こんなところにも〈みずほ〉 vol.11 E-waste

こんなところにも〈みずほ〉

2026年6月26日

E-waste問題に挑む。なぜ〈みずほ〉は4万台のPCを安全に再資源化できた?

環境への取り組みは、企業評価を左右する時代となりました。その中で近年、レアメタルを含む、PCやスマートフォンなどのE-waste(電気電子機器廃棄物)の再資源化は、企業にとって重要な経営課題となっています。しかし、中古になったIT機器は買い手がつかないケースが多く、〈みずほ〉においても、多額のコストをかけて廃棄していました。

こうした前例を覆し、〈みずほ〉では約4万台に及ぶ社内PCの入れ替えを機に、廃棄ではなく再資源化するプロジェクトを完遂。情報漏えいリスクを解消しながら、環境配慮とコスト削減を両立させるという業界初の挑戦でした。

今回、プロジェクトの発起人となったみずほ銀行 プラットフォームエンジニアリング部の西原延嘉と、再資源化スキームを構築したエムエル・ITADソリューション株式会社(以下、MLITAD)代表取締役社長の伊藤修司さんに、プロジェクトの舞台裏を聞きました。

1人の気づきから始まった再資源化プロジェクト

——〈みずほ〉でPCの処分方法を見直すことになったきっかけを教えてください。

BK西原 発端は、みずほフィナンシャルグループ共通で使用していた社内PCの大規模な入れ替えプロジェクトです。そこで、回収後の端末の行く末が課題となっていました。

売却をしようにも、10年近く使い込んだPCは、中古市場で全く買い手がつきません。そのため売却先がなく、「産業廃棄物」として法律に則り処分する以外、選択肢がないのがこれまでの実情でした。

西原 延嘉 みずほ銀行(BK)プラットフォームエンジニアリング部

大企業が率先して動かなければ100年、200年先の地球はどうなるのかと感じる一方、環境に配慮した場合、膨大なコストがかかる懸念も覚えました。リサイクルやリユースをしたほうがいいとは分かっていても、具体的な手段が見つからないまま時間が過ぎていました。

回収後の端末の行く末を検討していた時に、みずほリースがITAD(※)事業を手がける新会社を設立するタイミングでもありました。早速、コンタクトを取り、そこから廃棄ではなく再資源化への道筋が見え始めました。

新会社のMLITADは、同じグループだからこそ、金融機関が求める高いセキュリティ基準を理解してくれているだろうという信頼感があったからです。

※ITAD(IT Asset Disposition):IT資産の適正処分。企業や組織が使い終えたPC、サーバー、スマートフォンなどのIT機器を、情報漏えいリスク(データの完全消去)と環境リスク(適正なリサイクル・リユース)の両面から管理し、安全かつ最適に処分するプロセスやサービスを指す。

——MLITADとは、どのような会社なのでしょうか。

ML伊藤 MLITADは、IT機器のリユース・リサイクルに特化した事業を手がけています。

これまで〈みずほ〉の中でITADを担う会社はありませんでしたが、企業が使い終わったIT機器を廃棄ではなく資源として循環させる仕組みは、今の時代に欠かせません。

また、MLITADはみずほリースのネットワークをいかしながら、IT機器の回収から再資源化の処理まで一貫して手がけることで、〈みずほ〉全体のサーキュラーエコノミー実現に向けた取り組みを推進する役割も担っています。

伊藤 修司 エムエル・ITADソリューション株式会社(ML)代表取締役社長

——これまで、「ITAD」が浸透していなかったのはなぜでしょう。

ML伊藤  IT機器は「リサイクルの優等生」と言われていて、本来は再資源化しやすい素材です。

ただ、一般的な産廃業者は建材やプラスチックなど多種多様な品目を機械で大量に処理することで採算を合わせています。一方で人の手で部品ごとに細かな解体作業をすることによって、IT機器から高純度の資源を取り出すことができます。

この「手間の多さ」が、効率を優先する一般的な業者の事業構造とは相性が悪く、これまではコストをかけて粉砕し、ゴミとして捨てるのが当たり前になってきた経緯があります。

さらに金融機関においては、情報セキュリティ上の制約から売却や再資源化への移行が難しかったことも、廃棄処分一択になっていた要因の一つです。

——金融機関として前例のない取り組みだそうですが、社内からはどのような意見が出ましたか。

BK西原 今回の取り組みは、私の個人的な思いから始まったことです。しかし、実際に上司や周囲に相談してみると、「やってみよう」と賛同してくれたのです。チャレンジを後押しする風土が〈みずほ〉の中に着実に根付いてきていると感じましたし、それが今回のプロジェクトの成功につながったと思います。

唯一の懸念はコストでしたが、それもMLITADからの提案で解消されました。

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ML伊藤 今回の〈みずほ〉からの相談内容は、PCを有価物として買い取ることが可能であり、通常の廃棄物処理に比べて経済合理性もあると判断しました。

製品としては売れなくても、解体すれば、PCは金や銅、パラジウムといった貴重な資源の塊です。

加えて、今回の〈みずほ〉のプロジェクトでは、回収した金属の量が多いほど資源としての価値が高まる「ボリュームプレミアム」が生まれます。精密な分解はどうしてもコストがかかりますが、4万台という規模の処理を任せていただいたことで、そのコストを吸収し、リサイクル事業として無理なく回していく仕組みが成立しました。

