「銀行は動きが遅い」を過去にする。現場の声で磨き上げた営業支援AI「RM Studio」
2026年2月27日
- FGみずほフィナンシャルグループ
- BKみずほ銀行
OVERVIEW
〈みずほ〉が全社で推進する「WORK WITH AI@MIZUHO」。単なる業務効率化ではなく、AIを「優秀なパートナー」として迎え入れ、人間は人間にしかできない創造的な価値創出に集中するという新しい働き方のビジョンです。このビジョンを営業の最前線で形にしているのが、現在開発中の営業支援AI「RM※ Studio」です。就業者人口の減少に伴う人員変化の中でもお客さまに質の高いサービスを提供するため、AIエージェントが提案シナリオや資料のドラフトを自動生成する業務支援アプリケーションです。金融機関ならではの「厳格な情報管理」と「プロフェッショナルが求める高い品質」という2つのハードル。これらをクリアしながら、日進月歩のAI技術を取り入れるために〈みずほ〉が選んだのは内製開発の道でした。本記事では、開発の裏側と、PoC(概念実証)を経て見えてきた「AIと人との共創」のリアルな手応えを紹介します。
※RM:Relationship Manager(営業担当者)
INDEX

「RM Studio」概要図
〈みずほ〉が法人向け提案のAI化を加速させる理由
AIの急速な進化は、金融業界にも大きな可能性をもたらしています。ただし、金融機関がAIを業務に取り入れるには、厳格なセキュリティ基準の遵守やプロフェッショナルが納得する品質の確保など、クリアすべきハードルが数多くあります。「RM Studio」は〈みずほ〉の法人RMのために企画・設計し、現場の声を直接反映しながら作り上げている業務支援アプリケーションです。
〈みずほ〉ではこれまで、テキスト生成AI「Wiz Chat」や議事録作成AI「めんきくん」など、あらゆる業務の効率化に不可欠なツールを全社展開してきました。「RM Studio」はそこから一歩進んで、法人RMの業務に特化した専用設計となっています。単なる「便利ツール」の域を超え、業務プロセス全体をAI前提で改革することをめざし、現場の法人RMと対話しながら継続的に進化させてきた点が大きな特徴です。
将来的に法人RMの人員減少が見込まれる一方で、〈みずほ〉が提供するソリューションは極めて多岐にわたり、その中からお客さまに最適なものをご提案するには、豊富な知識と経験が求められます。「RM Studio」は、この高度な業務を支援することを狙いとしています。AIがウェブ情報や社内情報を収集し、提案シナリオや資料のドラフトを自動生成。経験の浅い若手のRMでも、AIが提示する切り口をヒントに、よりお客さまの課題に寄り添った質の高い提案ができるようになります。

「RM Studio」画面(イメージ)
厳しいフィードバックを原動力に。行員同士だからこそ実現したアジャイル開発の裏側
「RM Studio」の開発チームには、システムエンジニア出身で新規事業開発の経験を持つメンバーや、法人RM経験を持つメンバー等、様々なバックグラウンドを持つメンバーがプロダクトオーナーとして参画しています。社内に実際のユーザーが2,000人近くいるという環境をいかして、本当に必要とされるものを作りたいという思いのもと、開発が進められてきました。
ただ、法人RMの業務経験を持たないメンバーもいる中で、開発を担当したプロジェクトチームにとって、営業現場の理解は一筋縄ではいきませんでした。当初チーム内のRM経験者への徹底したヒアリングからスタートし、各プロセスでの課題やストレスを一つひとつ洗い出し、万全の準備を行ったつもりでした。しかし、いざプロトタイプを現場に見せたところ、「自分たちの業務には合わない」「現状では活用が難しい」といった厳しい声を突きつけられました。というのも、〈みずほ〉では企業規模や業界をもとに営業チームが分かれており、お客さまの課題によっても求める情報は異なっていたためです。ただ、プロジェクトチームはこれを「改善の好機」と前向きに捉え、即座にユーザーをセグメント分けして、それぞれのニーズを再定義しました。
小さな失敗と学びを積み重ねながら、本当に役立つアプリケーションへと成長させていく。これこそが内製開発の強みです。また内製開発のもう一つの強みとして、技術の進化への対応スピードが挙げられます。たとえば、〈みずほ〉では昨年末、Googleの画像生成AIのレベルが急激に上がったことを受けて、約2週間後には当該技術を活用した機能を試験的に実装しました。最新の技術を取り入れながら、内部情報をどれだけシームレスに取得できるか、AIとの会話内容をCRMシステムに記録してナレッジを積み上げていけるか、という実用性を常に意識しています。そして、こうした動きを可能にしているのが組織全体の体制です。デジタル戦略部では新規事業開発・RM・システムエンジニアなど様々な経験を積んだメンバーたちが中心となってソフトウェア開発だけでなく、企画プロセス部分にもスクラムのフレームワークを一部導入し組織全体がアジャイルに動くことで、現場のフィードバックを迅速に開発へ反映できる体制を築いています。

提案準備時間を劇的に短縮。お客さまへの提案機会と提案の質が向上した結果、お客さまとの対話機会が3倍に。
2025年10月〜11月に実施した初回PoCでは、「RM Studio」の効果が定量的に確認されました。利用前は「1時間〜3時間未満」が最多だった提案準備時間が、利用後は「30分未満」が最多に。全体として約1時間の短縮という成果が出ています。
さらに重要なのは、創出された時間が提案内容の質向上へ再配分されている傾向が見られる点です。単なる効率化ではなく、お客さまへの価値提供の質が高まっています。PoCを通じて印象的だったのは、法人RM自身が試行錯誤しながら、複数のAIツールを組み合わせて最適な活用法を見つけ出していたこと。特に若い世代を中心に、AIを使うスキルやリテラシーが着実に進歩しています。
「RM Studio」がめざすのは「業務効率化」の先にある未来です。AIの力で事務的な作業をなるべく担うことで、法人RMはお客さまとの関係性構築に集中できるように。「AIを取り込んで効率化しよう」ではなく、24時間365日動いてくれるAIがそもそもある前提で業務プロセスを考えていく。
それこそが〈みずほ〉としてめざす世界です。生成AIで業務効率化を実現することは最終的なゴールではありません。めざしているのはその先にある、お客さまとの信頼関係や新たな提案など、お客さまとともに歩む未来。〈みずほ〉はこれからも、新しい技術を取り入れ、自らも変化を遂げながら、お客さまや社会とともに成長していきます。
文・写真/みずほDX編集部








