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【AI Engineering Summit Tokyo 2026 講演レポート】みずほFG × Cognition AIが語る、AIエージェント開発の現在地

【AI Engineering Summit Tokyo 2026 講演レポート】みずほFG × Cognition AIが語る、AIエージェント開発の現在地

OVERVIEW

2026年6月9日、ファインディ株式会社が主催するAIエンジニアリングの大規模カンファレンス「AI Engineering Summit Tokyo 2026」にて、「みずほFG × Cognition AIが語るAIエージェント開発の現在地」と題したセッションが開かれました。

登壇したのは、みずほフィナンシャルグループ 執行役員 デジタル戦略部長 Chief AI Officerの藤井 達人と、自律型AIソフトウェア開発エージェント「Devin」を手がけるCognition AI Japan Field CTOのシバタ アキラ氏です。

金融機関とAIスタートアップという異なる立場から、AIエージェント開発の最前線について語り合った本セッション。今回は、その白熱した議論の中でも、Build(内製)or Buy(外注)やAIに任せる範囲、Devin導入後の変化を中心に、そのエッセンスを凝縮してお届けします。

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INDEX

  1. 1
    なぜ「内製」にこだわるのか?AIエージェント時代の推進体制
  2. 2
    どこまでAIに任せるか。自律化を阻む壁は「人間の思い込み」
  3. 3
    Build or BuyとDevin導入後のエンジニア組織の変化
  4. 4
    AI時代における「新たなお客さま像」と、金融ビジネスの未来

なぜ「内製」にこだわるのか? AIエージェント時代の推進体制

近年、ソフトウェア開発の現場では、AIエージェントに開発の一部を任せ、必要なツールを自分たちの手で作り込む「内製化」の動きが広がっています。本セッションは、その象徴的な存在であるCognition AIの自律型AIソフトウェア開発エージェント「Devin」の紹介からスタートしました。過去15年あまりAI一筋でキャリアを歩んできたシバタ氏は、自身が国内展開を推進するDevinについて次のように語ります。

シバタ氏:DevinはAIを使ったソフトウェア開発の製品です。当初は予測変換のような形でエンジニアがコードを書き始めるとその先を予測してくれるものでしたが、今は非常に自律性が高くなっています。「これをやっておいて」と頼むと、コードを書くだけでなく、レビュー、修正、テストまで自己完結的にこなしてくれる。一人のエンジニアの生産性を高めるというより、チーム全体のキャパシティを広げることをめざした製品です。

シバタ アキラ氏(Cognition AI Japan)

シバタ アキラ氏(Cognition AI Japan)

こうした自律型AIエージェントの登場によって、これまで外部に委託することの多かった開発を、自社で内製する動きが加速しています。

藤井:〈みずほ〉では、E2E(エンド・ツー・エンド)の業務プロセスそのものをAIにより変革する取り組みが進んでいます。金融機関として求められるガバナンスを保ちながら、世の中のニーズが変化するスピードに応えるため、社内のAI推進体制を強化しています。AI活用による業務変革やお客さまへの価値創造を担う中核組織である「デジタル戦略部」は、現在では社員およそ200人、パートナーの皆さまと合わせると400人規模に拡大しています。2026年4月から3年間で1,000億円をAIへ投資する方針を発表しており、今後のさらなる変革に向けた体制強化を進めています。

藤井 達人(みずほフィナンシャルグループ)

藤井 達人(みずほフィナンシャルグループ)

どこまでAIに任せるか。自律化を阻む壁は「人間の思い込み」

ここからは、セッションで交わされた三つの主要テーマを順に紹介します。
最初のテーマは「AIに任せる領域の判断基準と、セキュリティへの向き合い方」です。コーディングへのAI活用が急速に進む一方で、運用までを自律型のAIエージェントに任せるレベルの企業は、まだ多くありません。AIエージェントが自律的に動く未来を必然の流れと見据えつつも、現在のボトルネックについて藤井は次のように語りました。

