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CEOメッセージ

株式会社みずほフィナンシャルグループ 取締役 執行役社長 グループCEO 坂井 辰史

「5ヵ年経営計画」の実行を通じ、『次世代金融への転換』を実現する。

〈みずほ〉は、2019年度からの5年間を計画期間とする「5ヵ年経営計画 ~次世代金融への転換」を発表致しました。
私は、昨年4月のCEO就任以来、〈みずほ〉のこれまでの歩みを総括する形で振り返り、現状をつぶさに把握すると同時に、来るべき時代において〈みずほ〉が生み出す新しい価値について思考を重ねてきました。
本「CEOメッセージ」では、構造的に変化する環境の下で、私がCEOとして、変化にどのように向き合い、どのような課題や強みを認識し、そして、新たな経営計画の実行を通じて、いかにして競争に打ち勝っていくか、についてご説明します。

変化にどのように向き合うか

経営者に求められること

経済や社会のあり方、世界の国々のつながりのあり方、さらには一人ひとりの生活のあり方が、構造的・不可逆的に、そして加速度的に変化しています。こうした変化にどのように向き合うのか。これが、急速な時代の変化に直面する経営者にとって最も重要な課題であると言っても過言ではありません。

足許の世界経済を眺めますと、全体として緩やかな拡大が続いているものの、足許では米中貿易摩擦の影響などからグローバルに製造業の景況感が下振れる等、不透明感が高まっています。先行きについても、米国を中心に引き続き底堅く推移することが期待されますが、米通商政策や欧州の政治情勢、中国・新興国の経済・市場動向、中東での地政学リスク等の不確実性の高まりに留意を要する状況です。
更に、前回の金融危機から既に10年以上が経過する中で、米国債市場における逆イールドの発生や、社債市場でのクレジットスプレッド拡大、レバレッジドローン市場の拡大等、クレジットサイクルにも変調の兆しが現れてきています。
私ども〈みずほ〉は、リーマンショック時の教訓も踏まえ、クレジット市場の動きに加え、新興国や資産価格等の動向にも目を凝らし、絶えず金融経済が変化してゆく中でウィークリンク(弱点)がどこにあるかを考えながら、リスク管理の高度化と選別的なクレジット対応を実施してきました。これらに伴い、クレジットサイクルの転換に対しては相応の耐性を有していると考えています。

しかしながら、こうした「循環的変化」への備えだけでは不十分な時代を迎えています。先進国の経済成長率の趨勢的低下、格差問題や反グローバリズムの台頭、先進国はもとより新興国においても進展する高齢化や長寿社会の到来、更にはデジタル化に伴う破壊的ともいえるイノベーションの進展といった要素が複雑に絡み合い、世界の経済・社会、そして人々の生活における「構造的変化」が加速度的に進展していることは疑いようのない事実です。
特に、デジタル化に関しては、あらゆるモノがインターネットとつながるIoT化や、AIを活用したビッグデータ解析の進化等により、実世界とサイバー空間との相互連関が進み、経済・社会・生活のあらゆる分野に変革を促しています。狩猟・採集社会から農耕社会への移行には1千年、産業革命には数百年の時間を要しましたが、現在起こりつつあるデジタル革命は僅か数十年で世界に大きな変化をもたらすことが予想されています。

そうした観点から、今後の世界を展望すると、変化の幅はこれまでよりも更に大きく、変化の速度は更に速く劇的なものとなることが想定されます。これに伴い、「金融」という業界にも、これまでの発想を遥かに超えた非連続的な構造変化が起こりつつある、と考えざるを得ません。世の中が変わり、顧客ニーズが変わり、働き手の意識も変わる中で、金融業だけ今のままの姿が未来永劫続くと考える方がむしろ不自然です。極端に言えば、金融業という業種自体が消滅してしまう可能性すらあると考えています。

こうした劇的な変化は、これまでに築き上げた成功体験に固執する者にとっては大きな脅威となる一方で、変化を怖れず自らを変革していく者には千載一遇のチャンスでもあります。
これまでの競争環境が大きく変化する中で、現実を冷静に直視し、変えるべき点には確りと手を打つ。同時に、自らの強みをベースに、前例に囚われない柔軟な発想を以って、「考え・動き、そして実現する」。これらによって、従来の環境では成し得ないような大きな飛躍が可能となるからです。

