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90%を超える解決率を実現。社内文書検索システム「MOAIサーチ」誕生の道のり。

90%を超える解決率を実現。
社内文書検索システム「MOAIサーチ」誕生の道のり。

OVERVIEW

近年、目覚ましい進歩を遂げている生成AI。みずほ証券でも業務利用が進んでおり、その取り組みの一つとして、生成AIを活用して社内文書を検索するシステム「MOAIサーチ(モアイサーチ)」を開発しました。「MOAIサーチ」は今まで時間を要していた社内ルールや手続き等の検索性を高め、業務効率を改善するシステムで、複数の部署の共創を通じて使いやすさや情報の正確性を追求することで、リリース前のユーザーテストでは90%を超える解決率※を実現。現在は業務利用も始まっており、様々なシーンで文書検索の効率化を支えています。

※利用者の質問に対し、本システムが示す回答および回答の元となった文書を参照することで正しい回答を得ることができる比率。

INDEX

  1. 1
    生成AIを活用した社内文書検索システムを開発。
  2. 2
    〈みずほ〉でも例がない「MOAIサーチ」の特長。
  3. 3
    金融業界ゆえの回答精度というハードル。解決率を高めるための工夫とは。
  4. 4
    今後も更なる効率化に向けて、挑戦を止めない。

全社員が素早く正しい文書にたどり着くために。生成AIを活用した社内文書検索システムを開発。

全社員が素早く正しい文書にたどり着くために。
生成AIを活用した社内文書検索システムを開発。

この数年、目覚ましい進歩を遂げている生成AI。みずほ証券においてもその活用は進んでおり、生成AIを活用して社内文書を検索するシステム「MOAIサーチ」を開発しました。
開発の背景にあったのは、社内ルールや手続き、事務マニュアル等、約4,000件を超える文書の検索のしづらさです。調べたい内容によっては関連する複数の文書を参照する必要があり、それぞれの文書を社内のポータルサイトから探してきたり、見つからない場合はその都度、所管する部署に問い合わせを行ったり等、煩雑で時間が掛かることが社員の負担となっていました。そのため、マニュアルの検索性向上は、複数の社内ルールや手続きのもとお客さまへの総合資産コンサルティングを担うリテール領域をはじめ、全社で取り組まなければならない大きな課題でした。
この課題の解決に向けて立ち上がったのが、リテール業務プロセス改革※におけるマニュアル整備や事務マニュアル等の管理を担う事務企画部と、基本方針や規程等の管理を担う経営企画部、システム開発を担うITサービス・プラットフォーム部です。
そして、本プロジェクトは生成AIを活用して社内文書を検索するシステムを内製開発する挑戦的な取り組みであり、どの程度効果があるか計画段階では評価しづらく、効果創出までに時間がかかることが見込まれる取り組みでした。そこで、みずほ証券独自の「DXサンドボックス制度」と呼ばれる、DX案件の推進過程で生じる課題や取組負荷の解決・軽減を目的とした予算・人的支援を行う制度の活用により、社内のDX推進を担うデジタル戦略部と共創する座組みで、「MOAIサーチ」の開発プロジェクトがスタートしました。

※デジタル化を通じた効率化に留まらず、事務をなくし(そもそも事務を発生させない)、事務の在り方を変え、「生産性の向上×お客さまの利便性・満足度の向上」をめざす取り組み。

MOAIサーチの入力画面イメージ

MOAIサーチの入力画面イメージ

簡単操作で、的確に検索。
〈みずほ〉でも例がない「MOAIサーチ」の特長。

「MOAIサーチ」は、ユーザーが入力する社内ルールや手続き等に関する質問をもとにAIが社内の文書を横断検索し、回答文章の生成や、回答の元となった文書へのリンクを表示するシステムです。
名称の「MOAI(モアイ)」とは、「Mizuho Open AI」の略であり、2023年7月にリリースしたMOAIチャット(みずほ証券版ChatGPT)をはじめ、Azure OpenAI Serviceで提供されるAIモデルを活用したシステムのシリーズ名称です。また略称の「MOAI」は「未来に生きる」という意味をもつイースター島のモアイをモチーフにしており、みずほ証券の未来を明るく導いてくれることを期待し命名されました。
その具体的な使い方としては、まず調べたい内容を文章で入力。次に探したい文書のカテゴリや回答精度を高める定型文を、選択し送信するだけで、AIが大量の文書やナレッジの中を横断検索し、自然言語での回答と箇条書き形式での参考元文章を表示してくれます。
誰もが簡単に扱うことができるシステムとなっていますが、さらに「MOAIサーチ」が優れている点は、検索対象としている文書数の多様さにあります。「人事」、「事務」、「コンプライアンス」等の特定の領域に絞らず、すべての領域を対象とした約4,000件を超える文書をAIが横断して検索・回答します。この点が「MOAIサーチ」の最大の特長であり、ここまで対象文書を絞り込まずに検索ができ、さらに回答精度が高いシステムは〈みずほ〉でも例がなく、先進的な取り組みとしてグループ内でも注目を集めました。

