メイン画像:株式会社IHI(SX事例)
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製造

多様な人材の活躍で、持続可能な組織へ。「インパクトファイナンス」で目指す、人的資本経営の未来。

株式会社IHI

#人的資本 #Mizuho人的資本経営インパクトファイナンス

〈みずほ〉では、企業の人的資本経営における取り組みをスコアリングし、一定以上のスコアを取得したお客さまに融資を行う「Mizuho人的資本経営インパクトファイナンス」の取り扱いを2023年5月にスタート。本商品の第一弾として、「人材こそが最大かつ唯一の財産である」を経営理念の一つとして掲げる総合重工業メーカーIHIと契約を締結しました。同社では経営者による人的資本経営へのコミットメントや、人財育成に関する実績の経年開示等を積極的に実施。〈みずほ〉は金融面でのサポートと併せ、ディスカッションやモニタリング等を通じて、同社の人的資本経営への取り組みを幅広く支援しています。

Project Flow

プロジェクトフロー図:株式会社IHI(SX事例)

年々高まる人的資本経営のニーズに応えるため、〈みずほ〉は「Mizuho人的資本経営インパクトファイナンス」を開発。一方、以前から気候変動対応に向けたサステナブルファイナンスの活用に取り組んできたIHIでは、ESG経営を実現するうえで、気候変動とともに人的資本を重点課題に据えていました。〈みずほ〉と同社が、ファイナンスを通じた人的資本経営支援のあり方についてディスカッションを重ねていく中で、今回の契約に至りました。

CHALLENGE

変化に柔軟に対応できる人材の育成を。今求められる「人的資本経営」への取り組みをサポート。

移り変わりの激しい現代においては、企業も個人もこれまでの成功体験にとらわれることなく、変化や想定外の事象に柔軟に対応する力が求められています。そのためには多様で自律した人材の登用・育成が不可欠です。こうした背景から、昨今「人的資本経営」という考え方が注目を集めています。人材を資源ではなく資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。
投資家をはじめとするステークホルダーも、その企業の将来性を判断するため、財務状況のみでなく、ESGのうち社会分野(S)を構成する要素として人的資本経営に関する情報開示を重視するようになりました。
〈みずほ〉は、これらの領域に取り組む企業を後押しするため、2022年11月から人的資本経営に関する可視化・開示と実践に関するファイナンス「Mizuho人的資本経営インパクトファイナンス」の開発を本格始動。お客さまの人的資本経営への取り組み状況をスコアリングし、一定以上のスコアを取得した企業に対して融資を行うとともに、定期的なモニタリングやフィードバックを通じて、お客さまの人的資本経営への継続的な活動を支援するファイナンス商品に仕上げました。2023年5月にはその第一弾として、多様な人財の育成に注力し、意欲的に人的資本経営を推進するIHIと契約を締結しました。
かねてよりESG経営を進めてきた同社では、財務部がESG分野への取り組みの加速に向けたサステナブルファイナンスの活用を前向きに検討。特に人的資本は、気候変動対応とともに同社のESG経営を実現するうえでの重要課題(マテリアリティ)の一つであり、〈みずほ〉と同社が、ファイナンスを通じた人的資本経営支援のあり方についてディスカッションを継続してきた中で「Mizuho人的資本経営インパクトファイナンス」の活用に至りました。

※インパクトファイナンスとは、適切なリスク・リターンを確保しつつ、環境・社会・経済にポジティブなインパクトをもたらすことを意図したファイナンスのこと。「Mizuho人的資本経営インパクトファイナンス」は「人的資本経営」にフォーカスした商品です。

イメージ画像1:従業員一人ひとりの活躍の可能性を広げる、IHIの人財育成プログラムの一例
従業員一人ひとりの活躍の可能性を広げる、IHIの人財育成プログラムの一例

SOLUTION

人的資本経営への取り組みを5段階でスコアリング。ディスカッションを重ねて、継続的にサポート。

「Mizuho人的資本経営インパクトファイナンス」では、みずほリサーチ&テクノロジーズが、評価の難しい人的資本経営に関する企業の取り組みを〈みずほ〉独自の基準でスコアリングします。スコアリングには、国内外で信頼性の高い人的資本に関する情報開示のガイドライン(「ISO30414」、「内閣府人的資本可視化指針」等)を参考に独自開発した評価手法を用いており、第三者調査機関から本商品が環境省の「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合する商品であるとの意見書を取得しています。
評価は大きく、①人的資本経営に対する企業スタンスの評価:「姿勢評価」、②経営戦略を実現するための人材戦略(人材施策)の評価:「人材施策評価」、③人的資本経営のガバナンス体制の評価:「体制評価」の3つの軸から実施。
IHIは、2021年11月に「ESGを価値観の軸においた社会・環境に配慮した適切な経営」を実現するための具体的な取り組み方針である「IHIグループのESG経営」を公表。その中で、「人権の尊重」と「多様な人財の活躍」を推進しています。加えて、2023年5月公表の「グループ経営方針2023」では、事業・企業体質の変革をなすため、人への投資による成長戦略を打ち出しました。
同社では、経営者によるコミットメントをはじめ、独自の体系的な人財育成プログラム(キャリア形成支援、自律・選択型研修)や、人財育成に関する実績の経年開示等の情報開示を拡充。キャリア支援や人財育成プログラム等の取り組みは、現在の課題とありたき姿が明示されたうえで、そのギャップを埋める具体的な実行策として位置づけられています。今回〈みずほ〉では、こうした人財育成に関する積極的な対応や開示姿勢等を評価ポイントとしています。
融資期間中は毎年モニタリングを実施し、その評価結果とともに、人的資本経営に先進的に取り組む企業の特筆すべき事例もレポート。〈みずほ〉は同社と経営戦略のベースとなる人的資本経営について継続的なエンゲージメント(建設的な対話)を重ねることで、お客さまとともに取り組みを促進していきます。