変化にどのように向き合うか、そして、そのような向き合い方をいかに組織の隅々まで徹底できるか。これが、今後の企業の経営において、とりわけ、変化の激しい金融業の経営において最も重要な課題となっているのです。

環境・課題認識

イメージ図

3つのメガトレンド

以上を踏まえ、まずは、経済・社会・生活に構造的変化を引き起こしている大きな潮流の中でも、特に金融業界に大きな影響を与える3つのメガトレンド~「デジタル化」「少子高齢化」「グローバル化」~についてご説明します。

まずは「デジタル化」です。先程も簡単にご説明しました通り、デジタル化は、経済・社会・生活のあらゆる分野に変革を促しています。ビジネスの世界においても、IoTや3Dプリンター等の活用による製造業革命、ビッグデータ・AI等の活用によるサービス業の劇的な変化、サブスクリプション・シェアリングビジネスの勃興等、「第4次産業革命」とも言われる産業構造の大きな転換が進行しています。
こうした中、金融機関は、お客さまの事業展開のパートナーとなり、急速に変化する顧客ニーズに対して、金融を越えて事業面からも取り組むことが必要です。
また、金融機関が提供する決済や融資等の基本的なサービスについても、ITプラットフォーマーやフィンテック企業などの参入を通じ、今後、革命的な変化が急速に進むことが想定されます。既存の金融機関が、金融インフラの担い手としての役割をこれからも果たしていくためには、最先端のテクノロジーも活用してサービスの高度化を進め、新規ビジネスの開発と生産性の向上に努めていくことが不可欠です。

次に、「少子高齢化」です。私どものホームグラウンドである日本は課題先進国ともいわれ、他国に先駆けて少子高齢化の問題に直面しています。少子高齢化は、他の国・地域でも、今後いずれかのタイミングで直面することが想定される非常に重要な課題であり、日本が新しいモデルを提示していけるかどうかは、世界経済が安定的な成長を実現していく上でも重要なチャレンジとなります。
私は、日本のものづくりの伝統や技術力にデジタル化への対応を組み合わせるとともに、これまで蓄積してきた資本力を活用することで、人口が減少したとしても、生産性を飛躍的に向上させ、これを強みとして発展していくことができるモデルが作れるのではないかと考えています。
日本は、高度成長期から蓄積してきた1,800兆円を越える個人金融資産に加え、1,000兆円を越える個人の不動産資産を有しています。しかしながら、日本の家計所得に占める財産所得の割合は1割程度であり、これを例えば欧米並みの2~3割程度まで引き上げていくことが不可欠です。資産承継・事業承継の対応を含め、これらの資産の有効な活用を促進することで、人生100年時代における「貯蓄から投資・資産形成」への流れを作り、資産のリターンを上げるとともに、新たな発展モデルを支える資本力を充実させることが可能であると考えています。
「グローバル化」については、最近では保護主義的な通商政策の拡大等の反動的な動きがある一方で、サプライチェーンの変化を通じた新たなトレードフローが生まれる等、今後の方向感を見定めづらい状況にあります。貿易を巡る米中間の協議の動向については今後も紆余曲折が予想されますが、その揺り戻しも含めて、グローバル化というメガトレンドの行方が益々重要になってくると考えています。
こうした中でも、私は、アジアを中心とする新興国が世界経済を牽引していく構造自体は基本的に変わらないと考えています。世界のGDP推移予測では、2030年代には中国がアメリカを超え、中国を除くアジアも日本の約3倍の規模にまで拡大することが見込まれています。
これに伴い、金融の世界においても、アジアに関連したマネーフローの割合がますます高まっています。アジアと米欧をはじめとする他地域とを結ぶ「架け橋」となり、ビジネスとビジネスをつなぐことで、世界経済の持続的・安定的な成長に貢献していくことも、金融が果たすべき重要な役割であると認識しています。

克服すべき課題は何か

3つのミスマッチ

次に、私ども自身に目を向けると、先ほどご説明したメガトレンドを背景として顧客ニーズや金融業界の構造変化が進む中で、「ビジネス」「財務」「経営基盤」の3つの観点で、ミスマッチが生じています。以下で、それぞれについて具体例を挙げながら説明します。

