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浦島太郎

浦島太郎が竜宮城に3年いる間に、地上では300年経過!これを利用して「二拠点生活」すれば、おカネを大幅に増やせないか!?

  • 長期投資
  • リスク分散
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授業流れ

みずほフィナンシャルグループさんといっしょに「空想金融教室」を始めた柳田理科雄です。空想科学研究所の主任研究員として、これまで『ジュニア空想科学読本』や『ポケモン空想科学読本』など、マンガやアニメを題材に、科学の魅力を伝える本を書いてきました。

「空想金融教室」を発想されたのは、みずほフィナンシャルグループさん(以下、みずほさん)で、「子どもたちにおカネの基本を知ってもらいたい」という気持ちから、筆者に相談を持ちかけられた。ワタクシは「おお、なんて崇高な姿勢でしょーか」と感動しながらも、一方で「ふふふ。この機会に学べば、きっと大金持ちになれますな」とニンマリして、即座に引き受けたのである。どうやら筆者にも、いよいよ金運が向いてきたようですぞー。

しかも、今回の題材『浦島太郎』をおカネの視点で考えたところ、筆者はすごいアイデアを思いついてしまった!『浦島太郎』は、助けたカメに連れられて竜宮城に行き、3年遊んで帰ってきたら、地上では300年が経っていた……というブッ飛んだお話だ。この特異な設定を活用すれば、おカネをふやせるのでは!? 竜宮城の3年間に、地上では300年が経過。つまり、竜宮城と地上の時間の流れは、100倍も違うわけである。

だったら、もし太郎が銀行口座におカネを預けていたら、3年後に戻ってきたとき、その口座のおカネは300年分の利子がついて、ググ~ンと増えているはず!たった3年で300年分の資産増に!海から戻った太郎としては、これがホントの濡れ手に粟だ。わははははっ。われながら資産運用のセンスにホレボレして、筆者はこのアイデアを持って、みずほさんのところに飛んでいったのである。

1 300年後の預金額を計算する

筆者のスバラシイ思いつきに、みずほさんは「興味深い話ですね」と頷いた後、フッと笑った。えっ、そのアヤシイほほえみは何!? みずほさんはそれに答えず、

浦島太郎の世界にも、現在と同じような法律、社会があったら……と仮定したうえで考えていいんですよね?

それでお願いします。それと、太郎は竜宮城に行くにあたって、カメから「竜宮城と地上では、時間の進み方が100倍も違いますよ」と、説明されていたと考えましょう。

わかりました。だとすれば、確かにビッグチャンスです。資産運用は、長期投資が効果的ですからね。

おお、浦島太郎おカネ激増作戦にぴったりだ!

金融の市場は刻々と変化しますが、長い期間の投資だと影響を受けづらいという利点があります。それと、
利息の面でも『複利』の効果が効いてくる。

いま、銀行におカネを預けると、利息はどれくらい?

普通預金金利は0.02%くらいです(2024年4月1日時点)。利息には税金がかかりますが、話が複雑になるので、それは除いて考えましょうか。

うむむ、それにしても低いなー。

現在、円預金は超低金利なので……。為替変動リスクは考えるべきですが、金利水準の高い国の通貨に換えて運用すれば、より多い利息収入が得られる可能性はありますよ。

ここで、みずほさんがさっき言われた「複利の効果」について考えよう。「複利」とは「預けたおカネと、それにつく利息の両方に、新たな利息がつくこと」。仮に、太郎が100万円を1年間3.0%の金利で預けたとしよう。金利が一定だとして、税金を除いて考えると、1年後には1.03倍の103万円、2年後には103万円の1.03倍で106万900円、3年後にはその1.03倍で109万2,727円……と、ほんのちょっとずつ増えていく。ところがチリも積もれば山となり、50年後には438万3,906円と44.38倍に増え、300年後には70億9,851万3,483円と7,000倍以上にもなるのだ!もう資産増えまくり!

複利の効果のイラスト

ところが筆者のヨロコビの結論に対して、みずほさんは意外なことを言われたのである。

計算上はそうですね。でも、銀行に預けたお金は、10年間出し入れがないと『休眠預金』となり、国の機関を通じて公益活動に使われます。

なんですと!? ワタクシのおカネを勝手に使う気!?

