授業の流れ
みずほフィナンシャルグループさんに、金融について深く楽しく教わってる「空想金融教室」です。今回の題材は『わらしべ長者』。いよっ、待ってました!
無一文の若者が、あれよあれよと大富豪になった超サクセスストーリー。ワタクシ柳田理科雄を筆頭に、カネもうけを夢見る者たちがバイブルのように崇める昔話だ。
この聖なる物語をチョイスしたということは、ついにみずほさん、おカネ持ちになれる方法を教えてくれるんですか!?
……と喜んだら、今回のテーマは「価格設定」。モノの値段はどうやって決めるのか、ということらしい。そこかー!
でも、最近はコメをはじめとして、いろいろなものが驚くほど高くなっている。ワタクシのお給料は増えていないので、いくら働いても暮らしは楽にならずキリがない!
今回、みずほさんが呼んでくれたのは、イオントップバリュさん。イオンのスーパーが近所にもあるから、筆者もたいへん親しみを感じる企業だ。
なぜ物価がこんなに上がるのか、そもそもモノの値段はどうやって決まるか、みずほさんとトップバリュさんに教えてもらいましょー!
1 『わらしべ長者』のあらすじ
京都に住む若者が、いくら働いても貧乏から抜け出せないので、奈良のお寺に21日間籠もり、観音さまに祈った。すると最後の夜、夢枕でお告げがあった。
「寺を出て最初に握ったものを大切にしなさい」。
寺から出た若者は、寝ぼけて転んだ拍子に、一本の稲わらの芯を手にしていた。「これが観音さまのくださったものか」と思って握りしめて歩いていると、大きなアブがつきまとってきた。
うるさく思った若者は、わらの先にアブを結び付けて歩く。それを見た男の子が「あれがほしい」と泣きわめいた。かわいそうに思い、若者がアブ付きわらを男の子にあげると、母親はお礼に立派なみかんを3つくれた。
みかんを持って若者が歩いていると、道端にうずくまっている貴婦人がいた。貴婦人のお供から「近くに井戸はないか」と聞かれた若者は「井戸はないけど、これならある」と言って、みかんを差し出した。みかんで喉の渇きを癒した貴婦人は、お礼に美しい絹の反物をくれた。
さらに歩いていくと、馬が倒れて困っている侍がいた。侍は若者の反物を見て、この馬と交換してくれと言う。そのとおりにして瀕死の馬を手に入れた若者は、観音さまに「馬を生き返らせてください」と祈りながら、一晩看病した。次の朝、馬は元気になった。
この馬を引いて歩いていくと、旅の準備で大勢の人が出入りする長者の屋敷があった。屋敷の主は引っ越しの準備をしていたが、馬が足りなくて困っていた。それを見た若者が「この馬をあげましょうか」と声をかけると、主人は喜び、屋敷と田んぼをただちに若者へ譲り渡した。
こうして、わらしべが巡り巡って、立派な屋敷と土地になった。裕福になった若者は「わらしべ長者」と呼ばれていつまでも幸せに暮らしたとさ。めでたしめでたし。
2 価格はどうやって決まるのか?
うーむ、やっぱりすごいサクセスストーリーだ。しかし、いくらなんでも都合よすぎるような気もするが……。
筆者はそう思いながら、みずほさんのところへ行き、トップバリュさんにもご挨拶した。
本日はよろしくお願いします。
今回の特別講師
ブランドの先生
戸部 正見 先生
イオントップバリュ株式会社
ブランドマネジメント部
ブランドコミュニケーションの先生
坂口 由真 先生
イオントップバリュ株式会社
ブランドマネジメント部
イオントップバリュさんは、イオングループのプライベートブランド(PB)『トップバリュ』の企画・商品開発をされている会社です
よく知ってます。イオンに行くと、たくさんの商品が並んでいますよね。しかもお安い。
ありがとうございます。
プライベートブランドというのは、流通業者や小売店などメーカー以外の企業が、自社で企画・開発 する商品のことです。
ははあ、それで価格を安くできるんだ。
安いだけではありません。トップバリュさんは、毎日の暮らしに新しいアイデアと、ワクワクする商品を、お求めやすい価格でお届けされていて……。
ふむふむ。そういう企業であれば、ぜひご意見を聞きたいのですが、『わらしべ長者』の物々交換って、なんだか価値がムチャクチャじゃないですか?
