1. トップ
  2. DX事例一覧
  3. 会議の記録が変わった日。月間8,000人が使う議事録自動化アプリ「めんきくん」開発ストーリー。

会議の記録が変わった日。月間8,000人が使う議事録自動化アプリ「めんきくん」開発ストーリー。

会議の記録が変わった日。月間8,000人が使う議事録自動化アプリ「めんきくん」開発ストーリー。

OVERVIEW

「DX推進力の強化」を中期経営計画に掲げ、AI活用による業務効率化を進めてきた〈みずほ〉。その取り組みの一つとして、2025年11月から面談記録作成AI「めんきくん」の本格運用をスタートしていますが、開発のきっかけとなったのは、「議事録作成に毎回何時間もかかっている」という、現場から寄せられた切実な声でした。本記事では、プログラムの開発や運営に携わったみずほフィナンシャルグループ(以下「みずほFG」)デジタル戦略部の住吉賢司、佐藤慎吾、住谷格生、デジタル戦略部の内製開発ラボに参画する株式会社情報戦略テクノロジー(以下「IST社」)の勘田裕一氏、岡本和樹氏にインタビューを実施。「めんきくん」が生まれた背景から導入、本格展開までの舞台裏をはじめ、開発にまつわるエピソード、ユーザーからの反響、今後の展望等について話を聞きました。

INDEX

  1. 1
    アジャイル開発で、ユーザーとともに作り上げる。
  2. 2
    〈みずほ〉ならではのアプリを実現するために。
  3. 3
    8,000人の支持を受ける等、想定を超えた広がりに。
  4. 4
    DXは手段であり、人だからこそ生み出せる価値を考える。

左から住吉 賢司、佐藤 慎吾、住谷 格生(みずほFG)

左から住吉 賢司、佐藤 慎吾、住谷 格生(みずほFG)

現場の切実な声に応える。
アジャイル開発で、ユーザーとともに作り上げる。

─「めんきくん」の概要と、開発が始まった背景について教えてください。

住吉:「めんきくん」は、会議等の議事録の文字起こし、フォーマット整形を自動で行ってくれるアプリケーションのことです。
議事録の作成というのは、業種・業態にかかわらずとても時間のかかる作業です。社内の会議に加え、RM(Relationship Manager:営業担当者)がお客さまとの会議後に行う面談記録の作成等にも、継続的に大きな労力がかかっています。私自身、その負担の大きさを肌で感じていましたし、現場からも「この作業的な業務を何とか改善できないか」という声が多く上がっていました。

住谷:全国のRMに「業務効率化の観点で課題と感じていること」についてアンケートを取ったところ、議事録作成は第3位に入るほど、優先度の高い問題でした。そうしたニーズに応えるアプリの実現をめざし、開発がスタートしました。

─皆さんは、このプロジェクトでそれぞれどのような役割を担っているのでしょうか?

住吉:私はプロジェクトの初期段階でメンバーにアサインされました。テクノロジーパートナーの技術的知見を最大限に活用したいという狙いがあり、プログラムの企画段階からアマゾンウェブサービスジャパン合同会社(以下「AWS社」)、IST社と連携し、関係者やステークホルダーとの調整も含めて全体のプロジェクトマネジメントを担当しました。

佐藤:私は途中からプロジェクトに参加し、主にインフラ構築を担当しました。インフラ面では社内外との連携が不可欠で、細やかな配慮や調整が求められる場面も多かったです。

住谷:私は住吉さんより少し遅れてプロジェクトに参画しました。主にPoC(Proof of Concept:概念実証)の運営や、アプリの本番リリースに向けたスケジュールの立案・推進を担当しました。

勘田氏:私はIST社のエンジニアとして、プロジェクトの初期段階から参加しました。アプリ・インフラ問わずアーキテクチャー全般の設計・開発をリードし、実装の統括も担っていました。

岡本氏:私は本番開発のタイミングでエンジニアとしてアサインされました。主にバックエンド処理のコアメンバーとして、開発業務を担当しました。

左から勘田 裕一氏、岡本 和樹氏(IST社)

