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データに強い組織をめざして。「みずほデータサイエンスチャレンジ2024」の運営担当者&受賞者にインタビュー。

データに強い組織をめざして。「みずほデータサイエンスチャレンジ2024」の運営担当者&受賞者にインタビュー。

〈みずほ〉はデータ利活用をリードするDX人材の育成・発掘を行うべく、グループを横断した実践型コンペ形式イベント「みずほデータサイエンスチャレンジ2024」を開催しました。このコンペはどのような背景や狙いのもと開催され、参加者はどのような想いを持って参加したのか。イベントの運営担当者と入賞者たちによる座談会を行い、それぞれの立場から「みずほデータサイエンスチャレンジ2024」について語ってもらいました。

INDEX

  1. 1
    社内向けのデータ分析コンペを初開催。
  2. 2
    成功に導いた鍵は、運営の高い熱量。
  3. 3
    取り組む中で得た実感や感動が、最大のモチベーションに。
  4. 4
    一人ひとりの挑戦を通じて、〈みずほ〉を、よりデータに強い組織へ。

グループの垣根を超えて、データ活用の意識を醸成。社内向けのデータ分析コンペを初開催。

グループの垣根を超えて、データ活用の意識を醸成。
社内向けのデータ分析コンペを初開催。

デジタル技術の進展に伴い、金融業界においてデータの重要性が増しています。〈みずほ〉では「ビジネスのあらゆるシーンやニーズに対応するために、データ活用スキルは不可欠」との認識のもと、人材の育成に注力しており、その一環として、「人材育成」「人材発掘」「データ活用意識醸成」を目的に、グループ横断のデータ分析コンペ「みずほデータサイエンスチャレンジ2024」を初開催しました。
コンペには、初・中級者向けのBasicコースと、上級者向けのTechnicalコースの2コースを設置。Basicコースでは、テーブルデータを用いた「ホテルの評価値予測」の回帰問題(数値の予測)が、Technicalコースでは、OCR(画像データから文字を識別)がテーマとして設定されました。参加した社員は2コース合わせて900名を超え、大きな盛り上がりを見せるコンペとなりました。

本記事では、運営を主導した、株式会社SIGNATEの谷津裕一郎氏とみずほフィナンシャルグループ(以下「みずほFG」)データマネジメント部の高嶋大介、そしてBasicコースの入賞者であるみずほFGの中岡良太、相澤尚伸、みずほ銀行の松尾英彦による座談会を実施。「みずほデータサイエンスチャレンジ2024」への想いを聞きました。

左から谷津 裕一郎氏(SIGNATE社)、高嶋 大介(みずほFG)

左から谷津 裕一郎氏(SIGNATE社)、高嶋 大介(みずほFG)

試行錯誤しながら学べるのがコンペの良さ。
成功に導いた鍵は、運営の高い熱量。

─このコンペが開催された背景を教えてください。

高嶋:金融業界において、データの品質に対する要求度合や使用頻度が高まる等、データの重要性が確実に増してきています。リスク管理高度化や法規制対応等の「守りの側面」に加え、時流として技術革新が進む中で、AI活用やDX推進等の「攻めの側面」においてもデータが不可欠です。この環境変化に対し、〈みずほ〉ではデータガバナンス態勢やデータ基盤の整備に取り組んでいますが、データ利活用はデータを扱う人材がいなければ進みません。このため、環境整備と並行して人材育成にも注力しています。
データ活用人材の育成においては、知識の習得のみならず、データ活用の一連プロセスを実践することが有効です。私自身、外部のコンペに何度か参加していますが、自分で手を動かし、試行錯誤しながら学ぶことができるコンペの仕組みは座学研修にはない実践的な経験が得られる場だと実感しています。この経験を〈みずほ〉の社員にも体験してもらい、スキルアップするとともにデータを活用する意識醸成にもつなげていきたいと思い、今回の「みずほデータサイエンスチャレンジ2024」を企画しました。