超ざっくり価格イメージ を、交換順に示すと「アブ付わら:0円」→「みかん1個:100円」→「絹の織物一疋 :10万円」→「馬一頭:100万円」→「屋敷と土地:1億円」。これ、異常な交換比率ではありません?
うーん、どうでしょう。
この物語の当人たちが納得しているのであれば、問題ないと思います。
あれっ、そうなの!? あまりに極端だと思ったけど、そういうもの? ワタクシは「原稿料1枚100万円」とか、もらったことないんだけど。
それについては、出版社に交渉していただいて…。
あの、今回のテーマは「価格設定」ですが、そもそも価格ってどうやって決まるんですか?
価格は原則的に『需要と供給の関係』で決まります。需要とは『その品物を手に入れたい人がどのくらいいるか』、供給とは『その品物がどのくらい世のなかに出回っているか』です。
買いたい人が品物より多ければ、少しくらい高くても買うから、価格は上がる、と?
はい。『需要>供給』だと、価格は上がります。
逆に『需要<供給』なら、品物が売れ残らないように価格は下がります。
そうか。みかんがあり余っていたら、交換してもらえなくて、この話はそこで終わってしまいますね。
もう一つ、価格を決める要素に『競合』があります。
競合……とは?
同じ商品を、店Aが400円、店Bが300円で売っていたら、お客さんは店Bに行きますよね。
そりゃそうですね。あ、そうなると、店Aは価格を下げようとするかも!
そうやって値段は決まっていくんですね。
たとえば、スーパーはおまんじゅうの値段を、どうやって決めるのですか?需要と供給のバランスや、ライバル店の状況から、「おまんじゅうって1個100円くらいだよねー」という価格イメージとかあるんだろうけど。
基本的には『原価』に『利益』を上乗せして『価格』が決まります。
原価というのは、おまんじゅうを作るのにかかった費用のこと?
いえ、『作る』だけでなく、『作って売るまで』です。商品を店まで運ぶ運送費、店で働く人の給料など販売費、光熱費、宣伝費、本社で働く人の給料など、あらゆる費用を含みます。
それらに利益をプラスして、値段を決めるんですね。
ただ『価格=原価+利益』というのは、売る側の論理です。お客さまは、『原価+利益で、この値段なんですね』などと納得するわけではありませんよね。
まあ確かに。「原価+利益」の結果、100円ではなく110円になったら、単に「高いな」としか思わないだろうし。……あ、でも、120円のおまんじゅうを買うときもあるな。
おいしいとか、健康によさそうとか、環境に優しい……など、お客さまの『欲しい!』という気持ちに応えられれば、購入していただけます。
お客にとっても、大切なのは値段だけではない?
そうですね。人は商品やサービスに対する感情がプラスの方向に動いたときに、おカネを支払います。人のニーズに応えたり、喜びや幸福感を与えたりするものを『付加価値』といい、利益はその対価といえます。
商品に付加価値がないと、いくら安くてもお客さまには買っていただけません。
いまのお話で、『わらしべ長者』についても、わかっていただけたんじゃないでしょうか。
はて? いまの話と『わらしべ』世界にどんな関係が……。
交換した人は皆、納得しているし、幸福になっています。
あっ! 確かにアブ付きわらも、みかんも、すごく望まれて相手の手に渡っている!
取引の基本は、双方がwin-winになることです。異常な交換比率に見えても、当人がそれだけのコストを払う価値を感じているのであれば、問題ありません。
若者が持っていたものは、相手にとって大きな付加価値があったのか。
3 どんどん値上がりするのはなぜ?
