メイン画像:株式会社アストロスケールホールディングス、清水建設株式会社(SX事例)
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スタートアップ 建設

社会課題×価値共創で、スタートアップの成長を支援し、宇宙産業のサステナブルな発展に貢献。

株式会社アストロスケールホールディングス、清水建設株式会社

#サステナビリティ経営 #サステナビリティ経営支援 #価値共創投資

2023年5月、みずほ銀行はスペースデブリ(宇宙ごみ、以下「デブリ」)除去をはじめとする軌道上サービスを提供するアストロスケールと総額30億円の融資契約を締結。さらに、同年10月には総合的な宇宙ビジネスに取り組む清水建設を「価値共創パートナー」として10億円の出資を行いました。〈みずほ〉は、融資等のデットと出資等のエクイティの両面から同社の事業成長を後押しするとともに「スペースサステナビリティ(宇宙の持続可能性)」の実現をめざします。

Project Flow

プロジェクトフロー図:株式会社アストロスケールホールディングス、清水建設株式会社(SX事例)

企業価値の向上に資するソリューションの提供を通じて成長分野の支援を行い、日本企業の競争力強化、および日本経済の再興・持続的成長への貢献をめざす〈みずほ〉。今回、スペースデブリ除去分野で世界をリードするアストロスケールに対し、デットとエクイティ両面での資金提供を行いました。エクイティでは総合的な宇宙ビジネスに取り組む清水建設との「価値共創投資」という形で出資を実行し、清水建設・アストロスケールの両社に対して、金融および金融を超えたサービスの両面で宇宙ビジネスに関わる様々な提案・サポートを実施しています。

CHALLENGE

軌道上サービスに取り組む民間企業とともに、「スペースサステナビリティ」の実現へ。

1957年の人類初の人工衛星であるスプートニク一号から現在に至るまで、地球の軌道上には数多くの人工衛星が打ち上げられました。衛星からのデータは天気予報、GPSナビゲーション、通信など、日常生活の多くの場面で利用され、衛星技術は私たちの生活に欠かせないものとなりました。しかし、これらの進歩の裏側で新たな問題も生まれています。軌道上を周回する「デブリ」と呼ばれるロケットの上段や役目を終えた人工衛星等も増え続け、「宇宙の環境問題」と呼ばれるようになりました。デブリは大きさ10cmを超えるものだけでも約40,500個存在すると推定され、既存衛星サービスの安定的な運用や今後の宇宙開発の妨げとなることが世界的に問題視されています。
このような状況の中、2013年に創業したアストロスケールは、「将来の世代の利益のための安全で持続可能な宇宙開発」をビジョンに掲げ、宇宙デブリの除去や衛星の寿命延長など軌道上サービスの開発にグローバルで取り組んでいます。自動車向けロードサービスが、故障車のレッカー移動やガソリン補給、交通監視等に取り組むように、同社は「宇宙のロードサービス」を提供し、「スペースサステナビリティ」の実現をめざしています。アストロスケールの活動は、国内外で高い評価を受けており、2022年にはTIME誌の「世界で最も影響力のある100社」に選出され、日本スタートアップ大賞の内閣総理大臣賞も受賞しました。日本をはじめ、英国、米国、フランス、イスラエルの5か国で事業を展開するほか、複数の民間企業やJAXA(宇宙航空研究開発機構)等の団体・行政機関との協働を通じた宇宙政策やベストプラクティスの策定にも意欲的に取り組んでいます。
2021年3月、アストロスケールはデブリ除去技術の実証衛星「ELSA-d」を打ち上げ、デブリを模した「模擬デブリ」の捕獲や誘導接近の実証に成功しました。その後も、同社の軌道上サービスに対する需要は世界的に高まっており、官民を問わず様々な引き合いが生まれています。
アストロスケールと〈みずほ〉との出会いは2019年、〈みずほ〉の若手営業担当がアストロスケールの事業に興味を持ち、錦糸町の本社を何度も訪問する中で同社の「スペースサステナビリティ」への取り組みに強く共感、その熱心な姿勢がアストロスケールにも伝わり、取引開始に至りました。同年、〈みずほ〉においてベンチャーキャピタル機能を担うみずほキャピタルから出資、2021年には〈みずほ〉が設立したエンゲージメント型グロースファンドから出資を行っています。さらに、2023年4月には総額30億円の融資契約を締結しました。〈みずほ〉はアストロスケールの事業拡大フェーズにあわせてデット・エクイティの両面から支援を行っており、同時期からいよいよ金融面のみならず事業面での共創を検討していくことになります。