─SIGNATE社との協働のきっかけを教えてください。

高嶋:将来的に社内の誰もがビジネスにデータを活用する「データの民主化」をめざす中で、本コンペにおいても、高度な分析スキルを持つ方にとどまらず、これまでデータを活用する経験がなかった方も含めた皆さんに参加してもらいたいと思い、特に「初学者が取り組みやすい環境を提供すること」を重視しました。この我々の考えに対して、SIGNATE社さまが提供するコンペのプラットフォームや初学者をサポートするための学習コンテンツのほか、生成AIを活用したハンズオン(体験型)セミナーや、その活用方法の創造性や実用性を評価する表彰制度導入等、具体的な提案をいただき、それがまさに我々の求めているものであったため、ぜひ運営チームとして協働させていただきたいと思いました。

谷津氏:初学者へのサポート施策としては、生成AIの活用方法に関する研修に加え、「Dataiku」のハンズオンセミナーも取り入れました。「Dataiku」は、ノーコード、ローコード、フルコードの機能を持つユニバーサルAIプラットフォームです。コーディング知識のない初学者から上級者まで、既存の知識を活かしてAI開発ができるもので、組織全体の効率や生産性の向上につながります。従来データ分析コンペは「Pythonで参加するもの」と思われがちですが、〈みずほ〉のコンペはこういった活用ツールの幅を広げることで、ノーコーダー、ローコーダー、フルコーダーといった、すべての社員にコンペ参加の門戸を広げました。こうした取り組みは、過去に研修としてコンペをご支援した企業でも前例がなく、〈みずほ〉ならではの先進的な取り組みだと思っています。結果として、今回のコンペは、初回にも関わらず「900名以上」と、大変多くの方々に参加いただきました。金融業界全体から、データを活用していこうという機運を感じていますが、〈みずほ〉の皆さんの熱量の高さは特に印象的でした。高嶋さんを始めとする運営メンバーの方々が高い企画力・推進力を持って意欲的に取り組まれていたので、その熱意が参加者にも伝わったのだと思います。

高嶋:今回のコンペはグループ全体で「データ活用意識醸成」という目的もあったので、参加者の募集にも力を入れました。全社への通達による募集の他、エレベーター内のモニター放映やポスターを使った告知等、やれることは全てやりました。また、データに対する関心が高まっているとはいえ、まだまだ専門的な領域として捉えられやすいので、豊富な学習コンテンツやデータサイエンティストによるサポート、十分な事前学習期間を設定する等、初学者でも一から学べる仕組みを準備し、これを打ち出すことで、参加への心理的ハードルが下がるよう心がけました。

谷津氏:Basicコース以外で〈みずほ〉のコンペにおいて特筆すべき点として、Technicalコースを設計から運営、評価までを全て社内で完結させている点は、外部の我々から見ると非常に驚くべきことです。繰り返しになりますが、運営の皆さんがスキルも意欲も持ち合わせているからこそ、初開催でここまで盛り上がるものが実現できたのだと感じています。

左から中岡 良太、相澤 尚伸(みずほFG)、松尾 英彦(みずほ銀行)

左から中岡 良太、相澤 尚伸(みずほFG)、松尾 英彦(みずほ銀行)

取り組む中で得た実感や感動が、
コンペをやり抜く最大のモチベーションに。

─皆さんの普段の業務内容と、コンペに参加したきっかけを教えてください。

中岡:みずほFG主計部に所属し、米国市場に上場しているみずほFGの米国決算業務と主計部全体で進めている決算業務のDX推進を担当しています。前職では経理部に所属し、月次・年次決算対応等の通常業務に加え、Pythonを使った経費精算処理の業務効率化を行っていました。実はまだ〈みずほ〉に入社して1年にも満たないのですが、入社から3ヶ月経った頃に開催を知り、ぜひやってみたいと思い、参加を決意しました。

松尾:みずほ銀行リテール法人推進部に所属し、中小企業のお客さま向けの商品企画・管理に携わっています。機械学習関連では、お客さまの与信判断の自動化をめざし、与信モデルを活用した商品を担当しており、グループ会社のみずほ第一フィナンシャルテクノロジーと協働し、推進してきた経験があります。VBAは多少経験がありますが、Pythonのプログラミングはほぼ未経験で、自分でも大量のデータを活用して業務に活かしたいと思ったのが参加のきっかけです。設定されたテーマの面白さにも惹かれました。

相澤:みずほFG事務企画部に所属し、社内のプロジェクト等のモニタリング業務に携わっています。業務でのプログラミング経験はありませんが、学生時代に学んでいた統計学の延長で、改めてデータサイエンス分野を学びたいと思っていたところ、このコンペのことを知り、実践的なスキルが身につけられると考え、参加しました。

