
持続可能な未来を創る核融合エネルギーで、産業競争力強化とカーボンニュートラル実現に貢献。
Zap Energy, Inc.
核融合エネルギー(以下、フュージョンエネルギー)は、実用化すればエネルギー問題と環境問題を同時に解決することのできる持続可能なエネルギーとして世界的に注目を集めています。2024年10月、〈みずほ〉は核融合発電方式の一つであるZピンチによるフュージョンエネルギー技術の実用化に取り組む米国企業Zap Energyに対して出資を行いました。日本の金融機関として、海外の核融合炉開発企業への出資は初となります。〈みずほ〉は、Zap Energyへの出資を含むパートナーシップ構築により、同社の取り組みを支援すると同時に、日本の産業競争力の強化、さらには社会やお客さまのカーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
Project Flow

〈みずほ〉では、カーボンニュートラルの実現およびエネルギー安全保障への貢献に向け、フュージョンエネルギーに着目し、技術・業界への理解を深めてきました。今回、日本企業との連携を通した技術開発、さらには日本市場への進出に関心が高いZap Energyと接点を持ち、様々な調査・検討等を重ねた結果、出資を含む戦略的パートナーシップの構築に至りました。
CHALLENGE
カーボンニュートラル実現への一手として、フュージョンエネルギー開発スタートアップを後押し。
フュージョンエネルギーとは、軽い原子核同士が融合し、重い原子核に変化する際に放出される莫大なエネルギーのことで、技術確立および実用化に向けて研究が進められています。海水中の重水素等を燃料にするため、日本でも資源制約を懸念せずに利用可能で、核融合反応時に二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しにくい点から、カーボンニュートラルをめざすうえでの重要な打ち手といわれています。また、需要に応じた発電が可能な方式も存在し、安全性や環境保全性が高い点もポイントです。7極(33ヵ国)が協力し、フュージョンエネルギーの研究を行う「国際熱核融合実験炉(ITER)」のような超大型国際プロジェクトと並行して、ここ数年、欧米を中心としたスタートアップによるフュージョンエネルギーの研究・開発が急速に進んできました。
〈みずほ〉も、エネルギー転換に向けた新たな発電方法としてフュージョンエネルギーに着目しており、これまでも、みずほ銀行 産業調査部やみずほリサーチ&テクノロジーズがフュージョンエネルギー領域の調査を行っていました。しかし、この領域は非常に専門性の高い分野であることに加えて、まだ実験段階にあるため技術評価が困難です。ブレイクスルーを起こす発電方式については専門家の共通見解もなく、フュージョンエネルギーが次世代のエネルギーとして成立することに懐疑的な意見もありました。このような状況を加味し、〈みずほ〉はお客さまを含む複数の有識者へのヒアリングを踏まえてスタートアップへの独自の評価基準を設けるなど、フュージョンエネルギー支援に向けた準備を進めていました。
そんな折、小型でシンプルな核融合炉の設計が可能であるZピンチ方式のフュージョンエネルギー技術確立をめざす米国企業Zap Energyから〈みずほ〉へと、協働に向けた打診がありました。
同社はワシントン大学とローレンス・リバモア国立研究所の共同研究機関がスピンアウトする形で設立され、技術の確立および実用化に向けて、資金調達と技術開発を進めていました。今回の打診の背景として、世界的に見てフュージョンエネルギー領域に活用・応用できるも高いコア技術を持つ企業が多く存在し、潜在的な核融合発電ニーズもある日本市場への同社の関心がありました。〈みずほ〉は、日本国内においてフュージョンエネルギー領域に知見のある企業を含む幅広く強固なお客さま基盤を持ち、産業調査にも力を入れていることから、資金面でのサポートはもちろん、高い技術力を持つ企業や実用化に向けたパートナー企業との橋渡しを期待されていました。


SOLUTION
出資を含むパートナーシップ構築で、フュージョンエネルギーを熟知した金融機関をめざす。
Zap Energyの戦略的パートナーとしてフュージョンエネルギーに対する知見を蓄積し、金融機関として同領域でのプレゼンスを高めるとともに、それらの知見を〈みずほ〉のお客さまに還元することで、日本の産業競争力の強化につなげたいという狙いのもと、〈みずほ〉はZap Energyへの出資検討を開始しました。フュージョンエネルギー領域を取り巻くプレイヤーやマーケット調査を深める中で、日本はITER計画等で培われた産業技術や、当該領域の研究施設稼働数が世界一である一方、足元では欧米や中国が研究開発を加速させている脅威も認識していました。こうした日本の現状を踏まえ、Zap Energyから照会を受けた後、デューデリジェンスにあたっては、Zap Energy社の評価だけでなく、日本の産業競争力に寄与できるポテンシャルを有するかという観点からも調査しました。結果、同社との協業を通じてフュージョンエネルギーの技術確立に寄与しながら日本のプレゼンスを高めていけると改めて認識しました。そして、その認識を関係者全員の合意形成へとつなげるため、繰り返し説明・議論を行いました。
さらに、戦略策定や関係者調整にあたっては、Zap Energyとも緊密に連携をとり、両社の様々なレイヤーの社員とコミュニケーションを図ることで目標や期待値をすり合わせました。そこで培った信頼関係を前提として、より踏む込んだ情報にアクセスするための覚書を交わす等のステップを経て、投資専門子会社のみずほイノベーション・フロンティアを通じた出資を実現しました。本案件は、日本の金融機関として初めての海外の核融合炉開発企業へ出資となり、Zap Energyにとっても初めての戦略的投資プレイヤーの招へいとなります。

