信用リスク管理について
基本的な考え方
当社グループでは、信用リスクを、「与信先の財務状況の悪化等により、資産(オフバランス項目を含む)の価値が減少または消失し、当社グループが損失を被るリスク」と定義しています。
当社グループの信用リスク管理は、当社が統括しています。具体的には、当社は、信用リスクに関する当社グループの基本的な方針を定め、主要グループ会社の管理を行い、併せて、当社グループ全体の信用リスクの状況をモニタリングし管理する態勢となっています。
信用リスク管理態勢
当社では、取締役会が信用リスク管理に関する基本的な事項を決定します。また、経営政策委員会(リスク管理委員会)で信用リスク管理に係る基本方針や運営・モニタリングに関する事項等について、総合的に審議・調整を行います。グループCROは、信用リスク管理の企画運営に関する事項を所管します。与信企画部とリスク統括部は共同して、信用リスクのモニタリング・報告と分析・提言、信用リスク管理に関する基本的な事項の企画立案・推進を行います。
主要グループ会社でも、同様に当社で定めた「信用リスク管理の基本方針」にのっとり、保有する信用リスクの規模・態様に応じて管理を行います。また、各社の取締役会が、信用リスク管理に関する重要な事項を決定します。
みずほ銀行、みずほ信託銀行(以下、「2行」という。)では、経営政策委員会(BSリスクマネジメント委員会、クレジット委員会)を設置し、各々のクレジットポートフォリオ運営、与信先に対する取引方針について総合的に審議・調整を行います。CROは、信用リスク管理の企画運営に関する事項を所管します。信用リスク管理担当部署は、与信管理の企画運営ならびに信用リスクの計測・モニタリング等を行い、当社に対して定期的にリスク管理状況を報告しています。審査担当部署は、各社で定めた権限体系に基づき、審査、管理、回収等に関する事項につき、方針の決定や個別案件の決裁を行います。また、業務部門から独立した内部監査グループが、信用リスク管理の適切性等を検証しています。
信用リスク管理方法
信用リスクの管理方法としては、相互に補完する2つのアプローチを実施しています。一つは、信用リスクの顕在化により発生する損失を制御するために、お客さまの信用状態の調査をもとに、与信実行から回収までの過程を個別案件ごとに管理する「与信管理」です。もう一つは、信用リスクを把握し適切に対応するために、信用リスク顕在化の可能性を統計的な手法等によって把握する「クレジットポートフォリオ管理」です。
与信管理
(1)与信業務規範
当社グループでは、すべての役員・社員が与信業務に取り組む際の基本姿勢等を「与信業務規範」として定めています。そこでは、金融機関の公共的使命と社会的責任を自覚した運営に努めるため、「公共性の原則」、「安全性の原則」、「成長性の原則」、「収益性の原則」等に照らした運営を与信業務の基本方針として定めています。
(2)内部格付制度
2行では、信用リスク管理の重要なインフラとして、信用格付とプール割当で構成される「内部格付制度」を活用しています。まず、信用格付は、債務者の信用リスクの水準を表す債務者格付と、担保・保証の種類や優先・劣後関係等を考慮した、債権ごとの最終的な損失発生の可能性を表す案件格付とで構成されます。
債務者格付の付与は、原則すべての与信先を対象として、与信先の決算状況等を速やかに反映するため最低年1回の定例見直しを行うとともに、与信先の信用状況の変化があった場合は随時見直しを行い、個別の与信先や銀行全体のポートフォリオの状況をタイムリーに把握できる態勢としています。
また、債務者格付の付与を、次に述べる自己査定の1次作業としても位置づけていることから、債務者格付は資産の自己査定における債務者区分とリンクしたものとなっています(図表「債務者格付と自己査定の債務者区分、銀行法及び再生法に基づく債権の債権区分の関係」参照)。
なお、債務者格付の付与にあたっては、債務者に対する適切な信用力評価を行うために、企業形態(事業法人、個人等)や、地域(国内、海外)等の債務者の特性に応じた定量的な評価制度(格付モデル)を設けています。主な格付モデルとして、国内の事業法人では、大企業と中堅・中小企業に大きく分かれており、さらに業種特性に応じて、大企業モデルは13の分類、中堅・中小企業モデルでは3つの分類を採用しています。また、海外の事業法人は、9つの分類を採用しています。
これらの格付モデルは、与信企画部において統計的手法を用いて開発し、CROが承認しています。
- 債務者格付と自己査定の債務者区分、銀行法及び再生法に基づく債権の債権区分の関係
次に、プール割当は、一定の残高に満たない小口の与信先等を対象に、リスク特性の類似する与信先や債権の集合体(プール)を組成したうえで、その組成したプールごとにリスクを把握し、管理する手法です。プールごとに十分な小口分散を図ることにより、効率的な信用リスク管理および与信管理を行っています。なお、債務者格付、プール割当についての妥当性および有効性の検証を、あらかじめ定められた手続きにのっとり、内部監査グループによる監査のもと、原則年1回実施しています。
