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INTERVIEW

〈みずほ〉が描くサーキュラーエコノミー、中長期×目利き力を活かして次の一手へ。

〈みずほ〉が描くサーキュラーエコノミー、中長期×目利き力を活かして次の一手へ。

サステナブルビジネスの注力分野の一つとして、サーキュラーエコノミー(CE)を推進する〈みずほ〉。制度と実態のギャップから生まれる「CE疲れ」がある中、CEをビジネスとして成立させるカギを探ります。CE分野の第一人者である東海大学学長補佐の細田 衛士氏とみずほフィナンシャルグループ副CSuOの武藤 めぐみが対談し、中長期目線と目利き力を活かして挑戦する、〈みずほ〉の取り組みを紹介します。

サーキュラーエコノミーの今──CEの潮流とビジネス化のカギ

武藤:最初に、個人的な話になりますが、細田先生との出会いは学生時代に遡ります。ゼミ案内を目にしたのですが「ごみの問題を真ん中に置いて、これから環境経済学を立ち上げる」という姿勢に強い印象を受けたことを覚えています。

先生のご著書『グッズとバッズの経済学』にある、「財(グッズ)の生産・消費だけでなく、不可避的に発生する廃棄物(バッズ)の処理までを統一的な経済循環として捉える」というアプローチは、今日のCEの考え方を先取りするものであったと感じています。

実はそのアプローチ、金融の現場にも大きな示唆を与えてくださっています。〈みずほ〉はサステナブルビジネスの注力分野の一つにCEを据えており、先日は〈みずほ〉CEセミナーに細田先生にご登壇いただきましたが、非常に大きな反響がありました。CEビジネスへの関心がいよいよ本格的に高まっているのだと実感しています。

新しい市場をつくるには、まず制度面が重要です。日本ではここ数年で制度設計が前進し、先行する欧州では「修理する権利」といった概念まで浸透してきました。一方で、現場からは制度と実態にはギャップがあって、「CE疲れ」ではないかという声も聞こえてきます。先生の目からは、こうした現状はどのように映っていますか。

細田先生

細田先生:CEの考え方の出発点には、まず天然資源の供給量には限りがあり、従来の「使って捨てる前提」のリニアな経済が成り立ちにくくなっている現実があります。廃棄物処理の面でも、埋立地の確保は難しく、焼却に頼れば温室効果ガス(GHG)排出が避けられません。そこで、「資源の循環利用」という解が不可欠になります。

もう一つの背景として、現代の資本主義経済が、「どこで新しい付加価値を生み出すか」に悩んでいる面があります。例えば最近、サステナブルファッションといった、ストーリー性を持たせた商品が出てきているようにものづくりと接続しながら、新しい付加価値をつける一つの契機としてCEが求められているように感じています。すなわち、天然資源の新規投入を抑え、循環利用し、付加価値を付ける資本主義経済への転換が必要になっていると、多くの人が認識しているのではないかと考えています。

こうしたCEへの期待が高まる中で、現在「CE疲れ」という言葉が聞こえるのは、資源循環をビジネスとして成立させる条件が追いつきにくく「取り組むべきことは増えるが、採算の見通しが立ちにくい」という感覚が生まれやすいことにあります。

資源循環を持続的なビジネスとして成立させる条件として、2つの要素が不可欠です。まず、「中長期目線」です。資源循環ビジネスは法制度の制約も多く、投資回収に時間を要するため、キャッシュフローの観点ではどうしても初期のキャッシュアウトが先行しやすいという難しさがあります。二番目は「目利き力」です。事業者の取り組みが本当にビジネスとして成立するものか、環境価値を生む循環なのか見分ける力が必要になります。

ただ、「CE疲れ」という声が聞こえる一方で、私が注目しているのは、その後に続くプレイヤーが着実に増えているという事実です。先行者が道を切り拓いたことで、後に続く企業や自治体が現れ、CEの裾野が確実に広がっています。実際に地方では、自治体との連携だけでなくファイナンスが供給されることで、資源循環が実現している例をいくつも見ています。これはCEがしっかりと形になりつつある証拠だと捉えています。

武藤副CSuO

武藤:その動きをさらに加速させるためには、先生がおっしゃった「中長期目線」と「目利き力」、金融機関としてまさに頑張りどころだと感じています。先日のセミナーで先生がおっしゃっていた「生産・消費の循環に対して、まだ金融が同期していない」というご指摘は、私たち自身が解決すべき課題として受け止めています。

