〈みずほ〉社員のキャリアストーリー

2023年12月11日

パリパラリンピック出場をめざして──仲間とともに走り続けるアスリート社員の挑戦

〈みずほ〉では、パラアスリートとして挑戦を続ける社員を応援しています。コーポレートカルチャー室に所属する井内 菜津美は、T11(全盲)クラスのハーフマラソンで世界記録を持つパラアスリート社員です。パリパラリンピックへの出場をめざし、チームとともに練習に励む井内が、陸上競技の魅力を語ります。

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井内 菜津美

一人の「人」として向き合ってくれた仲間たちに支えられ、中学から始めた陸上競技

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▲伴走者とともに走る井内(写真左)

この社会には、障がいがあるために生活や行動などが制限されている方たちが、多く暮らしています。

〈みずほ〉がめざすのは、障がいの有無に関係なく、誰もが暮らしやすい共生社会の実現です。そのような観点から、自分のやりたいことを実現するため、夢や目標に向かって挑戦し続けるパラアスリートを応援しています。

コーポレートカルチャー室に所属する井内は、日本ブラインドマラソン協会強化指定選手として活躍する、パラアスリート社員です。井内が陸上競技に出会ったのは、中学生のときでした。

「私は保育園から高校まで、盲学校ではなく一般の公立校に通っていました。そのほうが健常者と切磋琢磨しながらお互いに成長できるという両親や自身の想いがあったからです。中学生になったとき何か部活を始めたいと考え、自分でも取組むことができ楽しめそうだと思ったのが、陸上競技でした」

そして陸上部に入部することを決めた井内。しかし陸上部ではそれまで、全盲の生徒を受け入れた例がありませんでした。

「陸上部に入部していた先輩二人が、『井内さんは説明すればなんでもできて、学校生活も普通に送れています。だから部活動もきっとできるし、私たちが伴走します』と、顧問の先生や他のメンバーを説得してくれたのです。そのおかげで部内のみんなが理解を示してくれて、入部することができました」

無事に入部できたものの、伴走するメンバーにとっても、伴走される井内にとっても、初めての経験。最初はなかなかうまく一緒に走ることができませんでした。

「たとえば障害物を避けるために、どのタイミングで私に伝えてもらうのがベストなのか、実際にやってみないとわからず当初はあちこちぶつかっていました。それでも続けられたのは、伴走してくれるメンバーが諦めずに何度でもトライし、粘り強く練習に付き合ってくれたからです。

メンバーはどんなときも、決して私を障がい者だからと過剰に親切にしたり甘やかしたりすることはなく、一人の『人』として向き合ってくれました。だからこそ私も心を開くことができ、信頼関係を築くことができたのだと思います。

半年後には1年生から3年生まで、女子部員全員がスムーズに伴走できるようになっていました。そして最後の1年は、男子部員も総動員で伴走してくれました。引退を迎えるまで続けることができたのは、みんなが支えてくれたおかげだと今でも感謝しています」

伴走者がいるから味わえる喜びがある。感謝の気持ちを忘れず、ともに目標へ挑む

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▲ゴール直後、達成感に包まれる井内

井内は中学に続き高校でも陸上競技を継続。その6年間、視覚障がい者京都マラソン大会に出場し続け、3キロの部で5連覇を達成しました。

「両親は、せっかく公立校の陸上部に所属しているのだから、視覚障がい者だけを対象にした大会ではなく健常者の選手と勝負できる大会に出場するべきだと、最初は反対していました。でも私が一度は大会に出てみたいと伝えると、渋々ながらも了承。そして私は、初出場で大会記録を更新し、優勝を果たしました。

そのときに両親が言ったのは、『1位になったからといって、そこで絶対に満足してはいけない』ということです。私はすぐ調子に乗ってしまうタイプなので、これ以上がんばるのをやめてしまうことを、きっと見抜いていたのだと思います。それからはどんな大会に出ても、現状で満足せず、さらに上をめざそうと思うようになりました」

高校を卒業した井内は、東京の大学に進学し、東京で就職。その間は忙しさのため、陸上競技からは離れていました。その後関西の企業に転職したことをきっかけに、再び選手活動をスタートします。

「実家から通える企業に転職したことで、練習の時間が取れるようになると考え、選手として競技に復帰することを決めました。ただ、本業がありながら練習をするのは想像以上に大変で、私だけでなく伴走者のスケジュールも確保しなければなりません。たとえばこの日は3人空いているけれど、他の日は全員都合が悪いなど、毎日練習したくてもなかなか思い通りにはいきませんでした」

全盲の井内がブラインドマラソンの大会出場において所属しているのは、必ず伴走者が必要な、T11と呼ばれるクラス。そのため大会で結果を残すためにも、伴走者の協力が欠かせません。

「伴走者と一緒に練習に取り組む大変さもありますが、それ以上に目標に向かってともに走る楽しさがあります。そして良い結果を出せたときにともに味わう喜びの大きさは、一人では決して得られないものです。私が競技を続けることができているのは、伴走者が私のために時間を割いてくれているおかげです。そのことをいつも心にとどめ、感謝の気持ちを言葉で伝えることを大切にしています」