当社グループでは、貸出条件の緩和を実施した債権の定義を「債務者の経営再建または支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる取決めを行った要注意先向けの貸出金」としています。
また、債権を危険債権以下に区分しないことを許容する三月以上延滞債権の定義は「相続等特別な理由により、元本または利息の支払いが約定支払日の翌日から3ヵ月以上遅延している要注意先向けの貸出金」としています。
正常先 | 行内格付ごとの債権額に、今後1年間の倒産確率等に基づき算定された予想損失率を乗じた金額を「一般貸倒引当金」として計上。 |
---|---|
要注意先 | 債権額に、今後3年間の倒産確率等に基づき算定された予想損失率を乗じた金額を「一般貸倒引当金」として計上。 なお、要管理先債権については、与信額が一定額以上の大口債務者のうち、債権の元本の回収および利息の受け取りに係るキャッシュフローを合理的に見積もることができる債権については、キャッシュフロー見積法(DCF法)による引当を実施。 |
破綻懸念先 | 債権額から、担保の処分可能見込額および保証等による回収可能見込額を控除した残額のうち、a)債務者の支払能力を総合的に判断して算定した金額、b)当該残額に今後3年間の倒産確率等に基づき算定された予想損失率を乗じた金額、のいずれかを「個別貸倒引当金」等として計上。 なお、与信額が一定額以上の大口債務者のうち、債権の元本の回収および利息の受け取りに係るキャッシュフローを合理的に見積もることができる債権については、キャッシュフロー見積法(DCF法)による引当を実施。 |
実質破綻先 | 債権額から、担保の処分可能見込額および保証等による回収可能見込額を控除した残額全額を、「個別貸倒引当金」として計上、ないしは直接償却を実施。 |
破綻先 |
(3)自己査定、償却・引当
資産の自己査定は、信用リスク管理の一環であるとともに、企業会計原則等に基づいた適正な償却・引当の準備作業として、資産の実態把握を行うものです。具体的には、与信企画部が資産の自己査定全般の統括を行い、貸出資産・有価証券等の資産ごとに定めた管理・運営部署と連携して自己査定の実施・運営を行うことで、資産内容の実態を把握・管理する態勢としています。
「償却・引当」は、原則として、自己査定の結果に基づく債務者区分と分類区分をベースに実施されます。倒産確率は、債務者区分が破綻懸念先以下となった先を倒産件数として反映し算定しています。
なお、2023年3月末における償却・引当の結果は、2022年度の開示債権と引当・保全の状況(2行合算)(銀行勘定)(PDF/7,485KB)の通りとなっています。
(4)案件審査
貸出資産の質を維持するためには、日常の与信管理を通じて不良債権の新規発生を未然に防止することが極めて重要となります。
案件審査については、基本的には、個別案件ごとに営業部店が厳正に分析・審査を行い、営業部店長の権限を越えるものについては本部の審査担当部が審査を行う態勢をとっています。業種や規模・地域等の切り口で審査担当部を設置しており、顧客やマーケットの特性に応じて専門的かつ迅速な審査の実施、営業部店への適切なアドバイスを行うことができる態勢を整えています。
また、不良債権の新規発生を未然に防止する観点から、特に、ダウンサイドリスクの高い低格付先に対しては、営業部店と審査担当部が一体となり与信方針を明確化するとともに、早い段階での健全化に向けた支援を行う運営としています。
クレジットポートフォリオ管理
(1)リスク計測
当社グループは、リスク計測システムを用いた統計的な手法(企業価値変動モデル、保有期間1年)によって、今後1年間に予想される平均的な損失額(=信用コスト)、一定の信頼区間における最大損失額(=信用VAR)、および信用VARと信用コストとの差額(=信用リスク量)を計測し、ポートフォリオから発生する損失の可能性を管理しています。
リスク計測システムの対象範囲は、当社グループ各社において勘定計上された貸出金・有価証券・支払承諾見返・預け金・外国為替等の与信取引、スワップ・オプション等の派生商品、コミットメント等のオフバランス項目、その他信用リスクを有する資産としています。
与信取引では、信用コストを参考値として設定した指標等により、リスクに見合った適正なリターンを確保する運営を行っています。
また、信用VARは、それが実際に損失として顕在化した場合、自己資本および引当金の範囲内に収まるように、クレジットポートフォリオの内容を様々な観点からモニタリングするとともに、各種ガイドラインを設定しています。
- 損失分布
(2)リスク制御手法
2行では、特定企業グループへの与信集中の結果発生する「与信集中リスク」を制御するためにガイドラインを設定しています。また、資本の状況等を踏まえた検証等を実施のうえで与信上限の基準等も設定しており、設定基準超過時には対応方針の策定や超過解消に向けた計画の策定等を行っています。
上記の遵守状況と併せて、与信総額、格付別与信状況、企業グループ、地域・業種別の与信集中状況についてもモニタリングを行い、定期的に経営政策委員会(BSリスクマネジメント委員会、クレジット委員会)にて報告しています。