まず、「ビジネス面のミスマッチ」についてです。
これまで私どもは、特に日本国内において、戦後の高度経済成長期を経て培われてきた営業体制をベースとしてビジネスを推進してきました。例えば、銀行であれば、相当な固定費をかけて、駅前の一等地を中心に磐石な店舗ネットワークを張り巡らせ、堅確な事務体制とシステムを構築して、幅広い個人のお客さまから預金をお預かりし、それを法人のお客さまへの貸出にあてる、というモデルです。
しかしながら、デジタル化により利便性の高いサービスが普及する中で、銀行の窓口に来店することなく決済や事務手続等の基本的なサービスを受けることが可能となっており、銀行の窓口に来店されるお客さまの数は年々減少しています。更に、店舗においても、最先端のテクノロジーを活用したより便利で質の高いサービスの提供が進んでいる結果、今後の店舗は、個人のお客さまの老後に向けた資産運用・相続や、法人のお客さまのビジネス等に関わるコンサルティングの場としての性格がますます強まっていきます。変化するお客さまニーズにお応えしていくためには、利便性の高い立地で大量の事務処理を行うことを前提とした店舗のあり方など、顧客ニーズとのミスマッチが生じている私どもの営業体制を根本から見直していく必要があります。

次に、「財務面のミスマッチ」についてです。
国内では、長引く低金利環境の下で、預貸金利鞘の縮小が継続した結果、減少する粗利益と従来型の営業体制に係る経費との間で、ミスマッチが構造的に発生しています。
マイナス金利政策は金融緩和の一つの手段であり、長い目で見ればどこかで解消される可能性もありますが、少子高齢化や人口減少が想定される中で、経済成長率が大きく上昇することは想定しづらく、低金利環境は今後も継続することが見込まれます。
こうした中、固定費の抜本的な削減に加えて、金融の領域にとどまらない新たなお客さまのニーズへの対応に向けた投資等を通じて、新たな価値を創造し、財務面のミスマッチを解消していく必要があります。

最後に、「経営基盤のミスマッチ」についてです。
お客さまのニーズが構造的に変わっていく中で、私ども自身の経営のあり方、一人ひとりの働き方、日々の事務フローのあり方等もあわせて変えていかなければ、お客さまに対して新しい時代における新しいサービスは提供できません。
特に人材の問題はきわめて重要です。私自身も社会人になって35年が経ちましたが、入社当時は終身雇用制度が前提であり、55~60歳まで勤め上げて、そのあとは年金と、住宅ローンを返済した後の預貯金や退職金等で暮らしていくというモデルでした。しかしながら、人生100年時代が到来し、日本に生まれる子供たちの4割以上が100歳まで生きるという推計もある中、定年後の働き方に対しても、一人一人がより長い期間にわたって自己実現をできる場を見つけていく必要があります。
すでに若年層の意識は大きく変化しています。終身雇用で就「社」するという意識ではなく、まさしく就「職」し、そこでスキルを身につけ、かつ、社外にもネットワーキングを広げながら、自己確認をしていくという意識が高まっており、会社としても、若年層にいかにキャリアを積んでもらうかという観点が重要になっています。

ここまでご説明してきたミスマッチの事例は、私どもが等身大の実態把握等を通じて認識した内容の、ほんの一例に過ぎません。私どもがメガトレンドを背景とした急速な環境変化に対応していくためには、明らかになったミスマッチから目を背けることなく、その解消に向けた構造改革を、着実に実行に移すことが不可欠です。

CEO坂井辰史の写真

〈みずほ〉はなぜ勝ち残れるのか

これまで培ってきた強み

一方、私どもが、競合する他社との競争に打ち勝って、新しい顧客ニーズに対応していくためには、〈みずほ〉ならではの強みを明確に意識しながら、差別化戦略を進めていくことも必要です。
これまで〈みずほ〉は、One MIZUHOの旗印の下で、グループ一体的なビジネス推進体制を強みとして掲げてきましたが、この強みを一段と強化していくとともに、One MIZUHOにとどまることなく、更にOne MIZUHOを越えて、進化を遂げていきたいと考えています。なぜそのような進化が可能なのか。これまでの歴史の中で培ってきた〈みずほ〉の強みとして、以下の2点をステークホルダーの皆さまと共有しておきたいと思います。