MOAIサーチの解決率(リリース前のユーザーテストより)

MOAIサーチの解決率(リリース前のユーザーテストより)

金融業界ゆえの回答精度というハードル。
解決率を高めるための工夫とは。

書類の不備や手続きのミス1つが、お客さまからの信頼喪失や法令違反につながる可能性のある金融業界。その特性上、「MOAIサーチ」には高い回答精度も求められており、開発チームでは、大きく2つの取り組みを推進しました。
1つ目は検索対象となる文書の選定です。まず正しい情報をもとに回答するために、事務企画部および経営企画部の管理のもと最新の情報であることが担保されている文書のみが対象になるようにシステムを構築。「RAG※」という手法を採用し、最新の情報から検索した結果をもとにAIが回答するため、正しい情報の文書に基づいた回答が得られるようになりました。
2つ目は精度そのものを向上させるための取り組みです。例えば、AIが勝手に存在しない回答を作ってしまう「ハルシネーション」と呼ばれる現象を防ぐために、参考元として表示される文書は複数の候補の中から「より回答に関連の高い文書」へAIが絞り込む仕様にする等、工夫を実施。さらに検索手法については複数の手法を組み合わせながら何度も検証を行い、最終的には2種類の検索法を組み合わせ回答を生成するという手法を採用しています。こうした細やかな工夫と調整を積み重ねた結果、当初30%程度だった解決率が、半年後のユーザーテストでは約96%まで大幅に改善。また一方でシステム上100%の精度に達することが難しいことから、回答と参考元として表示される文書の確認を利用者に義務づける等、利用ルールの整備も合わせて行いました。
こうして誕生した「MOAIサーチ」。その裏側には何より開発に携わった4つの部署の熱意があります。様々なユースケースの洗い出しから始まり、欲しい回答の具体的な言語化といった、地道な作業はもちろん、徹底したユーザー目線での使いやすさや精度の追求等、部門の枠を超えた、まさにワンチームでの挑戦が実った結果と言えます。

※「Retrieval Augmented Generation」の略。検索機能と大規模言語モデル(LLM)を組み合わせて、利用者の質問に対して検索技術を用いて社内文書データベースから関連する情報を取得し、その情報を基に自然な文章を生成することでより正確で信頼性の高い回答が可能となる手法。

4部署を横断して構成されたプロジェクトメンバー一同

4部署を横断して構成されたプロジェクトメンバー一同

導入後は全社で業務負荷が軽減。
今後も更なる効率化に向けて、挑戦を止めない。

4つの部署の熱意ある取り組みで解決率約96%という精度を実現した「MOAIサーチ」。
さらに、ユーザーテスト後に実施したアンケートでは、使いやすさや見やすさに関する評価はポジティブ評価の割合が90%以上で、約98%のユーザーから継続して使いたいという回答を得ました。また、社内ルールの検索や問い合わせにかかる業務時間を最大約6割(1人当たり約340分/月)も削減。より生産性の高い業務やお客さまへのサービス品質向上につながる業務への時間を創出することが可能になり、社員からも「簡潔な回答と適切な参照資料で大変役立った」、「実際の文書まで表示されるため、探す時間が短縮できた」等、高評価の声が多く寄せられました。
そして、業務本番での利用に向けては、利用ルールの整備やレクチャー動画の発信等を通じて適切な使い方を継続的に発信。「MOAIサーチ」の浸透に尽力したことで利用する社員数も増えており、日常の業務における様々な場面で、検索の効率化に寄与しています。
今後も検索対象文書の拡大や、いわゆるエンタープライズサーチのような社内ポータルサイトの検索性を向上させる新たなシステム導入も計画する等、生成AI活用を通じた業務効率化を推進していく、みずほ証券。
〈みずほ〉全体でも生成AIに関する社内リテラシーの醸成を進めるとともに、社員が本来、力を発揮するべきところに注力できる生産性の高い環境作りを推し進め、お客さまへの「もっといいサービス」や「もっといいお客さま体験」へとつなげていきます。

文・写真/みずほDX編集部

「MOAIサーチ」に関するお問合せはこちら

MOAIサーチお問い合わせ窓口

pur_in_moai_search.support@mizuho-sc.com

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