1. トップ
  2. DX事例一覧
  3. みずほ銀行・加藤頭取が自らAIエージェントを構築。トップが感じた「仕事の仕方が変わる」未来とは。

みずほ銀行・加藤頭取が自らAIエージェントを構築。トップが感じた「仕事の仕方が変わる」未来とは。

みずほ銀行・加藤頭取が自らAIエージェントを構築。
トップが感じた「仕事の仕方が変わる」未来とは。

OVERVIEW

昨今、ビジネス界の注目を一身に集める「AIエージェント」。それは、単なる対話型のチャットボットを超え、まるで人間のアシスタントのように自律的にタスクを遂行する革新的なテクノロジーです。この最先端技術の可能性を確かめるべく、みずほ銀行取締役頭取の加藤勝彦が、自らAIエージェントの構築を体験しました。本記事では、体験会のリアルな模様を詳細にレポートするとともに、AIエージェントがもたらす業務革新の可能性と〈みずほ〉の挑戦に迫ります。

INDEX

  1. 1
    AI活用のネクストステージ、「AIエージェント」とは。
  2. 2
    わずか1分で「来店予約システム」を構築。
  3. 3
    営業活動を支援する「リサーチエージェント」を自作。
  4. 4
    加藤頭取が語るAI時代の〈みずほ〉の挑戦と展望。

自律型エージェントとワークフロー型エージェント

2タイプのAIエージェントの詳細

AI活用のネクストステージ、「AIエージェント」とは。

AIエージェントはChatGPTに代表される従来のチャットボットとは一線を画す技術です。これまでのチャットボットが「今日の東京の天気は?」といった指示に対して答えを返す“受動的”な対話であったのに対し、AIエージェントは与えられた目標(ゴール)に向かって“能動的”に行動する点に最大の特徴があります。

例えば、「来週の重要な商談に向けて、競合企業の最新動向を分析し、サマリーレポートを作成して」といった曖昧で包括的な指示を投げかけるだけで、AIエージェントは自ら行動計画を立案し、情報収集・分析・成果物の作成といったタスクを自律的に分解して実行します。まさに、指示されたゴールに向かって自律的に思考し、行動するデジタル上のパートナーといえます。

このAIエージェントは、大きく2つのタイプに分類されます。

自律型エージェント

ゴール達成に向けたプロセスそのものをAIが自律的に考案し、実行するタイプです。「新規事業のアイデアを創出して」と指示すれば、市場調査、競合分析、リスク評価、プレゼン資料作成まで、必要なタスクをAIが自ら判断し、遂行します。

ワークフロー型エージェント

人間が事前に定義した業務プロセスに沿って、AIが各ステップを正確に実行するタイプです。従来のRPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)が得意としてきた定型業務の自動化を、より高度なレベルで実現します。RPAでは困難だった、自然言語の解釈や画像認識といった非構造化データを扱う処理の自動化が可能です。

今回の体験会では、加藤頭取がこの2種類のAIエージェントを体験しました。

左から加藤 勝彦(みずほ銀行)、齋藤 悠士(みずほフィナンシャルグループ)

左から加藤 勝彦(みずほ銀行)、齋藤 悠士(みずほフィナンシャルグループ)

わずか1分で「来店予約システム」を構築。

最初の体験は、「自律型エージェント」によるWEBアプリケーション開発です。加藤頭取はパソコンに向かい、AIに以下のシンプルな指示を入力しました。

「みずほ銀行の営業店における来店予約システムを開発してください。氏名・日時・要件を選択式で入力し予約できる構成で、イメージカラーはブルーにしてください。」

わずか2行のシンプルな指示をきっかけに、AIエージェントはその実力を発揮し始めました。まず、AIは「来店予約システム」に必要な機能要素(氏名や連絡先の入力フォーム、希望日時の選択カレンダー、予約内容の確認画面、完了通知等)を自律的に判断し、システム開発に必要なタスク群へと分解。さらに、みずほ銀行のウェブサイトであることを考慮し、コーポレートカラーを反映させるという判断まで行いました。

そして、AIがコード生成を開始してから、わずか1分ほどで実際に操作可能な「来店予約システム」のプロトタイプ(試作版)が完成しました。名前、希望日時、相談内容等を入力し、予約ボタンをクリックすると、正常に予約が完了。驚くべきことに、システムは「当日は身分証明書をお持ちください」といった、銀行業務に即した補足情報まで自動で生成していました。さらに、営業店側でその日の予約者リストを一覧で確認する機能も実装されており、実用性の高さも感じられます。

さらに、加藤頭取は次の指示を追加しました。

「最寄りの店舗を検索できる機能を追加してください。東京都の中で試しに20個程度の店舗を初期登録しておいてください。」

この指示を受け、AIは直ちに機能を拡張。約20店舗のダミーデータを初期登録し、ユーザーが住所を入力すると近隣店舗を検索できる機能を実装しました。追加された機能を使って、スムーズに店舗検索から予約までが完了することを確認しました。

わずか数行の指示から実用的なシステムが生まれ、さらに「こんな機能が欲しい」と対話するように伝えるだけで、AIが意図を汲み取ってシステムを拡張していく。この一連のプロセスは、AIが単なる作業ツールではなく、ともに働く強力なパートナーとなり得る未来を感じさせるものでした。