1点目は、「顧客基盤・ネットワークと信頼・安心感」です。
新しい1万円札の図柄ともなる渋沢栄一が私どもの前身の一つである第一国立銀行を設立したのは1873年(明治6年)、日本銀行が設立される10年近く前です。そこから146年の月日が流れています。この長い歴史の中で培ってきた顧客基盤・ネットワークや信頼・安心感こそが、私どもの最大の強みであると考えています。
〈みずほ〉は国内外で厚い顧客基盤や幅広いネットワークを有していますが、とりわけ、特定の企業集団等に偏らない、幅広いオープンな顧客基盤が〈みずほ〉の特色でもあり、これは渋沢栄一の理念とも合致します。また、日系企業の海外現地法人約3万社のうち、アジアが約2万社を占めている中、日本における顧客基盤を、アジアにおける事業展開に活用していることも強みであると考えています。
信頼・安心感については、実際に、個人のお客さまに匿名で実施した企業イメージに関するアンケート調査では、当社とeコマース企業との比較において、変革や挑戦意欲等の項目では劣後しているものの、信頼・安心感といった項目のスコアが非常に高く、社員一人ひとりの優秀さに対しても高い評価をいただいています。
また、私どもは規制業種ということもあり、社会的に必要不可欠な個人情報保護やマネー・ローンダリングへの対策等について、必要なコストがビジネスにビルトインされています。昨今GAFAがこうした課題に直面し、ビジネスモデルの見直しを迫られている中、私どもが長い歴史の中で培ってきた安心や信頼を梃子に事業を拡大していくことは、社会経済的にも、お客さまにとっても、大きな意味があるものと考えています。

  • 米国を代表するIT企業である、グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)の4社の頭文字を取った略称2点目は、「金融機能・市場プレゼンスと非金融領域への対応力」です。

2点目は、「金融機能・市場プレゼンスと非金融領域への対応力」です。
まず、グループ内に様々な金融機能を有しており、市場における高いプレゼンスを有していることは大きな強みです。
例えば、日本国内では、シンジケートローンのリーグテーブルは10年連続で1位であり、公募債(事業債・電力債)も常にトップクラスに位置する等、主導的な地位を確立しています。また、米州の社債引受(DCM)ランキング(2018年度、投資適格)においては、全体では8位ですが、当社がターゲットとする大口顧客においては米系大手3社に次ぐ4位となる等、海外の資本市場でも高いプレゼンスを有しています。さらに、アジアにおけるトランザクションバンキングやトレードファイナンスにおいて、業界専門誌による様々な賞を継続的に受賞する等、当社が提供する各種サービスに対し、関係者から高い評価を獲得しています。

加えて、〈みずほ〉は、非金融の分野でも様々な強みを有しています。
例えば、当社のリサーチ機能は、邦銀随一の産業調査をはじめ、幅広い分野にわたる高い専門性を有しており、大きな環境変化に直面するお客さまのニーズに、金融のみならず非金融の分野も含めて応えていく上で、他社との大きな差別化要因になります。
また、みずほ信託銀行は、信託業界トップの不動産業務の実績を誇っており、金融資産のみならず不動産も含めた資産承継等のニーズが高まっていく中で、大きな強みになると考えています。更に、資産の保全や承継に関する複数の金融機能と、異業種と連携した「介護・見守り等の生活サポートサービス」とをあわせて提供する「選べる安心信託」の取り扱いを開始する等、信託機能をベースに非金融領域のサービスを融合することで、お客さまから大変好評をいただいています。
このように、金融・非金融の両方の分野で強みを有していることが、新しい時代における顧客ニーズに正面から向き合い、新しい価値を生み出す上で大きな強みになると考えています。

