市、株式会社ダイトーコーポレーション(SX事例)
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地方公共団体

横浜港での脱炭素化を金融面から支援する前例なきサステナブルファイナンスフレームワーク構築への挑戦。

横浜市、株式会社ダイトーコーポレーション

#カーボンニュートラル #横浜港CNPサステナブルファイナンス・フレームワーク #港湾インフラ #グリーンファイナンス

取り組みのポイント

  • 日本の脱炭素化に向けては、国際物流や産業の拠点である港湾において、温室効果ガスの排出ゼロを目指すカーボンニュートラルポート(CNP)の推進が重要。CNP実現には、民間事業者の設備投資が不可欠であり、金融面から事業者の取り組みを促進する仕組みが求められていた。
  • その中で、みずほ銀行は、同じ課題認識を持つ横浜市とともに、国際戦略港湾である横浜港の脱炭素化に向けたCNP形成を支援する金融フレームワークの共同検討を開始。
  • 2025年3月に、「横浜港CNPサステナブルファイナンス・フレームワーク」(FW)を構築。横浜市が港湾全体を対象にしたFWを保有することで、中堅中小企業を含む幅広い事業者が事務的・経済的負担を軽減しながらサステナブルファイナンスにアクセスできる仕組みを実現。
  • 第一号案件として、ダイトーコーポレーションとの間でEVタグボートを対象にしたグリーンローン契約を締結。

OVERVIEW

カーボンニュートラルポートの実現に向けて、横浜港とともに新たなサステナブルファイナンスの仕組みを構築。臨海部の脱炭素化に取り組む事業者の支援をめざす。

日本における温室効果ガス(GHG)の約6割は産業が集積する臨海部から排出されており、CNP形成は喫緊の課題です。全国各地で自治体等の港湾管理者が協議会を立ち上げており、港湾脱炭素化推進計画(以下、法定計画)の策定や取り組みを進めています。ただし、CNP実現には、民間事業者を中心とした多様な主体による設備投資が不可欠な一方、民間事業者にとっては先陣を切って取り組みを行っても直ちに自社が恩恵を受けられるわけではなく、設備投資に踏み切るハードルを感じるケースが多くあります。そのような中、複数の港湾管理者が課題意識を抱えている法定計画の実効性向上のため、金融面から各関係者の取り組みを促進できるような仕組み作りができないかという課題認識をもとに、みずほ銀行はサステナブルファイナンス・フレームワーク構想の検討を開始しました。

イメージ画像1:産業の構造転換及び競争力強化への貢献と荷主や船主から選ばれる競争力のある港湾の形成
(出所:国土交通省HP)

その検討の過程で、みずほ銀行は、当時法定計画の策定に向けて検討を進めていた横浜市(=港湾管理者)との間で課題認識を同じくし、「横浜港港湾脱炭素化推進計画」(以下、推進計画)を活用したサステナブルファイナンスのフレームワーク(以下、FW)構築を支援しました。これは推進計画に含まれる脱炭素投資を、サステナブルファイナンスにより資金調達しやすくする仕組みです。
通常は事業者(借入人)毎にサステナブルファイナンスのFWを策定し、第三者評価機関からセカンドオピニオンを取得しますが、企業レベルでの脱炭素化方針や目標の設定・開示、FWの策定作業といった事務的負担や、評価取得のための経済的負担 (通常3-5百万円程度) などが発生します。
今回は、港湾管理者である横浜市が港湾全体におけるFWを策定・保有することで、事業者は上記のような事務的・経済的負担を軽減しながらサステナブルファイナンスにアクセスできるメリットを得られます。
特に中堅中小企業におけるサステナブルファイナンスによる資金調達ニーズを喚起することで、より多くの事業者の脱炭素投資に繋がることを企図しています。
このような港湾脱炭素に関連したFWは、みずほ銀行と横浜市による先駆的な新しい取り組みとして検討を開始しました。その中で、みずほ銀行はこれまで蓄積してきたサステナブルファイナンスの知見を活かしながら、事業者や金融機関へのヒアリングや、FWの運営まで含めた企画・設計や評価機関との連携など一気通貫でサポートしました。

イメージ画像2:本FWのスキーム図
本FWのスキーム図

横浜港CNPサステナブルファイナンス・フレームワークの公表とともに、ダイトーコーポレーションとの間で電動タグボートの建造資金を対象としたグリーンローンの契約を行いました。本件は本FWを活用した第一号案件となるとともに、このような自治体が策定した資金使途特定型のFWを民間事業者が活用する先進的な事例となりました。
全国各地の自治体で同様の取り組みを検討・実施する例も出てきており、自治体が策定する第三者利用のためのFWが、サステナブルファイナンス活用の新しいトレンドとして各省庁からも注目が高まっています。
脱炭素社会の実現に向け、グローバルなエネルギー供給の拠点かつ物流の結節点となる港湾の役割が重要であり、港湾インフラの更新と革新が日本の競争力強化には不可欠と、みずほ銀行は考えています。港湾の脱炭素化に繋がる産官金一体となった取り組みの促進を図ると共に、本FWの賛同金融機関として、横浜港のカーボンニュートラルポート形成を金融面から後押ししていきます。

イメージ画像3:横浜港CNPで想定される事業とダイトーコーポレーション案件のイメージ図
横浜港CNPで想定される事業とダイトーコーポレーション案件のイメージ図

“ お客さまの声 ”

多くの行政計画は作成自体が目的化し、計画作成後の推進、評価及び改善のサイクルが不十分であることを否定できません。そのため、港湾脱炭素化推進計画という価値ある計画の作成に携わる機会を得た時から、作って終わりの計画にしない方法を探していました。みずほ銀行様からサステナブルファイナンスのご提案をいただいた時は、抱いていた悩みの解決策になると確信したことを覚えています。おかげさまでサステナブルファイナンス・フレームワークは計画作成後において計画を充実させる推進力となり、企業様が計画に掲げる脱炭素化促進事業も少しずつ増えています。今後も横浜市は我が国を代表する総合港湾である横浜港の発展に努めてまいります。

横浜市

  • 横浜市港湾局政策調整課
    カーボンニュートラルポート担当課長
    中村 仁さま
  • 横浜市港湾局政策調整課
    担当係長
    野澤 龍彦さま
  • 横浜市港湾局政策調整課
    担当職員
    佐久間 徹さま

“ 〈みずほ〉の声 ”

横浜市さまと連携し、前例のない中で検討を重ね、大変チャレンジングかつ日本の脱炭素にとって重要な港湾の脱炭素というスケールの大きな案件をご支援できたこと、また、ダイトーコーポレーション様の先進的な脱炭素投資に向けてサステナブルファイナンスでのご支援ができたことを大変光栄に思います。我が国の脱炭素に、産(お客さま)、官(国・自治体)、金(当行・地域金融機関)が一体となって挑戦し、今後の横展開余地もある先進事例を作り上げることができたことは、日本の脱炭素への取り組みを更に加速させる革新的な一歩として、大きな意義を持つと感じています。
今後も、「ともに挑む。ともに実る。」のパーパスのもと、〈みずほ〉ならではの強みを生かしたソリューション提供に努めてまいります。

みずほ銀行
  • サステナブルプロダクツ部
    堀井 杏奈
  • 横浜法人第一部
    片山 陽斗
  • 社会・産業基盤第二部
    吉田 麻人

※記事の内容は、取材当時のものです

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