左から勘田 裕一氏、岡本 和樹氏(IST社)

〈みずほ〉ならではのアプリを実現するために。
開発を行ううえで感じた難しさとは。

─このアプリの、〈みずほ〉ならではと言える特長があれば教えてください。

住吉:非常に性能が高いLLM(Large Language Models:大規模言語モデル)であるClaudeをベースに、〈みずほ〉の業務に最適化したプロンプト設計を徹底的に行ったことが特長です。単に文字起こしをするだけでなく、部署ごとに異なるフォーマット要件に対応できるよう、複数のプロンプトを用意しました。また、このアプリは育成と実務活用が一体化した仕組みになっており、使えば使うほど、知らないうちに「AIってこんな感じなんだ」と分かるようになっています。

─アプリの設計・開発に関して、最も苦労した点はどういった部分でしょうか?

佐藤:LLMのバージョンアップに伴う調整ですね。モデルの進化に伴い、継続的なプロンプトの調整が必要でした。モデルのバージョンが変わったら、出力される議事録も全然違うものになってしまうんです。プロンプトとLLMは対で考えないといけないと痛感しました。

住谷:私はプロンプトのチューニングも担当しましたが、いろいろな部署でフォーマットが違うと思っていたので、アンケート等で「どういう項目が入っているとうれしいか」というヒアリングをしました。PoCでは、数多くの社員に参加していただき、非常に有益なフィードバックを集めることができましたが、「みずほの議事録フォーマットにうまく合わせるように出てほしい」という要望もあって、バランスの調整には苦労しましたね。

住吉:住谷さんがおっしゃる通り、プロンプトが要件に直結する特性があるので、システム開発目線で考えずに利用シーンを最大限考慮する必要があります。どう変えるかというところはプロンプトの地道なチューニングが効いていますし、フォーマット種類を増やす際の汎用化は住谷さんが苦労して実現しました。

─IST社のお二人は開発に参画してみていかがでしたか?

勘田氏:プロジェクト加入時には、デジタル戦略部さんとAWS社とで基本的な機能はほぼ完成しており、我々はアプリケーションのエンジニアとして参加したのですが、お客さまが考えたプロンプトを実際にアプリに組み込むという経験はほぼなかったので、非常に新鮮でした。

岡本氏:開発を進めていくと、技術面では文字が少しずつ出てくるストリーミング機能が動かない、アイドルタイムアウトが多発するといった問題があり、社内環境固有の課題もあって原因究明に苦労しましたが、その分、それらをクリアできた時が最もうれしかったですね。

人事面談から1on1、朝礼・夕礼まで。8,000人の支持で、想定を超えた広がり。

人事面談から1on1、朝礼・夕礼まで。
8,000人の支持で、想定を超えた広がり。

─そもそも「めんきくん」という名前の由来は何でしょうか?

住吉:〈みずほ〉では面談記録のことを面記(メンキ)と略す人が多く、アプリを擬人化すると親しまれやすいんじゃないかということで、「めんきくん」としました。名前を見直すタイミングもあったのですが、最終的にこれで良いよね、ということになり正式に命名されました。

佐藤:擬人化によって親しみを感じてもらうことに成功していると思います。他部署に話を聞きに行った時には、その活用度の高さからか「めんき様」と呼ばれたこともありました(笑)。

リリース後の反響はいかがでしたか?

住吉:議事録作成の負荷が減ったということに加えて、会議での課題抽出がしやすくなったという声が多かったです。「ToDo」を振り返る点や、英語のミーティングも安心して振り返れるというメリットも大きかったように感じます。

住谷:「めんきくん」リリースより以前は手書きでメモを取りながら対応していたので、その手間が消えたことを非常にポジティブに捉えていただいています。「毎回、議事録を一から作らなければならなかったが、その手間がなくなった」という声を聞けたことは、開発チームとして間違っていなかったと思えました。また、ユーザーからの声として「この使い方を教えてください」という質問が来ることがあります。お問い合わせをするという手間をかけてでも使いたがっていただけるということにうれしさを感じました。同時に、もっと直感的に分かりやすいUIにする必要があるという気づきも得ました。