イメージ画像1:アストロスケールが取り組む、4つの軌道上サービス
アストロスケールが取り組む、4つの軌道上サービス:EOL(新規デブリの発生抑制)・ADR(既存デブリの除去)・LEX(衛星の寿命延長)・ISSA(軌道上の物体調査)
イメージ画像2:アストロスケールの事業を紹介する展示施設「オービタリウム」
アストロスケールの事業を紹介する展示施設「オービタリウム」

SOLUTION

清水建設をパートナーとする「価値共創投資」で、宇宙産業の持続的発展への貢献とアストロスケールの更なる成長を後押し。

〈みずほ〉は「ともに挑む。ともに実る。」というパーパスのもと、お客さまの新たな価値創造に向けた挑戦をサポートするため、「価値共創投資」の枠組みを設けました。これは「価値共創パートナー」となるお客さまが注力する事業を通して、ともに社会・産業課題に向き合うことで、〈みずほ〉自身も先進領域への知見を深めるとともに、お客さまの事業成長により深く貢献していくことを目的としたものです。今回、〈みずほ〉は宇宙産業の持続的発展や「スペースサステナビリティ」の実現に向け、宇宙のビジネスリーダーをめざす清水建設との取り組みを支援すべく、「価値共創投資」の検討を開始しました。
清水建設は、1987年に宇宙開発室を発足して以来、「シミズ・ドリーム」という未来構想のもと、⼈類が宇宙で暮らす時代に建設会社としてどう貢献できるかを考え、地上・宇宙の双方で安全・安⼼を提供するための技術開発を進めてきました。現在はハード・ソフト両面から、①小型衛星の打ち上げ、②衛星データ活用、③月面インフラ建設に取り組んでいます。そして、これらのサービスを成功させるために、解決すべき根源的課題の一つであるデブリの除去等の実現に向け、清水建設は2020年からアストロスケールに対し出資を行ってきた背景があります。
今回、アストロスケールに「価値共創投資」の検討を行うにあたり、改めて宇宙ビジネス領域への分析・理解を深めるとともにアストロスケールや清水建設のこれまでの実績や周辺産業の動向を踏まえた中長期的な構想を練りました。両社とその構想について議論を重ね、並行してアストロスケールが取り組む4つの軌道上サービスごとの特性や宇宙ビジネスの業績やトレンドとの整合性を精緻に分析しました。また外部有識者を交えたインタビューを実施したほか、業界情報をタイムリーに入手できる体制構築も行いました。これらの取り組みの結果として、〈みずほ〉としても一定のリスクシェアをしながら産業全体を支えるため、2023年10月、清水建設を「価値共創パートナー」としたアストロスケールへの出資を実行しました。

イメージ画像3:アストロスケール本社にて、左から順にアストロスケール白石さま、〈みずほ〉永瀬
アストロスケール本社にて、左から順にアストロスケール白石さま、〈みずほ〉永瀬

RESULT

JAXAからの受託プロジェクトをはじめ、ビジネスは着実に進行。いよいよ「宇宙のロードサービス」の幕開けへ。

アストロスケールは、JAXAが深刻化するデブリ問題を改善するデブリ除去技術の獲得と、日本企業の商業的活躍の後押しの2つを目的として進める「商業デブリ除去実証(CRD2)」のパートナーとして、2020年から商業デブリ除去実証衛星「ADRAS–J」の開発を進め、2024年2月にはニュージーランドのマヒア半島にある発射施設からの打ち上げおよび軌道投入に成功しました。これはデブリ(H2Aロケットの上段部分:全長約11m、直径約4m、重量約3トン)へ誘導接近・観測を実施するという、デブリの状況を明確に調査する世界初の試みです。同年7月、「ADRAS–J」はデブリの周回観測に成功し、軌道上サービスの提供に向けた実績を積むことができました。今後はデブリ除去のための捕獲や軌道離脱も行うため、捕獲機能であるロボットアームを含めた「ADRAS–J2」の開発を進める予定です。
みずほ銀行は、2022年に「ADRAS–J」に関するマーケティングパートナーシップを契約しました。「ADRAS–J」プロジェクトへの支援を通じて、「スペースサステナビリティ」の実現をともにめざしていくもので、「ADRAS–J」の衛星本体のほか、エンジニアジャケット等に〈みずほ〉のロゴが掲載されています。
民間企業による宇宙ビジネスは、今後より活発化していくことが予想されます。その際に、「スペースサステナビリティ」という観点なくして、次世代産業の持続的発展は見込めません。〈みずほ〉は今回の資金提供に留まらず、更なる成長に向けた融資や衛星資材を扱うサプライヤーのご紹介等、これからもアストロスケールに対する多岐にわたるバックアップを検討しています。また、アストロスケールは2024年6月5日にIPO(新規株式上場)を行い、東京証券取引所グロース市場に上場しました。公開初日は公開価格850円を一時86%上回り1,581円と値幅制限の上限まで上げる場面もあり、終値1,375円ベースの時価総額は1,554億円と市場から注目を集めました。IPO後もこれまで積み重ねてきた信頼関係のもと、アストロスケールにしっかりと伴走することで、宇宙産業の持続的発展や「スペースサステナビリティ」の実現に向けた挑戦を続けていきます。