いや、あなたのじゃなく、浦島太郎の預金……。

あ。つい自分のカネが増えた気になっていた。でも、使われたら困ります。

2018年から『休眠預金活用法』が施行されているんですよ。もちろん、事前に通知が行くし、休眠後も手続きすれば、預金は引き出せますが。

300年後でも?

うーん、どうかなあ……。また、それとは別の壁もあって、浦島太郎が行方不明になって、その生死 が7年間明らかではないときは、家庭裁判所は母親や親族等の利害関係人からの申立てにより、『失踪宣告』をすることができます。そうなると、法律上浦島太郎は死亡したとみなされます。

ええっ、そうなの!? じゃあ、300年間も行方不明だった浦島太郎は……。

銀行としても『お客さまは亡くなった』と判断せざるを得ないでしょうね。

どど、どうしたらいいんだ、自分!? いや、浦島太郎!?

預金や投資は、『時間』と密接な関係があります。最初に『興味深い』と言ったのはそこで、長い時間をかければおカネを増やせる可能性は高くなる。でも、時間が長い分、リスクも増えるんです。『浦島太郎』のお話は、この問題を考えるのにピッタリです。

2 おカネ以外に換えるなら?

「口座の預金がググ~ンと増える」という筆者の思いつきは、あっという間に粉砕されてしまった。しかし、みずほさんも言うように、時間をかければお金は増えるはずだ。口座預金がダメなら、将来値上がりしそうな土地を買っておけばいいのでは!?

うーん。300年も経つと、街の姿も大きく変わりますからね。いまから300年前だと、江戸時代。当時栄えていたのは日本橋、浅草、両国、門前仲町あたりかな。渋谷が大きく発展するのは明治時代に鉄道の駅ができてからで、それを江戸時代の人が予想できたかというと……。

むむむ。だったら、美術品を買っておくのはどうだっ!? もう10年以上前だけど、ゴヤの絵が3点発見され、8億5千万円の値がついたというニュースを、おカネに興味のある筆者は忘れていませんぞ。ゴヤはまさしく、300年くらい前の画家……。

芸術品の価値を見きわめる力があれば、それもいいかもしれませんね。いまはまったく注目されていないけど、300年後に有名になりそうな画家の絵を買っておく……とか?

いまは無名で、300年後に有名!? そ、その見極めはモーレツに難しそう……。

むしろ、 きん を買っておくのがいいんじゃないですか?西暦2000年には1gあたり1,000円くらいだったのが、2024年には1万円を超えました。

ぎょっ、24年で10倍!? それはすごい。ワタクシ……いや、浦島はただちに金を買います!

ただ、必ず値上がりするとは限りません。その20年前の1980年は、1gあたり4,500円ほどでした。

おお、かなり変動しますね。それでも、いまは倍以上なんですね?

そうですね。おカネの価値は、物価や社会情勢で変化します。たとえば、東京メトロ(地下鉄)は、小学生の初乗り料金が90円ですが、50年前は30円でした。

あ、そうか。地下鉄の料金でいうと、おカネの価値は50年で3分の1に下がったんだ。

そんなふうに、長い時間が経つと、おカネの価値は下がっていくのが普通です。それに比べて、金の価値は
下がりにくいんですね。

金が高いのは、総量が少ないからでもある。いま世の中に出回っている金は20万t、今後の採掘可能量は5万tといわれている。希少価値が高いから、短期間での変動はあっても、長期的には値上がりを続ける可能性は高いとみた。よしっ、金に全額投入だ!

しかし、300年ですからね。その間に何が起こるかわかりません。大規模な鉱山が発見されたり、錬金術が実現したりして、金の流通量が劇的に増えたら、どーんと安くなる可能性はありますよね。いずれにしても、
ひとつの資産に全額投入しないで、いくつかに分けて持っておくほうが安全です。『リスク分散』という考え方です。

う……。

そもそも、金にせよ、絵画にせよ、300年間もどこに保管しておくのか、という問題があります。銀行の貸金庫も基本的に1年契約ですし、ビルに保管していても、300年のうちに再開発の工事などで壊されてしまうかもしれない。土地を持っていたとしても、300年も放置しておいたら、誰のものかわからなくなるでしょう。

だったらもう土に埋めちゃう!? いや、いくらなんでもそれはないか。ああもう、あれもダメ、これもダメで、いったいどうしたらいいんだっ!?

3 めざせ! 海と地上の二拠点生活!

困り果てた筆者は、開き直って聞いた。みずほさんが太郎だったら、どうするの?

