2026年4月3日
日本のインフラを支える、知られざる“ニッチトップ”。80年の歴史を次世代へつなぐ

電線を敷設するため機械・工具・金物を製造する株式会社安田製作所(YS)。1946年の創業以来、電線を「張る・止める・支える」技術に特化し、中小企業でありながら日本のインフラ網を支えてきたニッチトップ企業です。
2026年1月に創業80周年という大きな節目を迎えた同社が次に見据えるのは、100年企業への挑戦。その道のりに、60年以上にわたりメインバンクとして伴走し続けてきたのが〈みずほ〉です。
現在、同社を担当するのはみずほ銀行(BK)の入社3年目(2024年入社)、大島陸季。製造業や運送業など中堅・中小企業約30社を担当する大島は、安田製作所の経営陣とも信頼関係を構築し、銀行員として初めての長期融資を実行する等、同社との関係の中で日々学び、成長をしています。
安田製作所の経営陣(安田智美会長、川合利斉社長、山下伸一副社長)と〈みずほ〉の大島が、二人三脚で日本のインフラを支える、その熱意を語ります。

延線車で国内シェアほぼ100%のニッチトップ企業
——安田製作所はどのような事業をしている会社ですか。
YS川合 当社は電線を「張る・止める・支える」という部分に特化した会社です。
1946年に創業し、電柱に電線を固定する金物や、電柱を地面で支えるスクリューアンカーの製造から始まり、そこから送電線を張るための大型機械や特殊工具へと事業を広げてきました。

安田製作所の延線車で送電線の敷設をしている様子(写真提供:安田製作所)
現在は、街中の配電線から、山を越える送電線、鉄道、通信線、さらには海底ケーブルまで、社会インフラとして「線」がある場所には必ずと言っていいほど当社の技術が関わっています。特に送電線の分野では、電線を張る機械である延線車を製造しているのは日本で当社だけ。国内シェアほぼ100%を誇っています。

左から)川合 利斉(株式会社安田製作所 代表取締役社長)/ 大島 陸季(みずほ銀行)/ 安田 智美(株式会社安田製作所 代表取締役会長) / 山下 伸一(株式会社安田製作所 取締役副社長)
——なぜ、トップシェアを維持し続けることができるのでしょうか。
YS山下 当社は創業以来、電力会社と工事会社の「こういう物が欲しい」「ここが不便だ」という細かな要望に、一つひとつ愚直に応え続けてきました。いわば、お客さまに「育てていただいた会社」です。
例えば、送電線を張る際にかかるテンションを精密にコントロールする技術は一朝一夕に真似できるものではありません。お客さまの声を聞き、技術を作り上げてきたと思っています。
60年の付き合いで育まれた「ともに挑む。ともに実る。」の関係
——〈みずほ〉との関係についてお聞かせください。
YS川合 みずほ銀行(当時は第一勧業銀行)との取引は1963年にまで遡り、すでに60年以上の月日が流れています。
私が経理を見るようになってからも20年が経ちますが、特に印象深いのは2011年の東日本大震災のときです。震災直後、当時の副支店長が飛んできてくださり、「安田製作所さんの資金はしっかりサポートしますので安心してください」と力強くおっしゃってくれました。あのときの安心感は今でも忘れられません。
〈みずほ〉は、「ともに挑む。ともに実る。」というパーパスを掲げていますが、まさにその通りの関係だと感じています。

YS安田 今は大島さんが当社を担当してくれていますが、私の息子と同世代でね。初めて会食した際、緊張した姿がなんとも微笑ましかったですね。
大島さんとは、一緒にテニスをプレーしたこともあるんですよ。面談以外でも大島さんの人柄に触れ、より一層距離が縮まったように感じます。
BK大島 正直に申し上げると、担当になった当初は安田製作所が何をされている会社なのか、詳しくは理解できていませんでした。
しかし、実際に工場を見学させていただいて、延線車や工具の一つひとつに長年の技術が凝縮されていることを知り、これがなければ日本中に電気が届かないのだと実感しました。
それからは、銀行員として信頼していただけるよう、数字や事実に基づいてお話しすることはもちろん、「自分が安田製作所の一員だったらどうするか」を常に考えながら、伴走しています。
YS川合 1年目、2年目だから、ということではないんですよ。60年以上続いてきた〈みずほ〉との関係の中で、今は大島さんが一生懸命やってくれている。単なる銀行の担当者というより、もはやチームの一員のような感覚です。
資金調達から建設会社の相談まで、〈みずほ〉の伴走
——直近では、藤代工場の改修工事があったと伺いました。
YS山下 藤代工場の建物は1966年以来、順次増築してきたため、屋根の老朽化による雨漏り等の課題を抱えていました。そこで、屋根と外壁を一新しようということになり、資金面で〈みずほ〉に相談しました。

