エクエーター原則協会の運営と今後の展望
エクエーター原則協会の運営
エクエーター原則協会(The Equator Principles Limited)の組織運営
エクエーター原則採択金融機関は、組織運営規定を採択し、2010年7月よりエクエーター原則協会となりました。当協会はエクエーター原則採択金融機関による非法人の組織であり、エクエーター原則の管理、運営、発展を目的としていました。
2024年1月より、エクエーター原則協会は新たな法人組織となり、法的には「Equator Principles Limited」がエクエーター原則を代表する立場となっています。
しかしながら、エクエーター原則は現在も事務局(CEO含む)のサポートを受けながら、運営委員会によって運営されています。
- *エクエーター原則協会公式ページにリンクします。
運営委員会
運営委員会は、エクエーター原則採択金融機関に代わって、同原則の管理、発展に係る事項の調整を行っています。この運営委員会はエクエーター原則採択金融機関から選出された8つの金融機関で構成されています(2023年11月時点)。
CEO
2023年5月、エクエーター原則協会は初のCEOを任命しました。CEOは運営委員会に代わって、エクエーター原則協会の日常的な運営・管理を担当し、年間計画に定められた主要な取り組みを実施します。
事務局担当
事務局担当は、エクエーター原則の日常業務(公式ウェブサイトを含む、協会内外のコミュニケーション、EP関連イベントの開催・進行など)を担当しており、第三者機関に委託しています。
国際NGOとの意見交換
国際NGOは、主要なステークホルダーとして、エクエーター原則の実施を確実にするうえで極めて重要な役割を果たしています。エクエーター原則協会はNGOと気候変動、社会リスク、人権尊重、情報開示の透明性などの課題について随時意見交換しています。
IFCパフォーマンススタンダードの改定
国際金融公社(IFC)の「IFCパフォーマンススタンダード」は、2012年1月に改定されました。
この改定における、「生物多様性」「気候変動」「社会リスク」などのテーマに注目し、改定版の「IFCパフォーマンススタンダード」を反映させたエクエーター原則(第三版)が2013年に発効しました。現行のエクエーター原則(第四版)ではこれらのテーマへの対応をさらに強化しています。みずほ銀行は2020年7月よりエクエーター原則(第四版)の適用を開始しました。
エクエーター原則の成果
プロジェクトファイナンスに3つの変革をもたらす
エクエーター原則は、プロジェクトファイナンスの分野に3つの変革をもたらしました。
- エクエーター原則が制定されたことによって、環境・社会リスクがプロジェクト評価の重要なリスク項目として社会に認知され、さらにアクションプランの実行を通じたリスク対策の実施を融資契約で管理できるようになりました。その結果、大規模プロジェクトにおける環境・社会リスクへの配慮およびリスク低減が促され、地球環境や地域社会にメリットをもたらしています。
- 金融機関がプロジェクトに対するシンジケーションの主幹事を獲得する上で、エクエーター原則の適用は重要な競争要素となりました。また、協調融資団メンバーの間においては、エクエーター原則に基づく環境・社会リスク対処のための協働が促進されました。このように、エクエーター原則が制定されかつ普及したことによって、金融機関の環境・社会リスクへの取り組みが活性化されました。
- エクエーター原則の運営や各プロジェクトへの適用などを通じて、金融機関、事業者、環境NGOなど、プロジェクトの各ステークホルダーの間で、環境・社会リスクについての意見交換が活発に行われるようになりました。
このように、エクエーター原則は、地域社会や金融機関、事業者、NGOなどを含めた各ステークホルダーにさまざまなメリットをもたらしています。
今後の展望
エクエーター原則協会の戦略
2020年10月、エクエーター原則協会は、初めて中期戦略(Strategy)を発表しました。この戦略は、協会の中期的な方向性、および、エクエーター原則協会の継続的な進展に向けた意欲を示しています。
20周年を迎えて
エクエーター原則は2023年6月に制定から20周年を迎えました。エクエーター原則は業界で認められているリスク・フレームワークであり、幅広く認知されたブランドです。エクエーター原則が環境社会リスク管理における「ゴールド・スタンダード」であり続けるために、さらなる検討が必要と思われる分野について、メンバー間で議論を継続しています。
2024年8月現在、130の金融機関がエクエーター原則を採択しています。エクエーター原則を採択する金融機関が増えることで、エクエーター原則の影響力は強まり、環境・社会リスクの低減につながります。まだエクエーター原則を採択していない金融機関に対して採択を働きかけ、採択金融機関を増やしていくこともエクエーター原則協会の重要な課題です。