RESULT
フュージョンエネルギーの技術確立・実用化、ひいては日本の産業力強化に挑む。
今回のZap Energyへの出資により、〈みずほ〉は日本企業とZap Energyをつなぐ戦略的パートナーとして、「資金調達支援」「日本企業との技術連携サポート」「日本市場への進出サポート」「知見の共有・共創」の4つを中心に取り組んでいきます。
フュージョンエネルギーの技術開発には多大な資金が必要のため、「資金調達支援」が不可欠です。今回、Zap Energyに対しては、出資を含めて戦略的パートナーとして金融の立場から資金調達手法のアドバイスを行います。また、核融合発電の実現に必要な技術を持つ日本企業とZap Energyをつなぐことで「日本企業との技術連携サポート」を行い、同社の技術力向上を図ります。本案件のニュースリリースを見たお客さまから、「自社事業がフュージョンエネルギー開発にいかせるか」という問い合わせがあり、すでに複数社との引き合わせが実現しています。さらに、将来的な日本市場への進出を念頭において、パートナーとなる日本企業にアクセスできるよう「日本市場への進出サポート」を行います。
そして、〈みずほ〉が最も重要視しているのが「知見の共有・共創」です。Zap Energyとの上記支援を通じて得られた知見を基に、日本企業や産業界との連携強化をめざすとともに、〈みずほ〉自身もサステナビリティ領域への豊富な知見を持ち、将来の産業動向に高い予見性を持つ金融機関として、持続可能なエネルギー供給とカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めていきます。
〈みずほ〉は、トランジションに向けた従来の取り組みを強化していくだけではなく、より長期的な観点での新たな打ち手が必要であり、フュージョンエネルギーの技術確立は社会に大きなインパクトをもたらせると考えています。もう一歩先にある実用化まで進むことで、エネルギー業界だけでなく、あらゆる産業のカーボンニュートラルに関するロードマップが変わっていくことが予想されます。
こうした可能性も加味して、〈みずほ〉はZap Energyとの出資を含むパートナーシップ構築を通じて、新たなエネルギー開発を支援し、日本の産業競争力の強化に貢献していきます。

“ お客さまの声 ”
投資家との強力なパートナーシップの形成は、当社の成功において極めて重要です。〈みずほ〉さまからの投資は、企業の成功、方向性、価値創造に大きな影響を与える戦略的パートナーシップの一例と言えます。私たちは〈みずほ〉さまとの多くのミーティングを経て、目下の課題から商業用発電所の納入に至るまで、複数のマイルストーンを通して、中長期的な視点で真摯に当社をサポートしてくださるパートナー企業だと判断しました。
100以上の国や地域で核融合発電が行われる日を待ち望んでいますが、アメリカと日本がいち早くこの発電方式を採用し、最も速く普及させると確信しています。そうした観点からも、このパートナーシップが世界的に最も重要なフュージョンエネルギー市場であるアメリカと日本における基盤になることから、並々ならぬ期待を寄せています。私たちは「フュージョンエネルギーの変革力を実現する」という使命に向けて、〈みずほ〉さまと協業できることを誇りに思います。
Zap Energy, Inc.
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Vice President of Product & Partnerships
Ryan Umstattdさま
“ 〈みずほ〉の声 ”

フュージョンエネルギーは、エネルギー問題と地球環境問題を同時に解決する次世代のエネルギーとしての可能性を秘めています。核融合が切り開く未来に向けてZap Energyさまと一緒に挑戦できることは大変光栄です。
〈みずほ〉としては、Zap Energyさまの取り組みを支援しつつ、パートナーシップを通して得られる経験や知見を、私たちのお取引先や産業界全体にも還元していくことで、フュージョンエネルギー市場の発展にも貢献していきたいと考えています。
破壊的なイノベーションをめざす研究開発に取り組む海外スタートアップに対して日本の金融機関が出資を行うことはまれかもしれません。しかし、そこに率先して挑む姿勢こそ〈みずほ〉らしさだと考えています。Zap Energyさまはもちろん、フュージョンエネルギーに携わる国内外の産官学の関係者と想いを共にし、持続可能な未来に貢献できるよう、引き続き尽力していきます。
- みずほフィナンシャルグループ
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サステナブルビジネス部
田中 孝太朗 -
サステナブルビジネス部
山下 翔平
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サステナブルビジネス部
※記事の内容は、取材当時のものです