お客さま一人ひとりに向き合う力を鍛える。〈みずほ〉の内製AIロープレ
2026年9月30日
- FGみずほフィナンシャルグループ
- BKみずほ銀行
OVERVIEW
〈みずほ〉が内製で開発するAIロープレ(ロールプレイング)は、営業担当者の「実態把握力」を高め、金融営業の質そのものを向上させる取り組みです。AIがお客さま役となることで、単なる会話練習にとどまらず、ヒアリングや関係構築、課題整理、次回の相談へのつなげ方まで、実際の営業現場に近い形で学べる環境をめざしています。
AIロープレは一見するとつくりやすいテーマに見えます。しかし、現場で本当に使われるものにするには、情報を簡単に話しすぎないお客さまの再現や、実務に役立つ評価設計など、金融営業ならではの細やかな工夫が不可欠です。本記事では、営業店での検証を通じて見えてきた手応えと課題、そして現場とともにプロダクトを進化させる取り組みについて紹介します。
INDEX
なぜ今、〈みずほ〉はAIロープレを内製するのか
〈みずほ〉がAIロープレに取り組む背景には、営業現場の人材育成における課題があります。ロープレは有効な育成手段ですが、お客さま役や評価者を務める社員の確保に加え、参加者の日程調整や練習時間の確保が必要となるため、関係者に大きな負担がかかります。また、評価にもばらつきが出やすく、忙しい現場では継続しづらい面がありました。
そこで着目したのが、AIによる再現性の高い練習環境です。タブレットがあれば、自分のペースで繰り返し練習できます。さらにAIなら、会話ごとのフィードバックや評価を一定の基準で返すことができます。若手の実践機会を増やし、個人の型づくりを支えるうえで、有効な選択肢になると考えました。
〈みずほ〉がめざしているのは、単に「AIで会話できるツール」をつくることではありません。お客さまを深く理解し、次の相談へつなげる「実態把握力」を高めることです。よくあるお客さまとの対話シナリオだけでなく、銀行システムの操作やチラシの活用まで現場を再現し、日々の業務に直結する学習機会を提供していく予定です。
こうしたAIロープレの導入効果を最大限に活かすため、〈みずほ〉では内製化にもこだわっています。内製化により、ハイパフォーマーの提案力や対話スキルなど、〈みずほ〉独自の営業ノウハウをAIロープレに組み込み、組織の資産として蓄積できます。また、制度・取り扱う商品の改定や市場環境の変化に応じて、シナリオや評価基準を迅速に更新できる点も、内製化の大きな意義です。
「話しすぎないお客さま」をどうつくるか。開発で直面した難しさ

AIロープレ 画面イメージ
AIロープレでは、AIがお客さま役となり、営業担当者と音声で対話します。ペルソナには、家族や資産、これまでの運用経験、将来のライフプランなど、お客さまの背景を細かく設定しています。ただし、AIが最初からすべてを話すわけではありません。
営業担当者の問いかけ方や会話の進め方、信頼関係の築き方に応じて、反応が変わるよう設計し、「AIが簡単に話しすぎない」ことを重視しています。これは実際の営業現場と同様に、限られた情報の中からお客さまの状況や真のニーズを捉え、お客さまの実態を把握する力を養うためです。
たとえば設定シナリオの一つには、定期預金の満期を機に来店した退職層のお客さまを想定しています。退職金の運用だけでなく、将来の生活資金や資産承継にも関心を持っているものの、ご本人から最初にすべてを話してくれるわけではありません。営業担当者には、来店理由を起点に、生活設計や運用経験、家族構成などを丁寧に聞き取り、すぐに商品を提案するのではなく、お客さまの状況を整理して次回相談へつなげる対応が求められます。こうしたシナリオを通じて、実際の業務に即した対話力やヒアリング力を磨くことができます。
また、こうした実践を学びにつなげるためには、納得感のある評価も欠かせません。会話の流暢さだけでなく、ヒアリングの順序や言葉遣い、課題の捉え方、資料説明の正確性まで多面的に確認し、会話ごとの改善点や口癖、ファクトチェックの結果などを具体的にフィードバックします。これにより、次の営業ですぐにいかせる評価設計を実現しています。
現場とともに磨き込む、実戦で使えるAIロープレ

AIロープレのPoCの様子
営業店でのPoCを通じて、現場からは、「AI相手であれば周囲を気にせず気軽に練習できる」、「改善点を客観的に確認できる」といった点が高く評価されています。経験の浅い担当者の練習だけでなく、商品説明や承継など、特定のテーマを深める用途への期待も寄せられました。
一方で、会話のテンポや応答の自然さについては、さらなる改善の余地があります。既存のお客さまに即したシナリオや、実際の営業に近い会話体験を求める声もあり、実務により近づけるための課題が明確になりました。また、単に質問項目を確認するだけでなく、仮説を持ってお客さまの状況を深掘りする力や、すぐに商品を提案せず、関係を築きながら相談につなげる力を鍛えたいというニーズも明らかになっています。
こうした現場の声をもとに、音声認識やAIの応答精度、シナリオの拡充など対応すべきことを整理し、改善を進めています。
さらに、対話の自然さや臨場感を高めるため、お客さま情報を活用したシナリオ設定やアバターの導入なども検討を進めていきます。
改善を担っているのは、個人営業に限らないキャリアを持つメンバーです。デプスインタビューを通じて営業店や本部の声を丁寧に拾い上げ、銀行内の業務知と、それぞれの経験から得た視点を掛け合わせながら、設計や機能の改善に反映しています。現場の声をもとに改善し、その成果を再び現場で確かめる。このサイクルを重ねることで、AIロープレをより実践的で、営業担当者の成長に役立つ、現場に根差したプロダクトへと進化させていきます。
実態把握を超えて、高度な提案力の育成へ
AIロープレは、現在の機能にとどまることなく、今後も進化を続けていきます。まずは「実態把握」を出発点に、課題の特定、ニーズの把握、提案へと、営業プロセス全体に対象を広げていきます。
将来的には、資産運用や事業承継といった高度な相談にも対応できる営業力の育成をめざします。特に富裕層や企業オーナーとの対話では、目の前の相談に対応するだけでなく、家族や会社の将来を見据えた視点が求められます。複数の課題を整理し、お客さまに寄り添った提案につなげる力を高めていきます。
また、ロープレを通じて蓄積した会話や評価のデータは、組織の資産として活用し、新たな営業やサービスの創出につなげていきます。その先に見据えているのが、AIが金融サービスを使いこなす「エージェンティック・ファイナンス」の時代です。AIロープレは、営業担当者のスキル向上を起点に、営業のあり方そのもの、さらには金融サービスのあり方を変えていく可能性を秘めています。現場の一つひとつの対話を組織の資産に変え、〈みずほ〉は「エージェンティック・ファイナンス」の実現に向けて歩みを進めていきます。
文・写真/みずほDX編集部