─Basicコースの課題テーマの設定はSIGNATE社がサポートしましたが、今回のテーマとその意図について詳しく教えてください。

谷津氏:ここにいる3名が参加されたBasicコースのテーマは、宿泊データからホテルの評価を予測するというものです。ホテルという誰にも馴染みのあるテーマかつ、一般的な表形式のテーブルデータを用いるので初学者も取り組みやすいのですが、精度を出すためには数値の分析に加えて、レビューのテキストデータを用いた自然言語処理に踏み込む必要があるので、データ分析の奥行きを感じてもらえるかなと考えました。

中岡:このテーマ設定は絶妙でした。定量的な数値データがあるので最初の一歩は踏み出しやすいのですが、進めていくと精度が一定までしか上がらず、さらに精度を高めるためにはテキストデータの分析が必須です。実際にやってみると、想像以上に奥が深く良い意味で驚きました。

─コンペ中に一番苦労したのはどのような点でしょうか? また、コンペをやり遂げるモチベーションはどのように維持しましたか?

中岡:実業務と並行して行いますので、自己研鑽として始めたこのコンペにどれだけコミットするべきか葛藤はありました。ただ、スコアが上がるのをゲーム感覚で楽しめるようになってからは、最後までやり切りたいという想いが強くなってきたのを覚えています。

松尾:以前、外部のデータ分析コンペに参加した際にはノーコードツールを使用しましたが、今回はPythonで取り組んでみたいという気持ちがありました。手探りで始めたもののやはり難易度が高く、最初は非常に苦労しましたが、生成AIを活用することでその壁を乗り越えられました。今回の挑戦を通じて、コーディングに対して感じていた自分の能力の限界を乗り越えることができることを実感しましたし、その実感や感動がやり抜くモチベーションになったと思います。また、個人的な話になりますが、受験を控えている子どもに「頑張れ」というだけではなく、自分自身が頑張っている背中を見せたいという気持ちもありました。

相澤:コンペではテキストデータの分析が肝でしたが、自分にはその分析方法が当初ほとんど分かりませんでした。そこで、生成AIで分析方法を調べ、テキストの感情分析等の手段を知り、生成AIと「Dataiku」を活用してモデルを作成し、予測結果をまた生成AIで分析する、ということを何度も繰り返しました。試行錯誤の過程で苦労しましたが、生成AIと「Dataiku」の活用について投稿用のレポートにまとめたことも含め、過程の一つひとつが自分にとって新たな学びになっていることを実感しました。また、コンペの終盤には、予測結果の投稿数の伸び、精度のせめぎ合いがあり、モニター越しに参加者の皆さんの熱量を感じたこともモチベーションになりました。それから、松尾さんのお話と少し重なりますが、子どもと一緒に自分のスコアを見て応援してもらっていたのもモチベーションになりましたね。

高嶋:運営としても、少し特徴値を加えていけば自分のモデルが完成するチュートリアルコードの配布や、更なる工夫のために生成AI活用を促す等、スタートを切ることや完走するための仕掛け作りに尽力しました。お話にもありました通り、皆さん生成AIや「Dataiku」をうまく活用されており、テクノロジーを駆使することでスキルや知識の壁を超えていく様子を目の当たりにすることができました。これは、今後データ活用を推進していくうえで、私にとっても大きな示唆になったと考えています。

一人ひとりの挑戦を通じて、〈みずほ〉における「データの民主化」を実現したい。

一人ひとりの挑戦を通じて、
〈みずほ〉における「データの民主化」を実現したい。

─入賞者の皆さんはコンペ参加の経験を今後の業務の中でどのように活かしていきますか?また、コンペ開催を通じて〈みずほ〉が今後どの様に変わっていくか、展望についてもそれぞれ聞かせてください。

中岡:自分自身で一つのことを企画、実行して検証するというサイクルを回すことができたのは良い経験でした。コンペを通じてデータ分析の奥深さを感じましたし、実際の業務でデータ分析を行うために、どのようなデータが必要かについて考える機会にもなったので、今後の業務に活かしていきたいです。今回の入賞をきっかけに、コンペに興味を持ってくれた方が所属部内にも多くいたので、データ活用への意識を高めることにも貢献できたのかなと思います。生成AIやデータ活用の分野は既に成熟しているようにも思えますが、ユーザーサイドから見るとまだまだ始まったばかりだと感じています。もう遅いと思わずに、少しでも多くの〈みずほ〉の皆さんと一緒に始められたらと思います。

