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Building the future with you

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トルコの橋が
つないだ
「きずな」

お客さまの未来を左右する「一大プロジェクト」をいかにしてサポートするか。
それがメイン行としてのプライドと責任。

2002年入社 | みずほ銀行 大阪営業第二部
 | 坂倉 健一Kenichi Sakakura

世界最大級の吊り橋

全長3,000m、総工費約1,000億円—。
「世界最大級の吊り橋を建設することになりそうだ」
そんな話をX社のD部長から聞いたのは、私が大阪営業第二部に着任して1年が過ぎた頃でした。
トルコ共和国の最大都市イスタンブールと第三の都市イズミルを結ぶ高速道路プロジェクト。その要となるのがトルコ西部に位置するイズミット湾の南北を結ぶ「イズミット湾横断橋」の建設です。完成すれば現在1時間近くかかるイズミット湾の横断が約5分に短縮されトルコ国内の交通網は飛躍的に便利になります。アブドゥラー・ギュル/トルコ大統領(当時)の威信をかけた国家プロジェクトなのです。
「みずほ銀行にはメイン行として、ぜひとも力を貸してほしい」
D部長は私の目を真っすぐに見据えました。
X社は国内最大規模の橋梁会社です。主に国および地方自治体からの案件を受注して橋や水門を建設していました。しかしながら当時、国内設備投資需要は横ばい傾向にあり、業界全体がこぞって海外案件の獲得を目指している時期でした。国内最大規模の橋梁会社とはいってもX社にとって、「イズミット湾横断橋」は過去に例がないほど大きく、そして失敗の許されないプロジェクトだったのです。一方で私自身もその当時、<みずほ>にトルコ拠点が無いことは認識をしており、情報収集についてもリソースは限定的であることは、ある程度覚悟していました。
「メイン行として最大限サポートします」
メイン行としてのプライドがあります。対応できないとは言えません。
私は入社後、主に中堅中小企業を担当するRMとしてキャリアを積んできました。入社から8年ほどたった後にジョブ公募制度を利用して大阪営業第二部へ異動し、大企業を担当することになったのです。着任後、1年程度が経過し、大企業RMとしても徐々に自信をつけてきていた時期でした。
「坂倉さん、いつもみたいなサポートを頼むよ」
そういってD部長が握手を求めてきました。
D部長のいう「サポート」には単なる資金調達だけではなく、当然に現地の投資環境や金融ルールに関する情報を提供するといった、コンサルティング的な役割も含まれています。過去にX社のベトナムの案件をお手伝いしたときも、詳細な現地レポートや金融規制などの情報を提出して差し上げたところ、D部長は大変喜んでくれました。
私は力強くD部長の手を握り返しました。そう、この先の苦難を知る由もなかったのです・・・。

お客さまのスピード感は想像以上・・・

「サポート」のご依頼をいただいてから、1週間が経過した頃でした。D部長から「いつごろご対応いただけますか?」というお電話をいただいたのです。
しかし当時、<みずほ>にはトルコの拠点が存在しておらず、情報リソースが限定的であることがやはりネックになっていました。(現在、トルコには「イスタンブール駐在員事務所」を開設済み)
関係部に問い合わせをしても、取得できるのは人口や所得水準といった基本的なデータだけ。細かな税制や取引ルールなど金融情勢に関する情報は蓄積されていなかったのです。これではレポートを作成しようにも材料がありません。
また、X社の現地法人と資金決済するために口座を開設しようにも、日本とトルコで法人格の扱いが異なるため、なかなか手続きが前に進みません。たった一つの口座を開設するのにトルコの法制度などの確認もあり、1カ月以上もかかってしまいました。実は、トルコには他のアジア諸国にはない複雑な金融規制があるのです。
何とかしなければ—。焦りながらも時間だけが過ぎていきました。
このままズルズルお待たせしても仕方がない—。そんな考えが頭をよぎりました。こちらの状況を正直に伝えればきっとD部長は回答に時間が掛かっていることに理解を示してくれるはず。
かつて中堅中小企業の経営者さまたちと、情に厚い付き合いをしてきたこともあり、正直に伝えることが誠意だと思ったのです。
「実は・・・」
思い切って私はトルコに関する情報が不足している状況を告白しました。
一瞬の沈黙がありました。
「そうですか」
つづいて聞こえてきたD部長の言葉は、これまでと違ってドライな口調でした。
「残念ながら、それならばやむをえません。他行にお願いするので今回のお話は忘れてください」
私は頭が真っ白になって、電話を切られてからもしばらく受話器をもったまま動けませんでした。
今回の案件は総額1,000億円。この一大プロジェクトに関われないと、<みずほ>のメイン行としての立場が危うくなります。これまで長い年月をかけて、<みずほ>が築いてきたX社とのリレーションに大きなヒビが入るのです。
「これで引き下がるしかないのか?X社の担当として本当に納得できるのか?」
自分自身を強く責めながら、感じていたのはグローバル企業を担当する厳しさです。
これで終わってなるものか—。本部の支援が期待できなければ、自分で動くしかない・・・。そう、強い覚悟を固めました。

