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CEOメッセージ

「ともに挑む。ともに実る。」 みずほフィナンシャルグループ 取締役 兼 執行役社長 グループCEO 木原 正裕

はじめに

私たちは今、大きな変化の時代を生きています。冷戦後の成長サイクルを牽引してきた"グローバル化と金融資本主義"に質的変化が起きています。気候変動や格差の問題など世界の仕組みの矛盾や限界も露呈しています。また、テクノロジーの急速な進展は人類の未来に大きな可能性を示すと同時に、それを利用する私たちに難しい課題も突き付けています。さらに、コロナ禍での経験は、個人や社会の行動様式と価値観に変化をもたらしています。

これまで日本は、"失われた30年"と言われる長期の低迷に喘ぎ、世界のなかでの存在感をじりじりと下げ続けています。人口動態の変化に対して社会インフラ整備や経済の新陳代謝等が追い付かず、社会と個人が、自信や誇りを喪失してしまっているようにも思えます。

一方で、大きな環境変化は世界と日本が生まれ変わるチャンスにもなります。社会と個人がこれほど多くの課題と機会に同時に直面する時代は過去にも例がなく、私たちは、次の時代に対して大きな責任を負っています。課題先進国としての日本にとって、その責任は殊更です。

このような時代において、私たち〈みずほ〉の存在意義は何か。お客さまや社会の課題解決と機会発掘に対して私たちにできることは何か。私たちが負うべき使命は何か。この問いを繰り返すなかで、私が辿りついた一つの道標が、〈みずほ〉の源流です。

〈みずほ〉創立者である渋沢栄一や安田善次郎らの先人達は、近代日本を形作る激動の時代において、「フェアでオープンな姿勢」で多くの資本家と人材をつなぎ、共創しながら「先見性」を持って自らもリスクを取り挑戦を続け、日本の発展に尽力しました。渋沢栄一の言葉に「道義を伴った利益を追求する」「自分より他人を優先し、公益を第一にせよ」というものがあります。公益を旨とし、お客さま・経済・社会の〈豊かな実り〉を実現すること、これが〈みずほ〉の永続的な考え方です。

2023年は、〈みずほ〉の源流であり日本の銀行制度の最初の一歩でもあった、第一国立銀行の設立から150周年の節目の年となります。大きなパラダイムシフトが起きているなか、「フェアでオープン」「先見性」「豊かな実り」を実現する先人達のDNAをしっかりと受け継ぎ、今般、〈みずほ〉の企業理念を再定義したうえで、新たな中期経営計画を策定しました。

企業理念の再定義

私たちの存在意義や社会に対する役割を役員・社員すべてが共有し、グループ一体となってアクティブに挑戦したい。システム障害を通じてお客さまや社会に多大なるご迷惑をお掛けしてしまった痛恨の記憶を教訓としてしっかり受け継ぎたい。そのために、覚えやすく、浸透しやすい企業理念をめざし、取締役や役員との議論、社員参加型ワーキンググループやアンケート等を通じた社員一人ひとりとの対話を重ねてきました。

パーパス「ともに挑む。ともに実る。」

企業活動を通じて実現していく役割や存在意義を示す"パーパス"について、私の頭のなかには、「挑戦」というコンセプトを明確に打ち出したいという拘りがありました。また、社内の若い世代からも、「"挑戦"は必要不可欠な要素」「自らも挑戦して組織を活性化しプライドを取り戻したい」という力強い声も多くありました。

みずほフィナンシャルグループ 取締役 兼 執行役社長 グループCEO 木原 正裕

金融という事業ならではの責任と可能性に真摯に向き合い、常に、お客さまと社会をすべての思考の中心に置き、共感力を高めて皆さまの挑戦に寄り添っていく。そのなかで、私たち自身も挑戦し、お客さま、社会、株主の皆さま、そして、社員一人ひとりと、〈豊かな実り〉を実現するかけがえのないパートナーになる。そんな想いを込めて、「ともに」と「挑む」という言葉を選び、新たにパーパスとして「ともに挑む。ともに実る。」を掲げます。