松尾:コンペで得た知識やスキルはもちろん、普段の業務では中々できないアジャイルな進め方を実践できたので、その経験は今後の業務にも取り入れ、周囲を巻き込んでいこうと思います。また、データ分析は「専門家の仕事」というイメージがありますが、社員一人ひとりができるようになれば、やりたいことを実現して行く推進力につながり、ひいては〈みずほ〉全体の力になります。だからこそ、こういったコンペの開催が、その豊かな土壌作りの場として機能するといいなと思っています。

相澤:コンペを通じて、生成AI等を活用したテキストデータの分析に可能性を感じたので、業務の中でも取り組んでいきたいと思っています。生成AIやデータ活用は、あくまで業務課題への打ち手の一つですが、その重要性は高まっていると感じています。AI・データ活用への意識が高まり、各部署の一人ひとりが業務の専門知識とかけ合わせることで、より実態に即した打ち手につながると思いますし、そういった取り組みが、このコンペをきっかけに一層広がっていけばいいなと思っています。

谷津氏:まだ始めるのに遅くはないというのは、本当にその通りだと思います。〈みずほ〉には、熱意のある運営がいて、学ぶための機会も豊富に用意されていて、挑戦するには最高の環境だと思います。データに向き合って新たなビジネス創出につなげるべく、ぜひ一歩を踏み出してほしいです。

高嶋:入賞者の皆さんの前向きな言葉を聞いて、非常に頼もしく感じています。データ利活用を全社で強く推進するためには各部署の皆さんとの協力や協働が必要不可欠です。今後も「みずほデータサイエンスチャレンジ」や様々な研修を通じて継続的に実践機会を提供していきたいと思っています。また、参加者同士でコミュニケーションをとりながら、ともに学べる大きなコミュニティとして広がっていくことも期待しています。今後も意欲のある方々にはぜひ挑戦いただき、このような取り組みを通じて「データの民主化」を実現し、〈みずほ〉をよりデータに強い組織にしていければと思います。

まだ始まったばかりの「みずほデータサイエンスチャレンジ」。次回以降もさらに多くの参加者に取り組んでもらうことで、社内のデータ利活用への意識を盛り上げ、その先にあるビジネスはもちろん、お客さまや社会全体の変革や進化に寄与できるよう挑戦を続けていきます。

PROFILE

高嶋 大介の画像

みずほフィナンシャルグループ
データマネジメント部 企画チーム

高嶋 大介

クレジットカード会社にて、カード不正抑止やリスク管理、DX推進の経験を経て、2023年にみずほフィナンシャルグループに入社。現職ではグループ全体のデータマネジメント企画やデータ活用人材の育成に従事。

谷津 裕一郎 氏の画像

株式会社SIGNATE

谷津 裕一郎 氏

不動産、人材業界を経てSIGNATEに入社。現職ではデータサイエンティストとして、AI開発やデータ分析プロジェクト、開発や採用を目的とした分析コンペティションの設計や運営、業務効率化ツールの開発等を担当。

中岡 良太の画像

みずほフィナンシャルグループ
主計部 企画・米国会計チーム

中岡 良太

クレジットカード会社にて財務・経理の経験を経て、2024年にみずほフィナンシャルグループに入社。米国決算業務および決算業務のDX推進に従事。

松尾 英彦の画像

みずほ銀行
リテール法人推進部 営業開発チーム

松尾 英彦

2000年にみずほ銀行に入行。事務企画部・関連会社出向を経て、2019年からリテール法人推進部に所属。現在、中小企業のお客さま向けの与信商品の推進・管理に従事。

相澤 尚伸の画像

みずほフィナンシャルグループ
事務企画部 事務リスク管理室 モニタリングチーム

相澤 尚伸

2005年にみずほ銀行に入行。リスク統括部・与信企画部・国際事務部等を経て、2023年から事務企画部に所属。社内のプロジェクト等のモニタリング業務に従事。

※所属、肩書きは取材当時のものです。

文・写真/みずほDX編集部

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