中長期目線・目利き力を活かす〈みずほ〉のCE戦略。CE産業を創る“オーガナイザー”へ

細田先生:では、いま〈みずほ〉がどう考えているかぜひ伺ってみたいと思います。まず「中長期目線」。昨今の資本市場では短期的な収益を評価されがちですが、〈みずほ〉は中長期目線も重視されているのはなぜなのでしょうか。

武藤:〈みずほ〉では、中長期の課題をお客さまと共有し、共有した社会課題の解決の中にビジネスチャンスがある、だから一緒に挑戦しようと対話する姿勢がDNAとして根付いています。パーパス『ともに挑む。ともに実る。』は、その姿勢そのものです。

私自身、最近外部から〈みずほ〉に加わったからこそ、日々の業務に「中長期目線」を発見しそれが深く根付いていることを実感しています。お客さまと継続的に対話し、お取引を積み重ねながら、経営課題や事業環境の変化を丁寧に捉え、必要なサービスを適切なタイミングで届けていく、いわゆる「リレーションシップバンキング」の考え方を大切にしています。中長期で顧客と信頼関係を築いたうえで、社会や環境の変化とともに新しく発生する課題解決に一緒に取組み、対価をいただくという〈みずほ〉のビジネスモデルは、資本市場からも評価いただいているのだと考えています。

そうした伴走のあり方は、〈みずほ〉の『青さで、挑む。』というメッセージとも重なります。未来に描く夢や理想に向けて一歩を踏み出すお客さまの「青い挑戦」を、支えていきたいと思います。

パーパス『ともに挑む。ともに実る。』

細田先生:次は〈みずほ〉の「目利き力」についてです。武藤さんの話を伺う前に、私が考える「目利き力」について整理させてください。

まず挙げられるのは、優れた事業者の真価を見抜く力です。事業者の中には、確かな技術を持つプレイヤー、CE関係者同士の「つなぎ役」ができるプレイヤー、それから広く社会的な信頼を築いているプレイヤーが存在しています。こうした事業者の本質的な潜在価値を見抜くことが求められます。その次は、CEを取り巻く複雑な法制度や社会慣習がある中で、「リスクの所在」と「制度の追い風」を見極める力です。

これらを総合し、事業者の力量だけでなく、制度面を含めてCE全体を俯瞰して見極めることが「目利き力」の本質だと考えています。金融機関がこの「目利き力」を発揮して資源循環と同期した資金循環を生み出せれば、持続可能性なビジネス、そして社会的インパクトの両立も実現できるはずです。

武藤:おっしゃる通り、金融機関がまず見る事業者の財務内容といった狭い部分だけでなく、法制度や事業者の周囲からの信頼のされ度合い(いわゆるソーシャルキャピタル)まで含めて見ることが必要になります。そのためには、金融機関は単なる資金の出し手にとどまらず、知見を蓄積し、社会に還流させる「ナレッジバンク」としての役割も期待されていると思っています。

細田先生:「ナレッジバンク」という言葉は興味深いです。循環経済ではナレッジが重要な付加価値であり、CE事業者をつなぐ基盤にもなります。金融機関がこの機能を前面に出して語ることは、これまであまり多くなかった印象があります。

武藤:前職において途上国向けの開発金融に携わっていた頃、法制度や市場が整備途上にある中で事業を推進していく場面が多くありました。そのときに必要なのは、幅広い知見を集めて中長期で市場が機能するためには、今何をすべきかを見極めることでした。例えば世界銀行は、自らをナレッジバンクと位置づけ、資金提供だけでなく、知見の共有を重視してきました。こうした姿勢は開発金融の世界で広く共有されており、国づくり、新しい市場づくりに取り組む基礎になっていました。CEも、ある意味では「市場がつくられつつある分野」です。だからこそ、開発金融と同じように、資金だけでなくナレッジで支える発想が応用できると考えています。

〈みずほ〉でも、金融に加えてリサーチやコンサルティング等の知見を組み合わせ、お客さまや社会の課題解決に取り組む中でナレッジを蓄積してきました。CEに関しても、静脈産業ならではの地域事情や制約を長年追いかけてきたコンサルティング部隊がナレッジ面で重要な役割を果たしています。

武藤:そのコンサルティング部隊とサステナビリティの部隊が一緒に考える中で出てきた〈みずほ〉としてのCE戦略のポイントは、地域軸と領域軸目線で考えることと、〈みずほ〉はCE産業を創り出す“オーガナイザー”をめざすということです。

CEビジネスを考える上で、まず大きなハードルになるのが、各地域に散らばった使用後の資源を回収し、次の事業者へつなげることです。加えて、使用後の資源に対する廃棄物の収集運搬・処理の許認可などは、地域毎そしてマテリアル毎に条件が異なります。

