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「量子コンピュータ」で、より良い社会へ。技術を幸せな未来につなげる〈みずほ〉の研究者たち。

「量子コンピュータ」で、より良い社会へ。
技術を幸せな未来につなげる〈みずほ〉の研究者たち。

「量子コンピュータ」で、より良い社会へ。技術を幸せな未来につなげる〈みずほ〉の研究者たち。

OVERVIEW

最先端のコンピュータとして研究されているのが「量子コンピュータ」です。現在のコンピュータでは数億年かかるような複雑な計算も、量子コンピュータなら、わずか数分、あるいは数秒で実行してしまうと言われます。その圧倒的な能力の土台には「量子力学」という学問の理論が応用されており、従来のコンピュータとは違った仕組みで動きます。
量子コンピュータの研究が本格的に始まったのは、1980年代頃から。現在も様々な機関が開発に携わっていますが、みずほリサーチ&テクノロジーズでも以前から研究がされており、本記事では現在どのように研究が進んでいるのか、日々挑戦と奮闘を続ける研究者の声を交えてご紹介します。

INDEX

  1. 使命は「科学をもとにした社会課題の解決」。量子コンピュータはその基礎技術に。
  2. 量子コンピュータ研究のトップランナーが在籍。アルゴリズムの特許も取得。
  3. 防災から新薬、新素材の開発まで。社会や暮らしへの貢献に挑み続ける。

使命は「科学をもとにした社会課題の解決」。量子コンピュータはその基礎技術に。

使命は「科学をもとにした社会課題の解決」。
量子コンピュータはその基礎技術に。

「最先端の量子コンピュータの研究は、幅広い領域における社会課題の解決策を導き出す基礎技術になると考えています。」そう話すのは、サイエンスソリューション部の谷村直樹です。
みずほリサーチ&テクノロジーズでは、50年以上にわたり、様々な自然現象や社会課題の裏側にあるデータ、数値を分析。その原理や仕組みを解き明かすために、大学や企業、国の機関と手を取りながら研究を行っています。「よりよい未来を創るために、科学の知見をもとにして現実社会の課題解決を図るのが私たちの使命です。」と、谷村は口にします。
みずほリサーチ&テクノロジーズの強みは、一つの技術や分野に限定されず、様々な業界の技術や課題を深く理解した上で、広範な知識を持って俯瞰的に研究開発を行えることです。そのため、多様な分野の中から、社会に貢献できる部分に重点的に取り組むことができ、世の中の技術の動きやトレンドを予測しながら、研究者が次の研究テーマを選定して事業に広げるサイクルを確立しています。
実際に研究してきたテーマは幅広く、自然災害に対する防災、新薬の開発、電源や自動車等の動力源に使われる燃料電池といった例があります。これらの研究を進める上で「量子コンピュータには桁違いの計算能力が見込まれ、極めて精緻な解析・シミュレーションを迅速に実現できると期待しています。」と語る谷村。

特に期待されるのが、燃料電池をはじめ、脱炭素社会の実現に向けた技術開発が加速することです。谷村は現在、燃料電池開発に必要なシミュレーションシステムも担当するチームを率いており、「約20年にわたり、燃料電池シミュレーションの研究開発を私たちの部門で続けてきました。水素が燃料として重要になり、燃料電池シミュレーションが鍵になるというアイデアを出したのは、おそらく私たちの部のメンバーが初めてです。」と語る通り、長年研究と経験を積み重ねてきました。しかし、様々な研究開発課題に対応しより精密なシミュレーションを行うためには量子物理学に基づく方程式が必要で、計算に掛かるコストも増加する一方です。この課題に対して、量子コンピュータの精緻な解析・シミュレーションが、従来のコンピュータと比べて桁違いの計算能力を発揮することで、脱炭素社会の実現に向けた技術開発を後押しすると考えています。