イメージ画像2:「Mizuho人的資本経営インパクトファイナンス」のスキーム図
「Mizuho人的資本経営インパクトファイナンス」のスキーム図

RESULT

企業とのエンゲージメントを通じ、人的資本経営の推進に寄り添い続ける。

「Mizuho人的資本経営インパクトファイナンス」は、2023年5月末に第一弾の契約を締結したばかり。人的資本にフォーカスした商品は、提供している金融機関も少なく、目指すべき定量的な基準を一律に設けることが難しい点が課題です。日々移り変わる社会状況に対応すべく、〈みずほ〉では今後もその評価方法について検討を重ね、適宜見直していく予定です。

人的資本経営に取り組む企業が本商品を活用する意義として、以下の点が挙げられます。
1.融資期間中は年に一度、取り組みに対する評価を得られるため、進捗の定点観測が可能。評価報告書には他社の優れた事例紹介も盛り込まれ、より先進的な取り組みの検討に活用できる。
2.開示情報に対して客観的な評価を得ることで、自社の取り組みに関する開示の高度化につなげられる。
3.本商品の活用を通じて、ステークホルダーに対して人的資本経営に取り組む企業であることを発信できる。第三者評価の取得により、その取り組みの実効性についても訴求できる。

日本国内においても、人的資本に関する開示が義務化される等、企業の人的資本経営の実践・開示に対する期待はさらに増していくことが予想されます。企業は単に情報を開示するだけではなく、多様なステークホルダーの関心や問題意識に沿うかたちで、明瞭で分かりやすいナラティブな説明を求められています。〈みずほ〉は各社の人的資本経営の更なる高度化に向け、お客さまとのエンゲージメントを重ね、ともに取り組みます。
そして、本商品を通して、より多くの企業の人的資本経営の普及・促進をサポートし、日本社会の持続的な発展にも貢献できるよう取り組みを進めていきます。

“ お客さまの声1 ”

SDGs/ESGを市場や社会における共通の価値観・言語と捉えて企業活動を行っていくことは、企業単体や相対の取引関係にとどまらず、今後は業界・業態といった枠組みを超えた価値創造関係へと進化・変容させていくと考えています。人的資本経営を推進する評価型ファイナンスは、社会の適切な成長に向けて、人の創造性を改めて企業価値と社会価値の中心に据え、継続的な評価・対話を重ねて進化を後押しするものです。また本金融商品は経営の血流たるファイナンスを金融機関からの評価を伴う形で連動させ、あるべき企業活動の姿へと変容を促す契機になると考えています。その第一号案件として、弊社が取り組めたことを光栄に思っています。

株式会社IHI

  • 財務部 資金・会計グループ主査
    戸部 亮さま

“ お客さまの声2 ”

社会課題の解決が弊社の事業活動そのものであり、それに対する資金調達としてサステナブルファイナンスの活用を進めています。その際に、金融機関との関係性も金銭の貸借だけでなく、より広く深いものに変わっていると感じています。〈みずほ〉さまとは今後も、新たな価値を共創していけるように取り組んでいきたいと考えています。

株式会社IHI

  • 財務部 資金・会計グループ
    日髙 大介さま

“ 〈みずほ〉の声 ”

〈みずほ〉担当者画像:株式会社IHI(SX事例)
左から順に、田中、中、泉屋、永井

「人的資本経営」は、組織を構成する最小単位である「人」が関わるもので、事業戦略の基盤を作ることです。お客さまが自社の取り組みや開示について基準や手法を模索する中で、〈みずほ〉としてどのように支援できるかを考えてきました。そんな中、本案件ではIHIさまが抱える人材への想い、〈みずほ〉に対する期待についても伺うことができ、非常に実りあるディスカッションになりました。人的資本に対する社会的な意識が高まる中で、同じようなニーズを抱えている企業も多いのではないかと思います。人事部門が課題を感じていても、会社全体でのアクションに至っていないケースもあり、そのような方々の相談役も担えればと考えています。まだ本商品自体が提供を開始したばかりですが、お客さまの課題と本商品の特性を踏まえた一層細やかなエンゲージメントを目指しています。「人的資本経営」にフォーカスしたファイナンスは前例が少なく、〈みずほ〉にとっても新たな挑戦でした。これからもお客さまとともに多くの案件に取り組むことで、より良い商品作りにつなげていきたいと思います。また本商品に限らず、今後も時流やお客さまのニーズを踏まえつつ、経済・社会・産業・環境にポジティブなインパクトを与える商品を開発していきます。

みずほ銀行
  • 自動車・テクノロジー第三部
    永井 孝昌
  • サステナブルプロダクツ部
    泉屋 祐介
みずほフィナンシャルグループ
  • サステナブルビジネス部 兼 リサーチ&コンサルティング業務部
    中 美尋
みずほリサーチ&テクノロジーズ
  • 社会政策コンサルティング部 ヒューマンキャピタル創生チーム
    田中 文隆

※記事の内容は、取材当時のものです

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