今回〈みずほ〉が再資源化に踏み切ったことは、業界的に見ると大きなインパクトがあります。IT機器の利用後も環境に配慮した処理を行うことは、金融業界では、先進的な試みですし、〈みずほ〉のような大きな組織が、従来のやり方を変えるということは、他社にとって何よりも説得力のある前例になると思います。

環境配慮とコスト削減を両立する再資源化スキーム

——今回の資源循環スキームはどのような体制だったのですか。

ML伊藤 〈みずほ〉からPCを有価で買い取り、MLITADが運搬を担います。その後、みずほリースが資本参加するTREホールディングスグループのリバー株式会社に持ち込み、PCを手作業で分解・精密選別し、金や銅などの金属やプラスチックなどを再資源化します。

〈みずほ〉が4万台という規模のPCを提供し、MLITADがコーディネートと運搬を担い、リバーが国内屈指の処理能力で再資源化を行う。それぞれの役割が組み合わさって初めて成立したスキームです。

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——4万台の手作業の解体は大変だったのではないですか。

ML伊藤 再資源化率を上げるためです。PCの基板には銅やアルミ、金など複数の金属が混在しています。それぞれを丁寧に分解・分別するほど素材の純度が上がり、高い価格での売却につながります。

しかし、細かく分解しすぎると今度は時間がかかりすぎてコストが膨らんでしまいます。今回は対象となるPCの型番がほぼ決まっていたため、型番ごとに「どこまで分解するのが最適か」を事前に検証し、再資源化率とコストのバランスを見極められました。

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手作業での解体処理の様子

BK西原 〈みずほ〉では引き渡し方を工夫しました。パレットという板の上に型番ごとに一定数を並べて、渡しました。段ボール箱で渡すと1箱ずつ開けて台数を確認しなければなりませんが、パレット方式なら「この型番は1パレットに何台」と見た瞬間に分かります。台数の齟齬が起きにくく、各工程での管理精度が上がります。こういった相手の作業をイメージした工夫の積み重ねが各工程の工数を減らし、コスト削減につながったと思っています。

——金融機関として、セキュリティ面への懸念はどのように払拭したのですか。

BK西原 過去数回の端末更改の経験がいきたのかもしれません。当時、上司から「データ消去は廃棄業者に引き渡す前に自社エリアで実施し、所有者が責任を持って対応すること」と繰り返し指導されており、今回もその教えを徹底しました。

そこで、今回は、データ復元を専門とする会社が自ら開発した消去ツールを採用しました。復元する技術を持つ会社が「復元できない」と言い切れるツールなら信頼性は十分という判断です。

さらに、データを消去した結果を可視化するため1台ずつ写真で記録し、引き渡しまでの全工程の確認を実施しました。4万台のうち、1台でも見落とせば情報漏えいにつながりかねません。確認作業を工程の中に組み込み、担当者個人の注意力任せにしない仕組みを作ったことが、今回のセキュリティ対応の要でした。確実なセキュリティ対策を講じたことから売却でも不安はありませんでした。

ML伊藤 MLITADがお預かりする機器でリユースできないものは、分解・溶解して金属として再資源化する流れになっています。ハードディスクも基板ごと溶かされて金や銅として抽出されますので、その流れの中でデータ漏えいが起こることはありえません。

今回は、機器を利用した〈みずほ〉から、データを消去した状態で引き渡していただきました。そのうえで、機器そのものも原形をとどめない形で処理される。この二重構造により、安全基準を満たすことができました。

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E-wasteの再資源化を〈みずほ〉、そして業界のスタンダードに

——コスト面では、実際にどのような成果が生まれましたか。

BK西原 もし廃棄処分をすれば億単位の費用がかかる状況でした。しかし、今回は有価売却に転換できたことで、大幅なコスト削減につながりました。当初は環境に配慮するとコストがかかると思っていたのですが、まったく逆の結果です。有価での機器売却に加えて機器輸送や引取費用の負担は一切なく、環境面とコスト面で両立するモデルができたことが、今回の大きな意義だと思っています。

今後はグループ全体にこの取り組みが広がることを期待しています。今回はまだ0を1にした段階です。その1を5、10、100にしていくために、啓蒙活動をしながら、この仕組みをスタンダードとして〈みずほ〉に根付かせていくことが大事だと思います。

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——最後に、サステナブルな社会の実現に向けた今回のプロジェクトの意義と今後の展望をお聞かせください。

ML伊藤 「廃棄が当たり前」という金融業界の常識を変えることは、1社だけではできません。しかし、〈みずほ〉という大きな組織が動いたことで、必ず追随する企業が増えていくはずです。

営業の場で〈みずほ〉の取り組みをロールモデルとしてご紹介すると、非常に良い反応をいただけます。時代の流れは確実にサーキュラーエコノミーの方向へ動いています。

この連鎖が起きれば、日本の都市鉱山を有効活用できてサーキュラーエコノミーの底上げにつながると信じています。

BK西原 再資源化の取り組みを一時的なもので終わらせないために、今後は環境配慮の価値を定量的に示していくことも必要だと考えています。例えば、再資源化時のCO2削減量などの具体的な数字が見えるようになれば、より多くの企業からも共感を得られますし、環境配慮意識から再資源化を後押ししてくれると思っています。

今回の再資源化プロジェクトは、私の小さな課題提起から始まりましたが、みずほリースやMLITAD、そしてリバーといったパートナー各社が持つ知恵と熱意が融合したことで、このスキームが価値創出へとつながると思っています。これからもグループ、そして社会とともにサステナブルな未来をめざしていきたいと考えています。

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