気候変動への対応(TCFD提言を踏まえた取り組み)
TCFD提言では、企業等に対し、気候変動関連リスクおよび機会に関する「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」について開示することを推奨しています。〈みずほ〉は、2017年12月に、TCFD提言の趣旨に賛同し、TCFD提言を踏まえた取り組みと開示の高度化に努めています。詳細は、TCFDレポートをご覧ください。
ガバナンス
- 〈みずほ〉の気候変動への取組姿勢や、目指す姿・行動、中長期の戦略・取り組みについて、「環境方針」・「2050年ネットゼロに向けた〈みずほ〉のアプローチ」・「ネットゼロ移行計画(2023年改定)」で明確化し、取締役会で決議
- 取締役会を中心とした監督・執行のガバナンス態勢を構築
[監督]:取締役会、リスク委員会において、執行での議論を経て報告・付議された内容について監督
[執行]:サステナビリティ推進委員会、リスク管理委員会、経営会議等において定期的に審議・議論し、取締役会へ報告。グループCEOの統括の下、グループCSuO(2022年度新設)・グループCROが各領域の取り組みを推進
※取締役会、経営会議、サステナビリティ推進委員会等にて、少なくとも年1回以上、気候変動への対応について議論 - 当社グループの複数部署が協働し取り組むテーマに関し気候変動対応タスクフォースと5つのワーキンググループを設置し、推進態勢を強化
- 役員報酬の評価指標に、「サステナブルファイナンス額」・「気候変動への取り組み」・「ESG評価機関評価」等のサステナビリティに関する指標を採用
戦略
- 実体経済の移行促進・ビジネス機会獲得・リスク管理の観点から、当社グループの気候変動対応をより統合的に推進するため、「ネットゼロ移行計画」を改定(2022年制定、2023年4月改定)
- 重要課題の特定:
- –[マテリアリティ]:マテリアリティの1つとして「環境・社会」を特定
- –[トップリスク・シナリオ分析]:2023年度トップリスクに「気候変動影響の深刻化」を選定。シナリオ分析により取引先の移行リスク対応、エンゲージメントの重要性を認識
- –[重要セクター・次世代技術]:ネットゼロへの移行の観点から〈みずほ〉が特に注力して取り組む重要なセクター、および当該セクターにおける脱炭素化に関連する次世代技術を特定
- 機会の認識・機会獲得への取り組み:
- –脱炭素社会への移行に向けた産業・事業構造転換や新しいテクノロジーの実用化に向けた投資、社会実装をビジネス機会と認識
- –〈みずほ〉の新中期経営計画(2023–2025年度)において、「サステナビリティ&イノベーション」を5つの注力ビジネステーマの一つに位置付け
- –サステナブルビジネス戦略に基づき、お客さまの脱炭素社会への移行や気候変動対応を積極的に支援
- 脱炭素社会実現に向けた資金供給:2019–30年度累計サステナブルファイナンス目標を100兆円、そのうち環境・気候変動対応ファイナンス目標を50兆円に引き上げ
- 脱炭素に向けた基盤づくり・スケール化:経済・産業構造転換やテクノロジー実用化に向けて、トランジション領域での出資枠を設定・対象範囲を拡大。戦略的な外部パートナーとの連携等により、国内の中堅・中小企業やアジアへ取り組みを伝播
- ケイパビリティ・ビルディング:SX人材・知見の強化(2025年度目標設定)
- セクター別の取り組み:
- –電力、石油・ガス等、重要なセクター毎に、脱炭素化に向けた位置づけ・〈みずほ〉の機会とリスクを踏まえて、排出削減中期目標の設定・実績モニタリングや取引先エンゲージメントを推進
- リスクの認識:
- –気候関連リスクを「気候変動に起因する移行リスク*1と物理的リスク*2が他のさまざまなリスクを発現・増幅させることにより、有形・無形の損失を被るリスク」と定義
- –移行リスク・物理的リスクが発現・増幅させるさまざまなリスクを特定し、リスク区分ごとに重要性の評価(定性評価)を行うことで、気候変動に伴うリスクを統合的に把握。特に信用リスク(取引先の業績悪化)、市場リスク(保有株式の価値低下)の重要性が高いことを認識
- –移行リスク:炭素税や燃費規制といった政策強化や脱炭素等の技術への転換の遅れにより影響を受ける投融資先に対する信用リスクや、化石燃料等へのファイナンスに伴うレピュテーショナルリスク等を想定
- –物理的リスク:気温上昇や災害の変化に起因する、当社グループの資産の損傷・劣化等に伴うオペレーショナルリスクや、事業停滞や労働力低下でのお客さまの収益減少等に伴う信用リスク等を想定
*1 移行リスク:脱炭素社会への移行に伴い、広範囲に及ぶ政策・評判・技術・市場の変化に起因するリスクのこと
