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金融教育(2011年度ダイアログ)

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ステークホルダーダイアログ2011 金融教育

<みずほ>は、初等・中等教育や高等教育における「金融教育の支援」を、CSR活動の「重点取り組み分野」のひとつに掲げ、2006年度から本格的な取り組みを開始しています。ダイアログでは、活動開始から6年目を迎えた金融教育の取り組みを、有識者のみなさまがどう評価しているのか、教育界にさらに広げていくためには何が必要なのかなどについて、金融教育を担当する社員と対話を行いました。

ステークホルダーダイアログ風景の写真

ステークホルダーダイアログ風景

参加有識者のみなさま

生重 幸恵氏 特定非営利活動法人スクール・アドバイス・ネットワーク 理事長の写真

生重 幸恵氏
特定非営利活動法人スクール・アドバイス・ネットワーク 理事長

大澤 克美氏 東京学芸大学 教授の写真

大澤 克美氏
東京学芸大学 教授

力丸 剛氏 横浜市立潮田中学校 教諭の写真

力丸 剛氏
横浜市立潮田中学校 教諭

神宮 小枝子氏 東京都立板橋特別支援学校 教諭の写真

神宮 小枝子氏
東京都立板橋特別支援学校 教諭

<みずほ>からの参加者

香山 秀一郎 みずほフィナンシャルグループ コーポレート・コミュニケーション部長(現みずほコーポレート銀行 営業第五部長)の写真

香山 秀一郎
みずほフィナンシャルグループ コーポレート・コミュニケーション部長(現みずほコーポレート銀行 営業第五部長)

佐古 智明 みずほフィナンシャルグループ コーポレート・コミュニケーション部 CSR推進室長の写真

佐古 智明
みずほフィナンシャルグループ コーポレート・コミュニケーション部 CSR推進室長

ダイアログの冒頭では、みずほフィナンシャルグループのコーポレート・コミュニケーション部 CSR推進室長の佐古 智明が有識者のみなさまに<みずほ>がこれまで取り組んできた金融教育の取り組みについてご紹介しました。

「初等・中等教育」においては、2006年度から東京学芸大学との共同研究を実施していること、最初の3年間を基礎研究期間として、また2009年度からは教育現場での実践により力を入れていく実践期間と位置づけて各種教材の開発や教材を用いた出張授業、職場体験などを行っていること、プロジェクトの成果を多くの先生方に還元していくために教職員の方々向けの公開講座を実施していることなどを紹介しました。

6年目となる2011年度の成果として、「いつでもどこでも誰でも」というコンセプトのもと、対象学年や科目を限定しない、より実践的な新版テキスト『考えてみよう これからのくらしとお金』を作成したことを取り上げ、7月完成に向けて「指導ガイド」と「DVD版」を作成中であることを報告しました。

高等教育」については、5大学6学部に寄付講座を設置していることを紹介しました。

「いつでもどこでも誰でも」学べる教材づくりを通じて教育現場での活用を支援

大澤

佐古さんから新しいテキストを作成したという報告がありましたが、テキストづくりにかかわった一員として若干補足させていただきたいと思います。まず、こういう教材を最初につくろうと考えたのは、知識の切り売りではなく、知恵を育んでほしいと考えたからです。この教材を用いた授業を通じて、子どもたちが主体的に、意欲的に実際の活動や体験ができるよう、いわば子どもたちの側に立って教材を考え直してみようというのが根本にありました。実際の授業を行うにあたっては、さまざまな子どもたちがいることが前提となります。そこで今度のテキストは、あえて中学向けや高校向けといった校種は指定せず、お子さんにそれぞれ合ったところ、あるいは先生方が「この部分をこの学年の、うちのクラスの子どもたちに使いたい」と思っていただけるように、ある意味、校種や学年といった壁を取り払うということを大事にしています。また、DVDについてもテキストの補足ではなく、どちらか使いやすい方を選べるようにしました。お子さんのなかには知的障がいを抱えている生徒や、海外から日本へ来て、日本語の読み書きがまだ十分にできないニューカマーと呼ばれる生徒もいますので、そういうお子さんには、テキストではなくDVDでその部分を補っていきながら学習が進められるように配慮しました。もちろん「紙でないと使いにくい」という先生方やご家庭もありますので、両方をセットにして、「いつでもどこでも誰でも」学べるテキストを志向しました。