新たな強みの創出

こうした自前の強みを最大限発揮することに加え、デジタル化を徹底的に推進する中で、異業種も含めた第三者とは、戦略に応じて、ある時は競争しつつも、またある時は積極的に提携することで、新たな強みを生み出していきます。
先ほどご説明した通り、私どもには、長年の歴史の中で築き上げてきた信頼・安心感があります。こうした強みをいかしつつ、先進的な取り組みをいちはやく手がけているIT企業等と、顧客ニーズへの対応という共通の目標の下でオープンに手を組み、金融と非金融という二つの領域を融合させていくことで、お客さまに本当の意味での付加価値を提供できるのではないかと考えています。
すでに、ソフトバンクと連携した個人向けスコアレンディングのJ.Score、全国各地の地域金融機関と連携したキャッシュレス決済の仕組みであるJ–Coin Pay、クレジットエンジンと連携した中小企業向けの新たなレンディングビジネス、LINEと連携した新しい銀行の設立検討等、規模や業種を問わず多様なプレーヤーと連携しながら、顧客接点、サービス、インフラ等を、機動的、柔軟、かつオープンに繋ぎ合わせて顧客ニーズに応えていく取り組みを進めています。今後もこうした動きを拡大することを通じて、競合他社との差別化を図ります。

構造改革実行に向け礎を築いた1年

ここで、新たな経営計画の発射台ともなるべき2018年度の取り組みについても簡単に説明しておきたいと思います。

私は、昨年4月の就任以来、2018年度を「反転攻勢の年」と位置付け、ビジネス実態に即して収益力を強化することに主眼を置いて運営してまいりました。その結果、顧客部門の収益は、国内大企業や海外を中心に好調に推移し、カンパニー制導入後の最高益を実現するなど確かな手ごたえを感じています。
また、2018年度決算では、等身大の実態把握を通じて認識した構造課題に対し、可能なものから前倒しで対処していくことを狙いとして、後年度負担を解消するための一括損失処理を実施し、財務面のミスマッチ解消を一気に進めました。今般の対応は、私どもが抱える構造課題を早期に解決し、これまで培ってきた強みや底力を最大限に発揮するためにも、ベストの選択であったと確信しています。
加えて、最重要の経営課題と位置づけて取り組んできた次期システムへの移行についても、2018年度に実施した8回の移行はすべて順調に完了いたしました。
これらにより、新たな経営計画の下で、構造改革を実行に移していくための礎を整えることが出来たと考えています。

いかにして競争に打ち勝っていくか

基本方針 ~三位一体の改革

ここまでご説明してきた私どもの構造課題や強みを踏まえて策定したのが、「5ヵ年経営計画~次世代金融への転換」です。
前述したとおり、今、私どもが直面する最大の経営課題は、構造的に変化する顧客ニーズと、長年の業務運営の中で形成された営業体制との間に生じている様々なミスマッチを解消し、新たな顧客ニーズに対応していくことであると認識しています。
そこで、経営計画の基本方針は、『前に進むための構造改革』をビジネス・財務・経営基盤の三位一体で推進することとしました。これにより、経営資源配分のミスマッチを解消し、新たなお客さまのニーズに対応することで、『次世代金融への転換』を図ります。

時間軸 ~計画期間を5年とした理由

経営計画の時間軸は、従来の3年ではなく5年としています。従来の3年という時間軸でも、当面の課題に対応することは可能です。しかし、3年では従来の延長線上でモノを捉えがちになり、対症療法に留まる懸念があります。今回は敢えて5年という時間をかけることで、根本にまで立ち返って構造課題に正面から向き合い、『次世代金融への転換』を果たしていきたいと考えています。
特に後半2年間は、その成果を目に見える形で示しながら、更なる成長を加速していく計画であり、私どもの大きな覚悟の表れとご理解いただきたいと考えています。

5ヵ年計画の時間軸のイメージ図

基本戦略 ~金融を巡る新たな価値の創造

基本方針の実現に向けた基本戦略は、お客さまと、これまでとは異なる新たなパートナーシップを構築すべく、従来の金融の枠を越えて、非金融の領域も含めた、『金融を巡る新たな価値』を創造することです。

