2024年1月25日

ポーラ及川社長 「愚か」と言われた新人リーダー時代。
壁を突破した先に見えたものとは

みずほフィナンシャルグループは、女性リーダーのさらなる成長の機会として、新任女性部店長向け研修プログラムの一つとしてワークショップを開催しました。
10月20日に、「可能性の扉を拓く」をテーマに株式会社ポーラ代表取締役社長・及川美紀さんが講演。
リーダーになった当初は、がむしゃらに働いて、それでも管理職試験に落ち、さらには、上司に「きみは愚かだ」とまで指摘されたといいます。
支店の一社員だったところから、社長になるまでにぶつかった数々の『壁』と、そこで見つけたリーダーの可能性について、語っていただきました。
本記事前半では、及川さんの講演の一部から、リーダーとしてビジョンを見つけるまでの話にフォーカス。後半では、新任女性部店長たちのリーダーとしての意気込みコメントを紹介します。

自分自身の可能性を信じられるか?

及川美紀さん

株式会社ポーラ 代表取締役社長

宮城県石巻市出身。1991年、株式会社ポーラ化粧品本舗(現株式会社ポーラ)入社。美容教育、営業推進業務、2009年より同社商品企画部長を経て2012年執行役員、2020年より現職。著書に『幸せなチームが結果を出す』(共著、日経BP)。

本日のテーマは「可能性の扉を拓く」です。リーダーは、自分自身の可能性を信じる必要があると考えています。
上司や同僚に意見を言ったり提案をしたり、なにか一歩踏み出す時に「可能性がある」と思わなければ、勇気が出ませんよね。
私たちの目の前には、メンバーがいます。自分の可能性を信じられないリーダーは、メンバーの可能性を信じることもできません。
また、「私もあんな風になりたい」と思ってもらうこと。これもリーダーの大事な役割の1つです。
自分の可能性を拓くと同時に、メンバーの可能性、もしかしたら会社を超えて地域の皆さんの可能性まで広げられる自分なんだと。そう信じながら、聞いていただければと思います。

「自分のコピーを作ろうとするのは、愚かだ」

まずは「リーダーの扉」。私が初めてリーダーになった時のお話をさせてください。
思い返すと、私のキャリアにはいくつも壁があったように思います。皆さんも同じかもしれません。
初めてリーダーを務めたのは、出向してからずっと勤めていた埼玉のエリアマネージャーです。下から数えて3番目の若さで、いきなりリーダーになりました。
12月まで「及川さんコピーお願い」と言っていた方が、1月からは部下になっているような状況です。チームの中で急に立ち位置が変わってしまい、不安を感じていたことを覚えています。
何かを変えなければいけないと思って、管理職試験を受けました。
ですが、試験には落ちてしまったんです。

当時の私は、「頑張っているから認めてほしい」リーダーでした。
出向して15年。同期は華々しく、本社でいろいろなプロジェクトのリーダーを務めています。でも自分は、埼玉の事務所段ボールを運んだり、研修会の机を並べたりしている。
管理職試験を通して、私がいることに気付いてほしいと思っていたし、「これだけ頑張っているんだから、給料あげてよ」という気持ちもあった。そんな私だったので、管理職試験に落ちたんです。
いま思えば本当に自分本位でしたね。
落ちた理由が分からずがっかりしていた時に、すごく活躍しているビューティーディレクターの方が、私のために時間を使って、怒ってくれたんです。
「最近のあなたは見ていられない」「期待している私たちをがっかりさせないで」と。
その頃の私は、頑張っているし成果も出す。だけど、機嫌が悪い。そんなメンバーだったんです。
仕事ができるんだけど、態度が悪い人。お山の大将みたいな。

1人でがむしゃらに仕事量を増やして、部下にたくさん指示を出して、ダメ出しをして。上司から「自分のコピーを作ろうとしている君は愚かだ」と指摘されたこともあります。
自分のやり方を教え込むだけでは、メンバーそれぞれが持つ可能性を信じられていないと。
そんな私が、信頼する方に叱っていただいて、やっと変わりはじめました。

ビジョンを見つけると「おはよう」が変わった

もう一つきっかけになったのが、上司の「君自身が本当にしたいことなんなの?」という言葉です。
そのときは即答できませんでした。
時間をかけて、お腹の底から出てきたのは「この組織を一流にしたい」という言葉でした。
上司から「じゃあやればいいじゃない」と言われて、「あなたの仕事じゃないの?」と思ったりもしたんですけど(笑)。声に出してみると、覚悟が決まっていく感じがしました。
すると、「自分が評価されたい」ではなく「自分の所属組織を全国トップにしたい」「メンバーの成長をサポートしたい」「ポーラで働く人々に誇りを持ってもらいたい」と、ビジョンが次々に湧いてきました。
ビジョンを決めた私は、いつのまにか未来に向けて燃える人に変わりました。
ただ私だけ変わってもビジョンを叶えられないので、まずはメンバーのみんなにプレゼンテーションをしていきました。
私はこの組織をこんな風にしたい。だからみんなの力が必要だ。そしてこれは、私がしたいだけじゃなくて、みんなにとっても新たな可能性が生まれることなのだ、と。