生重

私は「スクール・アドバイス・ネットワーク」というNPOに所属して、学校外のいろいろな分野にいらっしゃる専門家の方々が持つ知恵や経験をプログラムにして、授業に活かすという活動を推進しています。その一環として、東京都の教育委員会と「企業が学校にどういう支援をしたいのか」という見本市のようなことを実施したことがあります。<みずほ>さんには当時から参画いただいており、「金融教育」は私にとってとても身近な存在です。ただ、いちばん最初に感じたのは、「お金」というテーマは学校教育に入れづらいということです。どうしても「お金」そのものがクローズアップされてしまうからです。しかし、東京学芸大学と<みずほ>さんとの共同研究も基礎研究期間の3年間を経て、さらに実践期間に入って、先生方が抱いていたそうした垣根が年々低くなっていくような実感がありました。そうしたなかで、今回この新しい教材を見せていただいたのですが、各教科・領域ごとに単元が構成されていて、とても理解しやすいものになったなと思います。

力丸

私は公開講座のほとんどに出席しており、職場には送られてきた資料やニュースレター「金融教育通信」などがたくさんあります。そうした資料を見ていて思うのですが、<みずほ>の金融教育は手段に終わるのではなく、「生きる力」という本質を見て、そこから物事を展開していきましょうとなっている。初めて出会ったとき、すぐに「これは教育現場で活用しやすいはずだ」と思いました。

生重

特別支援学校の生徒さんたちにも配慮したプログラムがあるのは、とても重要なことですね。お金を身近に感じてもらうことで自立を促していくということをきちんと意識なさっているのは、とても大事なことだと思います。

神宮

軽度の障がいを持つ子どもたちが、よりお金と深くかかわり、社会参加していくうえで、金融教育というのはすごく貴重なカリキュラムです。ですから、特別支援学校向けテキストとして『くらしとお金』という教材を頂戴したときからずっと大事に使ってきました。これからもいろいろなテキストをつくっていただいたり、私たちの授業にも参加していただくなかで、多くの先生方や保護者の方も巻き込んだ、さらにユニバーサルな教材を一緒に勉強しながらつくっていけたらいいなと思っています。

生重

日本の教育では、お金の話を避けてきた部分があると思います。けれど、暮らしのなかでお金は避けては通れないものですし、金融教育の本質は力丸先生もおっしゃったように「生きる力」というところにあるわけです。それなのになぜかお金の話だからと、身近な問題なのに排斥しがちでした。お金について学ぶことは、自分が将来、生計を立て、キャリアを開いていくうえで不可欠な、どう生きていくかというテーマにつながるということ。そのことが、それぞれの発達形成段階に応じて理解されていくことが重要で、<みずほ>さんはそうした点をしっかりとめざしていることが分かります。

力丸

金融教育は人生を選択する力をつけることになるんです。たとえば、よく進路指導で話をするのですが、「君は高校へ進むのか、それとも中学を卒業して社会に出るのか」。これは経済学でいう「機会費用」の話なのですが、要は自分が選択した道によって得られる便益が異なる場合に、どちらの選択肢の方がより価値が高いかを考えることです。また「希少性」などというものの見方、考え方を身につけながら自分の生き方や社会とのかかわりを探っていくことが重要なんですね。そういう見方や考え方が学校や生活のなかで発揮されることに金融教育の意味があると思います。