重要なポイントなので、少し詳しくご説明します。
これまで金融機関は、お金そのものの価値に立脚して金融という事業を組み立ててまいりました。もちろん、お金そのものの重要性は今後も変わりません。しかし、冒頭でも述べたとおり、人々の生活様式や価値観、あるいは世界の国々の繋がりや経済・産業の構造等、多くのものが変化し、新たな顧客ニーズが高まりをみせています。
例えば、個人であれば、単に資産運用に関するニーズだけでなく、スマートライフ化に伴う利便性の高い金融サービスへのニーズや、人生100年時代における老後の相続、介護、後継者問題等への対応ニーズが拡大しています。
また、法人であれば、資金手当てだけではなく、成長そのものへの支援や事業構造の転換、更には、それらに伴う事業リスクへの対応や人材確保のニーズ等が拡大しています。
こうした中、金融のあり方も大きく変わってまいります。お客さまとの新たなパートナーシップを構築するためには、従来の金融の領域にとらわれず、こうしたお客さまの夢や希望、あるいは不安といった、より本源的なニーズそのものに、正面から向き合うことが不可欠です。従来の『金融そのものの価値』を越え、あらゆるリソースを駆使する。そして、金融・非金融の融合領域を含め、金融にまつわる様々なことを繋げ、「金融+α」のソリューションを提供することで、『金融を巡る新たな価値』を創造する。これが、私どもの基本戦略です。

この基本戦略においては、前述した私どもの強み、即ち顧客基盤や信頼、金融機能に加え、リサーチ・コンサルティングや不動産等の非金融領域への対応力等の強みを最大限に発揮していくことが、大きな差別化の要素となります。加えて、デジタル化への取り組みや外部との積極的な協働によって更にパワーアップしながら、新たな価値を創出してまいります。

そして、そのための行動軸が、『オープン&コネクト』と、『熱意と専門性』の2つです。
『オープン&コネクト』は、顧客や地域、機能といった様々な要素を、グループの内外を問わず、よりオープンにつなぎ合わせ、金融を巡る新たなバリューチェーンを創出していく、というものです。
『熱意と専門性』は、お客さまの夢や希望に、私ども社員一人ひとりが想いを持って確りと向き合い、専門性を以って、「考え・動き、そして実現する」、という姿勢を表すキーワードです。
これらの戦略を遂行することで、『次世代金融への転換』を図ります。

以下では、基本方針・基本戦略に基づいて推進する3つの構造改革について、取り組みの方向性をご説明します。

ビジネス構造の改革

「ビジネス構造の改革」では、顧客ニーズの構造的変化を捉え、〈みずほ〉の強みを最大限活用しながら、金融の枠を越え、最適なサービスやソリューションを提供してまいります。

個人・オーナーのお客さまに対しては、『新たな社会におけるライフデザインのパートナー』として、人生100年時代における資産形成や事業承継のニーズを的確に捉え、金融のみならず不動産等も含めたソリューションを提供してまいります。また、デジタル化等を受けた新たなニーズに対し、キャッシュレス化、店舗の次世代化等を進め、安心で、かつ利便性の高い、様々なサービスを、外部ともオープンに協働しながら、スピード感を持って提供してまいります。

法人のお客さまに対しては、『産業構造変化の中での事業展開の戦略的パートナー』として、イノベーション企業の成長をサポートしてまいります。また、産業知見を活用して、お客さまとの共同投資等、事業そのものに対するリスクテイク機能を一段と強化し、政策株式の保有とは異なる、新たな形でのパートナーシップを構築してまいります。
加えて、海外においては、今後とも大きな成長が見込まれるアジア地域における顧客基盤・ネットワークや、肥沃な米国資本市場におけるプレゼンスといった〈みずほ〉の強みを活かし、クロスボーダーの商流・資金流にフォーカスした戦略をよりシャープに推進し、お客さまの地域を越えた事業展開を支援してまいります。

市場参加者の皆さまに対しては、『多様な仲介機能を発揮する市場に精通したパートナー』として、内・外、そして投資家・発行体双方に基盤を有する強みを最大限に活用して、セールス&トレーディング業務の強化に取り組んでまいります。また、バンキングでは、ALM・ポートフォリオ運営の高度化等による、収益の安定化とリスクテイク能力の強化を図ってまいります。

ビジネス構造の改革に係る具体的な内容は「5ヵ年経営計画 ~次世代金融への転換」を、各カンパニー・ユニットの事業戦略は「カンパニー・ユニット別事業戦略」をご参照ください。