そこで、地域とマテリアルの種別で整理してそれぞれのボックスでビジネスの仮説を立てたうえで、全国のネットワークや官公庁・企業支援の状況も踏まえながら、どの地域をまとめればスケールが実現可能になるか、そして誰がCEの担い手になり得るかなどを見極め、全体としてCEのループが繋がっていくよう考えています。これが地域軸のアプローチです。

〈みずほ〉のアプローチ

細田先生:先日始動した「瀬戸内資源循環プロジェクト」を訪問した際、〈みずほ〉が関わっていると知って驚いたのを覚えています。よくアンテナを張って探索されていると感じました。〈みずほ〉は多様な関係者と意見交換し、貪欲に知恵を擦り合わせる姿勢が印象的で、CEビジネスの鍵である「目利き力」を発揮されていると感じます。

CE実現に向けた挑戦:瀬戸内エリア、廃トラック架装へのアプローチ

武藤:瀬戸内資源循環プロジェクトに触れていただきありがとうございます。中心となっているオガワエコノス社と〈みずほ〉は、廃プラスチックのサーキュラーエコノミー実現に向けた第一歩として、地域における高度なリサイクルフローの社会実装で連携しています。現在、その一環として取り組んでいるのが、廃食品トレーをケミカルリサイクルにつなげ、水平リサイクルの実現をめざすものです。

食品トレーは身近な存在ですが、トレーの色や表面加工によって、水平リサイクルを実現するのは簡単ではありません。高度な分別技術に加え、各工程を連携させることが必要になります。そこで、オガワエコノスが拠点を置く福山という立地にも着目しました。福山を含む瀬戸内エリアは、石油化学産業の集積があり、川上から川下までのプレイヤーがそろっています。オガワエコノス社が中心となって、地域の特性を生かしながら、バリューチェーン上にある各プレイヤーを地域軸でつなぐ取り組みに、〈みずほ〉は伴走しています。

広島県で採択された産学連携図

細田先生:地域とマテリアルの目線が見事に重なり期待できる動きが出ていると感じます。オガワエコノス社がCEの担い手になり、瀬戸内という地域に、資源の分別能力・回収ノウハウ・油化・石油精製・再資源化という、一連のループが構築され、食品トレーに戻る。そこに今後、ファイナンスも重なっていくことで、新しい環境価値が生まれるとともに、新規原料(一次原料)の使用を抑える良い取り組みと思います。

武藤:廃食品トレーの水平リサイクルを通して、CE実現のみならず、バージン原料の削減を通じて気候変動の抑制や自然資本の保全にも貢献できる事例になればという狙いもあります。食品トレーだけでなく、他の地域・マテリアルにも学びを展開できないか、次の仮説づくりにもつなげていきたいです。

武藤:もう一つ、領域軸アプローチであり、輸出入や経済安全保障に関わるテーマでもあるアルミニウムの循環についてもお話しさせてください。

日本ではアルミニウムの原料鉱石が無く、精錬には大量の電力を要するため、ほぼすべてを海外からの輸入に依存しています。一方、リサイクルアルミであれば、新地金の製錬と比べてGHG排出量を約1/30に抑えられるという利点があります。しかし、その原料となる自動車などの使用済み製品は、多くが海外に流出しており、国内では十分に活かせてはいません。

こうした背景から、アルミニウムのクローズドループ構築に向けた取り組みも進めています。具体的には、日本軽金属グループ、TREホールディングスとともに、日本初となる廃トラック架装(荷台部分)におけるアルミニウムのクローズドループ構築に向けた実証を実施しています。ただし、トラックの架装は合金や加工の種類が多様で、合金別に精度よく選別することが難しいなど、課題も残っています。まだ途上ではありますが、実証を重ねながら前進しています。

事例:廃トラック架装におけるアルミニウムのクローズドループ構築(イメージ)

細田先生:アルミのクローズドループ、まさに今取り組むべきテーマだと考えています。経済安全保障の観点は、環境経済学者としても悩ましいところですし、政策当局も問題意識を持っている領域です。日本は資源小国にもかかわらず、自由貿易を重視してきた中で、結果として、日本から潜在的な資源価値が高いアルミや鉄スクラップ等が流出しています。足元では、各国・地域が静脈資源の囲い込みに動く中、日本ではまだ十分に対応できていない点が課題だと感じています。