大澤

生重先生のご指摘のように、かつては教壇でお金の話をするのは一般的ではありませんでした。知識としては、金融のことなどは中学校でも学びますし、家庭科であれば買い物について扱っています。ただ、もっとリアルに、本当にあなたはどう買うのか、それは生きることとどう結びついているのかということについては、正直、先生方もなかなか立ち入りにくい状況でした。なぜなら、金融教育の本質を突き詰めていくと、先生ご自身の生き方や金銭感覚、価値観が問われてくるからなんです。「あなた方は学ぶ人、私は教える人」という立場で、知識としてお金の話をすることは可能ですが、「先生は?」と言われたときに、自分は除外して一般論を述べて、子どもたちには「リアリティを持って考えなさい」と言うのでは、子どもたちもすぐにその矛盾を見破ってしまいます。そういう意味で、金融教育をするということは、先生方もある意味で自分の、教師であると同時に生活者としての自分を自覚して教壇に立たざるをえないということであり、実態として多くの先生方がそれを避けてきました。みなさんのお話を聞いて、私どもの取り組みがそうした状況をブレークスルーするひとつのきっかけとなっていることが分かりました。

外部が持つ教育力を取り入れた開かれた教材が子どもたちのキャリア形成に役立つ

生重

さきほども少し触れましたが、私たちは学校に外部人材を入れていくということを主にやってきています。専門家と、現場の先生も入れて、プログラムの構築を行い、先生がイニシアティブをとって学校の授業として成立させるということを10年続けてきました。そうした経験を踏まえて、金融教育は、金融機関らしいCSRのテーマであると同時に、「次世代育成」という重要な役割を果たしていただいていると思います。これに、大澤先生たちが指向しているユニバーサルな視点、「いつでもどこでも誰でも」という発想が加わることで、現場ではより使いやすくなると思います。

大澤

ユニバーサルな発想の本質は、すべてに開かれていることで、それは教材づくりに止まらず、すべての物事に教育的な可能性を見いだすという点で、金融教育をレベルアップしていくうえで非常に重要な視点だと考えています。学校はこれまで学校のなかだけで自己完結する傾向がありましたが、いまのこの変化の激しい時代のなかでは、学校も、先生方も、地域社会や企業、NPO、さまざまな人々と交流する、連携するといったかたちで、それぞれが持つ教育力を学校のなかに引き入れなければいけません。そのことを実践していくためには、学校側も外側に対して開いていくと同時に、企業の方たちも学校に対して開いていく必要があります。ただし、企業の論理と文化で、そのまま学校のなかに入っていこうとしてもなかなかうまくいきません。外部人材を学校のなかに入れるという生重先生の活動は、そこをつないでいただいているのだと思います。

生重

大変ありがたいお言葉です。実際、キャリアというのは職業観だけではなく、生き方を考えるなかから生まれてくるものだと思います。ですから、学校外の広い範囲の事柄を学校教育のなかに取り入れていただくことで、子どもたちの学びはより生き生きとしたものになると思っています。

大澤

それはまさに我々がめざしているところと同じです。さきほど神宮先生もおっしゃったように、地域に開かれているということのなかには、当然、保護者にも開かれているという状態が含まれます。実際、新しいテキストは「子どもたちを対象に」といっていますが、実は周囲の大人や教師がどのくらい知っているかというと、案外知らないこともあると思います。

力丸

お金というのは子どもたちにとっては身近なものですが、知識を中心に教えようとすると、子どもたちからかけ離れた遠い外部の世界を覚えなければならない。それをどうやって自分の問題――進路やキャリアや生き方の問題としてとらえてもらうか。それが教師の腕であり、今回の教材はそれをサポートしてくれていると思います。大事なことは、ものの見方や考え方を教えることなんですね。お金をめぐる自分の立場を考え、判断させるために、周囲の状況をどう見せるか、どう考えさせるか。