そうですね。私が浦島太郎だったら、定期的に帰宅します。

えっ!? ええっ!? 言ってる意味がわかりません。

さっきも言ったように、銀行の口座は、10年間出し入れがないと休眠預金になります。だから、10年に1度は戻ってきて、おカネの出し入れをする。1円でも預けたり下ろしたりすれば、銀行の口座は生きていることになりますから。

ぬわーっ、その発想はなかった!10年は3652~3653日だから(うるう年がいつかによる)、竜宮城では36.5日。少なくとも1ヵ月に1回は帰るわけですね。

いま流行りの二拠点生活みたいなものですね。帰るたびに、地上では10年経っているわけで、そのくらいなら時代の変化にもギリギリついていけるでしょう。そうやって、太郎が少しずつバージョンアップしていけば、最終的に300年後の世界にも対応できるのでは?

さすが、みずほさんは前向き、かつ現実的である。とはいえ、1ヵ月ごとに竜宮城と地上を行ったり来たりするのは大変かもしれない。世界を股にかけて活躍するビジネスマンやアーティストのなかには、毎月のように海外を往復する人もいるだろうけど、めちゃくちゃ疲れるのでは……!?

だったら、誰かに代わりに資産管理を頼みますか。たとえばカメとか。

カメ!? あれはウミガメだと思うのですが、それが地上の銀行へ行ったり、ATMを操作したりすんの?

ウミガメは指がなさそうだから、画面のボタンを押せないですかね?

いや、そういう問題ではなく……。まあ、いずれにしても、誰かに頼むわけですね。でも誰がいいのかなあ。太郎は母親以外に家族はいないみたいだから、友人?でも、300年にわたって、おカネの出し入れを続ける必要があるわけですよね。友人も、その子も、その孫も、その子孫も……。そんなこと、やってくれるかなあ?

信頼できる人に資産を託して、運用してもらうという信託の仕組みを使う方法も考えられるかもしれません。信託銀行は、お客さまから預かったおカネや土地などの資産を、運用会社に運用してもらい、それで得た利益をお客さまにお返しします。

あ、信託銀行というのは、普通の銀行とは違うんですね?

期間が長くなると、儲かる可能性もあるけど、それだけ手間や管理の負担も増えます。それらを回避しながらお客さまの資産を守るのが、信託銀行の仕事です。おカネだけに頼らず、不動産や証券などいろいろな形にして、資産を守り、増やすことをお手伝いします。みずほフィナンシャルグループにも、みずほ信託銀行がありますので、浦島太郎さまにもぜひご利用いただければ……。

わおっ、さり気なくアピールしてきた!

もう一つの方法としては、全財産を きん や美術品などのモノに換えて、竜宮城に持っていく。

あ。地上に残していくから、300年間の管理が問題になるのか!それも新しい発想だ。

この場合でもリスクを分散させたほうがいいので、さまざまな形にしておいたほうがいいと思います。昔話『浦島太郎』の時代だったら、着物、掛軸、屏風、茶器とか。あ、日本刀もいいかな。

みずほさん、シブイっすね!現在だったら、どうでしょう?

うーん、たとえば、新進アーティストのアート作品、ヴィンテージのデニムやスニーカー、著名人や有名スポーツ選手のサイン、限定生産されたおもちゃ、収集家たちの間で人気のあるコレクタブルアイテム(切手、フィギュア、コインなど)とか……。それらを買って、竜宮城で保管しましょう。

それはいいですね、300年後にも、ほとんど劣化していないスニーカーやサイン色紙やフィギュア!

あまりに新品すぎて、信用してもらえないかもしれませんが……。また、300年も経つと、逆に無価値になっているモノもあるでしょう。何事も絶対はないですからね。

『浦島太郎』は、ずっと竜宮城にいるからこそ成立する話だと思っていたが、それをアッサリひっくり返すみずほさんの発想は斬新である(ミもフタもない、ともいえる)。そこで、そのアイデアを取り入れて、『金融的に正しい浦島太郎』の話を考えたら、どういうものになるか、考えてみよう。

4 空想金融教室版『浦島太郎』

浦島太郎がいじめられていたカメを助けると、後日そのカメが「竜宮城にご案内しましょう」と言ってきました。太郎が「帰りはいつ頃になりますか?」と質問すると、カメは「竜宮城では3年過ごしていただく予定ですが、その間に地上では300年が経っています」と答えました。

