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CEOメッセージ

株式会社みずほフィナンシャルグループ 取締役 執行役社長 グループCEO 坂井 辰史

はじめに

はじめに、新型コロナウイルスに感染された方々、そして、感染拡大に伴いさまざまな影響を受けられた皆さまに心からお見舞い申しあげます。

今回の危機は、経済や金融市場に大きな混乱を来たし、個人の日々の生活や働き方にも大きな影響を及ぼしています。<みずほ>は、お客さまや社員の健康・安全を最優先としつつ、各地域の実状に応じて交代勤務やリモートワーク等を行い、緊急事態宣言のもとでも、決済や融資等、お客さまや経済に必要不可欠な金融事業を継続してきました。また、資金面でのご支援が必要な法人、個人のお客さまからのご相談に真摯に向き合い、新規貸出や条件変更等、必要とされるサービスの提供にも取り組んできました。今後も、まだまだ全く予断を許さない状況ですが、引き続きグループ一丸となって、このような時にこそ必要な金融機能をしっかりと発揮してまいります。

さらに、「J–Coin基金」を立ち上げ、自らの寄付金拠出に加えて幅広い方々の参加を呼び掛けるとともに、私どもが取り扱う私募債の発行額に応じて寄付を実施すること等を通じて、医療従事者や、影響を受けられているご家庭・学生の皆さま、お一人おひとりの生活や社会への支援にも取り組んでまいります。

「コロナ禍」とは

現在、世界中の国々が、新型コロナウイルス感染症、そしてその影響によって、需要が急減速し、経済成長や雇用など、実体経済が極度に悪化する、まさに未曽有の危機に直面しています。この未知のウイルスによる感染症が確認されてから半年以上が経ちましたが、未だその影響範囲や深度、そして収束時期等を正確に予測することは困難です。最新のIMF世界経済見通し(2020年6月改定)によれば、2020年の世界経済成長率の見通しは△4.9%と、前回マイナス成長となった2009年の△0.1%を大幅に下回る見込みであり、今回の危機が、いかに類例を見ない、未曽有のものであるかが窺えると思います。

もちろん、経済危機はどこかのタイミングで収束しますが、ワクチンが開発途上であり、感染症拡大の第二波、第三波のリスクも懸念される中、収束までに相当の期間を要する可能性も指摘されています。実体経済が長期にわたって低迷し、その影響がより長期化する可能性も想定する必要があると認識しています。

株式会社みずほフィナンシャルグループ 取締役 執行役社長 グループCEO 坂井 辰史

~リーマン危機とは何が違うのか

2008年9月、リーマンブラザーズが経営破綻しました。その負債総額は米国史上最大の6,130億ドル。世界的規模で経済・社会に動揺をもたらしたリーマン危機は、当時、100年に一度とも称されました。今回の経済危機によるダメージはリーマン危機を超えることが不可避な状況ですが、金融機関にとって何が違うのか。
それは、以下の3点により、今回は金融機能を正常に発揮できるということです。

第一に、今回の危機が金融発ではないこと。リーマン危機では、いわゆるサブプライムローン問題に伴って、まず金融機関が傷み、それが資金供給機能の低下を通じて実体経済に波及したことによって、結果として金融機関の経営状態が一段と悪化し、まさに負のスパイラルに陥りました。第二に、今回は、各国中央銀行や政府が、前回の危機の経験も踏まえて、迅速かつ大胆な対策を実施していること。こうした対策が奏功し、現時点においては金融システムの安定性には懸念がありません。そして第三に、金融機関は、その後の規制強化や危機で得た教訓をもとに、資本の積み上げ、リスク管理手法の高度化、ポートフォリオ健全性の向上等に取り組んできたこと。こうしたことから、金融機関はいざというときにもしっかりと資金供給ができるようになっています。

<みずほ>においても、当時と比較すると、与信ポートフォリオ全体が大幅に健全化しています。当時、多額の損失を計上したプロダクツ融資についても、不動産関連や資源関連与信の投資適格相当比率が約8割となるなど、運営方針の見直しやリスク管理態勢の強化を進めてきた結果、ポートフォリオの質が大幅に改善しています。また、海外においても、優良企業を中心に取引する「Global 300戦略」を推進した結果、投資適格比率が約8割です。投資においても、大きな損失が懸念される資産は保有していません。こうしたことから、<みずほ>は、この難局を乗り切ることができる耐性を十分に有していることがお分かりいただけると思います。

