2026年3月31日
日本をもっと豊かに!金融×農業で地域課題の解決に挑む社員

〈みずほ〉で働く6万人超の個性あふれる社員。この連載では“仕事の挑戦”をA面、“プライベートの挑戦”をB面として、両面で挑み続ける〈みずほ〉社員の姿に迫ります。今回話を聞いたのは、みずほ信託銀行の小畑。金融で社会課題を解決する事業開発をリードする一方で、副業制度を利用し、農業を支援する事業を起業。金融と農業、双方の知見を融合させ、社会にインパクトを与える挑戦を続けています。
みずほ信託銀行株式会社
小畑 宗一朗
【A面】課題解決の仕組みを作って、人々の未来を動かす
—どのような業務を行っていますか。
企業や個人のお客さまのコンサルティングを行う部門に所属しています。その中でも、企業の新規事業開発の支援を中心に行っています。具体的には、みずほ信託銀行のサービスやソリューションを活用し、大企業や大学、自治体などと連携しながら、日本産業の活性化や地域課題の解決につながるスキーム(仕組み)作りをしています。また、大企業の組織再編における税務・法務・会計面の論点整理や、企業オーナーの相続・事業承継支援なども担当しています。
—地域課題の解決とは、興味深いですね。どのようなスキームを手がけてきたのでしょうか。
いま私が携わっているのが、「神山まるごと高専奨学金基金スキーム(以下、神山モデル)」です。徳島県神山町にある「神山まるごと高専」で採用されたモデルを他に転用できないか検討しています。
同校は、給付型奨学金による学費無償化を掲げ、経済格差に左右されずに誰もが自由に学びを深められる学校をめざしています。
同校が掲げる思いに共感した〈みずほ〉は、奨学金のための基金創設にあたり、スキームの設計面で支援をしました。賛同企業から拠出していただいた資金を一般社団法人の基金に積み立て、元本を維持しながら運用します。そこで生まれた運用益を奨学金として学生に給付する仕組みにより、学費の実質無償化を実現しています。
ただ企業から寄付を募るのではなく、社会的に意義のある取り組みに民間の資金を呼び込むことができるのがこのスキームの特徴です。
—新しく事業を開発するのはとても難しいことだと思いますが、やりがいはどこにありますか。
お客さまの「思い」や「夢」が、具体的な形になっていく瞬間に立ち会えるところですね。
例えば、ある学校が新しい学部を設立したいものの、教育プログラムの開発、人材採用、プロモーション、奨学金などの資金調達に課題を抱えていました。そこで「神山モデル」を提案したところ、「このスキームが実現できれば我々の思いや夢が実現できそうです」と喜んでいただけました。こうした言葉をいただくたびに、「仕組み作りは、人の未来を動かす仕事なんだ」と実感します。
—お客さまとの関わり方で大切にしている姿勢を教えてください。
銀行員というと、企業に対しては第三者的な視点でサービスを提供するイメージがあると思っています。しかし私は、できる限りお客さまと同じ思いを持って、お客さまと同じスタンスで伴走する、パートナーのような立ち位置で仕事を進めることを意識しています。〈みずほ〉のバリュー「Integrity(お客さまの立場で考え、誠心誠意行動する)」に当てはまる部分ですね。
自治体をはじめ「神山モデル」に興味を持ってくださる機関はとても多いのですが、お客さまのご要望によっては他のスキームを活用いただいた方が良いケースもあります。そのような場合、単にお客さまの希望に沿うのではなく、本当にこれが最適なのか、いったん立ち止まって考えるようにしています。推進している立場としては、「神山モデル」を活用していただけるのはもちろんうれしいことです。しかしそれ以上に、お客さまにとっての最適な解を考え、提案することを大切にしています。そうした誠実な姿勢が、長期的な信頼につながると考えています。

「どんな相談に対しても、長期的な視点を持って寄り添うようにしたい」と小畑(左)
【B面】家業がヒントに! 原点に立ち返り農業関連事業の会社を設立
—〈みずほ〉で働きながら、起業もされたそうですがきっかけはなんですか?
実は、小学生の頃から「社長になりたい」という夢がありました。分野を問わず、何か大きなことをしたいという気持ちがもともと強かったんですね。その夢は大人になっても変わらず、2019年の〈みずほ〉の副業解禁を機に事業を立ち上げることにしました。最初はマーケティング系の会社を作ったのですが、起業家の先輩から「全然楽しそうじゃないね」と言われたんです。ハッとしました。起業すること自体が目的になっていて、本当にやりたいことができていないことに気が付いたんでしょうね……。
「何か子どもの頃から抱いている思いはないの?」と聞かれて頭に浮かんだのが、農業でした。実家が兼業農家だったのですが、「朝から晩まで働いても、もうからない」という現実を何とかしたいとずっと思っていました。そこで原点に立ち返って、「生産者ファーストの農業」をめざす事業に舵を切りました。
—具体的にはどのような取り組みをされていますか。
クラウドファンディングを活用した農産物販売をはじめ、自ら栽培したホップを使ったオリジナルクラフトビールの製造、6次産業化※の支援など、多面的に取り組んでいます。最近では「農業×アイドル」のイベントも企画していて、農業の魅力を別の角度から発信し、新たなビジネスの種を生み出す挑戦をしています。農業の未来につながるなら、領域を限定せず、面白い形で社会に届けたいという思いがあります。
※農林漁業者が、農林水産物の生産(1次産業)だけでなく、加工(2次産業)や販売・サービス(三次産業)も主体的に行うことで、新たな付加価値を生み出す取り組み。1次産業の「1」×2次産業の「2」×3次産業の「3」を掛け合わせて「6」となることから名付けられた。