佐藤:既存の議事録作成アプリは、社外に持っていけない等、限られた環境でしか使えないことがネックでした。RMの方たちからは「“覚えていなければならない、メモを取らなければならない”という気がかりがなくなった」という声をよくいただきます。

─「めんきくん」は、当初想定していなかった使い方でも活用されていると聞きました。

佐藤:はい。社内での人事面談や1on1でよく使っているという話を聞いています。記録が不要になり、より会話に集中できるようになった、と。

住吉:RMにも、お客さまとのミーティングでもう当たり前のように使ってもらっています。また、営業拠点では「朝礼・夕礼」でも使われていますね。

佐藤:そうですね。営業拠点で朝礼や夕礼の内容をまとめて、参加していない人も含めて一斉に配信するんです。メールに記載しているので、わざわざテキストを配らなくていい。社内で使われているコラボレーションツールMicrosoft Teams(以下「Teams」)に記載する場合も、コピーすれば良いだけですから作業が大幅に効率化できます。専用のプロンプトを設定している営業拠点もあるようです。また、「役員会議の議事録をまとめて社内で共有している」というユースケースもありました。同じことを言っている部分をうまくまとめてくれる等、「めんきくん」の文字起こしは精度が高く、非常に高評価で、既存のサービスを代替させるまでになりました。

─利用状況はどうなっていますか?

佐藤:2025年12月末の時点でMAU(Monthly Active Users:月間アクティブユーザー)が8,000で、〈みずほ〉内での利用率が20%を超えています。

勘田氏:もう8,000人にもなっているんですね!これだけの人数が使用しても安定して動いているのは、事前のシステム負荷テストが生きていますね。あらゆるパターンで負荷テストをやりましたから…。

─「めんきくん」が多くの社員に支持される理由は何だと思いますか?

住吉:ずばり「使いやすさ」ではないでしょうか。難しい操作が必要だと結局みんな使わなくなってしまうので、アプリを立ち上げてボタンを押すだけという「シンプルな操作」は非常にこだわったポイントです。

佐藤:“AI”というと身構えてしまう社員も多いと考えられたため、できるだけシンプルに使えることが重要でした。テキスト化の精度についても気を配っており、テキスト化エンジンの選定や辞書機能の追加等で高い精度を実現できています。

単なるツールを超えて。DXは手段であり、人だからこそ生み出せる価値を考える。

単なるツールを超えて。
DXは手段であり、人だからこそ生み出せる価値を考える。

─「めんきくん」の今後の展望について教えてください。

岡本氏:変化や進化の激しい技術ですので、常に最新情報をキャッチアップして、新たな機能を生み出していく仕組みを作り続けなければならないと思います。今の「めんきくん」は、録音して、それを議事録に起こして、一つの会議として取っておくという蓄積の機能がメインです。そこの部分はもう現状でほぼ完成されています。

佐藤:なので、これからは、ビッグデータとして、どんどん蓄積されている議事録を活用するフェーズに移っていきたいと考えています。また、切れ目なくアップデートをかけられるよう、日々工夫をしていますし、ユーザーの声を聞いてアプリの機能を改善し続けることで、より活用して仕事をしようという意識が生まれ、さらに「めんきくん」がアップデートされる。そんな好循環を生むことができればと思います。

勘田氏:Teams会議との連携等、外部サービスとの連携にもすでに取り組み始めています。既存のアーキテクチャーを変えていく必要がありますが、恐れずに変えていくところにこのプロジェクトの面白みを感じています。まだまだ可能性のあるアプリです。

住谷:それに、利用者拡大の観点では、まだまだできることはあるという印象です。普段から、より使いやすくなるようにという思いで色々な機能を開発していますが、辞書機能といったまだ認知度の低い機能もあります。“会議のポイント整理”といった、最近追加した機能もあります。プロンプトを自分で変更したり保存したりという機能も、あまり恐れずに、とりあえずちょっといじってみるくらいの気持ちで触ってもらえたらうれしいです。

住吉:皆さんがおっしゃるように、使いやすさを追求し続けている「めんきくん」は生成AIに慣れるいいツールだと思っているので、社員の皆さんにはどんどん使い込んでほしいです。使えば使うほど、知らないうちにAIを体感することができます。LLMもバージョンアップし続けますし、入力もインタラクティブになっていくかもしれません。フィードバックもいただいて、デジタル戦略部がハブになり、いい改善の循環ができると思います。

─最後に、〈みずほ〉はAI活用によってどのように変わっていくと考えますか?