このような認識のもと、<みずほ>が今取り組むべきことは何か。
それは、事業環境の悪化に備えて「守り」をしっかりと固めるとともに、今こそ必要とされる金融機能を発揮する、ということです。必要とされる信用供与を滞りなく行い、経済の血液ともいわれる資金をしっかりと巡らせることで、経済が過度に悪化したり、回復が遅れたりしないようにする。それにより、お客さまの経営や生活の回復を出来るだけ早くすることができれば、経済も快方に向かうはずです。だからこそ、基本に立ち返って、今こそ必要とされている金融機能をしっかりと発揮することが極めて重要なのです。

~コロナ後の世界はすでに始まっている

新型コロナウイルスの影響によって、実体経済は深刻なダメージを受けました。同時に、社会の一人ひとりが、今できるさまざまな対策を講じながら、この新型コロナウイルスと一緒に過ごさざるを得ない時間、Withコロナの時間を経験しています。その時間の中で、各国の経済や社会におけるさまざまな脆弱性が露呈し、それによって、人々はいろいろな面での気づきや学びを得ました。そして、その経験をもとに、一人ひとりの生活やビジネスの在り方をはじめとして、すでに社会全体が「コロナ後」を展望して、大きく変わりつつあります。

<みずほ>は、金融業界に大きな影響を与えるメガトレンドとして、「デジタル化」、「少子高齢化」、「グローバル化」に注目しており、コロナ後も大きな方向性は変わらないと考えています。しかしながら、これらのメガトレンドにおいても、Withコロナの時間を通じてさまざまな脆弱性が露呈しました。それに伴って、人々の考え方や行動等にも変化が現れており、金融業界においても、コロナ後を見据えて、新たな動きが急速に出始めています。

まず、「デジタル化」。特に日本ではさまざまなデジタルインフラの遅れが露呈し、地方公共団体や政府、そして私ども民間企業もデジタル化の課題を再認識させられることになりました。こうした事態に直面したことで、電子契約やキャッシュレス取引などこれまでハードルが高いと思われていたデジタル化の施策がスピード感をもって進んでいます。また、個人の方のお取引も、対面からデジタルを活用した非対面へと急速にシフトしています。「少子高齢化」では、健康や老後の不安の問題が一層強まりました。例えば、事業承継については、将来への不安感の高まりを契機として、若い世代の経営者を含め、MBOや非上場化等の対策に早期から着手する方が増えています。「グローバル化」については、新型コロナウイルス感染拡大による操業停止を踏まえ、サプライチェーンの偏在が大きな問題を引き起こしました。また、アンチグローバリズムの台頭といった問題もあります。しかしながら、これを受けてグローバル化が巻き戻されるのではなく、やはり、グローバル化を前提として、最適なサプライチェーンの再構築をしていく動きがすでに始まっています。これらは、新型コロナウイルスをきっかけとした社会の変化、「コロナ後」を見据えた社会や顧客ニーズの構造的な変化の一例ですが、まさにそういったことがさまざまなところで起こり始めているということです。

『次世代金融への転換』の加速

<みずほ>は、昨年度から「5ヵ年経営計画 ~次世代金融への転換」をスタートさせました。基本方針は、「ビジネス」「財務」「経営基盤」の「3つの構造改革」を通じて、メガトレンドを背景に構造的に変化するお客さまのニーズに対応することで、『次世代金融への転換』を図ること。これまでの金融機関は「お金そのものの価値」をベースにビジネスを組み立ててきました。しかし、お客さまから預金を預かり、事務・システム・コンプライアンス等の磐石なインフラをもとに間違いなくお金をお返しさえすれば、相応の利息がついて喜んでいただけるという時代はとうに過ぎ去っています。これまで培ってきた<みずほ>の強みを最大限発揮して、金融そのものの価値を超えて、金融と非金融の融合領域を含めた「金融を巡る新たな価値」を創造する。そして、そのことを通じて、お客さまと新たなパートナーシップを構築する。これが5ヵ年経営計画の基本戦略です。そこでは、顧客や地域、機能といったさまざまな要素を、グループの内外を問わず、よりオープンにつなぎ合わせ、金融を巡る新たなバリューチェーンを創出していく『オープン&コネクト』と、社員一人ひとりが想いと専門性をもってお客さまの夢や希望に向き合い、「考え、動き、そして実現する」という『熱意と専門性』を行動軸としています。こうしたことを通じて、従来型のややもすれば「保守的」であるとか、「守りには強いが攻めには弱い」といった殻を破り、「新しい価値」を作っていくことを目指しています。

5ヵ年経営計画の初年度にあたる2019年度は、新型コロナウイルス影響を考慮した引当金を先行的・予防的に計上したこともあり、親会社株主純利益は95%の達成率にとどまりましたが、各部門ともに総じて堅調な結果であり、手応えのある決算となりました。5ヵ年経営計画の中でも極めて重要な課題と位置付けている構造改革への取り組みも、計画を上回って順調に進捗しています。

