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現場の課題がAI活用を加速させる。社員有志で共創する「Wiz Chatラボ」の取り組み。

現場の課題がAI活用を加速させる。
社員有志で共創する「Wiz Chatラボ」の取り組み。

OVERVIEW

2025年1月から3月にかけて、〈みずほ〉版テキスト生成AIアシスタント「Wiz Chat」の活用事例を創出する企画「Wiz Chatラボ」が開催されました。この取り組みは、全国の営業拠点から有志で参加したメンバーが、業務上の課題を起点に「Wiz Chat」を活用した解決策の立案・作成を行うものです。この記事では、「Wiz Chatラボ」開催の目的や背景、現場の課題に即して作成されたプロンプトテンプレート等の成果について紹介します。

INDEX

  1. 1
    「Wiz Chat」の活用の輪を広げる活動がスタート。
  2. 2
    営業部門に求められるプロンプトとは。
  3. 3
    正確性が求められる事務作業の負担を削減。
  4. 4
    「Wiz Chat」を、1人でも多くの社員の当たり前に。

「Wiz Chatラボ」の目的

「Wiz Chatラボ」の目的

営業拠点での利用率の向上をめざして。
「Wiz Chat」の活用の輪を広げる活動がスタート。

2023年6月に国内社員が使用できるテキスト生成AIアシスタント「Wiz Chat」をリリースして以降、生成AIによる業務効率化とビジネス機会の創出を進めている〈みずほ〉。「Wiz Chat」の利用率は右肩上がりで推移している一方、コーポレート部門に比べると各営業拠点による活用が進んでいないことが課題となっていました。

そんな中、〈みずほ〉のAI戦略を担うデジタル戦略部 デジタル・AI推進室の発案によって、みずほ銀行・みずほ信託銀行を対象にした社員参加型の「Wiz Chat」活用事例創出企画、「Wiz Chatラボ」が開催されました。この企画はコーポレート部門と全国の営業拠点が連携し、「Wiz Chat」で使えるプロンプトテンプレート(AIに生成指示を行うための定型フォーマット)の立案・作成を通じて、業務上の課題解決策を模索するものです。初開催となる今回は、全国の営業拠点から集まった14名の有志メンバーが参加。「法人営業部門」「個人営業部門」「店舗・事務部門」の3つのチームに分かれ、事務局であるデジタル・AI推進室と連携しつつ、「Wiz Chat」を用いた課題解決アイデアの発案からプロンプト作成、テンプレート化までを実践し、取り組みの最後には実際に作成したプロンプトテンプレートを紹介する成果報告会を行いました。

「Wiz Chat」の機能が大幅にアップデートされた際に開催されたオンラインレクチャー会には約3,000名が参加する等、〈みずほ〉では社員による生成AI活用の機運が高まっています。各々が積極的に生成AIを活用する土壌が形成されつつある中、コーポレート部門だけでなく、全国の営業拠点を巻き込んで行われた「Wiz Chatラボ」。その取り組みの詳細と、現場の課題に向き合うことで生まれた〈みずほ〉ならではのプロンプトテンプレートの一部をご紹介します。

新規事業のアイデア出しに手続きのチェックまで。営業部門に求められるプロンプトとは。

新規事業のアイデア出しに手続きのチェックまで。
営業部門に求められるプロンプトとは。

日々、法人のお客さまと向き合う「法人営業部門」では、お客さまにとって付加価値の高い提案を迅速に行うことや、いかにお客さまと良好な関係性を築けるか、といった点を重要視しています。これを背景に、「Wiz Chatラボ」では営業活動の質の向上と効率化に向けたアイデアが多く生まれました。

その中の1つである「新規事業立案プロンプト」をご紹介します。新規事業に関するディスカッションは、お客さまのビジネス戦略の根幹に関わる重要なアクションである一方で、アイデア出しや方向性のすり合わせ等の難易度が高く、それらの高いハードルを乗り越えて提案を実施しても、なかなか事業の検討まで議論が至らないことが現場の課題でした。この課題を解消すべく考案された「新規事業立案プロンプト」は、お客さまの新規事業立案に対するアイデア出しのサポートを行います。アイデア出しから提案内容の具体化までを自動的に行うことで、業務の効率化を図るとともに、難易度の高い提案に取り組む担当者の精神的な負担も軽減します。また、IR資料等の公開情報を用いるため、汎用性が高い点も特長です。

具体的には、お客さまとなる企業の有価証券報告書、統合報告書等の情報を入力して企業の「強み」やその企業の強みを活かす新規事業のアイデアと市場規模イメージ、さらに事業に取り組む際のメリット・デメリット、適切な協業先といった情報が出力されます。これにより、資料作成の効率を高めるだけでなく、お客さまとなる企業の強みを再認識したうえで、さまざまな方向性のアイデアを一度にご提案できるようになります。豊富な選択肢をもとにより深い議論が行えるようになることは、お客さまの事業検討や企業価値向上に向けた取り組みの後押しとなり得ます。また、こうしたご提案を重ねることで、M&Aを始めとした重要な局面で、真っ先にご相談いただけるような関係性の構築につなげられたらと考えています。