藤井:技術的には、AIの行動や安全性を制御する「ハーネスエンジニアリング」を作り込めば、すでにある程度の実務を任せられる段階に来ています。それにもかかわらず導入が進まない最大の壁は、テクノロジーの限界ではなく「人間の思い込み」です。「最後は人が判断したい」「自分で確認したい」という心理的なブレーキがハードルになっています。しかし、あと1年もすれば、今私たちが抱いているこうした疑問や不安は、疑問でなくなる世界が来ると考えています。

〈みずほ〉では、まずはE2Eで業務プロセスを見直す中で、一部の業務を切り出し、AIの自律化を図る方針をとっています。例えば本来なら2〜3週間かかるリサーチ業務において、計画立案からソースの選定、ファクトチェック、人間が読みやすいレポートの出力までをAIで自動化しています。さらに営業領域でも、営業担当者の営業バディとして機能するAIエージェントの活用も始まっています。過去のお客さまとの打ち合わせ内容や、社内に蓄積されたお客さま情報から次の商談に向けた資料や提案シナリオを自動で作成する業務もAIで自動化するなど、様々な場面でスモールスタートしています。

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一方、数多くのAI導入を支援してきたシバタ氏は、技術的な観点からAIへの「任せ方」を三つの領域に分類して解説しました。

シバタ氏:AIにタスクを任せる領域については、大きく三つに分けられると考えています。

一つ目は「完全に任せられるが、何らかの理由で未導入の領域」。二つ目は「任せられるが判断が分かれる領域」です。ここではAIが書いたコードを別のAIがレビューしてバグを指摘する仕組み等も登場し、委任の幅が急速に広がっています。

そして三つ目が「任せられるイメージが湧いていない領域」です。銀行の基幹システムのように絶対に間違えられないコードがこれに該当します。技術的には可能でも、心理的・ビジネス的な確認が不可欠となるため、どこまで任せるかの境目は非常にセンシティブな議論です。

Build or BuyとDevin導入後のエンジニア組織の変化

次のテーマは、AI時代における「内製と外注(Build or Buy)」の判断基準、そしてエンジニア組織の変化についてです。開発から運用までを今後自律的なAIエージェントに任せる未来を見据え、競合に勝つためにテクノロジーをどう武器にするべきか。藤井はその具体的な戦略を語りました。

藤井:AI時代に開発を外部の人に頼り切るのは、直感的に違うと感じています。重要なのは、テクノロジーでどれだけレバレッジをかけられるかです。費用対効果の高い汎用ツールは外から買えばいいですが、自分たちが本当に欲しい差別化領域のツールは世の中に売っていません。だからこそ、自分たちで作る必要があります。

例えば、PoC(概念実証)の前には、すぐにプロトタイプを動かす「プレPoC」というフェーズがあります。MVP(最小限の試作品)を迅速に作りたいときに外注している時間はありません。仮に将来SIerに頼むことがあっても、初期のMVP開発は自社で担ってコントロールすべきです。

実際〈みずほ〉では、エンジニア約60名による内製開発ラボを立ち上げ、AIアプリケーションを効率的に開発・運用する共通基盤「みずほWiz Base」を内製で構築しています。これにより市場環境の変化に迅速に対応しつつ、金融機関として求められる高度なガバナンスを両立した開発体制を確立しています。

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シバタ氏もこの考えに同意し、どのようなアプリケーションが内製開発に向いているのか等について、開発のハードルが下がった現代ならではの視点から語りました。

シバタ氏:汎用性の高いものか、特化したアプリケーションかで判断は変わります。今は開発のハードルが下がっているからこそ、お客さまの現場に入り込んで課題を解決する「FDE(Forward Deployed Engineer)」のような役割の潮流が生まれています。

こうした、人と人とのコミュニケーションを通じてしか解決できない領域や、自社ならではのノウハウがある領域こそ、内製化によって大きな差別化が生まれると考えています。一方、例えばDevinのように、様々な企業が共通して活用できる汎用的なツールについては、内製化するよりも外注に向いているといえます。