『わらしべ長者』みたいに、需要や付加価値が大きいと、とても高く売れる場合があることは、よくわかりました。しかし現実を見ると、そういうのとは関係なく、モノの値段がどんどん上がっているように感じます。
確かにモノの値段、上がってますよね。
それはなぜですか? 原材料費が上がっているから?
それもありますが、人件費、光熱費の増大も大きいです。それらは、材料、製造、加工、運送、販売……などに、影響してくるので、全体としてとても高くなります。
どうしてそうなったんだろう? 日本はずっと「デフレ」で、給料も増えなかったけど、物価も上がらなかったのに……。
日本では、1990年代にバブル経済が崩壊してから、そんな状態が続いていました。しかし、食料や原材料やエネルギーを外国からの輸入に頼っています。それは、外国の影響を受けやすい、ということなんですね。
外国!? 外国が関係あるの!?
もちろんです。2020年代に入って、世界的にエネルギー価格が高騰し、多くの国が新型コロナ対策におカネを流通させ、さらに戦争も起こりました。その結果、世界各国でインフレになったんです。
その影響が日本に……?
それだけではありません。円安の影響もきわめて大きいです。2020年に1ドル110円くらいだったのが、25年には150円になっています。
えっ(計算して)、それ、円の価値が73%に下落し、ドルは136%に上がったということ?
そうです。同じものが、1.36倍の値段を払わないと手に入らなくなりました。
高い! だったら輸入に頼らず、日本国内の小麦や石油を使えば……。
パンやパスタの材料になる小麦は、日本の気候条件では栽培が難しくて、90%を輸入に頼っています。石油に至っては、99%以上が輸入です。
…………。
さまざまな要因で、原材料も人件費も光熱費も上がりました。それが商品の価格に影響しています。このように、生産コストの上昇で価格が押し上げられることを『コストプッシュインフレ』といいます。
でも、日本ももうインフレ状態だから、給料も上がるんじゃないの?
企業努力で給与は増加傾向にありますが、物価の上昇に追いついていません。本当は、もっと給料が上がるといいんですが。
4 プライベートブランドはなぜ安い?
「原価」の上昇をそのまま「販売価格」へ転嫁すると消費者が困ってしまう。各メーカーや小売店も努力をしていると思いますが、トップバリュさんはその筆頭ですよね。
ありがとうございます。でも、安くすればいいとは思っているわけではなくて……。
えっ、安いほうがいいでしょ!?
デフレの時代、小売業界は価格を下げる努力をしてきました。でも、やりすぎた面もあると思っています。その結果、企業の利益は上がらず、意欲的な商品開発ができず、お客さまの気持ちに響かない……という流れができてしまいました。
つまり、お客が喜ぶ付加価値を提供できなかった……?
そうです。だからいま、私たちは、価格を抑えるだけでなく、新しい付加価値を創出することに重点を置きながら、効率的な取り組みでコスト削減を進めています。
付加価値を生みながら、コストを下げる? そんなことできますか?
慣れっこになって気づかないムダって、たくさんありますよね。たとえば、ペットボトルのラベルや、ティッシュペーパーの外箱。それらをなくした商品を作れば、環境には優しいし、値段も下げられます。
あっ、言われてみれば本当だ。
トイレットペーパーも、1ロール60mだったのを90mにすれば、少ないロール数でこれまでと同じ紙の量になるので、トラックで運べる効率が高くなりますよね。
それも地球環境に優しくて、安くなる。スバラシイ視点だなあ。
トップバリュさんのプライベートブランド第1号は、カップ麺の『ジェーカップ』ですよね。
そうです。カップ麺が1971年に発売されたときは100円だったのですが、オイルショックで物価が高騰し、各メーカーは74年に一斉に値上げしました。そのときに弊社は、『ジェーカップ』を85円で発売しました。
それは安い! なんでそんなことができたんですか。
原材料費や流通コストのムダも省きましたが、当時カップ麺に必ずついていたフォークの提供をやめたんです。
おお、第1号のときから、いまと同じことをやっている! そこからスタートして、いつもそうやって「省けるものはないか?」と探しているんですか?