バリュー「変化の穂先であれ。」

日々の行動における価値観となる"バリュー"としては、大きな変化と挑戦の時代に、私たち一人ひとりが自ら先鞭をつけていく覚悟を込めて、「変化の穂先であれ。」を、そして、その実践に向けた行動軸として"Integrity/Passion/Agility/Creativity/Empathy"の5つを掲げます。

お客さまや社会のニーズやペインを自分ごととして共感し、情熱と誠実さ、また、覚悟とスピードと創造性を持って、その解決に徹底的に取り組むこと。目先の損得に拘らず、お客さまの永続的でかけがえのない幸せに貢献すること。多様な意見に耳を傾け多くの主体を巻き込みながら、未来に向けた価値を共創していくこと。〈みずほ〉で働くすべてのメンバーがこの指針を共有し、皆さまと一緒に〈豊かな実り〉を追求していきたいと思っています。

中期経営計画、次の未来に向かって

前「5ヵ年経営計画」の成果と課題

4年前に掲げた「5ヵ年経営計画」において、その根幹として、「ビジネス・財務・経営基盤の抜本的な構造改革」に取り組んできました。ビジネス面ではカンパニーが専門性を高め、経費構造等の面においても強靭な経営基盤の構築に進展がありました。その結果として、財務面においても、連結業務純益は最終年度の目標達成にめどがつき、CET1比率も前倒しでターゲット水準に到達しました。

私たちを取り巻く社会環境は大きく変化しており、お客さま・社会の課題やニーズもより複雑になっています。私たち自身が自らを改革していく必要もますます高まっていることも踏まえ、今回、従来の5ヵ年計画を1年前倒しするとともに、変化に対する機動性を確保するために期間を3年に短縮する形で、新たな中期経営計画を策定することにしました。

目指す世界観から、バックキャストで考える

成長戦略の策定に際して、新しく定義した企業理念を踏まえながら、未来からバックキャストする形で、今、私たちがすべきことを議論してきました。30年後、40年後にありたき世界として「個人の幸福な生活」と「サステナブルな社会・経済」の実現を目指す。そこに向かうために、私たちが「10年後に目指す世界」として、4つのテーマを掲げました。

一点目が、様々な立場やバックグランドの人がそれぞれの能力や意欲を存分に発揮して活躍し、豊かな生活を送ることができるインクルーシブな社会構築を推進すること。二点目が、テクノロジー進化の恩恵が社会の隅々まで行き渡り、人々の暮らしの利便性と質を高めていくこと。三点目が、日本の国力が様々な課題や逆境を跳ね返して、長い低迷期を自ら脱して再び成長軌道に乗ること。四点目が、グローバルにサステナブルな社会の実現に向けて、様々な技術が実装プロセスに入っていくことです。

この「10年後の世界」に向かって、様々な場所で色々な挑戦が必要になってきます。お客さまと社会の挑戦にしっかり寄り添っていく、また、それぞれの挑戦をつなぎ合わせながら、私たち自身もこれまでの常識を捨てて挑んでいく。その観点で、"次の3年間で私たちがすべきこと"こそが、『ともに挑む。ともに実る。』を胸に、社会価値の創出と企業価値の向上を一体として考える私たちの新しい中期経営計画です。具体的には、5つの取り組みを柱として掲げています。

中期経営計画で目指すこと

個人の幸福な生活の実現に向けて

一つ目の柱は、"「資産所得倍増」に向けた挑戦"です。不確実性の高まる社会において、お客さまの経済面の不安を解消することは勿論のこと、個々人が自らの可能性にチャレンジする際の制約を少しでも解放すること。また、社会全体としても、これまでの世代が培ってきた国富である家計金融資産を、社会全体の競争力強化のための武器として、再生産のサイクルを通じて活性化させること。そのために、私たちはプロとしての専門性に磨きをかけ、お客さまの大切な財産を、ともに守り育てるパートナーとなることをめざします。

