学びを実践に、実践を組織の力に。全社50,000人規模のAI浸透戦略「みずほAIアカデミー」
2026年9月16日
- FGみずほフィナンシャルグループ
OVERVIEW
〈みずほ〉では、社員一人ひとりが日常業務の中でAIを活用できる状態をめざし、全社的な取り組みとして「みずほAIアカデミー」を推進しています。テクノロジー導入そのものを目的とするのではなく、人と組織の力を引き出すための挑戦です。
みずほAIアカデミーの特徴は、単なる研修施策にとどまらないことです。学習機会の提供に加え、各部室店の推進役「AIコーチ」による取り組みや、現場で生まれたAIユースケースの共有までを一体で設計。さらに、個人や組織のAI活用の現在地を見える化するAIレベル指標をもとに、学びを実践へ、実践を組織の変化へとつなげる仕組みを整えています。本記事では、その背景と全体像、そして全社浸透に向けた工夫をご紹介します。
INDEX
なぜ今、〈みずほ〉は全社でAIに向き合うのか― AI活用を「一部の工夫」で終わらせないために
AIは単なる新しいツールではなく、業務の進め方や組織のあり方を見直すうえで欠かせない存在になりつつあります。
〈みずほ〉でもこれまで、AI勉強会の開催やAIツールの展開に加え、一部の部室店をモデル組織として選定し、先行的にAI活用の推進や現場への定着支援に取り組んできました。一方で、AIに関する取り組みが各所で進み始めていたからこそ、次の課題も見えてきました。
それは、個々の取り組みを全社の変革につなげるための仕組みをどうつくるかということです。一部の部門や意欲ある社員だけが使いこなす状態では、AI活用は組織に根づきません。現場ごとに活用の温度差が生まれ、成果も知見も点在したままになってしまいます。そこで必要だったのが、学び方、広げ方、支え方を体系化し、全社員がAI活用に向き合える基盤を整えることでした。その構想を形にしたのが、みずほAIアカデミーです。
「学び→実践→共有」を循環させる。みずほAIアカデミーの全体構想

みずほAIアカデミーの考え方
AI活用は、研修を受けただけでは定着しません。さらに、現場で良い取り組みが生まれても、それが個人のノウハウにとどまってしまえば、組織全体の力にはなりません。こうした課題に向き合い、〈みずほ〉では「学び→実践→共有」の循環が生まれるAIアカデミーを設計しました。
EラーニングでAI活用の基礎やプロンプトを学び、その後日常の業務現場で実践し、そこで生まれた知見を共有する。この一連の流れを全社で回していくことで、AI活用を日常業務の中へ着実に浸透させようとしています。
また、この取り組みを特徴づけているのが個人と組織の両方からAI活用の現在地を捉える「AIレベル指標(下表)」です。
個人については、社員一人ひとりのAI活用レベルを0から5までの段階で可視化し、自分がどの位置にいて、次の学びや実践すべきことが何かを把握できるようにします。この指標は個人を評価するものではなく、学習や実践、支援につなげていくための指標です。加えて、組織ごとのAIレベルも可視化しており、AI活用を推進している部店をモデルケースとして取り上げ、表彰する予定です。
AIレベル指標(個人)
| AIレベル | 概要 |
| レベル5 AIネイティブ |
「AI前提の新たな価値創造」 AIを事業やサービス、働き方の変革を牽引する中核的な要素として活用し、従来にはなかった新たな価値やビジネスモデルを創出している。 |
| レベル4 組織構造変革 |
「組織構造・役割分担の本質的変革」 AIの活用を前提に、組織の構造や役割分担、部門間の協働のあり方を見直し、組織全体の運営や業務の進め方を変革している。 |
| レベル3 業務再設計 |
「業務プロセス自体の再設計・自動化」 AIの活用を前提に、業務の進め方やプロセスそのものを見直し、業務の一部または全体を再設計・自動化している。 |
| レベル2 チーム内のAI利用 |
「チームの業務効率化」 業務内容や目的に応じてAIを適切に選択・使い分け、チームで活用することで、業務効率化や成果物の品質向上につなげている。ただし、活用は既存の業務プロセスの範囲にとどまっている。 |