はい。開発担当の社員みんなで、常に探しています。
やりすぎちゃったこととか、ないの?
ありますね。たとえば、粉洗剤の計量スプーンとか。買い替えるたびに入っているのはムダだと思ってやめたのですが、お客さまに『ないと困る』と言われて、復活させました。
入っているものと思って、以前のものを捨てる人も多いのかもですね。
5 価格を抑えるさまざまな工夫
個々の商品の工夫もありますが、トップバリュさんは生産体制そのものも工夫されています。
大きな工場を作るとか?
いえ、われわれは工場を持っていないんです。
えっ、工場がない!? あんなに商品をいっぱい出してるのに!?
たとえば洗剤なら、メーカーさんの洗剤を作っている工場に交渉し、工場のスケジュールを優先しながら、空いている時間に当社の洗剤を生産していただくようにお願いします。メーカーさんは効率的に工場を稼働させることができ、当社は品質のよい商品を提供できます。
それは、どちらにとってもスバラシイ話ですね。
そんなふうに、双方にメリットがあるwin-winの関係で成り立っています。
目のつけどころがいいなあ。それだったら、品質を下げずに、値段を下げられるかも。
あと、流通の効率化もありますね。たとえば、商品を運ぶときには、パレットという台に載せてからトラックに積み込みますが、このパレットのサイズが企業によってバラバラだったりするんです。これを統一すれば効率が格段によくなる。
運送の際には、規格が統一されていたほうが圧倒的にラクだし、作業スピードも速くなるでしょうね。
これはあくまで一例です。他にも、さまざまな商品や生産の仕方について、見直す余地があると思っています。お客さまのためにも、コスト削減の工夫をしていきたいですね。
ふーむ。正直なところを話すと、プライベートブランドというのは、製造や流通の業者さんに無理をさせたり、品質を落としたりして低価格を実現しているのでは……と思っていました。ぜんぜん違うんですね。試行錯誤を重ね、さまざまな工夫や努力を積み重ねることで、クオリティを維持しながら価格を下げる。ワタクシもう目からウロコです。
実際、理解されるまでに時間がかかりました。以前は『安かろう悪かろう』というイメージが強くて、悪く言われたこともありましたし、長いあいだ、『価格を抑える努力をしている』と言いづらい空気がありました。
うん、そんな空気だった気がする……。でも、いまは違いますよね。
そうですね。いまはむしろ、伝えたほうがいいという流れになっていて、われわれもできるだけ発信しています。とくに、若い方には支持されることが多くて、それはとても嬉しいですね。
最近は『エシカル消費』も浸透してきましたからね。
エシカル……ナンデスカ?
エシカル消費。環境・人権・社会への配慮がなされた商品やサービスを選ぶ消費行動です。
価格を下げることが、環境への配慮とも密接に関係していることは、どんどん伝えてほしいと思います。
──では、ここまでに聞いたみずほさん、トップバリュさんのお話を活かしつつ、『わらしべ長者』の新しいお話を考えてみよう。
6 空想金融教室版『わらしべ長者』
いくら働いても貧乏から抜け出せない若者が、お寺に21日間籠もり、観音さまに祈った。最後の夜、夢枕でお告げがあった。
「自分が手にしたものを、どうすれば人のために役立てられるか、徹底的に考えなさい」。
寺から出た若者は、寝ぼけて転んだ拍子に、一本の稲わらの芯を手にしていた。
「これが人の役に立つことなんてあるかなあ?」などと思ったけれど、大きなアブがつきまとってきたので、わらの先にアブを結び付けて歩いた。
それを見た男の子が「あれがほしい」と泣きわめく。若者は「こんなものでよければ」と、アブ付きわらを男の子にあげた。男の子は大喜びし、若者は立派なみかんを3つ、子どもの母親からお礼としていただいた。