二つ目の柱は、"顧客利便性の徹底追求"です。先端のテクノロジーを積極的に取り入れ、若年層だけではなく高齢者の方にも優しいストレスフリーなサービスを徹底的に追求します。法人のお客さまに対しても、業務プロセスの合理化や革新のために私たちができること、また、テクノロジーが拓く新しい金融サービスの実現に向けて意欲的に取り組んでいきます。一方で、新しい技術の活用は、あくまでも手段の一つです。対面でのご対応が相応しい場面も丁寧に見極め、お客さまのニーズと様々なチャネルを最適化し、お客さまとの接点における利便性に真剣に向き合うこと。これらを通じて、お客さまの〈みずほ〉体験の向上に向けて全力を注ぎます。

日本の競争力強化のために

三つ目の柱は、"日本企業の競争力強化"です。長引く日本経済の停滞について、私たち金融にも大きな責任があったのではないか。日本企業が持つ技術や経験には、まだまだ大きな可能性があるのではないか。日々のお客さまとの対話のなかでは、企業価値の向上や受け継いできた技術の承継にお困りの中堅中小企業の声を多くお聞きする一方で、新規事業の創出や成長機会の取り込みの観点から、そうした技術を渇望している大企業や海外の企業のニーズも多く存在します。日本の宝となる質の高い技術やサービスを再発見し、国内外のフィールドに解き放つ一助になること。これこそが金融機関としての本来の使命という覚悟で、私たち自身の対応力を磨いてまいります。

四つ目の柱は、"グローバルCIB(コーポレート&インベストメントバンキング)ビジネス"です。私たちが世界に挑む理由は何か。金融技術が先行する海外市場で私たち自身を鍛えるとともに、その果実を日本国内にも還流すること。世界各地の発展に寄与すること。また、サステナビリティや脱炭素に係る最新の技術やニーズについて世界と日本の懸け橋となること。国境を越えたダイナミックなリスクとマネーの融通の先導役となること。グローバル金融の世界に向き合いながら、より統合的でソリューション力の高い金融サービスの提供をめざしていきます。

サステナブルな社会・経済に向けて

最後の柱が"サステナビリティ&イノベーション"です。これまで述べてきた私たちの取り組みのすべてに共通するテーマでもあります。持続可能な社会の実現に向けて成長と環境対策の両立を目指すこと。健全なリスクマネーの提供や技術とヒトの橋渡しを通じて、明日の成長企業を見出し、ともに育つこと。そのために私たちは、グループ内においては領域横断的な活動を加速させ、また、グループ外でも異業種を含む多くのパートナーとオープンなユニバースを展開していきます。

経営基盤の強化、財務と資本の考え方

成長を支える経営基盤の強化にも取り組みます。なかでも重要と考えているのが、企業風土の変革と人的資本の強化です。一人ひとりが自主性と意欲を持って新しい挑戦を続ける土壌を作るとともに、IT改革やDX推進を通じて生産性の向上を徹底追求し、役員・社員がより濃密な価値創造活動に集中できる環境を整えます。社会の公器として、安定的な業務運営についても不断の強化に取り組むことは言うまでもありません。

財務面では、従来の5ヵ年計画の最終目標である2023年度の連結業務純益9,000億円達成を前提としつつ、メリハリを高めた事業ポートフォリオ設計や業務プロセス変革等にも取り組み、2025年度の連結業務純益1~1.1兆円、連結ROE8%超をめざします。低迷するPBRについても早期改善にコミットします。資本政策については、不確実性の高まりやダウンサイドリスクにも留意しながら、成長投資と株主還元の最適バランスを希求していきます。

最後に

現場に赴き、生の声を聴く。これが2023年度の私の大きなテーマです。私は今、着実に"変化"の手応えを感じており、私自身、これからの私たち自身に大いに期待しています。一方で、私たちの挑戦は始まったばかりです。未来に向けて踏み出す礎となる1年にすべく、全力で取り組んでまいります。

2023年7月

みずほフィナンシャルグループ
取締役 兼 執行役社長 グループCEO
みずほフィナンシャルグループ 取締役 兼 執行役社長 グループCEO 木原 正裕 サイン画像

みずほフィナンシャルグループ 取締役 兼 執行役社長 グループCEO 木原 正裕

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