財務構造の改革

財務構造の改革では、事業環境・競争環境の変化に対応した柔軟な事業・収益構造への転換を実現します。
資本対比の「リスクリターン(粗利ROE)」と、投資・経費対比の「コストリターン(経費率)」に加え、事業ポートフォリオとしての「成長性」と「安定性」の「4つの視点」で、ビジネス領域毎に事業・収益構造上の課題を捉え、効率化分野で捻出した経営資源を注力・成長分野へ再配分していきます。これにより、早期に安定収益基盤を確立し、機動的にアップサイド収益を追求できる収益構造へ転換してまいります。
こうした取り組みを通じ財務基盤をより磐石にすることで、クレジットサイクルの転換に備えるとともに、成長投資や株主還元の拡充の早期実現に努めます。なお、株主還元方針についても改定を行い、『当面は現状の配当水準を維持しつつ、資本基盤の一層の強化を進め早期の株主還元拡充を目指す』といたしました。
財務目標としては、今次経営計画の最終年度である2023年度において、連結ROE 7~8%程度を掲げています。また、安定収益基盤を充実させ収益力を強化していく中で、連結業務純益9,000億円程度を目指します。

財務構造の改革に係る具体的な内容は「CFOメッセージ」をご参照ください。

経営基盤の改革

経営基盤の改革では、社会の変化に応じた「新たな業務スタイルヘの変革」、「グループガバナンスの強化」、コミュニケーションを軸とした「新たなカルチャーヘの変革」を行います。

「新たな業務スタイルへの変革」については、社員がこれまで以上に「働きやすさ」や「やりがい」を実感できるよう、「人材・職場」「IT・デジタル」等を重点分野として変革を進めます。
「グループガバナンスの強化」については、銀行・信託・証券以外のグループ会社も含め一体感を強め、戦略的な整合性をとり、実行力を高めることで、次世代金融に向けて力強く前進します。今後、2020年度後半に立ち上がる予定の新丸の内オフィスも活用し、銀行・信託・証券等各社の本部や営業機能の集約・一元化を更に究極にまで推し進めます。
「カルチャーの変革」についても、コミュニケーションの質と量を飛躍的に拡大し、新たなカルチャーの醸成に取り組んでいきます。

以下では、「新たな業務スタイルへの変革」の中でも、『次世代金融への転換』を実現するための鍵となる「新しい人事戦略」について、詳しくご説明します。

経営基盤の改革に係る具体的な内容は「5ヵ年経営計画 ~次世代金融への転換」をご参照ください。

新しい人事戦略

新しい人事戦略では、従来の「閉じた社内の競争原理」の中で自分の評価を高めていくということではなく、人生100年時代の中で、一人ひとりが「従来型の金融」といった枠にとどまらず、自らの成長や、やりたい仕事にフォーカスし、「社内外で通用する人材価値の向上」を実現することで〈みずほ〉の価値を高めてまいります。
「社内外で通用する人材価値の向上」とは、社員一人ひとりが〈みずほ〉の中にあっても外にあっても自分の価値を最大化できる、会社と個人のあり方においてWin–Winの形を模索していくということです。これまでの人事の考え方においては、ややもすると社内事情に精通した「ゼネラリスト」が中心を占め、「スペシャリスト」が担う役割は補完的なものに留まるという意識に傾きがちでした。
しかしながら、当社の事業分野が拡大、多様化し、競争も激化する環境下では、「社内事情への精通」よりも、「社外でも通用する専門性」が重要であり、一人ひとりが「スペシャリスト」として自らのエクスパティーズを持つ必要があります。
そのために、女性や外国人等も含め、多様な社員の挑戦意欲や自主的なキャリアデザインを重視する運営に転換し、挑戦機会の拡大や教育制度の充実を図ることで、人材価値向上に向けた取り組みを会社が徹底的にサポートします。更に、社員一人ひとりが活力を持って長く活躍し続けられるよう、各人の業務内容やライフスタイル等に応じた多様で柔軟な働き方を可能とする環境を整備します。
挑戦機会の拡大については、すでにジョブ公募の制度を設けており、例えばJ–Coin Payを始めた際には、若手を中心に多くの社員からの応募がありました。こういった仕組みを順次拡充し、その中で社内における兼業についても幅広く実施していきたいと考えています。
兼業については、社外に対しても認める方針であり、一部ではすでに実験的に始めています。例えばイノベーション企業の場合、ビジネスモデル変革やマーケティングには力を注いでいる一方で、財務や経営といったガバナンスに関しては、金融機関の人材に対するニーズがあります。また、業歴の長いオーナー企業の場合は、後継者や経営管理人材の需要があります。こうした需要に幅広く応えていく中で、イノベーション企業の発想の斬新さやスピーディーな展開などを身をもって体感し、〈みずほ〉の新しい価値の創造に繋げていくことが狙いです。
また、〈みずほ〉で長年勤め上げた人達のみならず、これからは、より早い段階で〈みずほ〉を卒業した現役ビジネスパーソンに対しても、〈みずほ〉の現役社員がネットワークを構築できるよう、積極的に支援していきます。そのような形でいろいろな人と人の繋がりが出来ることにより、新たなビジネス機会が生まれてくるのです。
新しい経営計画において、非金融領域も含めた金融を巡る新たなバリューチェーンを創出していくため、人事制度についても、それにふさわしいものにしていきたいと考えています。