本物の職業人と触れ合うことで今までとは違うキャリア教育の視点が得られる

佐古

おかげさまでこの5年間でいまみなさまに評価いただいたようなところまでたどり着いたわけですが、今後、この取り組みをどうやって広げていくのか。もちろんこれからも先生方とご相談しながら、あるいは公開講座などを通じて実践の輪を広げていくのか、アドバイスいただけますでしょうか。

生重

教科教育の研究会とか、各区市町村で必ず教育研究会をやりますね。そういうところに教材を提供して、共同でそれぞれの教科教育や道徳、総合学習にどう活かしていくかを考えてはどうでしょうか。それぞれに金融教育のエッセンスを入れていくことで、規範意識の確立にもつながりますし、いろいろな要素が含まれるので、興味深い授業になると思います。社会科の教科書に載っている魚や野菜の話に、流通や銀行の役割をも含めて、まずは現場の先生自身が創意を発揮してもらえると楽しい授業になる気がします。

力丸

私は子どもたちにどうやったら本質的なものの見方、考え方を育てられるか、それをいろいろな取り組みのなかで推進していきたいと考えています。そのひとつの方法として、本物を見せることが役立つのではないかと考えています。たとえば起業家の姿。起業すれば大きな自己責任が生じるわけです。一方で銀行は融資する段階でいろいろなリスクを考える。そうした緊張感のある関係から新しい価値が生まれるという、社会の仕組みをちゃんと教えてあげたいと思っています。

生重

今の起業の話にも関係しますが、私は中学生や高校生に、あなたなら貸すか、貸さないかというディスカッションをやってもらうのは面白いだろうなと思います。一定の条件が提示され、あなたなら貸すか貸さないか、あなたが銀行員だったらどうするのか。そういうことも含めてお金の問題を考えてほしい。

神宮

特別支援学校の場合はとくにそうなのかもしれませんが、取り組みを広げていくためには保護者との関係が大事になると思います。私は『くらしとお金』のテキストをコピーして子どもたちに配っていますが、必ず保護者の方にもコピーしたものをお渡ししてきました。私たちがこういう授業を子どもたちと一緒にやっていきますということを事前にお伝えしておくんですね。そうすると、本物の銀行の方が学校で授業をやるということを想像していらっしゃらない保護者の方も多く、すごくリアクションがあるんです。「次にやるときは見に行ってもいいですか」というお問い合わせとか、「どんなことをやってきたの」と家で子どもに聞いたり、そういうなかで保護者同士も話をするようになり草の根的に少しずつ地域に取り組みが広がっていくということがあるんです。

生重

私は、たとえば「生徒を2日間会社に預かってくれ」と言われたら企業としてどうするか、というアイディアをお話しします。1日目はとりあえず部署ごとに担当を決めて、見せられるところを全部見せて、会社のなかでどういう役割、機能を担っているか、そういうことがわかるような話をします。次の日は、それを学校に持ち帰って、子どもたち自身が、生徒が感じた内容をまとめ、プレゼンテーションをする。そして最後に30分でいいから、会社の方が出てきて、「よく理解できましたね。でもここはこうだよ」というアドバイスをしていただく。こうして得たものを個人やグループだけのものではなく、学校全体で、同世代の人たちが感じたものを共有化していくことによって、いままでとは違うキャリア教育の視点が得られるのではないかと思います。

大澤

確かに、銀行の役割を知ることと同時に、そこで働く人の仕事にぜひ触れてほしいですね。さきほど本物というお話がありましたが、まさに働く人の本物に触れた経験のある方に先生になってきてくれると、キャリア教育は随分変わっていくだろうと思います。

佐古

貴重なご意見をたくさんいただきました。いただいたお話、いろいろなヒントのなかから今後の私どもの活動に生かしてまいりたいと考えておりますので、引き続き宜しくお願いします。本日は誠にありがとうございました。

ステークホルダーダイアログ「金融教育」1の写真

ステークホルダーダイアログ「金融教育」1

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ステークホルダーダイアログ「金融教育」2

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