営業活動を支援する「リサーチエージェント」を自作。

続いて、より具体的な業務活用を想定した「ワークフロー型エージェント」の構築に挑戦。ここでは、営業担当がお客さまと面談する際のアイスブレイクや、関係構築につなげるためのトークスクリプトを生成するエージェントを作成しました。

使用したのは、プログラミング知識がなくても簡単な操作で独自のAIアプリケーションを構築できるノーコードツールです。加藤頭取はデジタル戦略部・齋藤悠士のガイドのもとに、「リサーチエージェント」と名付けられたアプリケーションを組み立てていきました。
そのプロセスは驚くほどシンプルです。

まず、アプリケーションの起点として、トークスクリプトを作成したい相手の名前を入力するための「①開始ブロック」を設置。次に、入力された名前をキーワードとして、インターネット上のインタビュー記事や関連ニュースを自動で検索・収集する「②WEB検索ブロック」を接続しました。

そして、このエージェントの“頭脳”となる「③LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)ブロック」で、AIの思考プロセスを設計。ここではAIに「あなたはみずほ銀行で働く営業担当者です。今から訪問する『人物』に関するリサーチ結果を分析し、商談につながるような話のつかみとなるインサイトやトークスクリプトを作成してください」と役割を与え、具体的な指示をインプットしました。
最後に、AIが練り上げたトークスクリプトを画面に出力する「④終了ブロック」を接続すれば、独自の営業支援エージェントが完成です。

早速、完成したアプリケーションの入力フィールドに「加藤勝彦」と入力して実行すると、数秒後、驚くほど精度の高いアウトプットが画面に現れました。

生成されたのは、加藤頭取自身の経歴や最近の発言等を的確に捉え、「○○のインタビュー記事を拝見しました。特に△△というビジョンに感銘を受けまして…」と、具体的かつ知的にアプローチするためのトークスクリプトでした。

その内容の的確さと詳細さに、加藤頭取自身も「すごいね、これ!」と驚いた様子で、現場の担当者が自らの手で、日々の業務に直結する強力な支援ツールを作り出せることを実感していました。

生成されたトークスクリプトの精度に驚く加藤頭取

生成されたトークスクリプトの精度に驚く加藤頭取

加藤頭取が語るAI時代の〈みずほ〉の挑戦と展望。

2つのAIエージェント開発を自ら体験した加藤頭取。その口からは、驚きと興奮の言葉が飛び出しました。

加藤:AIがプログラミングを行う領域で、急速な成長を遂げていることを実感しました。特に自律型エージェントによるウェブサイト開発は驚異的です。今後、現場の担当者がAIを活用して業務を改善できるようになることに、大きな可能性を感じます。AIエージェントの活用が、私たちの仕事の進め方そのものを根底から変える、とてつもないポテンシャルを秘めていると実感しました。

その実感は、すぐに具体的な議論へと発展し、「今回作成したエージェントを、お客さまとの面談準備に使えないか」「役員のスケジュール調整を行うエージェントもすぐに作ることができそうだ」「みずほの内部データベースと連携すれば、拠点のデータを自身の観点で取得し分析することも容易にできそうだ」等、加藤頭取から次々と具体的な活用アイデアが飛び出しました。議論はさらに、AIにどうやってデータを正しく認識させるかという、技術の核心にまで及びました。

体験会の最後に、加藤頭取は力強くこう締めくくりました。

加藤:実際に体験して感じたのは、AIエージェントは驚くほど簡単に作成できて、極めて便利だということです。業務を熟知した現場の人間が、自らの手で業務を改善できる。これがポイントだと思います。まさに「仕事の仕方が変わる」ということだと、身をもって実感しました。この取り組みを〈みずほ〉全体で加速させていきたいです。

トップ自らが最先端技術に触れ、その可能性を確信し、自社の変革をリードしていく。そんな強い意志が伝わってくる言葉でした。

この言葉の通り、〈みずほ〉では、独自のAI開発・活用基盤である「Wiz Base」の整備やノーコードツールの活用をさらに加速し、AIエージェントを用いた具体的な業務改善へとつなげていく計画です。

AIエージェントは、もはや一部の専門家だけのものではありません。現場で働く一人ひとりが、自らの知見をいかして業務を変革する「担い手」になれる時代が来ています。その未来の実現へ。〈みずほ〉の挑戦は、もう始まっています。

PROFILE

加藤 勝彦の画像

みずほ銀行 取締役頭取

加藤 勝彦

1988年、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。シンガポール・香港・ベトナム・韓国で国際業務に従事し、うちハノイ支店・ソウル支店においては拠点長として勤務。2020年4月には、常務執行役員営業担当役員兼エリア長に就任。2021年4月より、みずほ銀行取締役副頭取、2022年4月より同行取締役頭取に就任。

齋藤 悠士の画像

みずほフィナンシャルグループ
デジタル戦略部 デジタル・AI推進室 担当次長

齋藤 悠士

2023年キャリア採用でみずほフィナンシャルグループに入社。前職は国内金融機関にて、融資審査、ATM出店計画策定等に従事。その後のネット銀行では預金プロダクト担当、事務企画担当を経て、内製アジャイル開発チームの開発リーダーとして法人口座開設オンライン化プロジェクトを完遂。入社後は生成AIを利用したアプリケーション開発のリードおよび内製アジャイル開発の運営管理を担当。

※所属、肩書きは取材当時のものです。

文・写真/みずほDX編集部

RECOMMEND

  • Twitterシェアアイコン
  • Facebookシェアアイコン
  • LINEシェアアイコン
  • リンクをコピーしました