でも、ここからが勝負だ

とにかくトルコの金融情勢を知らなければ話が始まりません。いくつもの現地企業や会計事務所に連絡をし、何とか大手コンサルタント会社の担当者とコンタクトを取ることができました。もちろん普通に業務委託するとなると、莫大なコンサルティング料が発生してしまいます。が、再三にわたり粘り強く交渉し、無償でトルコの金融情勢に関する資料を入手することに成功したのです。
でも、ここからが勝負です。
送られてきたのは200ページにも及ぶ膨大な英文資料です。その日から辞書を片手に資料と格闘する毎日が始まりました。通常業務を抱えながら、空き時間を利用しては、必要箇所を日本語訳し、内容を咀嚼し、要点をまとめていきました。レポートが完成したのはそれから一週間ほど経ってからです。
D部長に面談を申し入れようと電話すると、あいにくのご不在。代わりに出られたのはM課長でした。M課長に事情を説明しても、遠回しに「他行さんから提出された資料を検討している」とのご返事で、旗色は芳しくありません。
だからといって、引き下がるわけにはいきませんでした。何とかD部長のアポイントを取り付けたのです。
翌日、D部長は私が用意したレポートをじっくりと読み込んでくださいました。これでダメなら仕方がない。私はどんな結果をも受け入れる覚悟でした。
やがて、D部長が顔をあげました。
「大変参考になった。実は他行からの資料に一部食い違いがあってね。どちらを信じていいものやら頭を抱えていたんだよ」
そういってD部長は私のレポートを取り上げました。
「この内容で間違いないだろう。この条件を前提にファイナンススキームを考えたい。坂倉さん、引き続き知恵を貸してくれませんか?」
あきらめないでよかった。精一杯に頭を下げながら、これまで経験したことのない達成感が胸いっぱいに広がるのを感じました。

「きずな」という架け橋

ひとたび走り出した案件はスムーズに進みました。X社と二人三脚で<みずほ>が主導するファイナンススキームを完成させ、正式に融資が決定しました。
「イズミット湾横断橋」は2016年に完成予定。現在、工事は着々と進められています。完成したあかつきには大統領参加の国家的イベントまで企画されているようです。
現在、私はX社の担当を離れましたが、工事の進捗を新聞やインターネットで常に追っています。だんだんと完成に近づく現場をみるたびに思うことがあります。
私も「きずな」という橋を架けることができたんだ—。
「きずな」。それは、X社と<みずほ>が共に歩み、未来へと前進するための架け橋です。
メイン行としての現在の地位は、過去の諸先輩の苦難や想いが礎になったもの。私たちは、その歴史を真摯に受け止めながら、次の世代へ、そのまた次の世代へと橋渡ししていかなければならないのです。
後任としてX社を担当するのは、28歳の若手行員。機敏な動きで良好なリレーションを保ってくれています。私は彼にしっかりと引き継ぎができたことを誇りに思っています。
「きずな」には決して完成はありません。X社との取引関係がある限り、未来永劫、休むことなく工事をつづける覚悟が必要なのです。

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