続いて議論は、AIエージェント「Devin」の導入時の手応えや、導入後にエンジニア組織や求められる役割がどう変化したかへと移りました。

藤井:圧倒的なスピードでプロトタイプを作れるようになり、試行錯誤の回数は劇的に増えました。ただ、一番大きな変化はそこではなく、ビジネスとテクノロジーの境目が溶け始めていることにあります。今後はビジネス側にも、AIを駆使した解像度の高い提案力が求められますし、エンジニアも単なる「プログラマー」の枠にとどまらず、業務要件の領域にまで関わっていくことになると考えています。職種の境目が曖昧になるということは、自分が磨いてきた専門性をベースに、選べるキャリアが広がるということでもあります。これからは、AIを管理し、指揮する役割のニーズが確実に増えていくはずです。

シバタ氏:私たちの社内でも、ビジネスとテクノロジーの境目は溶け始めていると感じます。

例えば、マーケティング部門がDevinでランディングページを作り、あとはエンジニアに「デプロイしていいか」を確認するだけで済む、という仕事の流れが当たり前になりつつあります。

このように職種の境目を持たない人が活躍する時代ですし、実際、私たちのチームではAIによる効率化のおかげで、エンジニアの人数はほぼそのままに、成果を何倍にもスケールさせています。

AI時代における「新たなお客さま像」と、金融ビジネスの未来

セッションの締めくくりに、「金融業界におけるAI推進が進んだ先に、サービスはどこまで進化できるのか」という問いが投げかけられました。藤井がまず目を向けたのは、テクノロジーの進化がもたらす「お客さまの行動変容」です。

藤井:AIによって世の中が大きく変わる中で、一番変わるのはお客さまの行動だと考えています。現在は、お客さまがAIエージェントに依頼したい一部の金融サービス業務について、自ら指示を行う「個別最適」の活用が主流となっています。
しかし将来的には、個々の金融サービスごとに切り分けるのではなく、例えば資産運用・税務・保険といった領域を横断し、AIエージェントが総合的に判断することで、お客さまに代わって自律的に行動する——そのような新たな金融体験の実現が期待されています。そうなったとき、私たちはその「AI」に対してどのような金融サービスを組み合わせ、シームレスに提供していけるのか。これまでとは全く異なる、新しい競争環境が生まれてくるのだと思います。

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この未来に対し、シバタ氏も金融機関が持つポテンシャルと、その意思決定がもたらす産業構造へのインパクトについて大きな期待を寄せました。

シバタ氏:特に日本の金融機関は、システムの外部委託に投じている金額が非常に大きいという背景があります。だからこそ、こうした先進的な金融機関が自律型AIエージェントを活用して「内製化」へと舵を切ることは、日本の産業構造そのものを変革する強力なチャンスになり得ます。ぜひ〈みずほ〉のような存在に、未来を見据えた大きな意思決定をし、一歩を踏み出していただきたいです。

金融機関とAIスタートアップという異なる立場から挑戦を続ける本セッションは、AIエージェント開発がPoCの枠を超え、本格的な実装フェーズへ突入していることを強く印象づけました。

技術を単に取り入れるだけでなく、自らの手で使いこなし、変化の波をチャンスに変えていく。〈みずほ〉はこれからもテクノロジーを武器に、お客さまや社会とともに新たな価値の創出へと挑み続けます。

PROFILE

藤井 達人の画像

株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行役員 デジタル戦略部長 Chief AI Officer

藤井 達人

2023年キャリア採用でみずほフィナンシャルグループに入社。一社目の外資IT企業にて、メガバンクの基幹系開発、金融機関向けコンサルティング業務等に従事。二社目の外資IT企業を経て、総合金融グループではフィンテック導入のイノベーションを担当。その後、大手通信事業者の金融持株会社での執行役員、二社目の外資IT企業での業務執行役員を歴任し、現職。金融革新同友会「FINOVATORS」創立メンバー。『フィンテックエンジニア養成読本』(技術評論社)全体監修および共著。

シバタ アキラ氏の画像

Cognition AI Japan Field CTO

シバタ アキラ氏

AIエージェント「Devin」の国内展開と企業導入を推進。データ・AI活用による事業価値創出を専門とし、これまで国内外数百社のAI/DX・機械学習プロジェクトを支援。DataRobot Japan CEO、Qosmo COO、Weights & Biases Japanカントリーマネージャー等を歴任。物理学博士。

※所属、肩書きは取材当時のものです。

文・写真/みずほDX編集部

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