イメージ画像4:商業デブリ除去実証衛星「ADRAS–J」
商業デブリ除去実証衛星「ADRAS–J」

“ お客さまの声1 ”

みずほキャピタルさまからの出資に始まった〈みずほ〉さまとのお付き合いですが、2019年にみずほ銀行の社員さまから伺った熱烈な想いは今でも印象深く心に刻まれています。この出会いをきっかけに、現在ではみずほ銀行さまに融資、出資、マーケティングパートナー等、継続的かつ強力なご支援をいただいていることを感慨深く思います。また、清水建設さまと新産業創出においてデブリ除去等の課題にともに取り組みながら、事業構想の実現をめざせることも大変意義深く感じています。宇宙環境は地上の生活と極めて密接に関係し、大きな課題を抱えています。そして、アストロスケールはこの課題の解となる軌道上サービスにおいて、日本発の企業として世界標準をつかめると考えています。将来の世代のためのスペースサステナビリティを実現することで、宇宙開発領域やディープテック領域におけるファイナンスのロールモデルになれればと思います。

株式会社アストロスケールホールディングス

  • 大辻󠄀 恵介さま

“ お客さまの声2 ”

総合宇宙企業をめざす清水建設は、宇宙空間を利用する企業として、持続可能な宇宙開発に向けた課題解決に取り組むアストロスケールさまに出資を行い、事業領域としての宇宙の持続可能性を支援しています。そして今回の出資は、宇宙空間が公益的なインフラ基盤として存続し続け、宇宙産業のスケール化を強く後押しするものです。価値共創パートナーとして、みずほ銀行さまとともに宇宙開発を促進することは、今後の当社の事業の可能性を拡大するエンジンになると確信しております。清水建設は今後も総合宇宙企業として宇宙開発に積極的に取り組み、日本における宇宙産業の更なる発展に貢献していきたいと考えています。

清水建設株式会社

  • フロンティア開発室
    宇宙開発部長
    金山 秀樹さま
  • フロンティア開発室
    宇宙開発部
    石嶋 隼人さま

“ 〈みずほ〉の声 ”

〈みずほ〉担当者画像:株式会社アストロスケールホールディングス、清水建設株式会社(SX事例)
左から順に、安川、永瀬、小島、大西

〈みずほ〉における宇宙開発領域への出資案件に携われ、大変光栄です。デブリ問題は想像以上に私たちの生活と密接していて、アストロスケールさまの卓越した技術力や専門性の高いビジネスは、今後ますます世界的な注目を集めるだろうと感じています。また今回、清水建設さまとの「価値共創投資」を実現できたのは、最終的なゴールに向けて一つひとつ課題を乗り越えてきた結果だと思います。関係者の皆さまが、人類の未来や日本の経済・社会発展のため、それぞれ熱い想いを持って仕事に取り組む姿に触れられた点も意義深かったです。現在、本案件での経験をいかし、〈みずほ〉としてより強固にご支援できる体制や方針について議論しています。これからも企業規模や業種・業界を超えたチームで、次世代産業に挑めればと考えています。

みずほ銀行
  • コーポレート&インベストメントバンキング業務部
    安川 啓一郎
  • 大手町法人第二部
    永瀬 光輝
  • イノベーション企業支援部
    小島 知英
  • 社会・産業基盤第二部
    大西 貴史

※記事の内容は、取材当時のものです

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