量子コンピュータ研究のトップランナーが在籍。アルゴリズムの特許も取得。

量子コンピュータ研究のトップランナーが在籍。
アルゴリズムの特許も取得。

現在研究されている量子コンピュータは、大きく2種類あります。1つ目は、みずほリサーチ&テクノロジーズが注力している「量子ゲート方式の量子コンピュータ」です。これは、様々な処理を広く汎用的に実行できるもので、現在のコンピュータと同じ処理をした場合、一部のタスクについては超高速で処理することが期待されています。
2つ目は「量子アニーリング方式の量子コンピュータ」です。こちらは量子イジング方式とも呼ばれますが、様々な処理を汎用的に行うのではなく、「組み合せ最適化問題」という特定の課題解決に特化しています。
みずほリサーチ&テクノロジーズで、この量子ゲート方式の研究を行っているのが、サイエンスソリューション部の宇野隼平です。宇野は東京大学の客員教授であり、同大学等が参画する「サスティナブル量子AI研究拠点」の副プロジェクトリーダーも務める量子コンピュータ研究のトップランナーの一人です。
宇野は研究の現在地について「量子コンピュータは演算等の影響によりノイズが必然的に混入するため、ノイズをどう低減・処理するかのアルゴリズム開発が伴わなければ活用はできません。私はこれまでにノイズを回避する新しい方法を継続的に開発・発表してきました。特に、金融業界でデリバティブの価格計算やリスク評価でよく使われるモンテカルロ計算を量子コンピュータでより高速に行うアルゴリズムの開発で特許も取得しています。」と語り、こうした研究開発を行いながら、量子コンピュータによって現実社会で起きている課題の解決を追求しています。

防災から新薬、新素材の開発まで。
社会や暮らしへの貢献を見据えて、研究に挑み続ける。

量子コンピュータの開発が進むと、どんな未来が想像できるのでしょうか。一つは、台風や津波といった自然災害への対策が手厚くなることです。量子コンピュータにより、台風の動きや進路、地上で発生する突風の様子、津波の高さや到達時刻等をより高精度に予測できる可能性があり、人々が災害から受けるダメージを減らすことにつながります。
また、新しい薬の誕生を加速させることも考えられます。新薬を作る際は、多種多様な成分の配合について、コンピュータ上で膨大な計算やシミュレーションが行われます。量子コンピュータによって、これらの計算を超高速に処理できれば、様々な成分の配合のシミュレーションが可能となり、今までに無い効能を持つ薬が誕生するかもしれません。
それ以外にも、スマートフォンや家電製品、自動車や建物等、あらゆるものに使われる「材料」の開発にも貢献できる可能性があります。より良い材料を作るためには、様々な物質を組み合わせるシミュレーションが必要であり、これまではその計算に多くの時間を費やしていました。しかし膨大な計算量が発揮できる量子コンピュータであれば、より大規模で精度の高いシミュレーションが行えます。「様々な分野において、未来の技術革新に大きなインパクトを与える技術の一つです。」と宇野が語る通り、量子コンピュータが与える影響は大きく、多彩な可能性を秘めています。単に先端技術を追い求めるのではなく、その先にある社会や暮らしへの貢献までしっかり見据える。その志を強く持ち、みずほリサーチ&テクノロジーズの研究者たちは、これからも挑み続けます。

PROFILE

谷村 直樹の画像

みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社

技術開発本部 サイエンスソリューション部 次長

谷村 直樹

材料・化学分野での研究開発やコンサルティングを専門とする博士(理学)。幼少期に工学博士のかこさとし氏が書いた「科学者の目」を読んで科学の楽しさに気づく。物質の根源を説明したいと素粒子論の研究をしていた際に、同社を知り興味をもって入社。

宇野 隼平の画像

みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社

技術開発本部 サイエンスソリューション部 上席主任コンサルタント

宇野 隼平

量子コンピュータの実用化に向けて、SQAI(サスティナブル量子AI研究拠点)の副プロジェクトリーダーとして研究開発を牽引する博士(理学)。素粒子論に興味をもって研究していた大学院生時代に、同学の益川敏英先生(故人)がノーベル物理学賞を受賞。自分の物理の知見を社会の広い分野に使いたいと考えるようになり、同社に魅力を感じて入社。

※所属、肩書きは取材当時のものです。

文・写真/みずほDX編集部

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