しかも、日本の資源再生の技術は高い水準にあるので、その技術を有効活用し、自国の使用済みの貴重な資源を海外に出すのではなく、国内で高品質な循環を実現する仕組みづくりが早急に必要であると思います。こうした課題に対して、金融機関が積極的に取り組んでいることは非常に重要であり、今後の展開に期待しています。

グローバルな社会課題解決と経済成長の両立に向けて解を探し、お客さまとともに挑む

武藤:一方で、海外に視野を広げると、別の可能性も見えてきます。とりわけ東南アジアでは、出張先で現地の企業経営層と対話する中で、バイオマス、プラスチック、E-wasteの話題が自然に上がってきて機会として捉えているようです。日本企業がそうした中で新しいビジネスを開拓し現地のCEに貢献するという方向性もあるのでしょうか。

細田先生:途上国では廃棄物の効率的な回収システムが整っていないことが多いので、産業廃棄物、プラスチック、E-waste等は大きな課題になっています。適切な処理を行わなければ汚染につながり得るため、地域の実情に合った形で、回収・処理の高度化を支えることが重要です。例えば、国際ルールや法令を踏まえた上で、適正な費用負担と責任分担のもとに国を超えた体制を整備できれば、環境負荷を抑えた望ましい循環につながると思います。

こうした国際的な取り組みを進めるうえでも重要なのは、関係者全員にとってメリットがあるように設計することです。CEの実現は、他の国はもちろん、将来世代に資源を残せる公益性を持っています。しかし、公益性だけでは事業は続きません。だからこそ、適正な対価を含め、関係者が納得して参加できる設計が重要で、これからは公益と私益を合わせて追及していく方向がないと、持続可能な形にはなりにくいと思います。

武藤:公益と私益をどう重ねるか、どうシステムづくりをするか、ビジネスとしてどう持続させるかは、CEだけでなく、気候変動、自然資本等でも共通のテーマです。他の分野で見えつつある解決策としては、例えば、カーボンクレジットのように環境価値を取引できる単位にする方法があり、インセンティブを反映すべく取り組みが進んでいます。CEでも、同様に価値をどう創出して流通させるか、という可能性を探ってみたいです。

細田先生:おっしゃる通り、経済と環境を両立させるには、環境価値を価格や取引に反映させなければならず、CEの観点ではまだ実現できていません。金融には金融の知恵があり、事業者にも知恵があり、上手く紡ぎ合わせられれば、新しい価値を生み出せるのかもしれません。

〈みずほ〉には、個別の成功例という「結晶」を一つひとつ積み上げ、それを面的な広がりにつなげていく役割を期待しています。事業者同士の関係性をつなぎ、CE実現に結びつけていってほしいです。

武藤:ありがとうございます。まさに、まずは個別の「結晶」を増やすところからだと思っています。本日重要だと教えていただいた中長期目と目利き力を発揮しながら、瀬戸内資源循環プロジェクトやアルミニウムのクローズドループ構築の事例のように、地域軸と領域軸でお客さまをつなぎ、ファイナンスも含めて一体で支えられるよう取り組みを深めていきます。

※記事の内容は、取材当時のものです

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東海大学 政治経済学部 経済学科教授 学長補佐 細田 衛士 プロフィール画像

東海大学 政治経済学部 経済学科教授
学長補佐

細田 衛士

環境経済学と資源循環政策の分野で研究・政策提言のキャリアを重ね、東海大学にて現職。1977年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、同大学経済学部助手、助教授を経て、1994年より教授。2001年から2005年まで同大経済学部長を務めた。中央環境審議会委員や環境省政策評価委員会委員などを歴任し、廃棄物処理・リサイクルの経済学、資源の循環利用に関わる制度・政策を中心に研究・発信を行う。公益財団法人 自動車リサイクル促進センター(JARC)代表理事(理事長)として自動車リサイクルの推進に携わるほか、3R・資源循環推進フォーラム会長として3R・循環経済の普及にも取り組む。

みずほフィナンシャルグループ 常務執行役員 グループ副CSuO 武藤 めぐみ プロフィール画像

みずほフィナンシャルグループ 常務執行役員
グループ副CSuO

武藤 めぐみ

開発金融と官民連携の現場でキャリアを重ね、2025年4月よりみずほフィナンシャルグループにて現職。サステナビリティの戦略企画・推進を行う。海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)で開発金融に従事。JICAでは開発金融・パートナーシップ・資金動員領域を統括し、開発金融機関や国際機関、民間金融機関と連携したブレンデッド・ファイナンスを主導。OECD開発援助委員会(DAC)では、日本として開発金融統計に関する作業部会の副議長を務めた。