2024年4月26日

"自動運転"実現の日は近い!?
物流の「2024年問題」に〈みずほ〉が挑む

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トラックドライバーの時間外労働の規制が強化されたことに伴い、輸送能力の低下が問題視されている「2024年問題」。ドライバーの労働時間に上限が設けられることで、運転手一人当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなるほか、配送運賃の値上げなどが懸念されています。

こうした状況を解決する取り組みとして注目されているのが、自動運転の社会実装をめざすプロジェクト「RoAD to the L4」。みずほリサーチ&テクノロジーズでは、自動車メーカーや物流事業者などと連携しながら、社会実装に向けた事業モデルの確立をめざしています。

物流業界の未来を切り開く鍵となる一大プロジェクトに携わる中で、〈みずほ〉の社員が感じたやりがいや課題とは?プロジェクトの第一線で活躍するみずほリサーチ&テクノロジーズ 築島に話を聞きました。

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築島 豊長

みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社

デジタルコンサルティング部 課長

1. 自動運転技術の普及と実用化をめざして。
〈みずほ〉が"つなぎ役"としてかなえる未来。

——「RoAD to the L4」とは、どのようなプロジェクトでしょうか。

築島:注目を集める自動運転ですが、技術が開発されて終わりではなく、実際にその技術が社会で使われていくことがとても重要です。「RoAD to the L4」は、自動運転の技術を社会実装するためのプロジェクトです。具体的には、決められた走行環境等の条件下でシステムが運転を行う「自動運転レベル4」の技術と、その技術を使ったモビリティサービスの実現や普及によって、移動課題の解決や環境負荷の低減、日本の経済的価値の向上をめざしています。

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我々が携わっているのは、「モノの移動」にフォーカスした事業(*1)です。新東名高速道路に高性能無人トラックを走行させ、物流が抱えている課題の解決と新たなサービスの創出を見すえています。

自動運転技術の社会実装アプローチのイメージ

(自動運転技術の社会実装アプローチのイメージ)

車両開発をしている自動車メーカーのみならず、自動運転トラックのユーザーとなる物流事業者、道路管理者といった様々なステークホルダーとともに、一つの目標に向かって進んでいるところです。
*1「高速道路における隊列走行を含む高性能トラックの実用化に向けた取り組み」

——みずほリサーチ&テクノロジーズは、この事業にどのように携わっているのでしょうか?

築島:一言でいえば、物流事業者と自動車メーカー、道路管理者とのつなぎ役として、新たな事業モデルの確立をめざしています。

自動運転というとどうしても「車両技術のプロジェクト」と思われがちですが、実は車両技術だけではなく、すべてのステークホルダーにとって付加価値の高い事業モデルの確立がとても大切です。自動車メーカーと物流事業者との間に我々が入り、双方の目線を共有するとともに解決策を見いだし、自動運転技術を社会実装できるように、また新たな事業を創出できるように取り組んでいます。

2. 自動運転に"夢"と"将来性"を感じ、プロジェクトへ

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——自動運転に携わるようになったきっかけを教えてください。

築島:私は大学時代に暗号理論という分野を専攻していたこともあり、入社当初はサイバーセキュリティ関連の調査やコンサルティングを行っていました。そこからデジタル全般へと領域を広げ、IT分野における国の調査やコンサルティングを手がけるようになりました。

自動車には元々興味があり、自分のこれまでの経験と組み合わせて何か新しいことができないかと考えていたところ、同僚から教えてもらったのが、「自動運転の段階的実現に向けた調査研究」という警察庁の委託事業でした。

事業の話が持ち上がった2016年当時はまだ自動運転に対して、「遠い未来の技術」というイメージでしたが、同時に将来的に必要とされるものだとも思っていました。夢を感じられるプロジェクトだと心が躍り、すぐさま提案することを決めました。この案件がきっかけとなり、自動運転の領域に深く携わるようになりました。

——自ら興味のある分野に手を挙げられたことが、本案件に携わるきっかけになったのですね。そのようなチャレンジを応援してくれる環境があったということでしょうか。

築島:そうですね、自動運転という未知の領域への挑戦を許容する会社の姿勢、そして手を挙げれば挑戦できる環境があると思っています。今振り返ると、自動運転以外の仕事をしていた時に、チャンスをつかむための能力やスキルが培われていたようにも感じますね。これまでの経験があったからこそ、ベストなタイミングで自動運転に携われたのかなと考えています。

3. まだ誰も答えが分からない問題へ
多くのステークホルダーと立ち向かう〈みずほ〉の姿

——プロジェクトを進めるうえで、難しさを感じるのはどのような部分ですか?

