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100歳を超えてもワクワク働ける農村の実現のために。みずほ銀行も参画する「更別スーパービレッジ構想」とは。

100歳を超えてもワクワク働ける農村の実現のために。
みずほ銀行も参画する「更別スーパービレッジ構想」とは。

100歳を超えてもワクワク働ける農村の実現のために。みずほ銀行も参画する「更別スーパービレッジ構想」とは。

北海道の人口約3,000人の小さな村に、日本中が注目!

北海道の中心部から南東方面に広がる十勝平野。大きな耕地が広がっており、北海道でも有数の農業地帯として知られています。その広大な十勝平野の南部に位置しているのが更別村(さらべつむら)です。人口は3,000人ほどで、十勝地方の母都市である帯広市から南へ約35kmの地点にあります。村内には小麦畑やジャガイモ畑など大規模な農地が見渡す限りに広がり、北海道ならではの豊かな風景が広がる農村です。

そんな更別村がいま、日本中から注目を集めています。その理由は、村の暮らしが持つ地域課題をデジタルやDXで解消する「更別スーパービレッジ構想」を推進しているからです。この構想は国が強力に推し進めているデジタル田園都市国家構想のタイプ3(リーダー的事業)に道内で唯一採択され、少子高齢化や人材不足といった課題の解消はもちろん、20年30年後の豊かで持続可能な村の実現に向けて「100歳になってもワクワク働けてしまう奇跡の農村」をコンセプトに掲げるとともに、「じいちゃんばあちゃんQOL(quality of life)世界一の村の実現」を合言葉に、様々な取り組みに挑戦しています。

具体的には、IoTの活用や自立自走トラクターの開発を通じたスマート農業の実現など産業活性化の取り組みをはじめ、村の人々が自家用車に頼らず移動できるようにする自動運転車によるデマンド交通(乗合運行)の導入や、外出しなくても荷物が届くドローン配送、買い物サービスの開発など、村民の移動や物流がより快適になる取り組みを推進しています。また、顔認証による証明書の発行や、ウェアラブルデバイスやタブレットを通じた健康の見守り、もしもの時は異常を検知し、迅速な救命を実現するデータ連携など、暮らしの安全・安心を高めるサービスの実装や開発にも取り組んでいます。

北海道の人口約3,000人の小さな村に、日本中が注目!

キャッシュレスの促進をはじめ、様々な知見やネットワークを活かして構想をサポートするために、包括連携協定を締結。

「更別スーパービレッジ構想」では、村民の生活利便性向上の一環として、キャッシュレスの推進も大きな取り組みの一つに位置付けられています。そこで出番となったのが、みずほ銀行の独自決済サービス「J–Coin Pay」です。

もともと更別村とみずほ銀行の接点は、更別村で実施予定だった健康ポイント配布の取り組みに「J–Coin Payの仕組みを活用できないだろうか」というご相談をいただいたことがキッカケでした。みずほ銀行としても同じタイミングで自治体DXの領域での事業検討を進めており、村長をはじめ、村の皆さまから「更別スーパービレッジ構想」が創る未来の姿を直接お伺いしたことで、本格的な支援を決意し、現在までの取り組みへとつながっています。

現在、更別村との連携はさらに加速しており、キャッシュレスを起点としながら、金融の枠を超えた共創をめざし「更別村スーパービレッジ構想の実現に向けた包括連携協定」を締結。2023年2月27日には村役場で調印式を行いました。調印式当日は、雄大な日高山脈と青空のパノラマが広がる快晴に恵まれ、穏やかな陽気の中、村長との会話も弾み笑顔が生まれるなど、更別村とみずほ銀行、両者の想いや絆を深める良い機会となりました。

今後はこの協定をもとに、様々な取り組みを実施する予定で、既に第一弾として2023年3月にマイナンバーカードを取得した村民を対象に、村内のJ–Coin Pay加盟店のみで使える「J–Coin ボーナス(さらべつポイント)」3,000円分の付与を実施しました。村内でのマイナンバーカードの普及を後押しすることで、安心で利便性の高いデジタル環境創りを行っています。また、みずほ銀行をはじめとするグループ各社が持つ金融やデジタルテクノロジーのノウハウを活用し、「更別スーパービレッジ構想」の事業継続に向けた枠組みの整備を行う予定です。特に資金調達の面では、業務委託の際に事業の成果に応じて、委託料の最終支払い額が決まる成果連動型民間委託契約(PFS)や、民間からの外部資金調達を伴うSIB(Social Impact Bond)など、みずほ銀行が実績を持つ手法を駆使しながら、構想の実現をめざして、絶え間ない支援を続けていきます。

