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不正送金被害をゼロに〜ワンタイムパスワード普及に向けた社会課題解決型アプローチ

不正送金被害をゼロに〜ワンタイムパスワード普及に向けた社会課題解決型アプローチ

写真左から、個人マーケティング推進部 金井 俊哉・竹内 司・熊谷 尭子・柳田 直輝

写真左から、個人マーケティング推進部 金井 俊哉・
竹内 司・熊谷 尭子・柳田 直輝

セキュリティ対策を通して安心・安全な社会を

パソコンやスマホから手軽に金融取引ができるサービスとして、利用者が増え続けているインターネットバンキング。しかし、利便性が高い反面、セキュリティが深刻な社会課題となっている。
その一つが不正送金で、日本では年間1,800件以上の被害が報告されており、被害額は約25億円にものぼるという。不正送金の被害は、資金流出した口座の持ち主だけにとどまらない。流出した資金の一部が紛争やテロ活動に使われているとも言われ、影響は世界中に及んでいる可能性がある。

〈みずほ〉は以前から不正送金の防止に力を入れてきたが、さらなる対策強化のためにはインターネットバンキング利用者のセキュリティ意識向上が不可欠である。不正送金という社会課題の解決に向けて、お客さまの協力を得るにはどうしたらいいのか──。この難問に正面から取り組んだのが「不正送金被害ゼロプロジェクト」だ。
プロジェクトメンバーは、インターネットバンキングのセキュリティ企画を担当する柳田直輝と竹内司、プロモーションのエキスパートである熊谷尭子、そしてWEBマーケティング支援を手掛ける株式会社メンバーズ・金井俊哉の四人。主担当者として本案件を主導した竹内は、プロジェクト始動の背景をこう語る。

「お客さまに自ら行っていただくセキュリティ対策として、〈みずほ〉ではワンタイムパスワードを推奨してきました。しかし、機能を中心にPRしてきたため、なかなか利用者が増えず、従来の施策では限界があると感じていました。そこで、なぜワンタイムパスワードが必要なのか、それが社会課題にどう貢献するのかを発信する『社会課題解決型アプローチ』に挑戦しようと考えたのです」
四人の挑戦は、思いを共有するための熱い議論から始まった。そもそも世間では、銀行が堅牢なセキュリティを備えることは「あたり前」と考えられている。実際に、こうした高い期待に応えるべく〈みずほ〉としていくつもの対策を講じてきた中で、今改めてめざすべきゴールは何なのか。議論が百出する中で、初心に立ち返ったところ、明確な答えが見えてきた。
熊谷は「〈みずほ〉がセキュリティ対策を強化する目的は、〈みずほ〉だけでなく世の中全体を安心・安全にするため。この目的を決してブレることなく達成していこうという思いを共有できたことが、プロジェクトをやり抜く力になりました」と振り返る。

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NPO、そしてお客さまとの共創

2018年9月、メンバーたちはプロジェクト第一弾としてウェブサイトを開設する。セキュリティへの取り組みを通して社会課題解決をめざすという宣言を掲載し、その達成にはお客さまの協力が不可欠であると訴えた。この宣言は多くの共感を呼び、ワンタイムパスワードの申込数は従来比1.7倍に増加。利用者のセキュリティ意識喚起に一定の成果を発揮したといえるだろう。
翌年には、さらに踏み込んだ第二弾として、テロや紛争の解決をめざすNPO法人「アクセプト・インターナショナル」との共創プロジェクトを開始。ワンタイムパスワードの申込が1万件を超えた暁には、同NPOが実施するテロリスト・ギャングなどの脱過激化・積極的社会復帰支援プログラムに資金支援を行うと発表したのだ。
〈みずほ〉とアクセプト・インターナショナルとの橋渡し役を務めた金井は、共創に至った経緯をこう語る。

「アクセプト・インターナショナルについて、代表が自ら現地に足を運ぶなどして、直接的・恒常的な活動を行っているところに感銘を受けました。共創するからには、社会課題解決に具体的な貢献ができるパートナーがいい。そこでプロジェクトに込めた思いを代表に伝えたところ、深く共感していただけたのです」
この取り組みは、インターネットバンキング利用者がセキュリティを自分ごと化して捉えやすかったこと、自ら社会課題に貢献できる「参加型」であったことなどから前回にも増して大きな反響を呼び、ワンタイムパスワードの申込数は第一弾の3倍にのぼった。目標とした1万件は約1ヵ月半で達成し、支援金は元テロリストの社会復帰や関係者との和解セッションに役立てられたという。
プロジェクトは予想を上回るペースで成果をあげているが、柳田は「一つの通過点に過ぎない」と強調する。
「1万件というのは、成果を可視化するために設定した数値目標に過ぎません。あくまでも私たちがめざすのは、お客さまに『〈みずほ〉とともに被害をゼロにしよう』『ともに安心・安全な社会を実現しよう』と思っていただくこと。そういう意味では、多くのお客さまに注目いただけたことは確かに一つの成果であると思いますが、長い道のりにおいては小さな一歩にすぎないと謙虚に受け止めています」

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自ら動き、壁を突破する

竹内はプロジェクトを振り返って「最初はどのように進めたらいいのか、誰に相談したらいいのかさえ全く分からなかった」と明かす。例えば、協定書一つ取っても、前例がないため、一から作らねばならなかった。メンバーたちは、法務、コンプライアンス、広報など、様々な部署に教えを求めて回ったが、竹内にとって「意外だったのは、どの部署も反対するどころか背中を押してくれたこと。皆『ぜひやるべきだ』と応援してくれて、本当に大きな力になりました」。
「不正送金被害ゼロプロジェクト」は、SDGsの目標に掲げられた「平和と公正をすべての人に」「パートナーシップで目標を達成しよう」に貢献するもの。普遍的なテーマへの挑戦は社員の共感を呼び、若手の新たな取り組みを応援する機運と相まって、手厚いサポートを得られたという。
「最初は、テロの話題を発信するなんて金融機関にはできない、きっと誰かが反対するに違いないと思っていました。私たち自身が勝手に、社内には『壁』があると思い込んでいたのです。でも、実際にはそんなものはなかったし、むしろ応援までしてもらえた。こうした気付きを得られたのも、自ら主体的に動いたおかげなんだと思います」と柳田。

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他のメンバーもそれぞれに新たな気付きを得たようで、「他社と共創したおかげで新しい視点を得られた。通常業務とは違うプロジェクトへの参加は、誰にとっても大きな成長になるはず」(熊谷)、「今回のプロジェクトは規模が大きく、社会に貢献しているという実感が得られた」(金井)と力を込める。
今後の課題は、このプロジェクトを全国的なムーブメントにしていくことと、セキュリティ意識と社会貢献のつながりを継続的に発信していくこと。そのため、現在は第三弾としてフィッシングサイトへの意識向上を図る企画を検討中だ。
「第一弾と第二弾で、プロジェクトをゼロから進める手法を学ぶことができたので、それを次回に活かしていきたい。引き続き、お客さまに共感していただける形でセキュリティ対策の意義や重要性を発信し、社会課題の解決に貢献していきたいと思います」(竹内)
プロジェクトを通じて着実に進化する四人。「不正送金被害ゼロプロジェクト」は壮大な目標に向けて、これからも前進を続ける。

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