それを聞いた太郎は「これは資産を増大させるビッグチャンス!」と考えます。

「リスクの分散」を心がけ、これまでに貯めた100万円のうち、50万円で きん を、残りの20万円を元手にオークションサイトで将来プレミアになりそうな商品などをいっぱい手に入れ、それらを竜宮城に持っていくことにしました。残りの30万円は年利3%の複利運用を目指すことに決めました。

そして、カメに「親族が心配するので、1ヵ月に1回、地上に戻りたい」という希望を告げたうえで、さらに「母も連れていけばいいじゃん」と思いついて、母親といっしょにカメの背中に乗りました。

竜宮城は美しいところで、太郎と母親は大歓迎されましたが、太郎には重大な使命があります。竜宮城のカレンダーで1ヵ月に1回、カメの背中に乗って地上へ行き、銀行へ預金口座のメンテナンスや、年利3%を目指した長期資産運用の相談に行かなければならないのです。

慣れないうちは大変でしたが、太郎にとってこれは刺激的な体験でした。地上に戻るたびに、そこでは10年が経っており、街の姿は変わっているし、通信や交通手段は進歩しているし、新しいブームやスターが生まれているし、SNSなどでも新しいコミュニケーションのあり方が生まれているのです。太郎は地上に行くたびに100日ほど滞在しましたが、それは竜宮城の時間では1日にすぎないので問題になりません。積極的に地上で情報収集し、それを竜宮城の人々に伝え、たいへんな人気者になっていきました。

おカネも確実に増えていきます。30万円だった元金が、1年(地上では100年)後には576万5,590円、2年後には1億1,080万6,745円、3年後には21億2,955万4,045円、太郎にとっては年利1,922%と同じです!

オークションで購入したサイン色紙、アート作品の他、地上に帰るたびに購入した きん は、時間を味方につけて、値が上がれば売却することで、太郎はしっかり資産を増やしていきました。

そして、ついに3年経ちましたが、ここで太郎は考えます。「もう少し竜宮城にいれば、もっと増えるよね」。こうして太郎は、そのまま竜宮城と地上の二拠点生活を継続しました。そんな暮らしを10年間(地上では1千年間)続けたところ、年間3%で運用していたおカネは、なんと206 けい 2,272兆693億5,079万7,568円というモノスゴイ金額に!カメを助けたことと、堅実な資産運用によって、太郎は地球最高のお金持ちになりましたとさ。めでたしめでたし。

わははははーっ、太郎が賢い選択をしたおかげで、すごい話になりましたー!玉手箱なんか出番なかったー!あまりに斬新な『浦島太郎』で、書いてる自分がビックリしました。

今回の学び

● おカネを増やすには、受け取った利息や配当を再度投資しながらの長期投資が効果的。● 一つの資産に投資するのではなく、色々な資産に分けて、リスクを分散することが大切。● 信託銀行は、おカネや財産を安全に守りながら、増やすことを手伝ってくれる。● おカネやモノの価値は一定ではなく、時間の経過で価値が上がったり、下がったりする。

今回先生

先生の顔イラスト

投資の先生

大西 おおにし 次朗 じろう 先生

みずほ銀行 コーポレート&インベストメントバンキング業務部

自分が、自分らしく生きられるための、学びの
きっかけになれば、すごく嬉しいです。好きな漫画は
「BECK」、好きなものは、「犬」、「ギター」です。​

先生の顔イラスト

投資の先生

山浦 やまうら 康二 こうじ 先生

みずほ銀行 コーポレート&
インベストメントバンキング業務部

面白い金融の世界を一緒に学んでいきましょう。
好きな漫画は「ハーメルンのバイオリン弾き」、
好きなものは「ゲーム」、「ディズニー作品」です。

先生の顔イラスト

信託の先生

篠原 しのはら 里英 りえ 先生

みずほ信託銀行 不動産投資顧問部

金融って面白いって感じてもらえたら嬉しいです。​
好きな本は「ハリーポッター」、
好きなものは「スイーツ」、「猫」です。

先生の顔イラスト

法律の先生

菊地 きくち ゆう 先生

みずほフィナンシャルグループ 法務部​

銀行の仕事のおもしろさを伝えていけたらいいなと
思っています。好きな漫画は「SLAM DUNK」、
好きなものは「スポーツ観戦」です。​

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