~コロナを奇貨としてもっと強くなる

しかしながら、前述の通り、新型コロナウイルスによって突き付けられた社会・経済・産業の脆弱性は、構造改革の取り組みにおいて、まだ十分でなかった私ども自身の課題を浮き彫りにしました。
そうした意味では構造改革の必要性や方向性は変わりませんが、コロナ対応における課題を踏まえ、構造改革をより深化させていくことが必要と考えています。

構造改革は5年間にわたる取り組みですが、勝負どころは前半の3年間、特に今年はその山場を迎えます。「コロナ後」の社会や経済を展望しながら、営業店をはじめとしたオペレーションやインフラ、そしてビジネスの在り方を抜本的に変えることが重要だと考えています。さらに、そういった社会の構造変化をいち早く捉え、果敢に行動することによって、むしろ、ビジネス領域を拡大する「攻め」の姿勢で今日の事態に臨みます。

例えば、デジタル化。新型コロナウイルスをきっかけとして、タッチレスのニーズが拡大しています。<みずほ>は、「安心・安全」と「利便性」を強みとして、各地域金融機関等とも連携し、「J–Coin Pay」によるキャッシュレス化を一層推進していきます。また、人々のライフスタイルにおけるスマートフォンの重要性がますます高まる中、スマートフォンを起点として形成される新たな生活圏・経済圏と、<みずほ>がこれまで培ってきた金融機能をつなげるべく、幅広いITプラットフォーマーと提携を進めています。さらに、本年度より、営業店の店頭におけるお客さまのタブレットへの入力情報を、新勘定系システムの「MINORI」に直接送ることで、店舗事務の効率性とスピードを向上させるなど、デジタル化を通じてお客さまの利便性をさらに向上させていきます。

そして、戦略投資。リスクテイク力を向上させて、お客さまと事業戦略を共有しながら、事業パートナーとしてリスクをシェアしていくということは、私どもが5ヵ年経営計画で掲げた戦略です。コロナ禍を経て、お客さまのビジネス戦略や財務戦略には抜本的な変革が求められています、また、このような事業環境となり、少なくとも1–2年程度は資本に対する下方圧力への対応も必要となってきます。私どもの強みである産業調査能力や財務資本戦略の実行力も活用し、さまざまな切り口からお客さまの経営陣と議論を積み重ね、守りの資本増強にも、そして、攻めの資本増強に対しても、資本性資金の供給という形で従来以上に取り組んでいきます。

さらには、成長支援。イノベーション企業の成長支援も、資金だけではなく、人材の供給をはじめ、事業の成長そのものを支援する取り組みを進めてきました。しかしながら、良い技術、良いビジネスモデルを持っていても、この環境では大変厳しいと思いますので、ファンドを通じた資金支援といったさまざまな形でしっかりサポートしていきたいと思います。

グローバル化においても、偏在していたサプライチェーンをうまく分散させながら、効率性と安全性を両立させる形で最適化をやり直す動きが出始めています。私どもは、「Global 300戦略」を通じ、グローバルな多国籍企業の経営トップとハイレベルな関係を構築しています。こうした環境下、事業戦略に関わるご相談をいただき、リサーチ機能等も活用しながら商流再構築のサポートを行う等、グループ力を活かしたお手伝いができます。

私どもがお客さまと前向きにいろいろなことを一緒にやっていく場面はさらに増えていくと思いますし、そういうことを絶えず模索していくことで、まさしく、「金融を巡る新たな価値」を創造することにつながっていくと考えています。

「コロナ前」に戻れないのではなく、戻さない。コロナを奇貨としてもっと強くなる。グループ内でそういった意識を共有し、軸は決してぶらすことなく、『次世代金融への転換』を、より加速していきます。

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サステナビリティへの取り組み

私どもの企業価値を持続的に高めていくためには、自らの価値のみならず、株主、お客さま、従業員、社会等、さまざまなステークホルダーに対して新たな価値を創造していくことが必要です。そうした観点から、<みずほ>にとってのサステナビリティとは、私どもの持続的な成長とともに、それを通じて環境の保全および内外の社会・経済・産業の持続的な発展・繁栄を目指していくことと定め、基本的な考え方や戦略推進方法を策定し、グループ一体で取り組みを進めています。

気候変動については、金融市場の安定にも影響を及ぼしうる最も重要なグローバル課題の一つと認識しており、環境・気候変動への対応を経営戦略における重要課題として位置づけ、取り組みを継続的に強化しています。

そうした中で重要となるのは、ステークホルダーとの対話であり、エンゲージメントです。本年4月に環境・社会に配慮した投融資の取組方針の厳格化を行いましたが、これにあたっても、お客さまをはじめとしたさまざまなステークホルダーと対話を積み重ねることによって、お客さまの事業戦略を深く理解したうえで、私どもの考え方を丁寧に説明し、ご理解をいただきながら、「脱炭素社会」に向けてともに取り組む形で進めてきました。