自身のアウトプットについて、「人とのつながりがすべて」と語る小畑。人や分野それぞれの個性を掛け合わせることで、より面白い商品やサービスを生み出したいと考えている
—ご自身の事業のやりがいはどこにありますか。
課題を抱えている人や企業にアプローチし、直接、感謝の気持ちを受け取れるところです。社会に大きなインパクトを与える仕事も、やりがいを感じられますが、規模が大きいと意思決定に時間を要し、組織全体で成果を上げることに注力します。一方で、自分の事業は少人数でスピード感を持って動くことができます。対象者との距離が近い分、自分の仕事で人に喜んでもらえる実感を、より強く得られるのが魅力です。

以前、取引のある農家から4枚にわたる長文の手紙をもらい「農業界を変えてくれるのは君しかいない」と言われたことが、特に印象に残っている
—「金融×農業」の教育プログラムにも取り組まれているそうですね。
はい。農業がもうからないという課題を解決するためには、農業自体のビジネスチャンスを増やしていくだけではなく、子どものうちから「お金」について学ぶ必要性を強く感じていました。市場価格がどう決まるのか、どういう流れで経済が回るのか、そうした知識を正しく身に付けることで、将来的に、農業をはじめとした地域産業の価値や地域が抱える経済的な課題に目を向ける人が増えるのではないかと考えました。
そんな中で、社員自ら手を挙げて企画できる〈みずほ〉の社会貢献活動実現プログラムを知りました。私はそこに応募し、副業の自分の事業でつながりのあった山梨県のトマト農家の協力を得て、農業と金融経済教育を組み合わせたプログラムを実施しました。どうすれば子どもたちにお金を身近に感じてもらえるかを考え、野菜など身近な食べ物を題材にしました。まさにA面での「金融」の専門知識と、B面での「農業」の知見をかけ合わせた企画です。

トマト農家と打ち合わせを重ね、ともにプログラムを作り上げた
プログラムでは、まずお金の役割や種類を説明したうえで、水道代や設備費など、農業にどのくらいのコストがかかっているのかをトマト農家の方に教えてもらいます。さらに、トマト1個の値段から、かかった費用に対して「何個売ればよいのか」といった具体的な数字を通して、収支の仕組みにも触れていきます。
続いて、限られた予算の中で理想のトマトを育てるワークショップを実施。同じ金額でも、肥料を多く使うのか、設備に投資するのかなど、どこにこだわるかを子どもたち自身が選び、その理由まで考えてもらいます。こだわりが価値につながることを、ゲーム形式で体験してもらいました。
最後は売る側、買う側に分かれて、売買ゲームに挑戦。規格外品のトマトも含めて値段を考えてもらうことで、見た目だけでなく味や育て方など多様な視点からモノの価値を捉える力を育みます。お金の仕組みだけでなく、モノの流れや食の大切さまで学べるプログラムをめざしました。

お金の話を交えながらトマトの価値を伝えることで、野菜を育てる大変さを知ってもらい、トマトを無駄なく食べようという意識も育まれた
地域の課題に真剣に向き合い、日本全体の活性化につなげたい
—今後の目標を教えてください。
A面で長年培ってきた金融知識や企画力は、B面での事業設計に確実にいきていますし、B面で得た経験やネットワークもA面に還元されています。今後もこの相乗効果をいかして、複数の視点からお客さまの要望に寄り添いながら、地域課題を解決していきたいですね。

特に最近は、〈みずほ〉の中でも農業関連のプロジェクトに参加することが増えてきた。小畑自身のネットワークから農家を紹介し、現状のリアルな課題をヒアリングすることもあったという
特に、私が現在A面で推進している「神山モデル」は、前述の通り単に寄付を募るのではなく、社会的に意義のある取り組みに民間の資金を呼び込み、それを持続的に回す仕組みとして設計できる点が特徴です。
今後は、このモデルを教育分野にとどめることなく、日本産業の活性化や地域創生へと広げていくことを模索しています。別分野でも成功事例を生み出すことで、地域課題と連動した社会貢献活動を、再現性の高いモデルとして確立していきたいですね。