築島:技術と事業モデルの確立を同時並行で進めるのは「言うは易し」なんですが、やはり誰も答えがわからない課題を解決するために、合意形成を図りながら解決に近づいていく部分に難しさを感じますね。

また、技術的に高度な車両を作ることはできても、車両価格が跳ね上がってしまうと、物流事業者が導入できず普及しないため、真の社会実装にはなりません。技術レベルと車両価格の関係がある中で、いかに物流事業者がビジネスとして使えるものにしていくのかというのも難しいポイントです。

その解決策の一つとして、インフラとの連携も進めています。今般、「自動運転インフラ支援道」というコンセプトが出てきていて、インフラからの支援によって、自動運転やサービス等の早期実現や車両価格の抑制につながります。

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——複雑なプロジェクトをまとめていくうえで、大切にされていることはありますか?

築島:まだ誰も答えがわからない問題に対して、「まずはこうやってみませんか?」と話を持ちかけながら、誰も取り残さないよう全員がベストな状態となることを追求しています。また、「ゴールは何か」ということと、「中立性」を保つことも大切にしています。ステークホルダーが増えると、各方面からそれぞれの要望が出てきます。それらを最終的にどう一つにまとめるか、新たな答えを出せるかが、我々に期待されている部分ですし、プロジェクトに携わる人が共感し、同じ方向を向いて力を発揮できるよう、理想を持って進めています。

——やりがいを感じる瞬間とはいつでしょうか?

築島:自動運転の社会実装は、未知の部分が多いのも事実です。様々な業界や職種の方々と試行錯誤をしながら、ゴールに向けて解決策や方向性を定めていくことで、「まだ気付いていない答え」に近づいているような感覚になり、そこにやりがいを感じますね。

4. SFの世界を現実に。
問題意識を一般消費者まで広げ、真の社会実装をめざしたい

——このプロジェクトを通じて、人々の暮らしにどのような影響を及ぼしていきたいと考えていますか?

築島:2024年問題では「モノが届かなくなる」と言われますが、これまでの「翌日配送」という基準の達成がむずかしくなるかもしれません。そうなると、生鮮食品が、我々が住んでいる街に届かないという状況も考えられます。

例えば、携帯電話で通信のスピードが遅くなると、生活の質や利便性が下がりますよね。一方で、通信速度が速くなるとオンラインでゲームができるなど、新たな価値が生まれます。「情報の移動」と「モノの移動」の違いはありますが、移動しやすさという点で自動運転技術も似ていると思うんです。人々の暮らしにおける今の生活水準を維持しながら、より利便性の高い社会を作っていくこと。このプロジェクトは、そのポテンシャルを秘めていると思っています。

一般の方にとっては、まだまだ遠い未来の話のように思われるかもしれませんが、今後はより多くの人に興味を持っていただく機会を増やしていきたいです。

——最後に、自身の展望についてお聞かせください。

築島:「RoAD to The L4」という大きな社会プロジェクトに関わらせていただいているので、やはり「自動運転を社会実装し、世の中に新たなサービスや価値を提供すること」を達成したいです。ひと昔前までは、自動運転はまるでSF世界の出来事のように思えたかもしれませんが、自動運転は着実に、一歩ずつ実現へと近づいていると思っています。

ステークホルダーが増えてきているからこそ、〈みずほ〉に期待される部分も大きくなっているように感じます。多くの方々と連携しながら、日本全体がより豊かになる一助となるような役割を担っていきたいですね。

物流の「2024年問題」に対し、様々なステークホルダーとともに挑む〈みずほ〉。今年の秋頃には大手自動車メーカー4社と合同で実証実験を実施予定。今後も自動運転技術の普及と実用化をめざす〈みずほ〉の歩みは続いていきます。

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