また、エンゲージメントで重要なことは積極的な開示だと考えています。今般、統合報告書に加えて、TCFDレポートを発行しました。前提条件や検討結果を含めた積極的な開示を通じて、ステークホルダーの皆さまとの対話を進めています。

<みずほ>は、今後も、お客さま、投資家の皆さまをはじめとした幅広いステークホルダーとエンゲージメントを深めながら、皆さまからいただいた意見を真摯に受け止め、取り組みや開示の改善に努めるとともに、社内においても、規律をもって推進していきます。
そして、私自身がCEOとしてリーダーシップを発揮し、この取り組みを深化させてまいります。

<豊かな実り>を提供する<みずほ>

巷間、ステークホルダー資本主義が着目されるようになりましたが、<みずほ>は、かねてより企業活動の根本的な考え方である基本理念において、「いかなる時代においても変わることのない価値を創造し、お客さま、経済・社会に<豊かな実り>を提供する、かけがえのない存在であり続けること」を掲げています。

昨今、社会・経済・産業の構造変化は、低金利・マイナス金利の常態化等を通じ、これまで預金を中心に事業を組み立ててきた従来型の金融ビジネスモデルに抜本的な変革を迫っています。
また、規制緩和やデジタル化の流れを受けたFintechの台頭や新規参入は、既存の金融機関の競争環境を一層厳しいものにしています。

一方で、今般の新型コロナウイルスによる問題を通じて、しっかりとした資本を持ち、信用供与ができる、私どものような金融機関でなければできないことがある、そうしたことが改めて明確になりました。しかし、それだけにとどまる訳にはいきません。信頼・安心感と幅広い顧客基盤や広範なネットワーク、高度な金融・非金融機能、そして、グループ一体の営業体制等が、これまで私どもが培ってきた強みです。これらをしっかりと活かしつつ、従来の金融の領域を越えて、お客さまが、「コロナ後」の未来をどのように歩んでいくかを一緒に考え、必要に応じてリスクをシェアし、そして、その未来を実現していく「かけがえのないパートナー」となる。これが、これからの<みずほ>の役割であり、その真価が問われるところです。

そのために、金融と非金融にまたがる専門性を持ち、社内外でも活躍できる「スペシャリスト」として、お客さまからも頼りにされる人材となることが必要です。<みずほ>では、専門性発揮に報いる処遇制度と、社員のキャリアデザイン支援を大きな柱として「新人事戦略」を推進しています。ジョブ公募や兼業・副業の応募者数が着実に増加しており、社員の専門性拡充や社内外での挑戦機会拡大が進んでいますが、これからも、社員一人ひとりが専門性を軸に活躍領域を広げ成長できるよう、育成・評価・処遇等の新たな基盤づくりに取り組むとともに、性別や国籍を問わない多様な人材の能力発揮を促していきます。加えて、新型コロナウイルス対応の経験も活かし、社員の健康・安全をしっかりと確保しつつ、柔軟な働き方を今まで以上に実現させ、社員の創造性、生産性の向上を図っていきます。

こうした取り組みを通じ、<みずほ>は、変わりゆく時代においても、さまざまなステークホルダーに対して、私どもの社名の由来である<豊かな実り>を提供してまいります。

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最後に ~「考え、動き、実現する」ことで、より強くなって立ち上がる

今年度は、新型コロナウイルスに伴う未曽有の危機に臨む正念場です。金融は実体経済の鏡ともいえる側面をもっており、私どもの業績は、少なくとも今年度は、謂わば「しゃがむ」ことにならざるを得ないと考えています。しかしながら、私どもに対するお客さまや社会からの期待には大きなものがあります。社会や経済の一日も早い回復に向けて、グループ一丸となって、資金繰り支援や決済対応をはじめとした金融機能を十分に発揮し、覚悟をもってこの正念場に臨みます。

さらに、デジタル化やリモート化といった、コロナ後を展望した社会・経済・産業の構造的変化が足元から急速に進展する中、ビジネス基盤の拡充や構造改革の深化等を通じた『次世代金融への転換』をこれまで以上に加速します。

金融の真価が問われるこの局面を千載一遇のチャンスであると捉え、役職員の一人ひとりが「考え、動き、そして実現する」ことによって、<みずほ>はより強くなって立ち上がります。そして、私が社長就任時に掲げた<みずほ>の在り方、すなわち、『お客さまから今まで以上に必要とされ頼りにされる、より強力で強靭な金融グループ』を形作るべく、グループ役職員一同、全力で取り組んでまいります。皆さまにおかれましては、引き続きのご理解とご支援を賜りますよう、宜しくお願い致します。

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