| レベル1 個人におけるAI利用 |
「個人の業務効率化」 AIを個人の業務に活用し、作業の効率化や負担の軽減につなげている。ただし、活用範囲は個人の業務内にとどまり、チーム内での活用方法の共有や、業務プロセス全体の見直しには至っていない。 |
| レベル0 AI未使用 |
「AIに対する認知・理解・共感の形成」 AIの存在や活用方法を知る機会が十分でない、またはAIを活用する必要性やメリットを具体的にイメージできていないため、現時点では業務での利用に至っていない。 |
全社展開を支える「1,900人超のAIコーチ」と、ユースケース共有が広げる実装力
全社浸透の要となるのが、各部室店で活動するAIコーチです。AIコーチは、現場におけるAI推進役として、自らAIを活用するだけでなく、その使い方や価値を周囲に伝え、実践を後押しする役割を担います。すでに1,900人超が選出されており、この規模感自体が、AI活用を全社的に進めていく強い意志を物語っています。
あるAIコーチは、支店の情報収集や朝の業務準備を効率化するために、銀行員にとって欠かせないニュース確認を、忙しい朝でも無理なく継続できるように、金融関連のニュースをAIで要約し、5分以内で読める「朝のニュースサマリー」として支店内で共有しています。お客さまとの会話のきっかけとなる金融以外の話題や「今日は何の日」といった情報も加え、日々の営業業務で活用しやすい内容に工夫しています。
また、この事例を全社に発信したところ、他の支店からも「自店でも活用したい」という反響が寄せられました。各支店が業務内容やお客さまの特性に合わせてプロンプトを工夫し、オリジナルの活用方法へと発展しています。一つの現場で生まれた実践が、他の支店の新たな試行を促すという、AI活用の横展開につながっています。
AI活用を組織に根づかせるうえで重要なのは、個人の工夫を組織知へ変えていくことです。〈みずほ〉では、現場で得られた業務課題とAIによる解決策をもとに、AIユースケースの整備・発信を進めています。
「同じような業務で、こういう使い方ができる」と具体的に示されることで、自分たちの仕事にも置き換えて考えやすくなり、実務に結びついた具体が現場での行動変容を後押しします。ユースケースを共有することで、成功や試行錯誤の知見が蓄積され、さらにAIコーチという現場の推進役が全社浸透の循環を加速させています。

ユースケース例「顧客提案力を高める面談練習の実践活用」
実際に、顧客提案力に関するユースケースに対して、さまざまな反応が寄せられました。「過去の商談履歴などの情報を参考にすることで、お客さまの意思決定の傾向を踏まえた、より精度の高いシミュレーションが可能になるのではないか」「この手法を試行し、組織内でのさらなる活用を検討していきたい」といった声がありました。また、議事録作成のユースケースに対しても、「議事録AIのプロンプトは当部でも挑戦してみたい。文字起こしデータとチェックシートを共有してもらえないか」と、具体的な実践や情報共有を求める声が寄せられています。
このように、ユースケースの発信は、事例を知ってもらうだけでなく、それぞれの現場が自らの業務に置き換え、次の実践へ踏み出すきっかけにもなっています。
AI活用を「全社の力」へ変えていくために
みずほAIアカデミーは、AI活用を学ぶ場であると同時に、現場で生まれた実践を全社へ広げていくための基盤でもあります。〈みずほ〉ではその他にも、AIエージェントに関する勉強会や開発者育成プログラム「みずほAI Bootcamp」などを通じて、より高度な活用に挑戦する人材の育成も進めています。全社員のAI活用の裾野を広げるとともに、先進的な実践を担う人材も育てる。その両輪によって、AI活用を個人の工夫にとどめず、組織全体の力へと変えていくことをめざしています。
AIが業務を支え、人はより高度な判断や提案、新たな価値創出に力を注ぐ。みずほAIアカデミーは、そうした未来を支える人材と組織を育てる取り組みとして、これからも進化を続けていきます。
文・写真/みずほDX編集部