〈みずほ〉でパラアスリート社員として活躍。誰もが暮らしやすい共生社会を見つめて

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▲社内交流会にて(前列右から2番目が井内)

2019年、井内はパラアスリート社員として〈みずほ〉に転職。これまで業務のかたわら行っていたブラインドマラソンを、自身の本業にすることを決意します。〈みずほ〉にとっても、初の取り組みでした。

「〈みずほ〉に入社して『走ること』が私の仕事になり、一番大きく変わったのは、何よりも結果を追求するようになったことです。これまでのようにただやみくもに練習をこなすのではなく、大会までの流れを考え、一つひとつの練習に目的を設定して走るようになりました。今はパリパラリンピックへの出場という目標に向かって、チーム一丸となって練習に取り組んでいます」

〈みずほ〉に入社したことでトレーニング時間が増えたことはもちろん、サポートしてくれるメンバーも増えたと話す井内。練習に集中できる環境があるからこそ、結果を出さなければならないというプレッシャーも抱えています。

「コーチやトレーナー、伴走者など、いろいろなメンバーが私のアスリート活動を支えてくれています。弱音はなるべく吐かないようにしていますが、時にはメンバーに『とても緊張している』など、不安な気持ちを素直に伝え、アドバイスをもらうこともあります。

そのときに実感するのは、私は一人で闘っているのではなく、仲間とともに闘っているということです。支えてくれるメンバーがいるからこそ、前向きな気持ちを保ち、プレッシャーに立ち向かうことができています」

パリパラリンピックへの出場という目標に向かって練習に打ち込む井内。その目標の先に見つめるのは、障がい者と健常者がともに自分らしく暮らせる共生社会です。その想いから、井内は社員向けにトークイベントや交流会も行っています。

「私のこれまでの経験やブラインドマラソンの魅力をお伝えしているほか、アイマスクによるブラインド歩行体験などを実施しています。多くの方は視覚障がい者に対して、不便なことが多く大変だというイメージを持っているかもしれません。

でも大変なだけではなく、目標を達成する楽しさや仲間と支え合う喜びも、私たちは知っているのです。そのことを〈みずほ〉のメンバーにも伝えたいという想いを持って活動しています」

イベントに参加した〈みずほ〉の社員たちからは、「目標に向かっている姿に感銘を受けた」「井内さんとの出会いをきっかけに、苦労の先にある喜びを得たくて、夢に再チャレンジしてみることにした」という声が寄せられています。挑戦を続ける井内の姿は、周囲への刺激にもなっているのです。

練習に終わりはない。自己ベストを更新し、仲間とともにパリパラリンピック出場へ

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2024年8月28日から9月8日まで開催されるパリパラリンピック。大会に向けて1年を切り、井内の練習にもますます力が入っています。

「まだ選考基準は決まっていませんが、自己ベストを更新することは必須条件だと思っています。そのためにも今以上の練習に取り組まなければなりません。走る量を単純に増やすだけでは故障のリスクにつながるため、現在は筋力トレーニングにも力を入れ、怪我をせずに最後まで走り切れる体づくりに取り組んでいます。

筋力をつけることは、正しいフォームを維持しながら走るためにも重要です。私は生まれつき視覚に障がいがあるため、『正しいフォーム』がどういうものなのかを見たことがなく、それを一から自分の体で理解するには多くの時間と労力を要します。それでも記録を更新するためにできることは、とにかくやってみる。現状維持では絶対に勝てないので、トライアンドエラーで新しいことにどんどん挑戦していきたいと考えています」

練習に終わりはないと話す井内。身体的なトレーニングだけでなく、メンタルトレーニングも必要だと考え、読書にも励んでいます。

「レースはもちろんですが、練習がうまくいかないときや、自分の気持ちが安定しないときにも、決して動じない強い精神力が必要です。そのために普段から点字や音声を活用して読書を行い、自分の考えを言葉にして整理する習慣をつけています。パリパラリンピックに向けてできることは、まだまだあるはずです」

目標に向かって自分を奮い立たせているのは井内だけではありません。井内とともに走る伴走者、トレーナー、コーチ。チームのみんながパリパラリンピックをめざし、それぞれの使命に取り組んでいます。

「〈みずほ〉のブランドスローガンである『ともに挑む、ともに実る。』は、ブラインドマラソンにも通ずる言葉だと私は思っています。伴走者をはじめ、トレーナーやコーチ、いつも温かい言葉をかけてくれる〈みずほ〉の仲間たち。そうした私を支えてくれているすべての人に恩返しができるよう、結果を出してパリパラリンピックへの出場を果たしたいと思います」

周囲への感謝を忘れず、今の自分を越えるために練習に励み続ける井内。仲間とともに積み重ねた努力は、いつの日か実りの時を迎えるはずです。

※ 記載内容は2023年11月時点のものです

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