「役に立った…のかな」と思いながら、若者がみかんを持って歩いていると、道端にうずくまっている貴婦人がいる。事情を聞くと、喉がかわいて歩けなくなったという。若者がみかんを差し出すと、貴婦人はそれを食べて喉の渇きを癒し、「まだ暑いこの時期に、こんなにおいしいみかんが食べられるなんて」と心から感謝を述べ、お礼に美しい絹の反物を渡した。
「みかんが人の役に立ったんだ」と、嬉しく思った若者があたりを見渡すと、さっきの貴婦人以外にも、ヨロヨロと苦しげに歩いている旅人が何人もいる。この一帯は日陰も少なく、近くに川や湖もなく、熱中症で倒れる人も多そうな、旅の難所だったのだ。
それに気づいた若者は「この人たちにもみかんを食べてもらう方法はないかな」と考え、手元の反物をしばらく見ていた。やがて意を決して、いま来た道を引き返した。
アブ付きわらとみかんを交換した母子に追いつくと、「さっきのみかんは、どこで手に入れたのでしょうか?」と聞く。そして教えてもらった農家に駆け込んで「この反物で、おたくのみかんをできるだけ売ってください」と頼んだ。
若者はみかん1,000個を手に入れると、先ほどのカンカン照りの道に戻り、地主に交渉して、納屋を借り受けた。地主は「このあたりは農作物も取れず、納屋もほとんど使ってないから」と安い料金で貸してくれた。若者は、納屋の前に椅子を置き、簡素な日よけも作った。さらに、前後1㎞ほどの道沿いに、多数のゴミ箱を設置して「皮はここへ」と記した。
そして道行く人に向かって「熱中症にならないように、ここでみかんを食べていきませんか。お値段は「原価+利益」だけど、原価は「アブ付きわら」だから、相当お安くしておくよ」と声を張り上げた。旅の人々が、争うようにみかんを買い求めていく。
その様子を見ていた地主は「困っている人のために商売をするとは、いい考えだ。しかしゴミ箱まで設置するとは、あんたも親切がすぎるというか、商売がヘタだな」と呆れ顔だ。だが、若者は「いや、みかんの皮も人の役に立てたいと考えたんです」と答えると、日が暮れるや、道沿いのゴミ箱からみかんの皮を回収してまわった。
翌日、若者は再び地主に交渉して古い浴槽を借りると、それを納屋の脇に設置して湯を沸かし、乾燥させたみかんの皮を袋詰めして湯に入れた。そして「旅の途中でみかん風呂はどうでしょう。このあたりには川も温泉もないけど、みかん風呂は肌にもいいよ」と新たな商売を始めた。余った皮は、脱衣場のまわりに置いて火をつけ「こうすれば虫よけにもなるから、どうぞ安心して風呂に入ってください」と呼びかけた。
こうして、若者のみかんの販売&みかん風呂の経営は順調に進んでいった。さらに余ったみかんの皮を天日干しした若者は、一帯の地主たちに交渉し、それを砕いて道沿いの土に撒いていった。「こうすると、いい肥料になるんです。カンカン照りのこの一帯も、植物を育てやすくなるでしょう」とアドバイスすると、地主たちは「遊んでいた土地だから、有効活用できるなら、こんなに嬉しいことはない」と木を植え始めた。木が茂り始めると、道には日陰ができるようになり、旅人たちはグッと楽になった。さらに若者は、空いた土地にみかんの木も植えていった。
10年後─。ある貴婦人の一行がその道を通りかかった。
彼女は疲れ切った顔で「確かこのあたりは、カンカン照りで殺風景な一本道だったと思ったけど……」と不思議そうに言った。「それが、いつの間に緑いっぱいの道になっている。
しかも、みかんの香りが漂って、とても素敵」と、ようやく笑顔を見せた。
若者はもちろん、自分が成長するきっかけを与えてくれた恩人の顔を忘れていなかった。貴婦人の顔を見るや、「いつかお返ししようと思っていました」と、みかん色に染めた美しい反物を渡しながら「みかんもぜひ召し上がってください」と満面の笑みを向けるのだった。めでたしめでたし。

面白い金融の世界を一緒に学んでいきましょう。
好きな漫画は「ハーメルンのバイオリン弾き」、
好きなものは「ゲーム」、「ディズニー作品」です。