BK大島 ご相談をいただいたとき、改修工事は安田製作所のものづくりの基盤を支える大切な投資だと感じました。銀行としては「将来にわたって稼ぎ続ける力があるかどうか」が融資の最も重要なポイントになります。
その点、安田製作所はまったく問題ないと確信していました。80年間培ってこられた技術と信頼、送電線工事用延線車で国内シェアほぼ100%という圧倒的な強みがあります。
さらに、当社が掲げるスローガンに「だそう新製品」という言葉があるように、既存の技術を守るだけでなく新しい価値を生み出し続ける姿勢があります。これらを整理して、銀行内の審査を通しました。
——実際に〈みずほ〉のサポートを受けていかがでしたか。
YS川合 実は改修工事を手がけてくれた建設会社についても、〈みずほ〉に相談しました。資金面だけではなく相談に乗っていただけるのは本当にありがたいですね。
BK大島 私にとって初めて手がけた融資案件だったので、一生忘れられない経験になりました。
工場の屋根や外壁が丈夫になれば、従業員の皆さんが安全に働ける環境が整いますし、日本のインフラを支える機械や工具の製造が、天候等の外部要因で止まるリスクを減らせます。自分の仕事で企業の成長を支えるだけではなく、日本の産業に役立てるのだと実感できました。

屋根・外壁の修繕中の藤代工場
守りながら攻める。100年企業をめざして
——2026年1月に創業80周年を迎えました。これからの展望をお聞かせください。
YS安田 2026年1月8日に80周年を迎え、社内でも記念イベントを行いました。
「“や”すみなき研究、“す”ぐれた技術、“だ”そう新製品」という社是のもと先人たちが様々な困難を乗り越えてここまで発展させてくれました。そして、今の社員の皆さんが、その技術と精神を日々受け継いでくれている。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
ただ、現状のままでは衰退してしまうという危機感もあります。100周年をめざすためには、社員一丸となって新しい挑戦を続けていかなければなりません。〈みずほ〉にもご協力いただきながら、次の世代へとつないでいきたいと考えています。
YS山下 今はどの業界も人手不足ですから、省人化や軽量化のニーズは確実に高まっています。今ある製品をその方向に進化させることも重要ですし、私たちの技術をいかして新しい分野にも挑戦していきたいですね。送電線のような既存の社会インフラに限らず、「線を支える」という当社の技術がいきる場所は他にもあるはずだと思います。
YS川合 実は、すでに意外な分野で当社の技術がいきている例があります。ワイン用のブドウ栽培に、当社のスクリューアンカーが使われているんです。電柱を支えるための技術を、ブドウの垣根を支えるために地中に打ち込むアンカーとして応用したところ、国内の大手ワインメーカー各社に採用されました。

ワイン用のブドウ栽培に応用されるスクリューアンカー(写真提供:安田製作所)
80年かけて築いてきた独自の強みを守りながら、同時に果敢に攻めていく。経営とは常にその両立であり、それを次の世代へつないでいくことが私たちの使命だと考えています。

藤代工場内には送電線の敷設工事の検証用の鉄塔が建てられている
——新しい挑戦をするにあたって、〈みずほ〉にどのような役割を期待しますか。
YS山下 工場の立場からすると、長年お取引のある協力会社が後継者不足等を背景に事業をやめてしまうケースも出てきています。安定した生産を維持していくためには、新しいパートナーが必要です。
〈みずほ〉のネットワークをいかしたビジネスマッチングで、こうした現場の課題を解決し、生産基盤をより強固にしていければ心強いですね。
BK大島 M&Aやビジネスマッチングは、まさに〈みずほ〉の強みを発揮できる領域です。みずほ銀行は全国47都道府県に拠点がありますので、そのネットワークをいかして、安田製作所に最適なパートナーをおつなぎすることができます。
皆さんのそばで日々学ばせていただいているのは、「守りながら攻める」ことの難しさです。安全と品質へのこだわりを持ちながら、新しい分野にも果敢に挑戦されている。どちらかを選ぶのではなく、両立されている姿を見て、私自身も将来そうした判断ができる人間になりたいと思っています。
YS川合 経営には守りも大事ですが、攻めていかないと発展がありません。〈みずほ〉という心強いパートナーと一緒に、100周年、そしてその先へとつないでいきたいと思います。

左)川田 俊哉(株式会社安田製作所 常務取締役管理本部長)銀行窓口として大島と日々ディスカッションを行う。