一方、「個人営業部門」チームでは、個人のお客さまへの保険商品提案の際のサポートや面談記録作成サポート等のプロンプトを作成しました。その中の1つである「高齢者販売のフロー確認」をご紹介します。

〈みずほ〉では、投資運用商品の販売ルールを含め、高齢者のお客さまにも丁寧なフォローを提供しています。しかし、この業務には複雑な手続きが多く、特に経験の浅い営業担当者にとっては、事務手続の確認が大きな負担となっていました。このような課題を解消するために生まれたのが、「高齢者販売のフロー確認」のプロンプトです。これは、高齢者のお客さまに投資運用商品を販売する際のフローと適合性のチェックを自動化するもので、手続きの漏れを防ぐとともに作業者の負担を軽減します。手続きの確認は面談ごとに5~10分程度、複数名で行っていたため、1成約あたり少なくとも30分程度の時間短縮が可能です。年間25件の面談を行うと、1人あたり年12.5時間の負担削減が見込まれ、創出した時間でお客さまと向き合う時間が増えることが大いに期待されています。

正確性が求められる事務作業。その負担を抑える「店舗・事務部門」チームのアイデアとは?

正確性が求められる事務作業。その負担を抑える
「店舗・事務部門」チームのアイデアとは?

日々、たくさんのお客さまと向き合い、多くの事務作業が発生する「店舗・事務部門」チームでは、作業の効率化に関する課題が多く、それらの課題をもとに6つのプロンプトを考案しました。その中の1つである「予約管理表の自動作成」プロンプトは、お客さまの予約管理を行う担当者が窓口までの案内を行うロビー担当者との連携を行う際に利用するものです。

これまで、予約管理の担当者は来店予約管理システムに記載されたお客さま情報やメールで予約の内容を確認した後、当日の必要書類や対応事項等を手書きで記入し、事前にお客さまを案内するロビー担当者に渡す必要がありました。この作業は時間がかかるうえに、「担当者によって書き方が違う」「手書きで読みづらい」等の指示を受ける側の負担もありましたが、このプロンプトに来店予約管理システムの情報を入力することで、ロビー担当者への指示事項が分かりやすく一覧化された管理表が出力され、よりスムーズなお客さま対応が可能となります。年間に来店されるお客さまの件数は、営業拠点1店舗につき年間約1,200件以上。単純計算で、1件あたり3分削減されることで、1店舗につき年間60時間程度の削減が見込まれます。さらに全国の約460店舗で活用すると27,000時間以上の削減が見込まれ、誤対応や案内漏れがなくなることによる、お客さま対応の品質向上も期待することができます。

「Wiz Chatラボ」参加者と事務局メンバー

「Wiz Chatラボ」参加者と事務局メンバー

これからも、組織全体で活用を推進。
「Wiz Chat」を、1人でも多くの社員の当たり前に。

「Wiz Chatラボ」開催の背景には、コーポレート部門に比べて各営業拠点での生成AI活用が進んでいないという課題がありました。一方で、コーポレート部門に所属する事務局メンバーは営業拠点の業務に十分精通していないケースが多く、事務局だけでは実務に即したプロンプトを作成しにくいという課題がありました。今回、「Wiz Chatラボ」を通して、両者が意見やアイデアを出し合うことで実用性の高いプロンプトテンプレートの作成が可能となり、各営業拠点のメンバーもプロンプトエンジニアリングに関する知見を深め、「Wiz Chat」の活用スキル向上につながりました。

そして、活動の総決算として2025年3月には、全国の営業拠点向けに「Wiz Chatラボ」のオンライン成果報告会が行われ、多くの社員が参加しました。各営業拠点ですぐに活用できる合計14種のテンプレートが紹介され、成果報告会の参加者からは『これまで「Wiz Chat」をうまく活用できていなかったので、非常に勉強になった』「プロンプトの作成に苦労していたが、今回の報告会で理解を深めることができた」等のコメントが寄せられました。

今後は、「Wiz Chat」の活用が進んでいない店舗に対して、今回作成したプロンプトテンプレートをいかに広めていくかが重要です。また、2025年3月からはアジア太平洋地域の3カ国でも「Wiz Chat」の利用が始まりました。海外での活用事例を収集して国内へ還元する等、グローバルに事例を共有していく取り組みも進めていきたいと考えています。

生成AIツールは導入することがゴールではありません。組織全体での活用をいかに推進し、具体的な事例を創出していくかが重要となります。〈みずほ〉では、2025年度も引き続き「Wiz Chat」活用を推進し、新しいアイデアやビジネスを創り出していきます。

文・写真/みずほDX編集部

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