キャッシュレスの促進をはじめ、様々な知見やネットワークを活かして構想をサポートするために、包括連携協定を締結。

20年30年後も豊かで持続可能な村づくりに向けて、先進的な取り組みを行っている更別村。「スーパービレッジ構想」が生まれた理由や、みずほ銀行とともに取り組みを行おうと考えた背景について、西山村長にお話を伺いました。

デジタルやDXはあくまで手段の一つであり、
目的は人と人とのつながりを深めていくこと。

——そもそもスマートビレッジ構想の検討をスタートされたキッカケを教えてください。

西山:2016年の夏に台風が相次いで十勝地方に襲来し、その内3つが直撃したことで周辺の町では、甚大な被害が出ました。更別村は比較的災害に強いと言われていましたが、台風が来た瞬間よりむしろ、台風が過ぎた後が大変で、もともと湿地帯だったこともあって、農地から水が引かない、いわゆる滞水と冠水被害が大きかったのです。いくら最新鋭のトラクターが多くあっても、収穫時期にまず畑に入ることができません。さらに育てていたジャガイモも全部流され、そこら中に点々と転がっていたり、小麦もカビが生えて売り物にならなかったりと、村を支えているのは農業ですから、経済的にも大きな被害がありました。

その時、農家の方々から「畑に入らなくても防徐する方法はないか」という声をいただきました。他にも「畑が大きいのでドローンを使って農薬散布ができないか」、「離れた畑に自動走行トラクターを使えないか」といった声があがり、それがスマートビレッジ化へと舵を切る直接のキッカケとなりました。

——スマート農業だけでなく、構想全体がデジタルを軸とすることに至った理由は何でしょうか。

西山:災害対策として農家の方々の声に応えることはもちろんですが、それだけでなく、村全体にデジタル化が必要と考えた理由は、村が持つ課題にあります。高齢化が進んでいたこともあり「村の中で誰が一番困っているんだ」というと、やはり地域で暮らす、おじいちゃんや、おばあちゃんなわけです。更別村は小さな村ですから、タクシー会社もありません。日常の移動もそうですし、買い物に行けなかったり、病院に行きたくても行けなかったり。もし何かあっても救助を求められず孤独死する人が増えてしまう。そうした将来への危機感を感じていたんですね。その解決には、デジタル化に村全体で取り組むことが不可欠だと考えました。そこで、いち早く5Gの通信環境も整え、様々な施策を始めました。そして、それらの取り組みは一つひとつが分散しているわけではなく、医療、教育、交通、産業がひと繋がりのデジタルベーシックインフラとして機能することをめざしていて、日常の移動から買い物、健康管理まで、つまり朝起きてから夜寝るまでの暮らし全体を、デジタルを横ぐしに一気通貫でサポートすることで、24時間見守ったり、今よりもっと生活を便利にすることをめざしています。

——「100歳になってもワクワク働けてしまう奇跡の農村」をコンセプトにした理由を教えてください。

西山:スマートビレッジのことを話すと「最先端の未来都市を作りたいのか?」と聞かれることがあります。実はそうではなく、本当に大切にしているのは「人と人とのつながり」。つまりコミュニティの発展です。デジタルやDXはそのための手段でしかありません。私は高齢者のことを「幸せに年を重ねられるまち」という思いを込めて「幸齢者」と呼んでいます。スマート農業があるから、年齢を重ねてもやりがいを持って働ける。暮らしが便利で、いつでも安心して病院に行けるから、笑顔で過ごす人が増えて、人のつながりが深まったり、新しいつながりが生まれたりもする。このように様々な取り組みの成果が最終的にはコミュニティの発展に還元されることがスマートビレッジ化の大きな目的であり、「100歳になってもワクワク働けてしまう奇跡の農村」というコンセプトに込めた想いでもあります。やはり村というのは一つの共同体ですので、コミュニティのつながりの深さこそが、安心や安全を含めた村の持続可能性にもつながると思っています。