サステナビリティへの取り組み

「5ヵ年経営計画」を実行に移す上で、従来にも増して重視していくのが「サステナビリティ」の視点です。気候変動への対応や人権尊重、少子高齢社会への対応等、持続可能な発展に向けた取り組みの重要性が高まっています。こうした中、様々なステークホルダーから企業に対して、経済・社会・環境という3つの側面の調和を考慮した取り組み、すなわち、事業活動を通じたポジティブなインパクトの拡大とネガティブなインパクトの低減・回避への取り組みが求められています。
〈みずほ〉では、従来より、企業の「社会的責任」への取り組みとして、様々なステークホルダーの価値創造に配慮した取り組みを継続的に強化してきました。今般、新しい経営計画の策定を機に、従来の「社会的責任」というコンセプトの下での取り組みを見直し、新たに「〈みずほ〉の持続的かつ安定的な成長、およびそれを通じた内外の経済・産業・社会の持続的な発展・繁栄」を〈みずほ〉における「サステナビリティ」と定め、グループ一体で取り組む態勢を強化しました。
更に、今次経営計画では、様々なステークホルダーの期待や要請に対し、戦略における重要性や親和性等を踏まえ、「ビジネス」と「経営基盤」に関する「サステナビリティ重点項目」を特定し、経営計画と一体的に推進していくことといたしました。〈みずほ〉の中長期的な企業価値の向上や事業活動を通じたSDGs達成に向け、積極的に取り組んでまいりたいと考えています。

おわりに ~「考え・動き、そして実現する」

今年は2000年に〈みずほ〉が発足してからちょうど20年目にあたります。この間、2002年における不良債権処理、或いは2007~8年のサブプライム危機、リーマン危機といったクレジットサイクルの大きな変動を乗り越えてまいりました。ただ、おそらく構造変化という意味では過去20年以上の変化が、今後の5年で待っているということを覚悟する必要があると考えています。
こうした中、今回の経営計画は、敢えて、あらかじめ定められた「目指すべき姿」に向かって進んでいくという形にしておりません。むしろ、この計画は、私ども〈みずほ〉にとっての一種の運動論、あるいは行動論であり、「走りながら考える」という性格を強く有していると考えています。それは、極めて動きの速い環境変化の中では予め定まった答えはないからであり、その様な状況の中で、私どもは多くの構造課題に立ち向かっていかなければならないからです。
金融業界が大きな構造的変化に直面する中で、今、私ども〈みずほ〉に必要なことは、熱意を持って確りとお客さまに向き合い、日々のあり方・動き方そのものにフォーカスすること。そして、〈みずほ〉が持つ強みを存分に発揮しながら、一人ひとりが、よりオープンに為すべきことを「考え・動き、そして、確りと実現していく」ことであると考えています。
本経営計画を着実に実行し、『次世代金融への転換』を果たしていくことで、『来るべき時代において、お客さまから今まで以上に必要とされ頼りにされる、より強力で強靭な金融グループ』となるべく、グループ役職員一同、全力で取り組んでまいります。
皆さまにおかれましては、引き続きのご支援を賜りますよう、宜しくお願い致します。

株式会社みずほフィナンシャルグループ
取締役
執行役社長 グループCEO
坂井 辰史

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