一流の組織にすると決めてからは、朝の挨拶から行動が変わります。
前はメンバーから挨拶されても「はい、おはよう」と何かをしながら返事をしていましたが、私の方から目を見て明るく「おはよう!」と声をかけるようになりました。
自分の朝の挨拶一つで、事業所の雰囲気を変える影響力があるとわかるようになったんです。
皆さんにも、それだけの影響力があるということは覚えておいてもらいたいです。

私が社長になるとき、「英語も話せない、MBAを持っているわけでもない私が社長だなんて」とも考えました。
でも、当時私を選んでくれた人たちから「君には足りないところがいっぱいある。でも、変えたいことがたくさんあるでしょう」と言われたんです。
ああ、足りないことがあるけれど選んでくれている。だったら自分なりに精一杯やってみようと思ったんです。
みなさんも、足りないところを数えるのではなく、自分には何ができるのかを考えて、本当にやりたいことを追及していっていただきたいなと思います。

リーダーは、チームで仕事をしてこそ

及川さんの講義を受けて、同席した秋田夏実は「私も初めの頃は周りの力を引き出すことに目を向けられないことが多かったように思います」とリーダーになった当時のことを振り返りました。

秋田夏実

株式会社みずほフィナンシャルグループ
グループ執行役員 人事グループ
副グループ長/CCuO(Chief Culture Officer)兼 CPO(Chief People Officer)

東京大学経済学部卒業。米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。外資系を中心に金融業界で約20年のキャリアを積んだ後、未知のIT業界に転じ、外資系テクノロジー大手の日本法人で、副社長としてマーケティングおよび広報を統括。2022年5月にみずほフィナンシャルグループに入社、現職に。

及川さんのお話にはすごく共感しました。私にとっても30代はプライベートでも忙しくなり始めて、責任範囲も広く、重くなっていく時期でした。
初めの頃は「リーダーらしくあらねば」と自分で完璧さを求めて、周りに頼ったり、周りの力を引き出したりすることに目を向けられませんでした。
でも、だんだんと慣れていくうちに肩の力が抜けて、ダメなところもさらけ出して、チームで仕事ができるようになっていったんですね。
そして、チームの可能性を発揮するためには、メンバーだけではなく自分の強みも知る必要があるということにも気づきました。

「私はこんなことでみんなの力になれる。だけどこれはできないので、みんな助けてね」と、しっかりと伝えられると、すぐにチームで力を発揮できるように思います。
自分の強みは何なのか。ツールを使ってみたり、上司や同僚に壁打ちしてみたりするといいと思います。私自身は、『ストレングス・ファインダー』を使って、すごく発見がありました。
今回、プログラムを通して横の繋がりができたことは、大切にしてほしいなと思います。同じような悩みを持っていて、それを共有できる。
これから大変なこともあると思います。そんな時に、変化を起こしてチームを動かせることがリーダーの楽しさだと思います。
及川さんや私も含めて、今日出会ったリーダーたちと協力しながら、変化を生み出していってほしいです。


また、講義後には、「自信を醸成・魅せるメークのポイント」と題し、株式会社ポーラのメークアップディレクター中岡さん(新体操日本代表 フェアリー ジャパン POLA 美容コーチ)によるメークアップ講座が開催されました。
秋田さんは「メークアップは、自分の気持ちを上げるのに効果的なもののひとつです。自分の気持ちが上がると、口角が上がる。リーダーの口角が上がると、メンバーの気持ちも上がる。そういう気持ちの連鎖を生み出すことができる」と話し、参加者は講義を受けて、メークの実践にも取り組みました。

自分らしさを大切に。リーダーは楽しい

参加社員からは、「シーンに合わせてメイクを変えるというのは目から鱗でした」「支店長になることを気負っていた部分があったが、やりたいことをやるしかない」などの声も。
みずほ銀行の高橋寛子は、「『支店長になったからには、肩肘をはって厳しい雰囲気を出して組織を牽引しなきゃ』と考えていましたが、及川さんのお話を伺って、自分らしさを大切に、むしろ柔らかい印象を出しながらやっていくことも大切なんだと感じました。
今後は口角を上げて、部下の目線で話して、メークアップも含めて今日学んだことを生かしてコミュニケーションをしていきたいと思います」と意気込みを語ってくれました。

また、「支店長になることをすごく気負っていた部分があった」と話すみずほ証券の岡本泉は、「なるようになるし、やりたいことをやるしかないなと思いました。
私は地方支店勤務のため、いろいろな人に会うことが少ないので、今回のプログラムは非常にありがたい機会でした。
若い人たちにも、私たちリーダー陣がわちゃわちゃ楽しそうに動いていることを伝えられたらいいなと感じました。大変なこともあるけど、意外と楽しい。目指してもいいかも、と思ってもらえたらうれしいです」と話しました。

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