デジタルやDXはあくまで手段の一つであり、目的は人と人とのつながりを深めていくこと。

西山村長とみずほ銀行の皆さん

みずほ銀行さんがお持ちのDXの知見や
ノウハウを活かしたアドバイスをどんどんしていただきたい。

——みずほ銀行とともに取り組みを行うことになったキッカケを教えてください。

「スマートビレッジ構想」の中でキャッシュレスを推進するにあたって、国からの助言としても大手の金融機関としっかり連携をして欲しい、と言われていました。その中で、みずほ銀行さんがやってらっしゃる「J–Coin Pay」に関しては国が一目も二目も置く仕組みや利便性を持っていて、さらに、これまで積み重ねて来られたノウハウの強さもありますから。ちょうどみずほ銀行さん側でも自治体DXのサポートを強化しているタイミングだったこともあって、「ぜひ、みずほ銀行さんとともに実現していきたい」という結論に至りました。健康ポイント配布の取り組みをキッカケとして、ご相談をさせていただいたのですが、国を代表する金融機関と北海道の小さな村ですから、私自身はまさに大海に飛び込むような気持ちで、大手町の本店にお伺いさせていただいた、というのが始まりでした。

——現在までの取り組みの中で、みずほ銀行への印象はいかがでしょうか?

「J–Coin Pay」を通じたキャッシュレスが暮らしの利便性はもちろんですが、地域内経済全体の活性化につながるだろう、ということを確信しています。また、みずほ銀行さんは会津若松や八丈島をはじめ、他の自治体でのDXに関する様々な実績をお持ちですから、お任せする上での安心感もあります。

あと、何よりも、本店にお伺いした時もそうでしたが、その後、更別村にも訪れていただいて、何度も交流を深める中で、非常に親身になってお話を聞いていただきましたし、現在もとことん面倒を見ていただけていることが大変ありがたいな、と感じています。時には無茶なご相談をすることもあるのですが、村のことを考えて何とか応えようとしてくれる。そういった、みずほ銀行の皆さんの気持ちと言いますか、気概みたいなものに、いつも助けられています。更別村は人口3,000人の小さな村です。そこに目を付けていただいたのは、みずほ銀行さんの先見性に他ならないと思っています。

——今後、みずほ銀行に期待することを教えてください。

直近の取り組みである「J–Coin Pay」の浸透を二人三脚でしっかり取り組んでいきたいと考えています。また、金融に関することだけでなく、みずほ銀行さんがお持ちのDXの知見やノウハウを活かしたアドバイスをどんどんしていただきたいですね。このたび、包括連携協定も結ばせていただきましたが、それだけ村の課題を深いところまで共有いただけている、ということですから、信頼できる良きパートナーとして村の経済のさらなる循環や、村の人々のウェルビーイングが増していくための取り組みを、様々な面からサポートしていただけると嬉しいです。

みずほ銀行さんがお持ちのDXの知見やノウハウを活かしたアドバイスをどんどんしていただきたい。

ヘルスケアから観光まで、金融の領域を超え、
これからも新しい価値の共創をめざして。

西山村長からのお話にもある通り、今後も更別村と〈みずほ〉による「更別スーパービレッジ構想」の取り組みは加速していく予定です。それは〈みずほ〉の得意領域である金融に限らず、村の皆さまの安心を支えるヘルスケアや、更別村に眠る様々な資源やアクティビティを活かした観光の活性化など、金融の枠を超えた幅広い領域で連携していきます。

例えばヘルスケアに関しては、〈みずほ〉が持つネットワークを活かして、SOMPOケア社が手掛ける、ケアが必要なご本人やご家族のための、無料アプリ「ケアエール」の導入や「J–Coin Pay」との連携等を検討中です。「ケアエール」は一人暮らしの高齢の両親や親戚、自宅で介護されている祖父母など、大切な人の体調や予定が共有でき、写真やテキストでコミュニケーションも取ることができるアプリで、在宅ケアや施設など介護の現場で使われ始めています。

もともとケアエールは〈みずほ〉が参画する「スマートシティ会津若松」で活用されており、高齢化という同様の課題を持つ更別村でもできるのではないかと目をつけ、〈みずほ〉がSOMPOケア社と更別村との面談をセットしたことから検討が始まりました。このように〈みずほ〉の強みの一つである、多彩な企業とのネットワークを活かし、観光を盛り上げるための宿泊施設や、スマート農業をさらに進化させるテック企業の紹介など、キャッシュレス推進に留まらず、新しい価値の共創につながる様々な取り組みを、これからも進めていきます。

文・写真/みずほDX編集部

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