住吉:お客さまや社会に向けて、いかに価値が提供できるかが問われる中で、AIやデジタル活用の到達点をしっかり見据えて、〈みずほ〉全体が自ら変わっていくことが重要だと思います。

佐藤:AIやDXの話をすればするほど、人が提供できる価値は何なのかというところに行き着きます。このプログラムやDXの進化を通じて、我々一人ひとりがお客さま、社会に価値提供していくためのスキルを身に付けられるようになればと思います。

住吉:DXは〈みずほ〉が社会により良い価値を提供するための手段でしかありません。そして、AI等の技術革新が激しい現在において、DXはその手段として非常に重要な要素だと思うので、多くの社員がDXの知見を得ることで、グループ全体の変化の呼び水になれたらと願っています。

内容や機能のアップデートはもちろん、利用者の輪の拡大等、取り組みとしては更なる発展の余地がある「めんきくん」。これからも〈みずほ〉のあるべき姿を求めて、社会やお客さまの変化とともに、アジャイルに進化を続けるべく、プロジェクトを推進していきます。

PROFILE

住吉 賢司の画像

みずほフィナンシャルグループ
デジタル戦略部

住吉 賢司

1998年よりシステムエンジニアとしてキャリアをスタートし、金融・物流・エンタメ系等のシステム導入に係る上流工程・開発・システム運用に携わる。その後コンサルティング職を経て、2025年にキャリア採用でみずほフィナンシャルグループに入社。AIエージェントを活用し、全社のDX施策を推進中。

佐藤 慎吾の画像

みずほフィナンシャルグループ
デジタル戦略部

佐藤 慎吾

2008年にみずほ情報総研(現:みずほリサーチ&テクノロジーズ)へ入社。システムエンジニアとして、共済組合向け長期給付管理システムの保守・開発および運用に従事。その後、ICT技術を中心とする技術研究部門に異動し、クラウドやAI等、現代のDXを支える先端技術の研究に取り組む。
2024年からは、みずほフィナンシャルグループのデジタル戦略部に所属し、社内のDX推進施策を牽引している。

住谷 格生の画像

みずほフィナンシャルグループ
デジタル戦略部

住谷 格生

2024年に新卒でみずほフィナンシャルグループに入社。半年間のOJTを経て、デジタル戦略部に配属され、生成AIを活用した「めんきくん」プロジェクトに参画。PoCの運営から本番開発、さらに運用まで一貫して携わる。

勘田 裕一 氏の画像

株式会社情報戦略テクノロジー

勘田 裕一 氏

2024年にキャリア採用で情報戦略テクノロジーに入社。2009年からシステムエンジニアとして企業向け、コンシューマー向けのさまざまなWEBアプリケーションの開発・構築・運用に従事。現在はみずほフィナンシャルグループ・デジタル戦略室内製開発ラボのメンバーとして参画し、「めんきくん」の本番開発のほか、生成AIを活用した業務効率化をめざしたアプリケーション開発に携わる。

岡本 和樹 氏の画像

株式会社情報戦略テクノロジー

岡本 和樹 氏

2026年に情報戦略テクノロジーに入社。2016年よりシステムエンジニアとして一般企業・官公庁向けのDX支援システム開発業務に関わり、上流工程・開発・システム運用に携わる。2025年より「めんきくん」開発チームメンバーとして参加、運用支援を行いつつ拡張機能の開発を推進中。

※所属、肩書きは取材当時のものです。

文・写真/みずほDX編集部

RECOMMEND

  • Twitterシェアアイコン
  • Facebookシェアアイコン
  • LINEシェアアイコン
  • リンクをコピーしました