*2 物理的リスク:気候上昇での資産の損傷・劣化等に伴う直接的な影響やお客さまの事業停滞・労働力低下での収益減少等に伴う間接的な影響が生じるリスクのこと
■シナリオ分析
–移行リスク
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シナリオ | NGFS*3のCurrent Policies、Below 2℃、Delayed Transition、Net Zero 2050(1.5℃)シナリオ |
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分析内容 | 分析対象セクターに属するお客さまが直面する、リスクと機会の影響評価のためのパラメータを特定。シナリオ下におけるパラメータ変化を基にお客さまの業績影響の予想を作成することにより、移行リスクに起因する〈みずほ〉の与信コストの増加額を分析 |
対象セクター | 「電力ユーティリティ」、「石油・ガス」、「石炭」、「鉄鋼」、「自動車」、「海運」、「航空」セクター(国内・海外) |
対象時期 | 2050年 |
与信コスト 増加額 |
2050年までの累計でBelow2℃: 3,600億円、Delayed Transition: 11,700億円、Net Zero 2050: 16,500億円程度(Current Policiesシナリオとの差額) |
示唆 |
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今後の対応 |
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*3 Network of Central Banks and Supervisors for Greening the Financial System:気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク
–物理的リスク
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リスクの種類 | 急性リスク | 慢性リスク |
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シナリオ | NGFSのCurrent Policies、Net Zero 2050 | NGFSのCurrent Policies、Net Zero 2050 |
分析内容 | 気温上昇での災害の変化に伴う資産の損傷、事業停滞等での影響 [直接影響]
[間接影響]
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気温上昇に伴う資産の劣化、労働力低下等での影響 [直接影響]
[間接影響]
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分析範囲 | 対象地域:国内、海外 対象先: 当社グループ、 与信先(中堅中小企業、大企業) |
対象地域:国内、海外 対象先: 当社グループ、 与信先(中堅中小企業、大企業) |
毀損額 与信コストの増加額 |
ストレス事象が顕在化した場合の最大増加額(Current Policies、2100年、単年) 風水災:約900億円、山火事:約300億円、干ばつ:約15億円 |
ストレス事象が顕在化した場合の最大増加額(Current Policies、2100年、単年) 気温変化(労働力低下・冷房使用量増加要因等):約400億円 |
示唆 | 上記災害が同時発生する可能性は低いものの、最大のストレス事象(風水災)が顕在化した場合は単年で約900億円の追加的な損失が発生する可能性を確認 | |
今後の対応 | 当社グループの資産ポートフォリオ改善によるオペレーショナルリスクのコントロール等の重要性を認識 |
リスク管理
- 気候関連リスクの特定、リスクアペタイト・フレームワーク/総合リスク管理への統合
- –気候変動に起因する移行リスクや物理的リスクを認識し、リスクアペタイト・フレームワークや信用リスク管理、オペレーショナルリスク管理等の総合リスク管理の枠組みでマネジメントする態勢を構築
- –気候関連リスクの特性を踏まえた適切な管理態勢を確立する観点から、「気候関連リスク管理の基本方針」を制定
- トップリスク運営:〈みずほ〉に重大な影響を及ぼすリスクを経営で認識する「トップリスク運営」において、「気候変動影響の深刻化」をトップリスクに選定。選定したトップリスクに対しては、追加的なリスクコントロール策を検討し、対応の状況について取締役会等での報告を実施
- 炭素関連セクター リスクコントロール
- –炭素関連セクター(電力ユーティリティ、石油・ガス、石炭、鉄鋼、セメント)におけるリスクコントロールとして、取引先の属するセクターの軸と、取引先の移行リスクへの対応状況の軸の2軸でリスクを評価し、高リスク領域を特定しモニタリングする態勢を構築
- –高リスク領域については、以下のエクスポージャーコントロール方針をもとにリスクをコントロール
- 移行リスクへの有効な対応戦略の策定と実践状況の開示や、より低リスクのセクターへの事業構造転換が、速やかに図られるようサポートするなど、より一層のエンゲージメントに取り組む
- お客さまの事業構造転換等を後押しするため、目標の妥当性や国際的なスタンダードが提唱する適切な移行戦略の要件の充足等が確認できた場合には、移行に必要な支援を行う(2022年度、移行戦略の確認目線や確認プロセスを整備)
- 初回のエンゲージメントから1年を経過しても、移行リスクへの対応意思がなく、移行戦略も策定されない場合には、取引継続について慎重に判断する
- 上記を通じて、中長期的にエクスポージャーを削減する
- 環境・社会に配慮した投融資の取組方針(ESポリシー)
- –環境・社会に対する負の影響を助長する可能性が高い事業やセクター(移行リスクセクター、石炭火力発電、石炭採掘(一般炭)、石油・ガス等)を特定し、投融資等の取組方針を制定、運用
- –外部環境の変化と運用結果を踏まえて、執行・監督で定期的にレビュー、方針を改定し、運営を高度化
- –2023年3月の主要変更点
- 石炭採掘(一般炭)セクター:石炭採掘事業に紐付くインフラへの投融資等を禁止
- 石油・ガスセクター:石油・ガス採掘事業に対するデューデリジェンス項目を追加(十分な温室効果ガス削減対策が取られているか)、オイルサンド、シェールオイル・ガスの採掘事業に対するデューデリジェンス項目を明確化
指標と目標
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主なモニタリング指標 | 目標 | 直近実績 |
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Scope1,2 排出量*4 | 2030年度 カーボンニュートラル (以降もカーボンニュートラルを継続) |
2021年度 150,987tCO2e |
Scope3(投融資を通じた排出) | 2050年ネットゼロ | (セクター別に目標・実績を開示) |
–電力セクター | 2030年度 138–232kgCO2e/MWh |
2021年度 353kgCO2e/MWh |
–石油・ガスセクター | 2030年度 Scope1,2:4.2gCO2e/MJ Scope3:▲12–29%(2019年度比) |
2021年度 Scope1,2:6.5gCO2e/MJ Scope3:43.2MtCO2e (▲29%(2019年度比)) |
–石炭採掘(一般炭)セクター | OECD諸国 2030年度ゼロ 非OECD諸国 2040年度ゼロ |
2021年度 1.7MtCO2e |
サステナブルファイナンス/環境・気候変動対応ファイナンス額 | 2019–30年度累計 100兆円 (うち環境・気候変動対応50兆円) |
2019–22年度累計21.2兆円 (うち環境・気候変動対応8.1兆円) |
環境・社会に配慮した投融資の取組方針に基づく 石炭火力発電所向け与信残高削減目標 | 2030年度までに 2019年度対比50%に削減、 2040年度までに残高ゼロ |
2023/3末 2,355億円 (2019年度末対比 ▲21.4%) |
移行リスクセクターにおける高リスク領域エクスポージャー | 中長期的に削減 | 2023/3末 1.6兆円 |
取引先の移行リスクへの対応状況 | — | 2023/3末 対象セクターにおいて着実に進展 |
SX人材 KPI
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2025年度
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2023/3末
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モニタリング指標以外の開示データ
- TCFD開示推奨項目を踏まえたセクター別の信用エクスポージャー
- PCAFの手法に基づく投融資を通じたGHG排出量(Financed Emissions)
- –計測対象アセット・セクター拡大(自己勘定投資・TCFD開示推奨以外のその他セクター)
*4 対象/集計範囲:グループ7社(みずほフィナンシャルグループ、みずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほ証券、みずほリサーチ&テクノロジーズ、アセットマネジメントOne、米州みずほ)、調整後排出係数/マーケット基準